カテゴリ:教育普及

「美術館への年賀状展」開催中!

112()より、当館エントランスホールにて「美術館への年賀状展」を開催しています。



1984年の開館以来、休館をはさみ30回目の開催となりました。

県内の子ども達から届いた手作り年賀状を全て展示しています。


























2017
年の干支である「酉」をモチーフにしたもの、富士山(初日の出)やお正月ならではのコマや鏡餅などを描いたものや、新年の抱負を書いたものなど、多彩な年賀状をいただきました。

送ってくださったみなさま、ありがとうございました!

131()まで展示しています。ぜひご覧ください!

2016学校連携共同ワークショップ参加校作品展開催中

学校連携共同ワークショップ参加校作品展2016


会期:20161220日㈫〜1225日㈰

    (年末年始休館20161226日〜201716日)

   201717日㈯〜115日㈰

会場:福島県立美術館(企画展示室B)

開館時間:9301700(入館は1630まで)

観覧無料


福島県出身の若手アーティストを講師に招き県内14カ所の幼稚園から高校でワークショップを開催しました。
県内14校、参加者総数のべ人数400人以上。子どもたちの元気あふれる作品をぜひご覧ください。

 

学校連携共同ワークショップとは?

美術作家を先生として招き、各学校で子どもたちを対象としたワークショップを開催するプログラムです。
作家が学校に出向いて子どもたちと交流しながら、いっしょに創作活動を楽しみます。

ワークショップは学校の授業のような1〜2時間ごとの活動ではなく、半日〜1日全部の時間を使って、
学年または部活動、全校一斉で行います。そして作家のユニークなワークショッププログラムにより、
いつもとは違う「創り出すことの喜び」を体験することが出来る活動になっています。

今年度のワークショップは昨年に引き続き『おとなりアーティスト』と題し、福島県出身の若手アーティスト3名
(建築家・アサノコウタ氏、アートユニット・フライデースクリーン、土絵作家・佐藤香氏)を招いて、
県内14カ所の幼稚園から高校でワークショップを開催しました。参加者総数のべ約400名以上。
本展覧会では、ワークショップで作られた全ての作品をご紹介いたします。

 

 2016年度参加校

福島市立金谷川幼稚園(年長)福島市立森合幼稚園(年少・年長)二本松市立塩沢幼稚園(年中・年長)
川俣町立川俣南幼稚園(年少・年長)白河市立関辺幼稚園(年長)学校法人松韻学園蓬莱もみじ幼稚園(年長)
学校法人鏡石学園岡ノ内幼稚園(年長)学校法人堀内学園富岡幼稚園(全園児)二本松市立渋川小学校(5年)
三春町立三春中学校(2年)会津若松市立第一中学校(美術部)会津若松市立第二中学校(美術部)
県立福島東高等学校(美術部)福島市立福島養護学校高等部(1年)

 
作家紹介

アサノコウタ 氏(建築家)

1983年 福島市出身。

慶応大学SFC政策・メディア研究科修士課程修了。震災後、屋内公園をデザイン。
2011年〜「プロジェクトFUKUSHIMA!」の福島大風呂敷(2011年福島市)などで
ディレクションを担当。個人として、ショップ内装や住宅などのデザインをする他、
2011年越後妻有の林間学校講師、2014年札幌国際芸術祭2014(北海道札幌市)
他多数のアートプロジェクトに参加。古民家鑑定士。福島学院大学非常勤講師。
FMポコラジオパーソナリティ。

 

佐藤 香 氏(土絵作家)

1987年 田村市出身。
2012   東京芸術大学大学院壁画専攻修了。修了制作展で発表した実家の土で描いた
「私の故郷、福島」をきっかけに、滞在した場所の土で絵を描く制作スタイルで活動中。
2012年会津・漆の芸術祭(喜多方市)2013年 原始感覚美術祭(長野県大町市)
風と土の芸術祭(美里町)2014年手作り本仕込みゲイジュツ展(はじまりの美術館)、 
/1000,000妻有展(里山現代美術館)2015年大地の芸術祭(新潟県十日町市)などで滞在制作。


 FRIDAYSCREENフライデースクリーン (アートユニット)
鈴木孝昭 氏 坂内まゆ子 氏 (福島市出身)

2015年 活動開始。“From Local, For Local, With Local”をコンセプトに、
デザインによる福島の地域資源の発掘と発信を目的に活動しているクリエイターの鈴木孝昭と

テキスタイルアーティストの坂内まゆ子によるユニット。地域に密着したプロダクトや
グラフィックといったデザインの仕事のほか、イベントの企画や運営をはじめ、
他分野の専門家とコラボレーションした商品開発やワークショップを行うなど
様々な活動を行っている。


展示の様子をちょっとだけご紹介


展示室に入ると、三人の不思議キャラがお出迎え(フライデースクリーン:若松二中作品)


ここからは、フライデースクリーンのワークショップ作品が見渡せます。正面の机には、
若松一中と若松二中の生徒さんが集めた「音」を聞くことが出来るパッドが三つ並びます。
(なんの音か当ててみてね)



入って左の壁には太古の壁画を思わせるプリミティブな作品たち!
佐藤香さんワークショップは、「土」から絵の具を作り、土絵を描きました。



三春中学校 2年生120名が描いた迫力の土絵!3m×3mの作品が4枚並びます。


迫力の三春中と向き合うのは、これまた負けず劣らず迫力のある渋川小学校5年生の作品!(フライデースクリーン)
映し出された映像はゴジラではありません。これは渋川小に立つ大きな二本の桜の木。
葉のある季節は大きな恐竜に見えることから「シブカワザウルス」と呼ばれ、子ども達に親しまれています。
今回のワークショップは、シブカワザウルスの「鳴き声」を想像してダンボールで作りました!


不思議な鳴き声たちが、光りと影の中で交錯します。


ボリューム満点の作品に挟まれた空間には、金谷川幼稚園の園児たちが作った「海の音色」を響かせる
かわいい楽器たちが浮遊しています。(フライデースクリーン)

触れると「カラカラカラッ」と静かに音色を奏でます。


最後は、建築家アサノコウタさんによるワークショップ(ウチをつくる)作品です。


一見、ダンボールの山のように見えますが、良く観ると様々な「おもちゃ」たちが住んでいるようです。


そう!ここは、福島東高校美術部の生徒さんたちが、園児たちの作った「おもちゃの住むウチ」を
組み合わせて大きくした「おもちゃの住むマチ」なのです!















会場は、眼をキラキラ輝かせワークショップに取り組んだ子ども達の熱気でいっぱいです。ステキな子ども達の作品をぜひご覧下さい!


親と子の美術教室「クリスマスを彩るどうぶつライトをつくろう!」

2016年、1211()、当館実習室にて、「クリスマスを彩るどうぶつライトをつくろう!」を開催しました。

講師は、光のアトリエPAPERMOON主宰の冬野朋子先生です。

 

今回は、好きな動物のかたちのフットライト(足下灯)を親子で一緒に作ります。

先生から自己紹介などのあと、まずはどんな動物にするか決めます。



今回は事前の準備として、子ども達につくりたい動物のイラストを描いてきてもらいました。丸い形にした針金を基本形として、冬野先生と相談しながら、あかりにする動物のかたちを決めていきます。

 

次に、イラストを描いた紙に合わせて、針金を切ったり、曲げていきました。これは少し力がいる作業です。ハンダづけするためののりしろも考えつつ、ペンチやパイプを使いながら、みなさん丁寧に曲げていました。





 

針金ができたらいよいよ接着!

まず冬野先生からハンダごての使い方や、扱うときの注意点について説明がありました。



針金をつける手順を、実際にやってみせてもらいます。

 


次は自分たちで挑戦!お母さんやお父さんと協力しながら、針金をハンダづけしていきます。みんな先生の説明をしっかり聞いていたので、上手にできました。

 

針金の枠をたくさん入れる子もいて、少し大変そうでしたが、みんな集中して一生懸命取り組み、それぞれ自分が考えた動物形の針金の枠が完成しました。

 

できた枠をきれいに洗い、今度は和紙を貼る作業です。

まず、白い和紙をくしゃくしゃにして広げます。

次に針金の枠の片面にボンドを塗り、先ほどの白い和紙を貼り付けました。



ボンドが乾いたら、はさみで針金より少し大きめに和紙を切っていきます。


 

切り終わると、こんどはその上に自由にカラフルな和紙を貼り付けていきます。

色ごとに並べられた和紙の山から、自分の好きな和紙をいくつか選びました。





選んだ和紙を、自分がつくりたいイメージに合わせてちぎりながら白い和紙の上に貼り付けていきます。

子ども達はどのような感じに透けて見えるのか、色が重なるのかを見るために、前に置いてあるライトにかざして何度も確認していました。

黄色一色でも、同じ色の和紙を使うのではなく、濃い黄色やオレンジに近い黄色など、様々な黄色を組み合わせて重ねることによって、光を通して美しいグラデーションが生まれます。



世界にひとつだけのフットライトが完成しました!

最後は点灯式。部屋を暗くして、ひとりひとりの作品をライトに付け、みんなで楽しみます。

 

寒い冬を彩る、あたたかく素敵なフットライトが完成しました。

おうちであかりを灯すたびに、一緒につくった時のことを思いだしてもらえたらいいなと思います。


 


冬野先生、参加してくださったみなさま、ありがとうございました!!

 

「アートなおはなしかい」開催しました!

123()、おとなりの図書館さんと一緒に「アートなおはなしかい」を開催しました。

今回のテーマは、来年の干支である「とり」です。

まずは図書館の研修室で、「とり」に関連する素敵な絵本のよみきかせをしてもらいました。



1、『にわとりとたまご』    作: イエラ・マリ エンゾ・マリ

にわとりとたまごが変化していく様子が絵だけで表現された、美しい絵本でした。

 

2、『ロージーのおさんぽ』 作:パット・ハッチンス 訳:渡辺茂男

ある日、めんどりのロージーがおさんぽに出かけます。背後にはロージーを狙う動物がいますが…?黄色や赤、だいだいなどの同系色でまとめられ、黒く細い線で描きこまれた絵にひきこまれます。

 

3、『十二支のはじまり』 作:岩崎京子  絵:二俣英五郎 

「ね、うし、とら、う、たつ、み…」みんなが知っている十二支。

この動物達の順番はどの様に決められたのか知ることができる絵本です。

 

4、『でんごんでーす』 文:マック・バーネット 絵:ジェン・カラーチー 訳:林木林

お母さん鳥が、小さなピーターへ伝言を送ります。いろんな種類の鳥たちが次々と伝言していきます。果たしてピーターにお母さんからのメッセージはきちんと伝わるのでしょうか?鳥たちによる愉快な伝言ゲームが描かれた、楽しい作品でした。


 

5、『しまふくろうのみずうみ』 作・絵: 手島圭三郎

ある湖のほとりにすむ、しまふくろうの親子のお話。大きく翼をひろげて魚をつかまえるシーンは、とても迫力があります。

 

さて、おはなしかいの後は秘密の抜け道(連絡通路)を通って美術館へ。

美術館では、2階の常設展示室で作品を一緒に鑑賞していきました。

まずは展示室入口すぐの作品、《雪に埋もれつつ正月はゆく》(1919)

作者は三島町出身の画家、酒井三良(1897‐1969)。この作品では、囲炉裏を囲む家族の様子が描かれています。画面上部には会津の小正月行事のひとつである「だんごさし」が描かれており、「学校でやったことがある」と話してくれた子もいました。



みんなで作品の真ん中に集まり、低い姿勢から作品をみてみます。そうしてみると、あたたかい囲炉裏を囲んでいる家族の一員になったような、そんな気持ちにもなってきます。

 

次に紹介したのは、佐藤忠良(1912-2011)作、《ジャコビン》(1977)
これは絵ではなく、立体の作品です。ケースのまわりをぐるりと1周してみます。
ジャコビンとは鳩の一種で、首の周りがふわふわとしています。今期の展示作品の中で唯一はっきりと「鳥」がモチーフになっている作品でした。

 

最後に紹介したのは、河野コレクションのひとつである高橋忠弥(1912-2001)の作品です。



まずはタイトルを言わず、なにが描かれているように見えるか聞いてみました。

はっきりとはなにが描かれているのか分からない絵に、みんな困り顔です。

この作品には《花・鳥・ランプ》(1950)というタイトルがついています。

子どもたちと「どこの部分が鳥に見えるかな?」と絵をもう一度みて考えてみます。

「右側の大きな丸いところが目に見える」

「ここが胴体で、ここが羽に見える」などと、絵を指さしながら、お話してくれました。

現在の展示が始まってから、子どもたちや大人の方と、何度か≪花・鳥・ランプ≫を一緒に見る機会がありましたが、みんなそれぞれ異なる部分に鳥の姿を見つけるので、毎回色々な発見があります。

 

少し急ぎ気味に展示室をまわってしまいましたが、「これなに?」「これ不思議」などと、子どもたちは展示されている作品に対して、様々な反応をしてくれました。またゆっくりと作品に会いに来てほしいです。

 

最後は工作の時間です。図書館の研修室に戻り、ステンシルでカラフルな鳥を描いていきます。

まずははがきサイズの紙にやってみよう!

自分の気に入った鳥の型をひとつ選び、紙の上に置きます。マスキングテープでずれないようにしっかりととめます。

スポンジに絵の具をつけて、トントンと紙に色をのせていきます。

ふちの方までしっかりと。何色か重ねてカラフルな鳥をつくっている子もいました。



ステンシルが終わったら、今度は文字や絵を描きこんでみよう!背景に山や空を描いたり、枝や卵を描いてみたり…。
みんな一枚一枚丁寧に描き、素敵なはがきが完成しました。はがきサイズなので、年賀状にも使うことができます。




今度はもっと大きなステンシルに挑戦!ロール紙を準備しました。

真ん中には「HAPPY NEW YEAR!! 2017

その周りに、カラフルな鳥をどんどんステンシルで写していきました。

みんな手を絵の具だらけにしながら、制作に取り組んでくれました。(作品は展示の時にご紹介したいと思います。)

 

ご参加いただいたみなさま、ありがとうございました!

美術館では、毎年「美術館への年賀状」展を開催しています。小学生から高校生による手づくりの年賀状を募集し、届いた年賀状全てを展示しています。

今回大きな紙にみんなでつくった作品は、2017年の年賀状展会期中、エントランスホールに展示します。

会期は2017112()131()までです。

子ども達の作品を見に、ぜひ遊びにいらしてください。


わんぱくミュージアム「キラキラつやつや七宝焼きバッジに挑戦!!」

11/13(日)の午前と午後、2回にわたり、わんぱくミュージアム「キラキラつやつや七宝焼きバッジに挑戦!!」を開催しました。
今回は小学1年生~6年生まで、23名の子ども達が参加してくれました。



七宝焼きとは、簡単にいうと金属の土台(銅板)に、カラフルなガラス質の絵の具(釉薬)を焼きつけたものです。
まずは丸か楕円のかたちの土台を選び、どんなバッジにしたいか、色えんぴつを使ってスケッチしました。

あまり細かい模様は難しいですが、中には細かい複雑な模様に挑戦する子もいました。

どんどんアイディアが浮かぶのか、もう一枚描く!という子達もいました。
スケッチが終わったら、お気に入りのひとつを選びます。

 

いよいよ一番難しい作業へ。考えた絵柄に沿って、ガラス絵の具を選び、ホセ(竹べら)を使い金属の上にのせていきます。



子ども達は、透明色(すける色)、不透明色(はっきりした色)を使い分けながら、丁寧に土台の上にのせていました。

のせている時の表情はみんな真剣!細かい模様にした子も、慎重にホセを動かしながらガラス絵の具をのせていました。

 






完成すると、スタッフが800度に熱した電気がまで焼きます。

かまの小さな窓から、ガラスが溶ける様子を見てもらいました。

 

焼き上がった熱々のバッジ。焼きたては絵の具の状態と全く色が異なります。

子ども達はどきどきしながら作品が焼き上がるのを待っていました。

 


バッジが冷めたら縁をやすりで削り、後ろにピンをつけます。

キラキラでつやつやの、世界にひとつだけのバッジが完成しました!




参加して下さったみなさま、お手伝いいただいたみなさま、ありがとうございました!

 

「触って、話して、見て楽しむ美術鑑賞ワークショップ」開催

福島県立美術館では、2012年から毎年1回、視覚障がい者の方々とコレクション作品を鑑賞する「視覚障がい者のための美術鑑賞ワークショップ」を開催してきました。回を重ねるごとに、「今度はこういうのをやってみたらどうだろう?」というようなアイディアも出てきて、今年は見えない人と見える人一緒に作品を鑑賞するワークショップに挑戦することになりました。タイトルは「触って、話して、見て楽しむ美術鑑賞ワークショップ」。

新しい試みでしたので、いろいろな方々にご協力をいただき、打ち合わせを重ねました。2012年の初回から講師をして下さっている真下弥生さん、半田こづえさん、そして福島県点字図書館の方に加え、県内の視覚障がい者の方、福島市内で活動されている「てつがくカフェ@ふくしま」の世話人の方々。その中で、昨年度新収蔵のロダンの彫刻《影の頭部》《髪をすく女》を鑑賞作品として選び、ワークショップの進め方を話し合ってきました。

 

113(木・祝)ワークショップの当日。

午前と午後二回開催されたワークショップには、見えない方、見える方合わせて22人の方がご参加下さいました。

その様子をご紹介しましょう。

 

場所は常設展示室。

彫刻を触察するので、まずは手を洗い、時計やアクセサリーを外し準備をととのえてロダンの彫刻が展示してあるところに集合。


スタッフも大勢いましたし、いろいろな人たちが集まっていたので、まずは自己紹介から始まりました。多分、みんな緊張していたと思います。なんせ初めてのことですから。まずは緊張をほぐしウォーミングアップ。

 

そして講師の真下弥生さんがこれから鑑賞する作品の制作者、彫刻家のオーギュスト・ロダンについて、いつの時代のどこの作家なのか、どんな作品を作った人なのかをお話しして下さいました。

これから鑑賞する《影の頭部》という作品は、頭部だけなのですが、実はロダンの代表作である巨大な《地獄の門》のてっぺんに置かれた3人の男性の全身像《三つの影》に由来するものだということも紹介されました。

 

いよいよ鑑賞です。見えない人2人、見える人2人がチームになります。3チームで以下の3つの作品を鑑賞していきました。
ロダンの《影の頭部》と《髪をすく女》。
いずれもブロンズでできています。彫刻ってどうやって作るんだろう、ということを少しわかっていただくために、今回はいわきの彫刻家、髙野正晃さんにご協力をいただき、制作途中の粘土の人物頭部を拝借し、それも触察していただきました。

 

見えない人から鑑賞が始まります。触りながら、「これは何?」「ここはどうなっているの?」など、見える人と会話をしながら鑑賞を進めました。もちろん見える人も触ってみます。

《影の頭部》では、「目は開いてるの?」「あれっ、閉じてるのかしら?」お互いに対話をすることで、気がつかなかったいろいろなことが見えてきたようです。







鑑賞が終わったところで、「てつがくカフェ@ふくしま」の渡部純さん、小野原雅夫さんがファシリテーターとなり、それぞれが感じたことを共有し、深める場を持ちました。

午前中の「てつがくカフェ」では、どんな話しが出たかご紹介しましょう。

 

触ることと見ること

見える人:(見えない人から)、このところどうなっているのかと質問されましたが、それは触れるからこそ出てきた質問だと思いました。あらためて自分で触ってみて、彫刻って触ってみると一番いいところが見えるという思いがしました。(視覚障がい者の方は)いつも触っていらっしゃるので感覚が研ぎ澄まされているのだということが伝わってきました。

見えない人:《髪をすく女》は女だということはわかりましたが、果たして髪の毛がどこにあるかわからなかったです。前か後ろかもわからなかった。触ってみて、胸がある、お腹も出てるとかわかりました。手や足を触って、こうなってるから髪は前にあるんだとわかりました。Tさん(見える人)から前にあるんだよ、と聞かなければイメージできなかったと思う。

見える人:鑑賞の最初は、あまりヒントを与えないでいました。全体を触った後にだんだん細かいところをこういう風に触るとわかるわよと。

一緒に鑑賞しながら、見える者が無視しているものがあることがわかりました。例えば継ぎ目。それは鑑賞している時には全く目に入っていませんでした。今回、細かいところも一緒に触って、初めてこういうところもあるんだと逆に教えていただきました。


 

《影の頭部》の表情について

見える人:口のところがへの字に曲がっているようでした。苦悩というか、恍惚感と言ったらいいか。目のところには安堵感のようなものも感じられましたが、全体として、希望がない、諦念のような世界が表現されていると思いました。

見える人:そういう感じ方と、技巧的にこういう風になっているのだと感じることとは違うのですね。世界観を感じるためにもう一度触ってみたいです。

見える人:普段は眼鏡をかけています。今日は眼鏡を外して目を閉じて触ったのですが、触っての感想は、表情もへったくれもなかったです。《髪をすく女》はそもそも何のことかよくわからない。視覚をシャットアウトして触ってみて、最低限の情報が得られただけだったという感想でした。

 

伝えるということについて

見える人:障がい者の方は、支援する者の説明を受けながら鑑賞するわけですが、支援する側の資質、感性が非常に重要な位置にあることを感じました。どういう意図を持って感じてもらうのか、大変な課題です。責任重大だというのを感じました。うっかりすると自分の押しつけになってしまうのではないかと。

 

作品を鑑賞することとは

見えない人:ロダンの彫刻という先入観を持つことで、僕らは何かを感じ取らなければならないと感じてしまいます。私自身は絵や彫刻に対する知識もありませんから、最初からロダンは凄い彫刻家なんだという思いで触る。そうすると、首をかしげていることは何かを意味しているのか、ということばかり考えてしまいます。何でこれを世の中の人が評価するのか、私にはまずわからない。私自身はこれのどこがいいのかなって思う。見えている人は逆にそれがわかるのかな、という思いがあります。街中にある彫刻は通り過ぎてしまうのに、美術館に来た時だけ一生懸命触るというのは何なのでしょう。美術鑑賞するってどういうことなのかな、と思いました。

見えない人:この前モネ展に行ってきました。私も、モネの睡蓮は学校で習うので知っています。でもよくわからなかった。モネの描いた睡蓮だから、みんなお金を出してでも見に行くということがもしかするとあるのかな。

てつカフェ:見えているからちゃんと鑑賞できているのでしょうか。ただ単にモネとかロダンという名前の権威に照らされて、有り難く見ているだけかもしれないし、逆にそういうところから切り離された人の方が言い当ててくれるのかもしれない、という気がします。

 

美術館への要望

見えない人:作品保存のためなどいろいろな問題で、どうして美術館って暗いのだろうという素朴な疑問があります。段差もあるし、美術館は怖いです。保存などの理由があるのはわかります。わかりますが、でも明るいところで見たいです。それが私の希望です。

見える人:それは私たちも同じです。歳のせいもありますが、暗いですね。

 

午後の部の様子は、「てつがくカフェ@ふくしま」さんがブログにまとめて下さいました。是非チェックして下さい。

http://blog.goo.ne.jp/fukushimacafe

 

みなさんと作品鑑賞し、お話しをする中で、見える人、見えない人それぞれに発見があったと思います。そして最後の対話の部分では、鑑賞の本質的な部分にも話しが及びました。また美術館への要望も出ました。どれもすぐに解決できることではありません。答えはありません。これからもまた一緒に考えていきたいと思っています。

皆さま、本当に有り難うございました。

〜実技講座〜 粘土で表現する「首像制作」2日目

彫塑用粘土をつかって人体モデルの頭部をつくる講座の2日目です。講師の先生は、いわき市の彫刻家、髙野正晃さんです。


常設展第Ⅲ期(10月15日㈯〜12月25日日)の展示にあわせ、エントランスホール2階に髙野さんの作品
『ずっとここで生きてゆく』2013(平成25)年の展示が始まりました。


今回の講座では、受講者の方々に髙野さん自ら作品について語って頂きました。
震災当時のこと、この作品をつくるきっかけ、そして作品についての思いなど。貴重なお時間を頂きました。


さて、制作です。
講座は全3日間。真ん中の2日目は各々のペースで制作が続きます。

改めてエスキースを描いたり......

かたちを探ったり....

「首から下、鎖骨の所までつくるということは、そこで終わりではなくその先の身体を意識して粘土の際まで力を入れてつくるということ。作品は、そうした空間をつくっていくこと。」と髙野さんから。


視点を変えてみましょう!モデルさんに台から降りてもらって、上からのぞき込みます。

なるほど。顔から肩にかけての凹凸がよくわかります。


こうして、2日目も黙々と充実した時間が流れました。
みなさんの首像もだいぶ形が見えてきました。次回はいよいよ最終回です!完成が楽しみですね。

〜実技講座〜 粘土で表現する「首像制作」1日目

彫塑用粘土をつかって人体モデルの頭部をつくる講座が始まりました。彫塑の基礎からじっくり学べる三週連続(3回)の講座です。
講師の先生は、いわき市の彫刻家、髙野正晃さんです。髙野さんには、2年前の夏、当館展覧会「コレクションクッキング展」に作品を
ご出品頂きました。



講座の第1回目は、モデルさん(福島大学の学生さんにお願いしました)のクロッキーと彫塑の芯棒作り、そして粘土の粗付けです。





講座のはじめに、髙野さんから18歳当時制作された処女作のご紹介にあわせ、彫塑制作への心構えなどをご教授頂きました。



クロッキーは、みんな真剣。髙野さんの「モデルの(骨格や筋肉などの)情報を集める」という言葉を受けてみんな黙々とスケッチブックむかいます。





彫塑制作は、芯棒作りから始まっている!(髙野さん) 長野県上田市出身の彫刻家、石井鶴三の「こだわりの芯棒」を参照しながらの芯棒作り講義です。



しっかりとした芯棒ですね。
次は粘土の粗付けです。







髙野さんは、おひとりおひとり丁寧にご指導くださいます。



ユーモアを交えながらの・・・。



モデルさんを様々な角度からみてつくること。顔から首にかけて、自分で何処かに基準を定める。そこを手がかりに粘土の付け具合を調整する。



髙野さんのアドバイスで、皆さんだんだん形になってきましたね!
次回は、いよいよ作り込みです。週末が楽しみです。

常設展にて鑑賞会!

107()、二本松市立東和小学校の3、4年生73名が来館しました。

美術館に来るのは今回がはじめてという子ども達。まずは美術館ではどのようなものを飾っているのか、そして、美術館でのやくそくごとなどをお話しました。

 

いよいよ鑑賞会。4つのグループに分かれ、それぞれのグループと当館のスタッフが一緒に鑑賞します。

今回取り上げた作品は、マリノ・マリーニ《騎手》、荻生天泉《霊夢》、玉川信一《樹のある風景》、ジョン・スローン《ジェファーソン・マーケットナイト》です。

 
































スタッフと一緒にそれぞれの作品の前に集まり、4、5人の小さな班に分かれて、作品をじっくりみます。

今回は、作品から想像をふくらませて物語を考えました。

「ここに〇〇があるからきっと季節は□□だよ」

「ここにある△はなんだろう?」

・・・作品をじっと見つめながら、なにが描かれているのか、どのような印象なのか、気づいたことなどを話しながら、子ども達は物語をふくらませていきました。

 


それぞれの班で物語が完成すると、今度は発表会。自分たちの班で考えた物語をみんなに紹介します。同じ作品をみていても、班によってできる物語はひとつひとつ異なり、どれも作品を細かいところまでよくみて、自由に物語を考えていました。

 

全てのグループの発表が終わると、今度はスタッフから、作者や作品が生まれた背景などについてお話しました。作品によって、悲しい時代背景があったり、不思議なできごとが画題になっていたりします。作者が作品に込めた想いや、作者がどのような人物だったのか?子ども達は真剣に耳を傾けてくれました。

 

ここで、東和小学校の子ども達に特に注目してほしい作家を紹介。

それは、子ども達が暮らしている東和町出身の画家、荻生天泉です。
第Ⅱ期の常設展示室では、没後60年ということで特集展示をしていました。

東和町生まれの画家だということを紹介すると、子ども達は「えー!」「すごい!」「本当?」「上手!」などと、つぶやいていました。
今回はちょうど来館のタイミングで、子ども達の大先輩である天泉を紹介することができました。常設展示といっても、当館では年に4回展示替えがあるため、いつも同じ作品をみることができるわけではありません。その時、その作品に出会うというのは、巡り合わせともいえるかもしれません。

 

さて、残りの時間は自分の好きな作品を1点選び、物語を考えたりしながら、自由に常設展示室と1階の企画展示室を巡りました。

はじめての美術館。子ども達の心の中にどのような思い出が残ったのでしょうか・・・。

館長講座「みちのくの美-その源流を巡る旅」第3回 岩手編

本日、当館講義室にて、館長講座を開催しました。

青森から福島に至る東北地方の近代美術を中心にご紹介しています。

3回となった今回は「岩手編」。



はじめに、岩手山や北上川、浄土ヶ浜。盛岡さんさ踊りやチャグチャグ馬コ、中尊寺。
さらに岩手で生まれた石川啄木、宮沢賢治らの写真を見ながら、さまざまな視点から岩手県のイメージをふくらませていきました。

では、岩手県で美術の分野ではどのような作家が活躍し、どのような作品が生み出されたのか。
各作家とその作品について画像を映し出しながら紹介しました。


 


近代塑像の礎を築いたといわれる彫刻家、長沼守敬(ながぬま もりよし)。
強烈な色彩と、大胆な筆致による作品で知られる画家、萬鉄五郎 (よろず てつごろう)。
岩手に美術教育を根付かせ、自ら美術館を創設した画家、橋本八百二(はしもと やおじ)。
社会や時代を深く見つめ、詩情溢れる絵を描き続けた画家、松本竣介(まつもと しゅんすけ)。
そして清らかな女性像や、カトリック信仰を題材にした作品で知られる彫刻家の舟越保武(ふなこし やすたけ)。
5名の芸術家たちの魅力についてじっくりと語りました。
ご参加いただいたみなさま、ありがとうございました!

 

次回、「山形編」は、1119()10:3012:00まで開催いたします。

みなさまのご参加をお待ちしております。