福島県立美術館ブログ

創作プログラム「想像のお庭を作ろう」を開催しました

12月11日(日)に当館実習室にて創作プログラム「想像のお庭を作ろう」を開催しました。講師は、美術作家の杉浦藍さんです。

 

今回のプログラムは、事前準備として、参加者に日常生活の中で自分のまわりにあるものを写真に撮ってきてもらいました。それをA4の紙に印刷し、色紙として制作に使っていきます。

 

参加者も杉浦さんもいろんな写真を前にワクワク。「これは何かな?」「ロディだよ!」「これは?」「水滴が付いた麦茶のコップ」など、聞いてみないとなんだかわからない不思議なものから、脂がのったステーキ、タイヤ、レゴなど、ユニークなお気に入りのものがたくさん集まりました。

 

次に、杉浦さんに葉や茎のつくり方のコツを教えてもらいました。

 

見本の想像の植物には葉脈があると思ったら、葉脈に見えていたのは道ばたで見かけたカラスよけネットだったり、穴が開いている葉っぱと思いきやプラスティックのカゴだったり。写真の柄や形、色などを生かして切り取り、貼り付けて立体にしていきます。

 

さあ、好きな色紙と容器を選んで制作開始です。

 

 

杉浦さんは自分のやりたいように自分だけの植物をつくってください!とのことで、自分のペースで制作していきます。

 

 

 

 

撮った写真の模様を生かして、想像力を使って、手を動かして、いろいろな植物ができていきます。

 

 

和気あいあいと活動して、あっという間に制作時間が過ぎました。

 

完成です!作品をみんなで鑑賞しました。

 

どれもおもしろい植物です。それぞれのこだわりを聞くのも楽しい時間です!

 

がんばりました!ダイナミックな植物ができたね。

 

 

受講者の方からです。

 

・手の中でいろんな花や葉ができてきて、楽しかった。頭の中の完成図と違うものができた。

・子どもの想像力はこちらが思いもしないものを作り出すので、とても楽しく過ごせました。

・面白かったです。3歳でも参加できることがわかったのが1番の収穫でした。

 

楽しくて想像力を刺激する制作時間をつくってくださった杉浦さん、ありがとうございました!

 

創作プログラム「鍾馗様の小旗を作ろう」を開催しました

11月20日(日)に当館実習室にて創作プログラム「鍾馗様の小旗を作ろう」を開催しました。今回は、当館にて開催中の企画展示「亜欧堂田善展」の関連ワークショップです。講師は、伝統工芸須賀川絵のぼりの吉野屋六代目大野青峯さんです。

 

まず、大野さんから絵のぼりの成り立ちについてお話がありました。江戸時代に男の子が生まれると、のぼり旗に絵を描きお祝いするようになりました。「須賀川絵のぼり」は白河藩主松平定信の御用絵師亜欧堂田善が、和紙や布地に唐の守り神である鍾馗を描き、庭先に立てたのが始まりで、田善から弟子・安田田騏へ、田騏から吉野屋の初代大野松岳へと継承されて、今に至ります。

 

お話が終わり、制作の開始です。

はじめに、オリジナルの落款を作ります。自分の名前をそれぞれ考えたデザインで型紙に書いていきます。

  

 

型紙から各自がデザインした文字をカッターで切り取っていきます。ここで切り取る際のポイントがあります。型紙の字や図がスポッと抜けないよう、線が曲がるところやぶつかるところは、切り取らないでつなぎとして残すようにします。

   

 

 

落款ができあがったら、鍾馗様の図柄を選びます。

 

左の鍾馗様は不動、真ん中は四方八方に目を配り、右は動きがあるポーズをとっています。大野さんは、左は長男、真ん中は三男、右は次男へののぼり旗としておすすめするそうです。みなさんは、自分の好きな図柄、お孫さんへのおくりものなど、それぞれ選ばれていました。

 

さあ、馬毛のハケを使って顔料をすりこんでいきます。

 

顔料を付けすぎると滲み、逆に足りないとかすみます。加減を調整しながらすりこみます。

 

仕上がりはどうでしょうか?

 

第1段階はこれで完了です。鍾馗様の全体図が小旗に付きました。

 

第2段階は、顔料が付かなかったつなぎの部分(サンプルでは赤い箇所)を、面相筆で描いていきます。

 

細い線が途切れたつなぎ部分は、繊細な筆づかいが求められるので、サンプルと見比べながらみなさん慎重にじっくりと筆を運んでいました。

 

同様に、自作の落款にも顔料をすりこみ、つなぎ部分をうめていきます。

 

 みなさん途切れている部分を丁寧につないで仕上げていきました。

 

最後に、アイロンをして小旗に棒とひもをつけてもらいます。

 

 

完成しました!

 

自分だけのオリジナルの小旗が出来上がりました。

 

受講者の方からです。

 

・こんなに本格的にやるとは思っていなかったのでびっくりです。感動です。

・大変良かったです。孫にプレゼントいたします。

・筆でかくのは難しかったけれど、きれいにできあがってよかったです。

 

 お子さんが小さい時に吉野屋さんにのぼりを作ってもらい、毎年端午の節句にのぼり旗を立てている参加者の方がいらっしゃいました。地元に根付く伝統工芸を体験できる機会をつくってくださった大野さん、アシスタントの安齋さんありがとうございました!

創作プログラム 「ドローイング、ドローイング、ドローイング。」楽しかったです!

創作プログラム

「ドローイング、ドローイング、ドローイング。」

 

講師:美術家・小沢剛氏

日時:11月3日(祝・木)

場所:美術館エントランスホール、庭園

参加者:高校生23名

 

11月3日、秋晴れの気持ちのいい日、美術家の小沢剛先生をお招きし、23名の高校生とともに、ドローイングをテーマにしたワークショップを開催しました。その様子をご紹介しましょう。

 

9時半。開館と共に大きなクラフト紙が敷き詰められたエントランスホールに集合。

さて、これからいったい何が始まるのでしょうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まずは小沢さんが「ドローイング」って何、そしてこれから何をするのかを簡単に説明して下さいました。「ドローイング」とは画材を手にして紙の上で腕を動かす、その痕跡のこと。今日は二つの方法でドローイングをしていきます。

 

その前に、緊張をほぐすアイスブレイク。みんなで常設展示室に向かいました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それぞれの展示室で、「自分だったらどの絵が欲しい?」という小沢さんの問いに10秒で回答。絵の前で、どこが好き、どこが気になったかを発表しながら、少しずつ気持ちをほぐしていきました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最後の展示室には小沢さんの「ベジタブル・ウェポン」シリーズ8点が展示されています。若い女性が野菜の銃を構えた不思議な写真を前に、どのように作品が制作されたのか、そこに込められた小沢さんの想いをお聞きしました。

 

鑑賞が終わったところで、エントランスホールに再集合。

いよいよドローイングに取りかかります。最初は約2メートル四方のクラフト紙に墨でドローイング。しかも音楽に耳を傾けながらの描画です。

でも、いきなり大きな紙に描くのは大変。まず小さな紙でエクセサイズです。小沢さんがのこぎりを叩いたり、縄跳びをぶんぶんとまわしたりして音を出し、それを聞きながらA3の画用紙にドローイングをして墨の感じをつかみました。

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さあ、本番です。15分程度のオーケストラの演奏を聴きながらクラフト紙にドローイングをしていきました。演奏が終わったところで、一旦手を止め、それぞれの作品について参加者の話を聞きながら小沢さんが丁寧に講評。そして今聞いた音楽が、クラウディオ・アバド指揮ベルリンフィルの演奏によるチャイコフスキーの「1812年」という曲で、1812年のフランス・ナポレオン軍のロシア進軍を撃退するロシア軍の様子を表現したものであることが紹介されました。しかし今年2月のロシアのウクライナ進攻後、演奏するのはふさわしくないという意見もあるいわくつきの曲だそうです。芸術が政治に利用されることがある、そして社会状況によって作品の解釈が大きく変化することを知りました。

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次に、自衛隊による同じ曲の演奏が流れました。実際の大砲の音が加わり、印象がかなり異なります。

午前中は二つの演奏をバックグラウンドに、筆に一杯墨を含ませて滲みを用いて描いたり、ドリッピングしたり、あるいは細い筆で線を描いたり、思い思いに耳と手と体を使って大きな紙に描きました。

 

 

 

 

 

 

さて、午後は一転、美術館の庭でパノラマドローイングです。最初は4人ずつ、次に8人ずつ、位置を換えながらグループで円を作り、A4の大きさの画用紙に鉛筆で、それぞれが目の前に見えている風景を描いていきます。それらを円形につなげればパノラマになるのです。

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最後は、美術館正面の彫刻、井上武吉作《my sky hole 82-2》の周りに集まって全員で大きな一つの円を作り、庭園、美術館、図書館など周囲の風景をスケッチしました。

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それらを一つのパノラマ画にする作業は美術館スタッフの担当。別室でパソコン作業により個々の画像を繋げて1枚の長い紙にプリントアウトし、パノラマに仕上げていきます。

 

その間、エントランスホールで高校生たちはアートブックの制作に取り掛かりました。午前中、自分が描いた墨ドローイングから好きなところをA3の大きさにトリミングし、切り取ります。8枚切り取り、ストーリーを思い描き、構成を考えて順番を決めていきました。そして最初のエクセサイズで描いたA3のドローイングを表紙にして、糊で貼り合わせていけば、1冊のアートブックが完成です。

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大きな紙に描いたものを、小さくトリミングしていくと、イメージの印象が大きく変わるものです。余白を大きく入れてみたり、ある部分にフォーカスしてみると不思議に物語が見えてくることがあります。

それぞれのアートブックができたところで、お互いの作品を鑑賞。自分は誰のどこのページが気に入ったか、好きか、いいところを見つけて発表し、作品を講評しあいました。

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そうこうしている間に、パノラマドローイングが出来上がってきました。最後にみんなで作った一つの風景を観賞。

観察、接続、思考、感情、偶然、即興、鉛筆、墨汁、小さな画用紙、身体サイズの紙、そして編集。今日体験したいろいろなドローイングのやり方、そして楽しみ方を振り返りました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

盛りだくさんの一日。スタッフも、高校生たちのパワーに圧倒された熱い一日でした。

 

それぞれの墨ドローイングを1枚ずつ使って作った共同アートブック、パノラマドローイングは、現在エントランスホールで展示しています。是非ご覧ください。

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

実は震災後の2012年、小沢さんは同じエントランスホールで《あなたが誰かを好きなように、誰もが誰かを好き》(通称ふとん山)を展示して下さいました。多くの子供たちが遊びに来てくれたのですが、今回の参加者の中にも二人いました。感無量でした。今回のワークショップも参加者の記憶のどこかにとどまり、10年後、20年度、何かのきっかけで思い起こしてもらえれば嬉しいです。小沢さん、本当に有難うございました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

芸術鑑賞講座を開催しました

10月8日(土)、早川博明氏(前当館館長)による「芸術鑑賞講座ー名画との対話」第3回目を開催しました。

 

今回ご紹介した作家は「レンブラント」です。

17世紀オランダ絵画を代表する巨匠のひとりで、作品では集団肖像画を描いた「夜警」で特に知られています。

レンブラントは、自画像を生涯にわたって描き続けたことでも有名です。
彼の肖像画や自画像からなかなか目が離せないのは、描写の技術はさることながら、モデルがこちらに何か訴えかけているように思えるほど、人物の内面性と存在感をリアルに描き出しているからでしょう。

 

早川さんのご解説を受けながら、レンブラントが残した数々の名作をみなさんでじっくり鑑賞しました。
  

ご参加いただいたみなさま、早川さん、ありがとうございました!

 

今年度の鑑賞講座は、以下の次回で最終回になります。

第4回目(最終回)
日時:12月10日(土) 10:30~12:00
テーマ:「バロックの巨匠たち(4)-フェルメール」
会場:当館講堂

受講申込みは不要ですので、開催日に直接講堂までご来場ください(聴講無料)。

 

宮城県美術館でも11/27まで「フェルメールと17世紀オランダ絵画展」が開催していますね。
フェルメールについてもっと詳しく知りたい!という方は、12月の本講座にもぜひご参加になってみてください。

 

ご来場をお待ちしております!

「アートなおはなしかい2022」を開催しました

9月23日(金・祝)、県立図書館さんと「アートなおはなしかい2022」を開催しました。

今回は、当館で開催中の企画展「生誕100年朝倉摂展」の関連イベントでもありました。

 

はじめに図書館で絵本をよみきかせてもらいました。美術館での作品鑑賞に関連する絵本を選んでいただきました。

 

1冊目は、『アンジェリーナ はじめてのステージ』(キャサリン・ホラバード 著/ヘレン・クレイグ 絵/おかだよしえ 訳)です。バレエ好きのアンジェリーナとヘンリーが舞台に出演するお話です。2冊目は、『あいうえおうた』(谷川俊太郎 文/降矢なな 絵)です。谷川さんの生み出すことばがリズミカルで耳に心地のよい絵本です。

 

それから、美術館へ移動して「生誕100年 朝倉 摂展」を鑑賞しました。彫刻家・朝倉文夫さんの娘の朝倉摂さんの回顧展です。絵画、舞台、絵本と多彩に活躍した女性アーティストです。

 

まず鑑賞したのは、珠玉の挿絵が展示されている絵本のパートにある「てまりのうた」です。

「てまりのうた」は、うさぎ、まり、みかん、雨など絵本に出てくる題材が美しく描かれた挿絵で構成されています。ここでは「うさぎ」の作品を観て、うさぎが画面から前足やしっぽがはみ出しているくらい大きく描かれていることに気付きました。

 

次に「てんぐのかくれみの」を鑑賞しました。

こちらの作品は、「かくれみの」の部分が光沢あるフィルムでコラージュされています。「この絵の中で、1カ所だけ違う方法でつくられているのはどこかな?」と問いかけると、「もくもくしたけむりの描き方!」「天狗と女の子の着物の赤が違う!」「かくれみのが光っている!」など、子どもたちはいろいろな視点から答えを出してくれました。子どもたちの豊かな感性に拍手です。

 

そのあとは、お楽しみのよみきかせタイムです。展示室内の特設の絵本コーナーで読んでいただきました。

実際の作品を観てすぐに『てんぐのかくれみの』(岡本良雄 案/朝倉摂 画)を読んでもらいました。彦一が天狗の子どもから透明人間になれるかくれみのをだまし取って、いたずらをしていく展開にハラハラ。みんな集中してお話に聞き入っていました。

 

そして、原画が展示されている本を紹介していただきました。

『てまりのうた』(与田準一 さく/朝倉摂 え)、『三月ひなのつき』(石井桃子 さく/朝倉摂 え)、『スイッチョねこ』(朝倉摂 絵/大佛次郎 文)の3冊です。『スイッチョねこ』は、ねこが虫を食べちゃうと聞いてみんなびっくり!

 

本の紹介が終わると再び作品鑑賞へ。舞台美術のパートに移動しました。舞台美術家としても活躍された摂さんが手がけた舞台模型「ハムレット」を鑑賞しました。

図書館でよみきかせてもらった『アンジェリーナ はじめてのステージ』を参考に、模型の中でアンジェリーナやヘンリーがどのようにステージに立つか想像しました。

 

そして、摂さんと詩人・谷川俊太郎さん、グラフィックデザイナー・粟津潔さんで合作した「衝立」を鑑賞しました。

「この絵からどんな音がするかな?」と子どもたちに聞いてみると・・・。目玉がびっしり描かれたワンピースからはギョロギョロ、包丁からザクザク、瓶からリンリン、電球からピカピカ、釘からトントン、虫からニョロニョロ、カサカサ、目玉からパチパチなどなど。絵からいろいろな音が聴こえてきたようです。

 

作品鑑賞と絵本のよみきかせの後は、美術館の実習室で工作の時間です。今回は、《スイッチョねこ》の作品から、ガチャガチャスタンプを使ってポストカードをつくりました。

 

まず、スポンジを輪ゴムと毛糸でまとめてガチャ玉の中に入れてスタンプを作ります。

 

子どもたちの小さな手でひとつにまとめるのは大変そうでしたが、みんな頑張りました。

 

次に、ガチャガチャスタンプとアクリル絵の具を使って、美術館スタッフお手製のポストカードにスタンプします!

 

みんなポンポンポンとスタンプを押して、素敵なポストカードが出来上がりました!

 

本好きな子どもたちが集まったので、貸し出し可能な摂さんの絵本を借りに、図書館へ戻っていきました。きっと絵本を読んだら、みんなで一緒に鑑賞した摂さんの作品を思い出すね!ガチャガチャスタンプも再利用できるので、また家で工作してみてね!

 

ご参加くださったみなさま、図書館スタッフのみなさま、ありがとうございました!

「福島ねこづくし展」ワークショップ手作り猫絵馬が信夫山で再展示!

7/23~8/21まで開催していた「福島ねこづくし展」のことで嬉しいお知らせが!

 

館内ホールでは、参加自由のフリーワークショップ「手作り猫絵馬を作ろう」コーナーで、多くのお客様にオリジナルの猫絵馬を作成いただきました。


展覧会会期中のワークショップの様子

その場でホールに掲示された参加者様の猫絵馬は約900枚にのぼりましたが、それらが昨日9月28日(水)から信夫山にて再展示されています!

展覧会でもご協力いただいた特定非営利活動法人ストリートふくしま様のご厚意で実現しました。

  
信夫山ねこ稲荷神社                                    ねこ稲荷神社のすぐ隣にある古民家西坂家

展示されている場所は、山腹の信夫山ねこ稲荷神社に隣接する古民家西坂家です。

ゆっくりできるとても素敵な雰囲気の古民家カフェで、年内は展示していただけるので、描かれた方々もそうでない方もぜひ足をお運びください!

  

  

古民家西坂家は開館時間10:00~16:00。木曜日休館、休憩と手作り絵馬ご観覧は無料です。

 

信夫山猫稲荷と古民家西坂家の詳細や、アクセス等については、以下の信夫山HPからご確認ください。
https://www.shinobuyama.com/kominka-nekoinari

 

 

「みんな大好き!福島ねこづくし展」閉幕しました。

7月23日(土)から開催した特集展示「みんな大好き!福島ねこづくし展」は、先週末8月21日(日)で閉幕しました。

一ヶ月弱の会期だったので行けなかったという方もいらっしゃると思います。
以下、展覧会内容をふりかえります!

 

展示は2部構成で、第1部では猫がモチーフとなっている当館の収蔵品を31点展示しました。
描き方と絵の内容に注目し、3つのパートに分けてご紹介。
今回は特別に、第2部の猫絵馬から抜け出た「カワオ」「マタサブロウ」「マチコ」さんたちが展覧会ガイドを務め、作品の見どころなどをわかりやすく紹介してくれました。

 

第1部の1パートめは「キマッてる!モデル猫たち」と題して、絵のモデルとして堂々と猫がポーズをきめている作品を展示。
版画家・斎藤清の猫作品が多いですが、まとめて並べて見ると、構図を考える作家のモダンな感覚がよく分かります。
お客様のアンケートで「斎藤清に対するイメージが変わった」というお声もいただきました。
福島を代表する彫刻家・佐藤玄々の作品は、猫の体の柔らかさや丸みの表現が見事です。

  

 

2パートめのテーマは「猫かわいい。小さきものたち」。
動物の小さくて尊い命、猫の可愛らしさに眼差しを向けた作品が並びます。
寝ている子猫を描いた渡部菊二のデッサンや、飼い猫を小さく登場させている山口薫の水彩画を見ていると、作家の温かい愛情が伝わってきます。

   

 

3パートめのテーマは「一緒に暮らそう。生活のなかの猫」。人間の暮らしに溶け込んでいる猫の様子を描いた作品を展示しました。
出品している酒井三良、室井東志生、春日部たすくは全員福島県出身の作家です。
室井東志生は、歌舞伎役者や落語家など著名人の肖像画を多数手がけた画家で、ここでは会津若松出身の舞踏家・ダンサーである長嶺ヤス子氏と猫たちを一緒に描いています。
春日部たすくの水彩画はサイズが大きく、自宅で飼っていた猫たちにまつわるエピソードや想いをユニークな視点で絵画化しています。
猫たちをとても愛していたことが作品から感じ取られます。

   

 

 

続いての第二部では、川俣町猫稲荷神社に奉納された猫絵馬を紹介しました。
絵馬の出品総数は347点。本来は650枚以上ありますが、そこからピックアップしての出品です。それにしても大ボリューム!
養蚕が盛んな川俣では、鼠を駆除する猫を「猫神さま」として祀る民間信仰が生まれ、主に明治から大正期にかけて養蚕の成功を祈願する猫絵馬が庶民たちによって作られました。
猫神信仰は宮城県や群馬県にもありますが、当時の絵馬が着色ありで状態よくここまで大量に残されているのは、川俣町だけだそう。

いかにも絵師が描いたような名作もあれば、庶民がとても頑張って描いたからこそ出てくる独特の画力による作品など、どれも個性的で魅力に満ちています。

    

  

 

 

7月31(日)には、猫神信仰を研究されている村田町歴史みらい館館長の石黒伸一朗氏によるスライドトークを行いました。
川俣町の猫絵馬はもちろん、そのほか福島に密かにある猫の石像たちについてもお話ししてくださり、実際に行って見てみたい!という好奇心がかなりくすぐられるご講演でした。

 

福島は「猫啼」や「猫魔ヶ岳」など猫がつく地名がなぜか多く、知られざる猫大国だったのかもしれません。

実は当館すぐ裏にそびえる信夫山にも猫稲荷神社が存在して、現在は愛猫の健康を祈願する神社として人気を集めています。

 

また館内ホールでは、誰でもその場で参加できるフリーワークショップ「猫絵馬作り体験コーナー」を設けました。
みなさんの手作り猫絵馬が掲示用の壁に連日増えていき、描く人・絵馬を見る人でとても賑わいをみせていました。
こちらの予想を遙かに超えてみなさん作っていただけたので、ただただ感謝です。

    

 

おなじみになってきた展覧会フォトスポットは今回も登場!絵馬の猫たち、大活躍です。

 

不思議と魅力に満ちた猫神信仰と川俣町に残る猫絵馬、当館の猫コレクション、来館者による現代の新たな猫絵馬と、まさに「ねこづくし」な特集展示でした。

ご来館いただいたみなさま、ありがとうございました!

下記の当館Youtubeチャンネルでも本展の様子を紹介しているので、ぜひこちらもご覧ください。

https://youtu.be/fjR-BaQCXUE

 

芸術鑑賞講座を開催しました

8月13日(土)、当館前館長・早川博明氏による「芸術鑑賞講座ー名画との対話」第2回目を開催しました。

 

今回ご紹介した作家は、ベラスケスです。

17世紀バロック期にスペインで宮廷画家として活躍した人物で、庶民から王侯貴族まで幅広い人々をモデルに描いた肖像画や、宗教画など数多くの名作を生み出しました。
後世の芸術家にも多大な影響とインスピレーションを今もなお与え続けている、西洋美術史の偉大な巨匠の一人です。

構図の斬新さや、大雑把な筆遣いながらも離れて見るときらびやかに見えるテクニックなど、ベラスケスの凄さを作品画像を通して鑑賞しました。

モデルとして描かれた王族の運命はその後明るくはなかったかもしれませんが、絵の中で生き生きと輝いている姿を見ると、ベラスケスが宮廷画家として王族にとても大切にされていたことが納得できます。

 

  

ご参加いただいたみなさま、早川さん、ありがとうございました!

 

次回第3回目の講座は、
日時:10月8日(土) 10:30~12:00
テーマ:「バロックの巨匠たち(3)-レンブラント」
です。

会場は講堂、受講申込みは不要ですので、開催日に直接当館講堂までご来場ください(聴講無料)。

 

次回以降の予定については下記のページに載せております。
芸術鑑賞講座

 

ご来場を心よりお待ちしております。

創作プログラム「うるしをみがいて作るピカピカ猫のブローチ」を開催しました

7月30日(土)に当館実習室にて創作プログラム「うるしをみがいて作るピカピカ猫のブローチを午前と午後の部で開催しました。今回は、当館にて開催中の特集展示「みんな大好き!福島ねこづくし展」の関連ワークショップです。講師は、漆芸家の平井岳さんと綾子さんです。

 

岳さんは、制作に加えて漆掻きの仕事もしています。国産の漆が貴重で手に入りにくくなっていることから、自分で漆を採取するようになったそうです。映像を見ながら漆掻きの現場について解説していただきました。

 

 

実際に使っている漆掻きの道具をみせてもらいました。

 

数日前に山に入って漆を掻いた岳さんの道具です。刃の形状が独特で、掻く道具はずっと昔から変わっていない伝統的なものです。漆掻きに携わっている人は岳さんを含めて福島県ではお二方だけ。自然と向き合いながら、木から樹液を1滴1滴採取するという話をみなさん興味深く聞きました。

 

漆のお話を聞いた後は、猫のブローチをつくっていきます。まずは、綾子さんの実演です。

 

 

作業工程がわかったところで、制作開始です。岳さん、綾子さんがつくった漆が塗られた猫型のプレートをみがいていきます。塗ってある色、塗り方もランダムなので、どんな色や模様がでてくるかはみがいてみてのお楽しみです!

 

 

みがくのに3種類の研磨剤を使います。1番目に使うペースト状の研磨剤、2番目、3番目のクリーム状の研磨材です。1番目はこの中では粒子が粗いですが、粗いといっても目には見えない粒子の大きさです。2番目、3番目に進むにつれて粒子が細かくなっていきます。粒子を細かくしていくことでツヤを出していきます。また、どのくらい模様を出すかはそれぞれの好みで、銀色の表面を残してもOKです。いい感じになったと思えば、次の研磨剤に進みます。

 

 

細かい所は綿棒を使ってみがいていきます。

 

 

ヤスリも使います。日常生活では使うことのない目がとても細かいヤスリで、光沢を出していきます。銀色部分をこするとメタリック感が出ます。

 

 

3番目の研磨剤の段階にいっても、みがきが足りないと思ったら、1、2番目の研磨剤にもどってみがいても大丈夫です。いったりきたりしながら自分好みのピカピカ具合までみがいていきます。

 

 

 

ブローチの表面をエタノールで拭き取ります。岳さんにピンを付けてもらって完成です!

 

 

岳さんと綾子さんから「漆は年月が経つと強くて固くなる不思議な塗料」「漆は経年で色が明るくなり発色がよくなるので、猫ブローチは使ううちに明るくなっていきます」「お手入れはたまに指でみがいてみてください」と教えていただきました。

 

最後に出来上がったばかりの「ピカピカ猫ブローチ」を付けて、特集展示「みんな大好き!福島ねこづくし展」を鑑賞しました。今回は、制作も鑑賞も楽しむプログラムでした。

 

受講者の声です。

 

・うるしが身近に感じられるワークショップでした。

・1人1人ちがう模様でかわいかったです。

・うるしのことがわかってよかったです。国産うるしの伝統を感じました。

・磨くのに没頭できたので、気持ちもすっきりしました。

 

暑い中参加してくださったみなさまありがとうございました!漆に親しむ機会を提供してくださった岳さん、綾子さん、ありがとうございました!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

令和4年度 第Ⅱ期コレクション展

当館では、7月16日(土)から10月16日(日)まで、2階常設展示室にて「第Ⅱ期コレクション展示」を開催しております。
今回はその展示の様子をご紹介します。

【展示室A】

  
入って最初のコーナーでは、『特集展示 みんな大好き!福島ねこづくし展』(7月23日~8月21日)に関連して、「動物づくし」を展示しています。
この展示は当館の収蔵作品から、佐藤玄々(朝山)や斎藤清などの、動物をモチーフにした愛らしい彫刻や絵画の数々を紹介しています。


その奥では、「関根正二と大正期の洋画」を展示しています。
関根正二は福島県白河市に生まれ、1915年には二科展に初入選するも、1919年に20歳という若さでこの世を去った夭逝の画家です。
ここでは関根正二を始めとし、岸田劉生や石井柏亭、飛田昭喬など、大正期から昭和期にかけて活躍した画家たちの油彩画を展示しています。

【展示室B】

展示室Bでは、『生誕100年 朝倉摂展』(9月3日~10月16日)に関連して、「戦後社会とリアリズム」の展示をおこなっています。


戦後間もない時期、日本では多くの社会問題が噴出していました。
そうじた時代の中で美術家たちは、1940年代に起こったリアリズム論争を出発点とし、単なる自然の再現に留まらない「現実」の描写を社会の中に求めていきました。
安部公房は社会事象を記録して伝えるルポルタージュの手法を唱え、それに触発された高山良策など前衛美術会の画家たちはシュルレアリスムに通じた手法で政治や社会によって歪曲された心象を描き出しました。
また、画家が社会に身を置いて切実な実感のもとに対象を描き出すべきだと主張した美術評論家の針生一郎に影響を受け、朝倉摂や佐藤忠良、中谷泰、吉井忠らは研究会を立ち上げ、漁村や工場に取材して具象表現による絵画を追究しました。
とりわけ福島県いわきの常磐炭田には多くの美術家たちが訪れ、上記に挙げた人物たちの他、宮崎進や伊藤和子らがズリ山や炭坑長屋の風景を描いています。
さらに、こうした社会にまなざしを向けたリアリズムの美術は、洋画のみならず、横山操や渡辺学といった日本画家たちにも波及しています。

【展示室C】

展示室Cでは、アメリカの美術とヨーロッパの美術を展示しています。

ジョン・スローンや清水登之、野田英夫といったアメリカン・シーンの画家たちの他、アンドリュー・ワイエス《農場にて》、ベン・シャーンのポスターや《ラッキードラゴン》など、アメリカのリアリズム絵画を展示しています。
また、ヨーロッパの美術ではカミーユ・コローの作品を展示しています。

【展示室D】

最後の部屋では、「斎藤清の版画」「現代の版画」を展示しています。

斎藤清の版画では「霊峰」シリーズを中心に1980年代の作品を公開しています。
その向かい側で、加納光於と百瀬寿による、主に1980年代から1990年代にかけての版画作品を展示しています。
構成的な手法を凝らした斎藤清後年の作品と、色彩による実験を試みている加納光於と百瀬寿の作品をぜひ見比べてみてください。


「第Ⅱ期コレクション展示」は10月16日(日)までとなっております。

一般・大学生 280円(団体220円)
高校生以下 無料

企画展と関連した展示が目白押しですので、ご来館の際には併せてご覧ください。

ぜひお誘いあわせの上、ご来館をお待ちしております。