福島県立美術館ブログ

「横尾忠則ポスター展」ギャラリートーク開催

5月18日、土曜日、午後2時から「横尾忠則ポスター展」のギャラリートークが行われました。今回は久慈伸一学芸員が担当です。

20名くらいの方々が展示室入り口にお集まり下さいました。



第1室の初期作品から開始です。
京都勤労者音楽協議会に依頼されたコンサートポスターの数々は、やはりはずせません。
久慈が選んだのは坂本スミ子と雪村いづみのポスター、中尾ミエと東京キューバンボーイズのポスターなど。
懐かしい名前だと思う人はこのポスターを見て「にやり」とするでしょうし、初めて見る人は「いったいどんな人なのだろう」と興味をそそられるでしょう。
いずれにせよ、見る人の目を必ず留めさせるポスターであることに間違いはありません。



状況劇場や天井桟敷のポスターのコーナー。
《毛皮のマリー》のポスターの中に小さく書き込まれた文章に注目します。
「愛しの我がピエール・ボナール様 貴殿の御作品を犯した私の姦通の罪をお許し下さいませ 横尾忠子」。
イメージの借用を確信犯としてやってのけ、それをさらにブラックなユーモアで包んでしまうやり方は、ある意味演劇的といえるのではないか、と久慈学芸員。作品の細部に注目です!



第2室、1970年代のスピリチュアルな作品の背景には、ベトナム戦争時代のアメリカのヒッピー文化、あるいはビートルズのインドへの傾倒、ノストラダムスの大予言、日本沈没、超能力の流行などがあったことが紹介されました。

そして第3室の1980年代に入ったところで、地震!
みなさん一瞬、固まりました。あとから聞いたところでは、福島市内は震度4。久しぶりに少し大きな揺れでしたが、さすが福島の方々は慣れています。早々にトークは再開されました。
資生堂オイデルミンのポスターや、箱根駅伝のポスターなどを紹介しながら、最終展示室へ。



2010年に国立国際美術館で開催された「横尾忠則全ポスター展」のポスターを紹介。
唇や目、眉がピンクに塗り残された真っ黒い女性のプロフィールという、度肝を抜くようなイメージの作り方には驚かされます。



2012年に神戸市に開館した横尾忠則現代美術館のポスターに描かれる機関車のイメージ。横尾さんは機関車を随分使ってきていますが、もしかしたらこれは自画像的な意味があるのではないかと、久慈学芸員。

横尾さんの作品にはいろいろな解釈が可能なのでしょう。そしてつい見る私たちも解釈したくなってしまいます。必ずしもそれがうまくわけではありませんが、楽しかったりします。
細部に注目です。細かいところをよく見ると、いろいろな発見が必ずあります。その時代を知っていてもいなくても大丈夫。是非、皆さんも作品の前で妄想を膨らませて下さい。

途中でハプニングもありましたが、楽しくギャラリートークは終了いたしました。
次回は6月8日[土]午後2時です。

A.Y.

横尾忠則ポスター展、明日ギャラリートークです。

横尾忠則ポスター展も会期半ばとなりました。早いですね。

先週、詩人の和合亮一さん、グラフィック・デザイナーの中山千尋さんによるワークショップを行いましたが、引き続き明日は、当館学芸員・久慈伸一によるギャラリートークを開催いたします。

会場をまわりながら、作品にまつわるお話しをしていきます。作品を巡ってさまざまな角度から語られる言葉は、時に鑑賞の邪魔になることもありますが、新たな発見につながることもあります。面白さを引き出してくれることもあります。すでにご覧になった方にも、これから展覧会を楽しもうという方にも、鑑賞のガイドとなるような楽しいトークができればと、私たちも努力をしております。なかなか難しいのですが・・・。

5月18日[土]14:00~ チケットをご持参の上、企画展示室入り口にお集まり下さい。
ここです↓


皆様のご来館を心からお待ちしております。

A.Y.

ワークショップ「私自身のための広告ポスターを作ろう!」 5月11日

先週土曜日、5月11日に「横尾忠則ポスター展」関連ワークショップの二日目が開催されました。

4月27日の初日は、詩人の和合亮一さんとともに自分自身と向き合って言葉を探しました。その後二週間の間に、それぞれイメージを膨らませ、コラージュの技法でポスターを作るための材料集めをしてもらいました。さて、いよいよ制作です。

二日目の講師は、福島市でグラフィック・デザイナーの仕事をしていらっしゃる中山千尋さん。グラフィック・デザインには「クライアント」が必ず存在します。実際は、そのクライアントの意向や予算に合わせて仕事をしなくてはならない、と作例を見ながらお話しして下さいました。でも今回はクライアントも自分、そしてデザイナーも自分です。自分の表現したいものを、クライアントの目とデザイナーの目との二方向から見つめるという作業が必要だったといえるでしょう。



作業が始まると、皆さん真剣そのもの。しーんと静かな室内で、紙がこすれる音やハサミの音が響きました。



「他の人の作品も見てみましょう。」
「横尾展をもう一度見に行ってもいいですよ。」
時々頭の中を解きほぐしながら、制作が続きました。

三時過ぎ、和合さんが駆けつけて下さって、講評会です。



実は完成できなかった方もいらっしゃいましたが、それぞれがプレゼンテーションをし、中山さん、和合さんの講評をいただきました。どれもがそれぞれに自分と向き合って見つけた形、言葉、そしてポスターだということがよくわかりました。



未完成だった方は、一週間の間に完成品を提出していただき、最後には横尾さんから講評をいただくことになっています。そしてエントランスホールに展示もいたします。どうぞご期待下さい。

講師をして下さいました和合亮一さん、中山千尋さん、有り難うございました。
そして横尾先生、どうぞよろしくお願いいたします。

A.Y.

ワークショップ「私自身のための広告ポスターをつくろう」 4月27日

先週土曜日、4月27日に「横尾忠則ポスター展」ワークショップが開催されました。

詩人の和合亮一さん、グラフィック・デザイナーの中山千尋さんと一緒に、2日かけて「私自身のための広告ポスター」を作ります。ちょっと奇妙なタイトルのワークショップですね。

実は展覧会と大いに関係があるのです。横尾さん29歳の時、「ペルソナ展」というデザイン展に出品します。参加者は田中一光、福田繁雄、勝井三雄、宇野亜喜良、和田誠、永井一正、粟津潔、細田巌、木村恒久、片山利之と横尾さんの11人。まだ若き横尾さんにとって、蒼々たるグラフィック・デザイナーとともに出品できるまたとないチャンス。意気込んで自主制作にとりかかりました。

その時制作したのが、「誰もが考えながら誰もがやらなかった自分自身のための広告ポスター」(『横尾忠則自伝』より)でした。



旭を背景に、薔薇を手にした横尾さんが首つりをしています。そこに英文で「ぼくは29歳でついに頂点に達し、首を吊って死ぬ」という死亡宣言のコピーを書き加えました。
「このポスターには過去の自分を埋葬すると同時に未来の自分を再生させるという願いと意味があったが、同時にモダニズム・デザインへの決別宣言でもあった。」(『横尾忠則自伝』)と、横尾さんは書いています。

この作品はもちろん展覧会に出品されています。

私たちも「自分自身ための広告ポスター」に挑戦しようという、考えてみれば無謀なワークショップ。しかし事前に和合さん、中山さんと打ち合わせをましたが、なかなか奥が深い面白いテーマです。

初日は和合さんとことばのワークショップ。

まず、和合さんは横尾さんの作品との出会いからお話しを始められました。
高校の国語の先生になりたての20代。何か表現をしたい、でもどうしたらいいのかわからない、そんな悶々とした日々を送っていたときに横尾さんの画集と出会ったそうです。そして「死後の世界」を描くということからヒントを得ます。自分は一度死んでしまった。死の側から世界を見たらどうなるのか。



生きることと死ぬこと。創作の原点はそこにあるのではないかとおっしゃっていたのが印象的でした。

さて、では実際にどのように言葉を組み上げていったらいいのでしょう。
二つのキーワードがありました。一つは「無意識」。そしてもう一つが「コラージュ」。無意識の中から拾い上げてきた言葉を、ぶつけ、つなげ、つづける。そうしてひとつながりの文章に作り上げていく。







ワークシートを書きながら、横尾展で作品を見たときの言葉を書きとめながら、最後にそれぞれがいくつかのコピー(らしきもの)を作り、発表しました。かなり斬新なものもありましたよ。



ポスターに作り上げるのは二週間後の5月11日。ポスターも「コラージュ」の手法を使い、雑誌の切り抜きや写真やさまざまなイメージを貼り合わせて作っていきます。そのための素材集めが宿題となります。

最後に和合さんと中山さんからのアドヴァイス。言葉がイメージを規定することもあるけれど、イメージが言葉を引き出すこともある。素材集めをする中で言葉が変化することもあっていいのです。

さてさて、参加者のみなさん、どのようにイメージを膨らませていらっしゃるでしょう。楽しみにしています!

A.Y.

横尾忠則『少年マガジン』です

前回のブログに、横尾忠則ポスター展、オープニング対談のことをご報告しました。
そこで、横尾さんが1970年に描かれた『少年マガジン』9冊の表紙について触れたところ、早速横尾さんのツイッターですべての画像をアップして下さっています。
是非ご覧下さい!

http://www.tadanoriyokoo.com/vision/index.html

A.Y.

横尾忠則ポスター展オープン



今朝の美術館前庭。なんと雪が!昨日でなくて本当によかったです。

昨日、「横尾忠則ポスター展」がオープンしました!
この展覧会は実は3年前から企画していましたが、東日本大震災後、一時延期となり、今年ようやく実現しました。待ちに待ったオープンです。


《横尾忠則ポスター展(福島県立美術館)》2013年 ©TADANORI YOKOO

横尾忠則さんといえば、戦後日本を代表するグラフィック・デザイナーであり、美術家であり、作家でもあり、いろいろな顔を持つマルチな才人です。本展はポスターに焦点を絞り、約400点の作品をご紹介します。

横尾さんは1936年兵庫県生まれ。この6月で77歳とは思えぬエネルギッシュな創作活動を展開されています。「隠居宣言」をしたとはいえ、実は隠居とは忙しいのだそうです。自分のやりたいことをやるのが隠居。やりたいことがまだまだたくさんある、ポジティブな隠居生活を送っていらっしゃるとのこと。(すごい!)

そんなお話しが聞かれたのは、昨日行われたオープニング対談の中でした。
日本美術史家の山下裕二さんとの1時間半にわたる対談は、終始リラックスした雰囲気に包まれ、250席満席になった会場の笑いも絶えませんでした。


横尾忠則氏


山下裕二氏

「話しはどこに飛ぶかわからないよ。」と事前にお二人に言われていました。しかし「飛ぶ」というより、ほぼ『少年マガジン』の話しで終わりました。1970年に横尾さんは『少年マガジン』の表紙を9冊描いていらっしゃいます。その中の1冊は「横尾忠則特集」。実は山下さんがこの道に入られたのは、これら『少年マガジン』と出会ったからと言っても言い過ぎじゃない、とまでおっしゃる作品。それらをご紹介いただきながら、当時の横尾さんのグラフィックの仕事に大きな影響を与えた、様々な人たちとの交流が引き出されていきました。
唐十郎、寺山修司、澁澤龍彦、三島由紀夫や大島渚、ジョン・レノンやミック・ジャガー、そして当時の編集者たち。それから70年の大阪万博の話しも。



(ぶっ飛んでる)『少年マガジン』の表紙にしろ、中味にしろ、そういう時代の文化が背景にあったんだということがよくわかりました。残念ながら『少年マガジン』は本展に出品されていませんが、60年代のポスターはまさにこの中から生み出されたものなのです。

最後に横尾さんが話された印象深いひとこと。「いろいろなことがバラバラに存在しているみたいだけど、結局は根っこにある一つに繋がってるんだよね。」(う~む、なるほど。)

横尾さん、そして面白いお話しを引き出して下さった山下さん、本当に有り難うございました。

展覧会は6月16日まで開催。是非皆様、お出かけいただき、横尾ワールドをご堪能下さい。

(A.Y.)

わんぱくミュージアムのご案内(主に小学生対象)



常設展示室の彫刻作品:保田春彦「季節の残像」シリーズなどを鑑賞しながら、木片を組み合わせ「不思議な形の家」をつくります。丸や四角、三角など、様々な形の木片に色を付けたり、線を描きながら組み合わせ、自分が住んでみたい家を想像し、制作します。

(くに)

平成24年度 学校連携共同ワークショップのご紹介。

本日は、現在エントランスホールにて展示開催しております、当館学校連携事業ワークショップ作品について、その活動内容をご紹介いたします。


当館の学校連携事業は、2003年より実施しております。現在活躍中のアーティストを講師として招き、各学校を会場に児童・生徒と交流しながら、創作活動を中心とした出張ワークショップを展開する事業です。
プロの美術家と交流する貴重な経験と通常の授業では取り上げられていない題材、素材、技法を体験できる機会として県下小、中、高校へ公募し開催しております。
 
今年度は、講師に現代美術家の三瀬夏之介先生をお招きし、三春町立三春中学校、福島県立福島南高等学校、福島県立福島工業高校を会場に開催いたしました。



今回のワークショップは、三瀬夏之介先生の制作の素材でもある水墨の技法を用いて、伝統的な水墨画と現代のマンガが融合した表現に挑戦しました。
 
中国を源流として日本に伝わった水墨画は、京都高山寺に伝わる絵巻物「鳥獣戯画」にも代表されるように、日頃私たちが目にするマンガと深い共通点があります。

ワークショップの中で三瀬先生は、水墨が創り出す白黒濃淡世界の奥深さや現代マンガとの不思議な繋がりをわかりやすく・おもしろく生徒の皆さんにご教授してくださいました。





10月29日午前中は福島工業高校へ



工業高校の生徒さん達は、図面を引くように正確な線を描いております。
筆を使って細い輪郭線を引くためには、高い技術力と集中力が求められます。
作業が始まると、生徒のみなさんは一言も発せず机に向かっていました。

10月29日午後は放課後、福島南高校へ



こちらは、美術部のみなさんと有志の方々。使う画材は墨と筆、普段あまり使うことのない道具に最初はちょっと緊張ぎみでしたが、さすがに美術部と有志の方々です、完成した作品のレベルの高さは初めてと思えませんね。
ぜひ、美術館でご覧ください。

「筆の使い方、輪郭線の太さや細さなど、筆さばき一つで描いたものの個性を表現することができる。」と三瀬先生。こうしたところにも着目して作品を鑑賞してみてはいかがでしょうか。

11月19日は三春中学校にお邪魔しました。



2年生の美術の授業(27名)クラスが参加してくれました。三瀬先生は、ワークショップの中でマンガと水墨画の共通点について分かりやすく解説してくださったほか、先生本人が美術を好きになったきっかけなど、小学生時代の実体験等のエピソードを交えながら作品制作の魅力についても話してくださいました。生徒さん達は熱心に耳を傾け、作品制作にとりかかると創意工夫を凝らし、集中して作業に取り組んでいました。



この度の展示は、江戸時代に使われた「模本」と生徒さん達が自ら探し選び出した「現代マンガ」の模写による組み合わせ作品です。筆先の緊張感が伝わる輪郭線の表情や、「江戸時代の模本」と「現代マンガ」の不思議な調和など、生徒さん達が描き出したモノクロームの見応えある作品の数々をどうぞご観覧ください。

展示期間〇2月15日(金)から3月24日(日)
開館時間〇9:30~17:00(最終入館は16:30)
休 館 日 〇月曜日(祝祭日にあたる場合は開館)
     祝祭日の翌日は休館(土日にあたる場合は開館)

来年度(平成25年度)の学校連携共同ワークショップの応募内容は6月号の「福島県立美術館ニュース」に掲載いたします。
来年度も素敵なワークショップを開催する予定です。ぜひご応募お待ちしております!

(くに)

新年恒例 年賀状展開催中!

恒例の年賀状展、只今開催中です!



この展覧会は『生活習慣と美術の関わりを知り、美術により親しんでもらう機会とする事』や『子供の自由な発想と多様な表現の発表の場をつくる事』などを目的に、開かれた美術館づくりの一環として1984年の開館時より開催してきました。



年賀状展は、主に小中学生を中心に応募しております。今年は617通もの年賀状をいただきました!送ってくださったみなさま、本当にありがとうございます!



送って頂いた年賀状は「今年の抱負」や「親しい人へのメッセージ」なども添えられ、どれも力作揃いです!
展覧会は1月31日(木)まで県立美術館エントランスホールにて開催しておりますので(無料)ぜひご覧ください!




2013年 みなさまに たくさんのいいえがおが おとずれますよう  こころより おいのりもうしあげます。

(くに)

大雪!

いやぁ、福島も久しぶりの大雪です。

今日は、美術館の前に広がる雪原に思いっきり足跡をつけてきました。
何枚も靴下履いて、雪靴を履いて、帽子かぶって、万全の態勢。
きゅっ、きゅっ、という小気味いい音を立てながら、真っ白い雪の上を進んでいくのはとてもいい気持ち。
そしておもむろに、銀の棒を雪の上に差し出すのでした。

なんと放射線測定の当番。

皮肉にも、雪の中の美術館庭園をこんなに歩き回る経験は、今日が初めてかも。

明日の朝は雪かきだなぁ。
さらさらの粉雪がしんしんと降り積もっています。


裏の職員駐車場風景

A.Y.