「アートカード★チャレンジ」展終了しました

掲載が遅くなりましたが、3月8日(日)「コレクション再発見2020」で開催していた「アートカード★チャレンジ」展が終了しました。

今回展示を考えてくれたのは、福島市立野田中学校の3年生117名の生徒さん達でした。

 2月29日(土)に予定されていた代表生徒によるギャラリートークが中止となりました。

また、会期中に、3年生全員で展覧会を観覧する予定でしたが、臨時休校となりみんなで一緒にご覧いただくことができませんでした。 

少しではありますが会場写真を掲載し、来場者の方々からいただいたメッセージを紹介したいと思います。

展覧会会場前の看板                     「アートカード★チャレンジ」展入り口

 

今回の活動は、第3学年の生徒、4クラス117名の美術科の授業で実施されました。

はじめにアートカードを用いたゲームで当館の収蔵作品に親しみました。その後、クラスごとに展示のテーマを考え、下記の4つのテーマが決まりました。

    1組…「孤独」       2組…「Face」
    3組…「Let’s think !」    4組…「Sky Sea」
最後に、各クラス4,5名で6つのグループに分かれ、テーマに合うと思う作品を1点ずつ選び、作品に対して感じたことや考えたことなどをまとめました。

それぞれのクラスの展示をご紹介します。(順番は会場内の順路、太字は生徒からのコメントなど)

 

2組「Face」

人の顔はそれぞれ個性をもっていて、表情の表現の仕方も違ってくるから、いろいろな顔があるという気持ちからこのテーマにしました。

 

選ばれた作品は、右から

ベン・シャーン《ラッキードラゴン》、国吉 康雄《婦人と子供》、脇田 和《窓》、

斎藤 清《凝視(花)》、玉川 信一《樹のある風景》、ピエール=オーギュスト・ルノワール《帽子を被る女》

ルノワール《帽子を被る女》には、生徒さんからこのようなコメントがありました。

「この顔を選んだ理由は、人物の顔の印象は優しいイメージを持っていますが、

背景は彼女の心情を表したかのような、薄暗い感じの色使いから、悲しさを連想させると思ったからです。」

 

4組「Sky Sea」

同じ青でも、空と海で違っていて、その違いや空の広さ、海の深さ、

自然の壮大さを数々の絵画で表現しているところを伝えたいと思い、「Sky Sea」というテーマにしました。

選ばれた作品は、右から

鎌田 正蔵 《小家族(A)》、カミーユ・コロー《ヴィル・ダブレー―林を抜けてコロー家へ向かう池沿いの道》、百瀬 寿《NE.Blue,Blue,Blue and Blue》

クロード・モネ《ジヴェルニーの草原》、福王寺 法林《バドガオンの月》、伊砂 利彦《瀬》

カミーユ・コロー《ヴィル・ダブレー》には、生徒さんからこのようなコメントがありました。

「この絵は、地面にある土や、暗い色などと対比させることによって、空の青さをとても強調しています。

全体的に黒が多いので、夜に近づいていることがわかります。

木々はいろいろな色を使ってあり、本物のように今にも動きそうな感じがします。」

 

1組「孤独」

人間関係の残酷さ、一筋の光に求めるもの、旅立ちの寂しさに、何か訴えかけるものを感じました。
その中に「孤独」というものが共通していたので、「孤独」というテーマにしました。

選ばれた作品は、右から

マックス・エルンスト『博物誌』《光の輪》、斎藤 清《会津の冬(51)》、野田 哲也 《日記1976年8月19日》、

アンドリュー・ワイエス《ガニング・ロックス》、山中 現 《第三夜》、速水 御舟《晩冬の桜》

速水 御舟《晩冬の桜》について、生徒さんからこのようなコメントがありました。

「みなさんの桜に対するイメージは何ですか?きっと春の満開の桜の様子を頭に浮かべると思います。

しかし、この絵のタイトルを読んでみてください。《晩冬の桜》と書かれています。

なぜ作者は冬の桜を描いたのでしょうか?

その桜は、すっかり葉が落ちていて、見どころがありません。背景も何一つ描かれていません。

でも、描いた理由があるはずです。

私たちは、この桜の心情を考えて描いたのでは、と推測しました。

春とは違って、人が寄り付かないことへの寂しさ、「孤独」さがあふれていると思います。

1組のテーマは「孤独」。この絵のイメージも「孤独」だと思います。」

 

3組「Let's think !」

このテーマにした理由は、いろいろな捉え方の出来る作品をあえて選択し、その作品について深く考えてほしいと思ったからです。

「Let's think (考えてみよう)」ということで、作品に思いを馳せてみてください。

また、私たちのキャプションも参考に、自分の捉え方を創作してみてください。

選ばれた作品は、右から

若松 光一郎《COMPOSITION・30.8.82》、橋本 章《武装する都市》、小林 浩《星辰軌道》、

マルク・シャガール《少年時代の思い出》、オノサト・トシノブ 《シルクNo.10》、吉井 忠《赤い風景》

若松 光一郎《COMPOSITION・30.8.82》について、生徒さんからはこのようなコメントがありました。

「音楽や楽器がたくさんあることで、この絵から何か音が聞こえそうだと感じました。

どんな音楽が聞こえてくるのか考えさせられる作品だと思います。また、夢の中のようにも思えます。

さまざまな向きでバラバラの文字のようなものが散りばめられていて、作者は何を伝えたいのか、見る人によって考えさせられる作品です。」

 

他にも、 展示室で生徒さんたちの活動の様子をパネルで紹介しました。

 

1:20の展示室模型に作品を並べてみながら、展示を考えました。

 

来場者からの感想やメッセージを一部ご紹介します。

~メッセージカードから~

  • 皆さんが「チャレンジ」したと知り、私自身もこれらの絵を見たらどう感じるだろう、ということを意識して鑑賞しました。ただなんとなく眺めるよりも作品に一層興味がわき、あれこれ思いめぐらせながら皆さんの考察を読むひとときがとても楽しく感じました。たまたま立ち寄った美術館でのすてきな出会い、ありがとうございました。
  • 中学3年生という多感な時期に、みなさんが絵をどう感じていらっしゃるのか、とても新鮮な気持ちで見せていただきました。これまで何度か見た作品もみなさんの解説のおかげで新しい視点をもつことができました。
  • 紹介のところにあったみなさんの写真にうつる顔がいきいきしていて、みていてとても楽しかったです。テーマにそって絵を選び、思いを語る。そんな授業私も受けてみたかったな~。素敵な時間をありがとうございました。先生のご指導も素晴らしいですね。
  • どのクラスも作品の選び方がとてもステキで、自分では考えつかないような発想が多く、面白く見ることができました。「この作品の意図は?作家の気持ちは?」と考えてみることの楽しさを改めて感じることができました。とってもステキな展示、ありがとうございました!
  • とても面白かったです。まずどうしてこの絵を選んだか、それが興味をひきました。そしてずっとながめているうちにメッセージ又は自分なりに伝わってくる事を感じ、それを文章にきちんとまとめられていてステキです。こういう見方もあるのか!ととても参考になりました。一人で鑑賞しましたが、皆さんたちと一緒にお話しながら、“ああ観える!こう観える!”と多角的に作品を見られたと思います。楽しかったです。ありがとうございました。
  • みなさんのコメントがどんな批評よりもシンプルな言葉でしかも、深い。新鮮。いつもみている作品に別の見方があるよとみなさんに教えてもらいました。ありがとう!
  • 皆さんがどきどきしながら、わくわくしながら話し合って選んだ姿が浮かびます。発表をお聞きしたかったです。しかし、芸術の深さや美しさを感じ取る心の授業に参加できて、皆さんはラッキーと思いますヨ。きっと何かが残るでしょう。3年生の皆さん、先生方、美術館の皆様に感謝致します。(保護者より)
  • アートカードチャレンジおつかれさまでした。あなた達の視点による作品の展示はとても新鮮なものにうつりました。あなた達のギャラリートークがあると知り、どのような話が聞けるのか、楽しみでした。中止となりとても残念です。でも、よい展示でした。ありがとう。
  • とても素晴らしい展示でした。テーマを決め、その作品から感じたコメントも付いていて、とてもみごたえがありました。学芸員さんとはまた違った視点がとても面白かったです。私も一緒にアートについて語り合いたいと思えるほどでした。ありがとうございました。
  • いろいろな絵を見て、考え、他の人たちにもどう伝えるか、良い経験をされたと思います。共通の絵を大人数で見ることにより、自分には感じなかったことも、聞くことにより共感するという機会もあったのではないでしょうか。きっと一人で見るより楽しい経験となり、後々豊かな鑑賞への足がかりになったことと思います。それがこちらにも伝わるような絵画展でした。ありがとうございました。
  • 通常の展示とちがい、題に対するイメージ、そこからつながる絵。そしてさらにそれに対するイメージと、とても楽しませていただきました。私はもうみなさんのおばあちゃんの歳なので感じ方、考え方がとても新鮮でした。ありがとう!
  • 知っている作品の気づかなかった魅力に気づいたり、知らない作品を知るきっかけをいただきました。選んだ作品や、選ばれなかったけれど気になった作品の背景にみなさんが興味を持って調べる手がかりになるとよいなと願っています。

 

~アンケートから~

  •   アートカードチャレンジはとてもおもしろい。同じ中学生が考えたと思うと、わたしも参加したいと思った。(郡山市・14才・女性)

  •   観ていておもしろかった。野田中の生徒達による説明も良かった。中学生としての捉え方が良いと思う。(福島市・44才・女性)

  •  中学生の絵に対する思いがわかり楽しかった。中学生にいろんな絵を見て、芸術に興味をもってもらえたらうれしいです。心の栄養になりますように。(伊達市・66才・男性)

 

野田中学校3年生のみなさん、ギャラリートークで発表予定だった4名の代表生徒さん、ありがとうございました!

今回は展示を全員でご覧いただくことができず、発表の機会もなくなってしまい、本当に残念でした。

美術科の中條先生、木島先生、約1年間にわたりお世話になりました。ありがとうございました!

そしてご来館いただいたみなさま、ありがとうございました!