2022年8月の記事一覧

「みんな大好き!福島ねこづくし展」閉幕しました。

7月23日(土)から開催した特集展示「みんな大好き!福島ねこづくし展」は、先週末8月21日(日)で閉幕しました。

一ヶ月弱の会期だったので行けなかったという方もいらっしゃると思います。
以下、展覧会内容をふりかえります!

 

展示は2部構成で、第1部では猫がモチーフとなっている当館の収蔵品を31点展示しました。
描き方と絵の内容に注目し、3つのパートに分けてご紹介。
今回は特別に、第2部の猫絵馬から抜け出た「カワオ」「マタサブロウ」「マチコ」さんたちが展覧会ガイドを務め、作品の見どころなどをわかりやすく紹介してくれました。

 

第1部の1パートめは「キマッてる!モデル猫たち」と題して、絵のモデルとして堂々と猫がポーズをきめている作品を展示。
版画家・斎藤清の猫作品が多いですが、まとめて並べて見ると、構図を考える作家のモダンな感覚がよく分かります。
お客様のアンケートで「斎藤清に対するイメージが変わった」というお声もいただきました。
福島を代表する彫刻家・佐藤玄々の作品は、猫の体の柔らかさや丸みの表現が見事です。

  

 

2パートめのテーマは「猫かわいい。小さきものたち」。
動物の小さくて尊い命、猫の可愛らしさに眼差しを向けた作品が並びます。
寝ている子猫を描いた渡部菊二のデッサンや、飼い猫を小さく登場させている山口薫の水彩画を見ていると、作家の温かい愛情が伝わってきます。

   

 

3パートめのテーマは「一緒に暮らそう。生活のなかの猫」。人間の暮らしに溶け込んでいる猫の様子を描いた作品を展示しました。
出品している酒井三良、室井東志生、春日部たすくは全員福島県出身の作家です。
室井東志生は、歌舞伎役者や落語家など著名人の肖像画を多数手がけた画家で、ここでは会津若松出身の舞踏家・ダンサーである長嶺ヤス子氏と猫たちを一緒に描いています。
春日部たすくの水彩画はサイズが大きく、自宅で飼っていた猫たちにまつわるエピソードや想いをユニークな視点で絵画化しています。
猫たちをとても愛していたことが作品から感じ取られます。

   

 

 

続いての第二部では、川俣町猫稲荷神社に奉納された猫絵馬を紹介しました。
絵馬の出品総数は347点。本来は650枚以上ありますが、そこからピックアップしての出品です。それにしても大ボリューム!
養蚕が盛んな川俣では、鼠を駆除する猫を「猫神さま」として祀る民間信仰が生まれ、主に明治から大正期にかけて養蚕の成功を祈願する猫絵馬が庶民たちによって作られました。
猫神信仰は宮城県や群馬県にもありますが、当時の絵馬が着色ありで状態よくここまで大量に残されているのは、川俣町だけだそう。

いかにも絵師が描いたような名作もあれば、庶民がとても頑張って描いたからこそ出てくる独特の画力による作品など、どれも個性的で魅力に満ちています。

    

  

 

 

7月31(日)には、猫神信仰を研究されている村田町歴史みらい館館長の石黒伸一朗氏によるスライドトークを行いました。
川俣町の猫絵馬はもちろん、そのほか福島に密かにある猫の石像たちについてもお話ししてくださり、実際に行って見てみたい!という好奇心がかなりくすぐられるご講演でした。

 

福島は「猫啼」や「猫魔ヶ岳」など猫がつく地名がなぜか多く、知られざる猫大国だったのかもしれません。

実は当館すぐ裏にそびえる信夫山にも猫稲荷神社が存在して、現在は愛猫の健康を祈願する神社として人気を集めています。

 

また館内ホールでは、誰でもその場で参加できるフリーワークショップ「猫絵馬作り体験コーナー」を設けました。
みなさんの手作り猫絵馬が掲示用の壁に連日増えていき、描く人・絵馬を見る人でとても賑わいをみせていました。
こちらの予想を遙かに超えてみなさん作っていただけたので、ただただ感謝です。

    

 

おなじみになってきた展覧会フォトスポットは今回も登場!絵馬の猫たち、大活躍です。

 

不思議と魅力に満ちた猫神信仰と川俣町に残る猫絵馬、当館の猫コレクション、来館者による現代の新たな猫絵馬と、まさに「ねこづくし」な特集展示でした。

ご来館いただいたみなさま、ありがとうございました!

下記の当館Youtubeチャンネルでも本展の様子を紹介しているので、ぜひこちらもご覧ください。

https://youtu.be/fjR-BaQCXUE

 

芸術鑑賞講座を開催しました

8月13日(土)、当館前館長・早川博明氏による「芸術鑑賞講座ー名画との対話」第2回目を開催しました。

 

今回ご紹介した作家は、ベラスケスです。

17世紀バロック期にスペインで宮廷画家として活躍した人物で、庶民から王侯貴族まで幅広い人々をモデルに描いた肖像画や、宗教画など数多くの名作を生み出しました。
後世の芸術家にも多大な影響とインスピレーションを今もなお与え続けている、西洋美術史の偉大な巨匠の一人です。

構図の斬新さや、大雑把な筆遣いながらも離れて見るときらびやかに見えるテクニックなど、ベラスケスの凄さを作品画像を通して鑑賞しました。

モデルとして描かれた王族の運命はその後明るくはなかったかもしれませんが、絵の中で生き生きと輝いている姿を見ると、ベラスケスが宮廷画家として王族にとても大切にされていたことが納得できます。

 

  

ご参加いただいたみなさま、早川さん、ありがとうございました!

 

次回第3回目の講座は、
日時:10月8日(土) 10:30~12:00
テーマ:「バロックの巨匠たち(3)-レンブラント」
です。

会場は講堂、受講申込みは不要ですので、開催日に直接当館講堂までご来場ください(聴講無料)。

 

次回以降の予定については下記のページに載せております。
芸術鑑賞講座

 

ご来場を心よりお待ちしております。

創作プログラム「うるしをみがいて作るピカピカ猫のブローチ」を開催しました

7月30日(土)に当館実習室にて創作プログラム「うるしをみがいて作るピカピカ猫のブローチを午前と午後の部で開催しました。今回は、当館にて開催中の特集展示「みんな大好き!福島ねこづくし展」の関連ワークショップです。講師は、漆芸家の平井岳さんと綾子さんです。

 

岳さんは、制作に加えて漆掻きの仕事もしています。国産の漆が貴重で手に入りにくくなっていることから、自分で漆を採取するようになったそうです。映像を見ながら漆掻きの現場について解説していただきました。

 

 

実際に使っている漆掻きの道具をみせてもらいました。

 

数日前に山に入って漆を掻いた岳さんの道具です。刃の形状が独特で、掻く道具はずっと昔から変わっていない伝統的なものです。漆掻きに携わっている人は岳さんを含めて福島県ではお二方だけ。自然と向き合いながら、木から樹液を1滴1滴採取するという話をみなさん興味深く聞きました。

 

漆のお話を聞いた後は、猫のブローチをつくっていきます。まずは、綾子さんの実演です。

 

 

作業工程がわかったところで、制作開始です。岳さん、綾子さんがつくった漆が塗られた猫型のプレートをみがいていきます。塗ってある色、塗り方もランダムなので、どんな色や模様がでてくるかはみがいてみてのお楽しみです!

 

 

みがくのに3種類の研磨剤を使います。1番目に使うペースト状の研磨剤、2番目、3番目のクリーム状の研磨材です。1番目はこの中では粒子が粗いですが、粗いといっても目には見えない粒子の大きさです。2番目、3番目に進むにつれて粒子が細かくなっていきます。粒子を細かくしていくことでツヤを出していきます。また、どのくらい模様を出すかはそれぞれの好みで、銀色の表面を残してもOKです。いい感じになったと思えば、次の研磨剤に進みます。

 

 

細かい所は綿棒を使ってみがいていきます。

 

 

ヤスリも使います。日常生活では使うことのない目がとても細かいヤスリで、光沢を出していきます。銀色部分をこするとメタリック感が出ます。

 

 

3番目の研磨剤の段階にいっても、みがきが足りないと思ったら、1、2番目の研磨剤にもどってみがいても大丈夫です。いったりきたりしながら自分好みのピカピカ具合までみがいていきます。

 

 

 

ブローチの表面をエタノールで拭き取ります。岳さんにピンを付けてもらって完成です!

 

 

岳さんと綾子さんから「漆は年月が経つと強くて固くなる不思議な塗料」「漆は経年で色が明るくなり発色がよくなるので、猫ブローチは使ううちに明るくなっていきます」「お手入れはたまに指でみがいてみてください」と教えていただきました。

 

最後に出来上がったばかりの「ピカピカ猫ブローチ」を付けて、特集展示「みんな大好き!福島ねこづくし展」を鑑賞しました。今回は、制作も鑑賞も楽しむプログラムでした。

 

受講者の声です。

 

・うるしが身近に感じられるワークショップでした。

・1人1人ちがう模様でかわいかったです。

・うるしのことがわかってよかったです。国産うるしの伝統を感じました。

・磨くのに没頭できたので、気持ちもすっきりしました。

 

暑い中参加してくださったみなさまありがとうございました!漆に親しむ機会を提供してくださった岳さん、綾子さん、ありがとうございました!