親と子の美術教室「絵をかいてアニメを作ろう!」

内容:プロが使う動画用紙(アニメ専用の紙:A4判21.0×29.7cm)にサインペンやマーカーで絵をかいて、不思議で楽しい動きが見れる簡単なアニメーションを作ります。
日時:2011年5月15日(日) 10:00~15:00
対象:小学生の親子8組程度
講師:小柳貴衛氏(東京工芸大学アニメーション学科助教)

 アニメーション(英:animation)はラテン語のアニマ:anima(霊魂)に由来する言葉で、本来命のないものに命を吹き込むという意味がある。動画とも呼ばれ、コマ撮りした複数の静止画像を連続的に再生すると、目の錯覚であたかも絵が動いているように見える原理を利用して作られる。
 実写のフィルム映像で自然な動きを再現する際、一秒間に24コマの画像を用いるが、アニメでは一秒間に8~12コマの画像が用いられる。使用するコマの数や送り方を調整して画面の動きや展開を作るほか、作画で自由にメタモルフォーゼ(変身、変形)させたり、音楽と画像をコラボレーションさせるなど、幅と奥行きに富んだ表現が可能だ。
 この教室では□から○へまたは○から□へのメタモルフォーゼを課題としてアニメを作った。親が□から○への変化を描く一方、子は○から□への変化を描き(その逆も可)、出来上がったら合体させるというやり方で、以下の順序ですすめた。

   
   

(1)一秒間10コマの画像を目安にアイディア・スケッチする。
(2)アニメで使う動画用紙をめくった時ずれないようタップという専用の金具にセットし、マーカーで一枚描いたらつぎの紙を重ね、透けて見える下の絵をもとに次々描く。
(3)講師といっしょに家庭用ビデオで絵を一コマずつ撮影し、パソコンのアニメ専用のソフトに取り込んでいく。(最初の絵は同じものを5コマ取り込んで始まりの間を作る)
(4)取り込んだ画像を再生し、足りない絵を描き足しては、撮影、取り込み、再生を繰り返して完成に近づけていった。

 最後に上映会をし、作者によるコメントと講師の寸評を加えて終了した。
 作品には、規定の□から○へのメタモルフォーズという課題に沿ったものから自由な発想によるものまで、動きへのひらめき、展開の工夫、迷い、忍耐を伴う地道な作画など様々な思いが詰まっているようだった。(久慈伸一)



わんぱくミュージアム「ビヨーンゆらゆら遊泳オモチャを作ろう!」
   

内容:ピアノ線の弾力と重さのつりあいを利用して、ゆれながら不思議な動きをする紙のおもちゃを作ります。泳ぐくじら、踊る人形、動物、昆虫、魚、鳥などなんでもどんな動きをしたら面白いか工夫して作ってみよう。
日時:2011年7月24日(日) 10:00~15:30
対象:小学生15名程度
講師:久慈伸一(当館主任学芸員)

 ピアノ線の弾力で、揺れると同時に回転軸に取り付けたパーツが動いて、意外な動きを楽しめる遊泳おもちゃを以下の工程で作った。

(1)見本を参考にアイデアを考え実物大のスケッチをする。
(2)全体のイメージができたら、どんな動きが面白いか考えながら、ピアノ線の軸の取り付け位置やボディに取り付ける可動部分の回転軸の位置を考える。
(3)スケッチの細部を完成し、転写するため裏面を鉛筆で塗り、素材であるマーメイド紙を重ねてパーツごとの輪郭を転写する。
(4)転写した輪郭に沿ってハサミでパーツを切り分ける。
(5)ピアノ線を固定する土台をマーメイド紙で作り、ピアノ線を通す穴をキリであける。そこにピアノ線の一方の端を2cm程度ペンチで直角に曲げた軸を通し、ホットボンド(固形状の接着材を専用の電熱グルーガンに挿入して溶かして使用する)で接着する。ピアノ線は約0.7~0.9mmの太さが適当。作品の動きを想定して長さを決める。
(6)(5)の土台にボディとなる部分をホットボンドで接着する。
(7)ボディとパーツの位置を確認して、パーツの針金の回転軸を受けるストローを回転がスムーズにいく長さに切断し、土台にホットボンドで接着する。
(8)パーツに針金の回転軸を通す穴の位置を決め、キリで穴をあける。そこに回転軸を通して端を1.5cm程度ペンチで曲げて、片面をホットボンドで接着し、土台のストローに通してからもう一方の端をパーツの穴に差し込み、ペンチで直角に曲げて切断しホットボンドで接着する。
(9)全体が出来上がったらアクリル絵の具で色付けする。
(10)台座の板にドリルで穴をあけ、ピアノ線を差し込んでホットボンドで接着して完成。

 ピアノ線の太さや長さを変え弾力を変える等工夫次第で様々な動きが楽しめる。
 面白い動きを探すために、仕上げのきれいさを気にしないで動きやバランスを見ながら紙を切ったり貼ったり、おもりの針金を接着したり取ったりして、途中の発見を生かす事が大切だ。(久慈伸一)

   
   
 
一日創作教室「偶然のカタチから紡ぐイメージ」
  

内容:ふと目にした雲の形や壁の模様、落書きの線が動物や人や風景等に見えることがあります。思わず発見するイメージを気まぐれな旅の記録を綴るように、本来一人で行なうような描画行為を体験してみます。
日時:2011年8月7日(日) 10:00~16:00
対象:中学生から一般まで15名程度
講師:久慈伸一(当館主任学芸員)

 冒頭、参加者のモチベーションを踏まえるため、参加理由を聞いた。「ふだんの油絵の制作のスランプを打破するきっかけとなる何かを期待して」、あるいは「習っている書道の参考になるかも知れない」、また「現在絵は描いてないが、雲の形に何かを想像するという募集のフレーズが気になって、自分もかつてそう思うこともあったが、今は忘れかけてしまった大切なものがそこにあるのではないかと改めて気づいたから」、さらに「抽象的な表現をどのようにとらえたらいいのか」など、参加者の思いは様々で、折に触れ何等かのサジェスチョンができればと思いながら教室を始めた。
 はじめに、この教室のタイトルにある「偶然」について触れる。ことばで言う「偶然のカタチ」が絵では、具体的にどのようなものであるのか改めて考えると簡単ではない。
 20世紀には偶然性を手法化した作家がいる。既成の芸術に反逆したダダのハンス・アルプは、切り抜いた色紙を台紙の上に落として、そのままの状態で貼り付けて絵にするという行為をした。
 ポロックはドリッピングという筆の先から絵の具を滴らせる技法で形象とエネルギーが渾然一体となった躍動感のある絵を描いた。これらは、重力や絵の具の流動性といった、人の手わざを離れた物理的要素が、偶然性を演出することを利用した表現例である。
 偶然性を生かした表現は人為を超えたところに意味があり、安易な手法化を拒むもので、その時々の発見を伴って本領を発揮する。等々…表現における偶然性ということに関わるエピソードを話してから制作に入った。

   

 制作は、描きこみを執拗に過剰なまで行なう場合と、最低限の手数しかかけないで描くという相反する二つの描画過程を課題として行なわれた。このことは、無意識に身に着けてしまっている手の動きの癖を見なおしたり、無駄のない必要最小限の表現過程を意識して、偶然の要素を発見につなげる描画センスを開発するエクササイズになると考えたからである。
 参加者は具象性と抽象性が交錯・混交するイメージや、断片的な形象に人や植物のかたちを幻覚的に見出すシュールレアリズム的なイメージ、構成的なイメージ、装飾的なパターンのイメージなど、各人が予め大まかな方角を決めながらも、半ばあてどもない航海に出るような感覚で描画し、名状しがたいイメージの出現を楽しんだ。(久慈伸一)

   
     
   
   
わんぱくミュージアム「オリジナル絵本をつくろう!」


内容:あなたの好きな物語や、あなたが主役のお話のいくつかの場面を描いてみよう! 厚手の紙にペンや絵の具で描いたり、切り抜いた写真や色紙を貼りつけてつくります。表紙をつけて1冊の絵本に仕上げよう!
日時:2011年8月21日(日) 10:00~15:30
対象:小学生15名程度
講師:橋本淳也(当館主任学芸員)

 震災・原発事故後に福島大学内の避難所に全国から寄せられた絵本をお借りして、自由に閲覧できるコーナーを美術館展示室に設けた。その書棚に並ぶ絵本をリラックスして眺めながら、「好きな絵本」「興味をひかれる絵本」を一冊選んだ。

  

 実習室へ移動し、以下の手順で制作をすすめた。
(1)絵本を見ながら「天地」「左開き、右開き」「文の縦書き、横書き」「時間の方向」など絵本の世界のルールを確認する。
(2)主人公や登場人物、場面などのおおまかなオリジナルの設定を考える。
(3)絵コンテのように枠線を取った用紙の「左側に絵(2頁分)」、「右側に文」をメモしながら、ページ割りを考える。
(4)本紙(ワトソン紙)に鉛筆・ペンで線描きする。
(5)色鉛筆・水彩絵の具・クレヨンなどで彩色する。

   

(6)ボール紙を短冊状に切り抜いたテンプレートをあてながら文を書き入れる。
(7)簡易式の糸綴じでページをそろえて束ねる。
(8)厚手ボール紙に、好きな色の画用紙を貼りつけた表紙をスプレーのりで接着して完成。

   

 千枚通しや針、糸を使う一部の作業は、同行していたお母さんにも手伝ってもらった。
 それぞれの考えたオリジナルの物語世界に没頭しながら、12~24ページの絵本に仕上げた。子供達のとめどない空想力と集中力の高さには改めて感心させられた。(橋本淳也)
親と子の美術教室「水彩色鉛筆で描いてみよう!」
   

内容:水彩画のタッチを楽しめる水彩色鉛筆とペンや鉛筆などを使って、身近なものや写真などを参考に紙のサイズを選んで、自由に絵やイラストを描きます。
日時:2011年9月19日(月) 10:30~15:00
対象:小学生の親子10組程度
講師:安達純子氏(AJジュニアアートスクール代表)

 普通の色鉛筆はクレヨンと同じようにだれもが経験する画材だが、水彩色鉛筆で絵を描いた経験のある人は多くないだろう。
 水彩色鉛筆は色を塗った部分を水をつけた筆で濡らして、水彩画のタッチを作ることができる画材である。色鉛筆の塗り方、線描に加え、筆につける水の量や筆触などを変化させることで幅広い色彩表現が可能となる。水彩色鉛筆で描いた上から筆で水をつけ、濡れたままの状態でさらに色鉛筆で線描を加えたり、あるいは乾いた状態で線描を加えるなど、描き方の工夫次第で、緻密な線描表現や水彩やパステル調の表現まで様々な表現を引き出す楽しみがある。

   

 クレヨンやパステルや水彩絵の具などは、身体を使う大胆で伸びやかな、いわゆる子どもらしい表現活動に向いた描画材として、幼稚園や小学校低学年を対象に発達段階を考慮したものとして慣習的に使われている。
 極幼少期を特徴づける、いわゆる、なぐりがき等の段階は別として、一定の年齢(幼稚園から就学期頃)になると表現欲求そのものは、かなり多様化しているようだ。子どもらしい身体全体で描くことに没入していく表現欲求と緻密さを伴った表現欲求は、ある年齢からは並列してあるように見える。紙と画材さえあればなんでも自由に描きたい幼少期に、従来使われている画材に加え、水彩色鉛筆のような細部の描写も可能な画材など、適性や資質に対応した画材の選択肢を広げることは、あまりストレスを感じないで表現に臨むために大切であろう。
 水彩色鉛筆は子どもから大人まで、年齢に関係なく、各人の目的と技量に合わせた色彩表現を手軽に楽しめる、傍らにあれば便利な画材である。(久慈伸一)

  
   
   
創作講座みる・つくる・つなぐ「多色木版の制作~鑑賞と表現」
 古谷博子《風待ち―韻 No.2》2011年

内容:美術館に展示されている木版画の作品を鑑賞し、参考にしながら様々な技法を使った、多色木版の表現を体験してみます。
日時:2011年10月1日(土)、2日(日)、8日(土)、9日(日)、15日(土)、16日(日) *6回連続
   土曜日13:30~16:30、日曜日10:00~15:30
対象:一般12名程度
講師:古谷博子氏(木版画作家)

第一日目:作品の鑑賞と技法の解説ほか
○講座に先立って常設展示室に展示されているレジェ、ドーミエのリトグラフ。山中現の木版。柄澤齋の木口木版、斉藤清の初期から晩年までの木版作品の技法を中心にした解説。
○木版に使う彫刻刀、切り出し、丸刀、三角刀などの基本的な使い方の実演。
○刷りの工程に必要な、版画用絵の具、刷り刷毛やバレンなどの用具・材料および見本による多色刷の刷りの方法の紹介と簡単な刷りの実演で第一日目を終了する。

第二日目:製版
○各自準備してきた下絵をもとにどのような表現にもっていくかなどのアドバイスを受けた後、トレーシングペーパーに下絵を写し、カーボン紙を版木の間にはさんで、ボールペンで下絵を版木に写す。この時、版の色分けを考えながらそれぞれの版に下絵を写す。
○彫刻刀で版木を彫る。輪郭に沿って切り出しを入れ、廻りを丸刀や平刀で彫り取りながらすすめる。彫り上がったら紙やすりをかけて木のささくれを取る。

第三日目:製版の続き
○講座の冒頭、版木に水性ニスを塗って筆のタッチを表現する技法と水性ニスを塗った版木をニードルで引っ掻いて銅版のような線の表現を作る技法など、従来の版画にない新たに開発された技法が実演で紹介された。

第四日目:製版の続き、見当作り、刷り
○重ね刷りで刷り紙の角を当てるカギ見当、刷り紙の辺を当てるひきつけ見当を作る。
○刷りの工程。
(1)摺りの下準備として水をつけた刷毛で二枚の新聞紙を濡らして皺を伸ばし、刷毛で濡らした刷り紙を新聞紙の間にはさみ、上から重しをのせて半乾きの状態に湿らせておく。
(2)刷りの際に版木が動かないよう、濡らした新聞紙の上に版木の裏を濡らして置く。
(3)絵の具を筆で版木の上に筆で置く。さらに予め適度に水を加えて粘度を調整したヤマト糊を版に置き刷り刷毛でのばす。絵の具をつけない部分を乾いた布で拭く。
(4)刷り紙を中指と人差し指にはさんで持ち、見当に合わせてのせ、摺り紙を傷めないようトレーシングペーパーの当て紙をおいてバレンで摺りとる。
(5)摺った紙は摺りを重ねるために湿した新聞紙の間にはさみ半乾きの状態に湿らせておく。

第五日・六日:刷りの続きをして完成し、講評を加えて終了。

 伝統的な木版多色刷りの基礎から始まって、ニードルを使った現代の技法を加え、画面構成や色彩・光の効果の追及などレベルの高い画面作りが試みられた講座であった。(久慈伸一)

   
   
 
一日創作教室「既成のイメージを利用して描く」
 

内容:雑誌や新聞、包装紙など様々な印刷物の図柄や日常目にするサイン・記号などのイメージに絵の具等で自分なりのイメージを重ねたりしてパネル作品(25.7×36.4cm程度)にします。
日時:2011年11月20日(日) 10:00~16:00
対象:高校生以上の一般10名程度
講師:久慈伸一(当館主任学芸員)

 既成のイメージ・素材を利用した作例は、ピカソ等キュビスムの画家が新聞や包装紙の切り抜き、ボタンや釘など実物の素材を画面に貼り付けるコラージュ(フランス語で糊付けするの意)や、パピエコレ(貼り絵の意)の手法を導入した作品に遡る。
 次いで、芸術の美的秩序に反逆したダダの芸術運動ではゴミ箱の紙くずや廃品を貼り付けた絵画や写真のコラージュ、フォトモンタージュ(合成写真)の作品として展開される。また、写真の登場は、画家の制作に影響を与え、印象派のドガが写真を作画に積極的に利用したことや、ピカソは写真を写実のいきついた地点と捉えて、絵画の存立する新たな地平を切り開こうとしたことなど様々な美術史上のエピソードをはじめに述べた。
 制作に先立ち、1960年代にコラージュの技法で写真や雑誌のイメージを積極的に導入したポップアートの作品図録を参考に、持参した雑誌やチラシ等の資料を見て構想を練った。
 さらに、写真のイメージ素材の配置構成例を示し、コラージュによるイメージと描画したイメージの違いを比較した後、準備したB4判のデザイン用パネルに用意した新聞や雑誌の切り抜きや実物の素材をあれこれ並べ変えたりして構成を考えながら制作した。(久慈伸一)


<参考>写真のイメージをコラージュする場合の模式図を使った構成例
(1)写真素材を揃えた模式図(異なった空間を持つ写真のイメージをグラデーションがかかる位置や方向の違いで示した)
(2)素材を並列的に配置した例
(3)素材の配置、重なりで相互の空間関係を作った例(静的構成)
(4)素材の配置、重なりに回転を加えて空間関係を作った例(動的構成)

(1)(2)(3)(4)

   
   
創作講座みる・つくる・つなぐ「日本画の技法~鑑賞と表現」
 

内容:美術館に展示されている日本画の作品を鑑賞して参考にしながら、季節の果物などをモチーフに日本画の技法で4号(33.3×24.2cm)程度の作品を制作します。
日時:2011年11月26日(土)、27日(日)、12月3日(土)、4日(日)、10日(土)、11日(日) *6回連続
   土曜日13:30~16:30、日曜日10:00~15:30
対象:一般10名程度
講師:清水操氏(日本画家、日本美術院特待)

 初日は持参した季節の果物や花などをモチーフにF4号の大きさの画用紙に鉛筆や色鉛筆、または水彩で細部まで観察しながら下図を描く。下図はただリアルに描くのではなく本画を描く際に、線や形、色彩をつめてゆくのに参考にできるようポイントを押さえて描くことが肝腎である。

 二日目は下図の続きを描くほか下図を本画にトレースする際用いる念紙(転写に用いる市販のチャコールペーパーと同じ役割を持つ)作りを以下の手順で行なった。
(1)赤口たいしゃという茶系の水干絵の具と角砂糖を水で溶いて絵の具を作る。
(2)薄美濃紙を丸めて皺をつける。
(3)(2)の絵の具を刷毛で薄美濃紙の片面に塗り、皺をつけた新聞紙に乗せて乾かす。
(4)乾いた念紙をビニール袋に入れて余分な絵の具を落として完成。
作業の途中、美術館の常設に展示中の、速水御舟や安田幸彦、小茂田青樹、横山大観、須田洪中など日本美術院の作家の作品の鑑賞と丹念な技法解説を受けた。

 三日目は、はじめ日本画で使う岩絵の具(天然・新岩)、水干絵の具(天然・人工)、胡粉、染料、墨(青墨・茶墨)、膠の説明のあと、胡粉に膠を混ぜ膠だんごを作る方法とそれを水で溶いて使う方法、さらに絵の具に膠を混ぜ水で薄める方法など、描画に際しての基本的な絵の具の扱い方が解説された後、以下の手順で以後最終日まで制作を行なった。
(1)下図をトレーシングペーパーに写す。
(2)構図を考えてトレーシングペーパーの下図を念紙を使って本紙に写す。
(3)薄墨で線描きする。(必要に応じて鉛筆を使う)
(4)薄く溶いた胡粉で地塗りをする。
(5)彩色する。絵の具は淡色から濃色へ、細かい粒子のものからはじめ、粗い粒子のものへと移行するのが一般的。
(6)完成。

 最終日に合評会を行い、モチーフの選び方、構図の取り方、スケッチする際の心構え、カッチリ描くところ、やわらかく描くところ等、描き分けの工夫などきめ細かいアドバイスを得た。制作の過程で形や線、色彩を厳しく詰めていく日本画制作の魅力を体験できた講座だった。(久慈伸一)

    
    
  
   
親と子の美術教室「木と光のパズル」
   

内容:木とアクリル板を電動糸のこで切って組み合わせ、窓辺に飾って楽しめるパズル(18×28cm程度)を作ります。
日時:2011年12月23日(金・祝) 10:00~15:00
対象:小学生の親子10組程度
講師:古川英樹氏(日本おもちゃ会議会員)

 木とアクリル板を組み合わせ縦横微妙に長さの違う四角の枠にはまるパズルを以下の手順で作った。シンプルでありながら縦横の微妙な違いがパズルとしての抵抗感を付与している。
(1)透明なアクリル板(縦16cm×横18cm×厚さ2mm)の形を考える。
(2)アクリル板を糸のこで切る。(アクリル板には予めビニールテープを両面に貼り、切断面がささくれないよう養生しておく。使用した糸のこ歯は24山アサリ太口)
(3)切ったアクリル板の切断面に紙やすり(240番)をかけ木の板(縦25.5cm、横27.5cm、厚さ1.5cmの集成材)の上に自由に配置して、板のピース分けを考えながらアクリルの形を板に鉛筆で写す。
(4)木の板をクリ抜きアクリル板をはめるため糸のこの歯を通す穴をドリル(3mm径)で空ける。
(5)木の板を糸のこで切断し、紙やすりをかける。
(6)切断した木のピースをウッドカラー(水性木部接着剤)で着色。
(7)アクリル板に油性マーカーで着色。
(8)アクリル板を速乾性ボンド(アクリア)で木に接着。
(9)予め用意した枠(縦30.5cm、横28.5cm、厚さ2mmのベニヤ板に1.3cmの角材4本を木工ボンドで接着し、ガンタッカーでとめたもの)にピースをはめこんで完成。

    
    

 遊び方が限定されたおもちゃは、作り手のこだわりを感じても、窮屈で飽きやすい。今回のおもちゃは、窓辺に置いてちょっと気が向いたときに何気なく配置を変えたりして、色や光を楽しめるシンプルなものだ。手にとっているうちに、自然にあれこれ想像をめぐらせるよう導いてくれるのが、存在感のあるおもちゃの条件かもしれない。(久慈伸一)

    
   
わんぱくミュージアム「版画で描く○○な動物」

内容:展示室にある動物をモデルにした作品を鑑賞し、プレス機を使わない凹版画技法「メディウムのはがし刷り」で「動物」を描いてみよう! 245×330cm程の画面に一色刷りだけでなく、多色刷りにも挑戦します。
日時:2012年1月29日(日) 10:00~15:30
対象:小学生12名程度
講師:橋本淳也(当館主任学芸員)

 一般的に版画というと木版画やスタンプなどの凸版画を思い浮かべるが、凹版画を初めて経験する子供達だったので、まず試作作品と版を見せ、触ってもらいながら、細い「線」で表現できる事などの凹版画の特徴を紹介した。
 つぎに美術館内に展示されている動物(をモチーフにした作品)を探し、その印象や特徴をメモをしながら歩いた。マリーニ《騎手》、佐藤朝山《巣鶏》《青鳩》、岸田劉生《白狗図》など、子供達は小さな作品まで見落とさずによく観察していた。

   

 実習室に戻り、自分が作品にしたい動物について「種類」「ポーズ」「性格」「住みか」「大きさ」「年齢」などのイメージを言葉に書き出し、写真や図鑑などを参考にしながら「顔」「手」「足」「身体」の部分にわけて特徴を簡単にスケッチした。
 版と同サイズの用紙に下絵を描き、半透明のポリエチレン版をのせて透かしながらニードルで線を刻んでいった。

   

 版に刻んだ傷にゴムベラで銅版画用油性インクを詰め、寒冷紗、ウエス、週刊マンガの古紙で余分なインクを拭き取る。

   

 短毛のローラーでアクリルメディウムを版面全体に塗布。メディウムが乾かないうちに見当合わせをして用紙を置き、手の平で軽く押さえて充分に乾燥させる。乾燥後にシールを台紙からはがすように、用紙を端から持ち上げて刷り上げる。

   

 多色刷りは、ローラーでアクリルメディウムを塗布した段階で用紙を乗せずに乾燥させて、ポスターカラー、クレヨンなどで手彩色した。絵の具が乾いたら再度ローラーでアクリルメディウムを塗布し、すぐに用紙を置いて同様に刷り上げた。
 プレス機などの特殊な専用機材を使うことなく、短時間で気軽に凹版画を楽しむことができた。(橋本淳也)