生きること・描くこと 戦後の名作にみる人間像
会期:1984年7月22日-8月19日

 美術の歴史において、人間を描くことは主要なテーマのひとつであり続けた。画家にとって人間とは、最も親しい対象でありながら、深い内省と鋭い社会認識を要求するという点で、最も難解な対象でもある。そして描かれた人間像は、それを見る私たちにとって、時代に生きた人々の記録であり、私たちの自画像である。
 本展では、今日を代表する作家のなかで人間を描き続けた31人の洋画家、日本画家の代表作134点を展示した。これによって、戦後から今日に至る絵画のバラエティーに富んだ表現をみるとともに、戦後の社会に生きた人々のさまざまな姿をみつめようとするものであった。
ミロ回顧展
会期:1984年9月1日-9月30日

 ピカソやダリと共にスペインに生まれ、多くの分野に革新的な技法や表現を発見した画家ミロは、本展開催準備中の1983年12月25日にその90歳の生涯を閉じた。
 回顧展となった本展覧会では、フォーヴィスムやキュビスムの影響を受けた初期のバルセロナ時代から、1920年にパリに居を移し、ダダイスムやシュールレアリスムの嵐の洗礼を受けたパリ時代、フランコ政権に対する反抗の時代、そして晩年のマジョルカ島の時代に至るミロの生涯にわたる芸術活動を、油彩・水彩・素描・版画・彫刻・陶芸・タピスリーの幅広い領域におよぶ172点の作品によって回顧した。
 また、写真家でミロの友人でもあったカタラ・ロカ氏の写真パネルを展示し、芸術家ミロのありし日の姿を紹介するとともに、日本人との交流を示す関係資料をあわせて展示した。
現代東北美術の状況展
会期:1984年10月13日-11月18日

 開館記念展の一環として、青森、岩手、秋田、山形、宮城、福島の東北各県出身及び在住の現存作家に焦点をあて、日本画、洋画、版画、彫刻の4部門にわたる現代美術の多彩な表現を概観する「現代東北美術の状況展」を開催した。
 この展覧会は、本館が公立美術館として地域社会に根ざした活動を展開していくとの方針にもとづき、福島を含めた東北の美術を展望しつつ、新たな美意識の発見を期待して企画されたものである。
 今回は、日本画12名30点、洋画19名57点、版画10名50点、彫刻18名37点の計59名174点による新作旧作を展覧、さながら現代日本美術の縮図の感を呈して興味深いものがあった。
 今後、関係作家資料及び情報の収集・蓄積、調査研究活動等により本展を継続させながら、地域美術界の動向を明らかにしていきたいと考えている。
現代版画の軌跡展
会期:1985年2月15日-3月24日

 日本美術における現代版画の制作は、第二次大戦後の海外展における駒井哲郎、斎藤清、棟方志功らの受賞を契機として、次第に活発となった。日本人作家の海外展での受賞はその後も相次ぎ、また、1957年には第1回東京国際版画ビエンナーレ展が開催されるなど、50年代から60年代に版画界は大いに活況を呈した。技法的に見れば、シルクスクリーンの普及と写真技術の応用が、表現の多様化を促したといえる。70年代になると版概念そのものが多様化し、複写機やVTRによる作品も「版画」として制作された。
 本展では、代表的な作家43名による版画作品185点を展示し、上述したような戦後国内版画の流れを展望した。