生誕100年 川端龍子展
会期:1985年4月20日-5月19日

 川端龍子(1885-1966)は近代日本画を代表する画家で、院展の同人として活躍し、後には独立して青龍社という団体を主宰し、会場芸術を主張するなど、日本画の世界に新風をまきおこした。龍子は、機知に溢れた主題や時事的な話題を多く描き、また全国各地を旅して、詩趣に富んだ紀行画を確かな技巧によって描いた。
 本展は、青龍展の出品作を中心に、「奥の細道」を描いた作品など代表作57点を展示し、今年生誕100年を迎えた川端龍子の芸術を回顧した。
ミレーとバルビゾンの画家たち
会期:1985年6月29日-7月28日

 19世紀ヨーロッパの風景画史に多大なる足跡を残したミレーを初めとするバルビゾン派の絵画が我国へ本格的に請来されたのは戦後のことである。明治初期、工部美術学校の外人教師であったイタリア人画家フォンタネージがミレーの素描を教材用に持参したり、黒田清輝や浅井忠が留学中にバルビゾンを訪れ、安井曽太郎が若き一時期ミレーに私淑するなど、バルビゾン派が日本の近代美術史に少なからぬ関係をもったことは事実である。しかし、ミレーに対する一般の愛好に根強いものがあっても、バルビゾン派全体を見わたし、評価し直そうとする動きは世界的にも最近のことである。
 本展はそうした動向に呼応して、ミレーを中心にルソー、ディアズ、デュプレ、トロワイヨン、ジャック、ドービニーらいわゆる「バルビゾン派の七星」を含む21作家の油彩画、水彩、素描、パステル98点を展覧し、バルビゾン派絵画の多様性と全体像を探った。
 今回は、バルビゾン派の作品をその同時代から積極的に収集していたアメリカ人のコレクションとアメリカ各地の美術館の所蔵品により展観した。
自然のかたちと美術 空と地と水と木と
会期:1985年8月6日-8月25日

 日本人は、自然のかたちや現象の中に美しさや風情を感じ、信仰や崇拝の心さえ抱いてきた。自然をつぶさに観察し、深い感心と親愛を育んできた豊かな感性は、さまざまなかたちで美術にも反映し、多くの優れた作品を生み出してきた。
 「自然のかたちと美術」展では、自然の事象の中でも、とりわけ身近な空、地(土)、水、木に焦点をあて、その多様な表現を示す79点の作品を通じて現代の自然観を探ろうとした。
 また、夏休みの機会を利用して家族連れで気軽に観覧しながら、日頃見慣れている自然やあるいは、ややもすると見過ごしている自然の姿を再認識し、あわせて美術家たちの鋭い観察眼と、その造形の楽しさに触れることもねらいであった。
斎藤清墨画展
会期:1985年8月31日-9月23日

 福島県会津坂下町出身の斎藤清(1907-1997)は、版画家としてサンパウロ・ビエンナーレで受賞するなど国際的に高く評価されているが、墨画においても独自の境地を拓いている。
 本展は、1960年代の作品から今年制作された最新作までの墨画70点と、新作を中心とした版画および素描39点を展示し、斎藤芸術の多様な世界を紹介した。
第1回具象絵画ビエンナーレ
会期:1985年9月28日-10月27日

 わが国の近代絵画は、ここ1世紀ほどの間に芽吹き、世界の美術の動向と深くかかわりながら開花し、結実してきた。
 特にこの半世紀の世界の美術思潮は非常な速度で変転して、具象絵画より抽象絵画が広がり、さらに今日ではグラフィック・デザインや映像美術へと多様な展開を見せている。
 このような美術状況のなかで、あらためて絵画における具象的イメージが何であるかを考え、具象絵画が今日持つ意味と将来への可能性をさぐる必要があると考えられる。
 この展覧会では、現在洋画界の第一線で制作活動をする作家72名の作品を展示し、具象絵画の今日的意味と将来への可能性を展望した。
日本の四季 京都国立近代美術館所蔵名品展
会期:1985年11月2日-12月1日

 京都国立近代美術館は、昭和38年に開設された国立近代美術館京都分館が昭和42年に独立したもので、現在までに1,200点余の作品を収蔵している。
 この展覧会は、京都国立近代美術館の所蔵作品の中から日本画・洋画・工芸の3分野にわたる107点の名品を選び、これを「日本の四季」というテーマのもとに展観した。
 周知のように、京都は美術・工芸の長い伝統をもち、今日においても新たな創造活動の母体として揺るぎない地位を占めている。本展覧会の出品作品は、この京都で活躍した作家の作品を中心としたもので、豊かな季節感、および京都の伝統を近代的によみがえらせた鋭い感覚にあふれ、京都における近代日本美術の流れを概観するものとなった。
隆盛期のポスター展 エッセン・ドイツポスター美術館所蔵品を中心に
会期:1986年2月15日-3月23日

 ポスターは高度に発達した経済社会における大衆への広報手段であり、同時にポピュラーアートとしての顔を持っている。その時々、その国々の政治、経済、社会、風俗の生き生きとした反応が敏感に、かつ色濃く投影されていて、その意味では、ポスターは時代の顔、証言者であると言える。
 この展覧会は、今日のように、テレビなどの映像伝達が普及する以前にさかのぼって、ポスター活動がもっとも華やかだった19世紀末から20世紀中頃までの世界のポスターを集めた。ロートレック、ミュシャ、クリムト、カンディンスキーなど、これまで著名な画家によるものも多く、芸術的にも優れたものである。
 さらに、ウィーン分離派やバウハウスのポスター、そしてソヴィエトのアジトプロップ(アジテーション・プロパガンダ)のポスターなど、これまで比較的目にする機会の少なかったポスターも含まれている。
 展示ではポスター312点を単に展示するだけでなく、レーザーディスクによる映像を作って、ポスターの歴史を立体的に構成して、ポスターとともに放映した。その時代、背景をあわせて映し出すことで、時代や社会の中のポスターの現実の姿を改めて確認する展覧会となった。