大原美術館所蔵品展 近代日本洋画の名作
会期:1986年4月19日-5月18日

 大原美術館は、1930年大原孫三郎氏によって、日本で最初の西洋近代美術館として岡山県倉敷に設立された。大原氏の委嘱を受けた洋画家児島虎次郎がヨーロッパで蒐集した西洋美術の名品は「大原コレクション」として戦前戦後を通じてわが国の美術界に多大に貢献してきた。同美術館はその後も現在に至るまで多方面にわたって蒐集を拡大し、充実したコレクションを形成している。
 本展は、この大原コレクションの中から、特に近代日本洋画の名品を選び、また大原美術館とゆかりの深い児島虎次郎、満谷国四郎の作品を併せて展観したものである。
江戸の華 浮世絵名品百選展
会期:1986年5月31日-6月29日

 浮世絵は江戸時代後半、庶民の芸術として隆盛をきわめた。当時の人気役者や評判の美人、名高い風景などが、工夫を凝らした構図と、鮮やかな色彩で描かれた浮世絵は、日本絵画の伝統に類無い世界を造りあげた。また、浮世絵は19世紀末、ヨーロッパでその造形表現が注目され、印象派の画家たちなどに少なからぬ刺激を与えたことが示すように、美術史のうえでも高く評価されている。
 この展覧会は、屈指の浮世絵コレクションを誇る(財)平木浮世絵財団(リッカー美術館)の所蔵品のなかから、その名品100点(重要文化財5点重要美術品65点を含む)を厳選し、初期の菱川師宣から葛飾北斎、歌川広重にまで至る、浮世絵の歴史を飾る画家たちの代表作によって、その個性と表現の多様化を展望した。また、会場では、鑑賞の一助として「浮世絵の歴史と技法」と題し、浮世絵の制作過程を示す資料や道具類、また浮世絵の歴史と表現技法を示す展示も併せて行った。
いわさきちひろ展 子どもと愛と夢をつづる絵本の世界
会期:1986年7月12日-8月24日

 わが国を代表する絵本作家の一人として広く知られているいわさきちひろは、子どもの生き生きとした姿を描きながら人間の純粋な心の世界を追及して、多くの人々に親しまれてきた。また、その清潔で抒情性あふれる作品は、戦後のわが国の絵本美術の領域に独創的な足跡を残したといえよう。
 本展は、「物語絵本」から「絵で展開する絵本」に至るまで数々の名作・名場面を生み、絵本美術を子どものみならず大人の世界へと導いたちひろ芸術を。絵本原画、雑誌・教科書原画等約200余点に鑑賞し回顧しようとするもので、美術としての絵本を考える上にも意義深い展観となった。
英国・国立ウェールズ美術館展 イギリス風景画から印象派へ
会期:1986年8月30日-9月28日

 イギリスの西方、ウェールズ地方最大の都市カーディフにある国立ウェールズ美術館は、印象派やバルビゾン派をはじめとした19世紀フランス美術の名品の収蔵で知られている。
 本展は、この美術館の収蔵品の中より、17世紀から19世紀にわたるヨーロッパ絵画、彫刻の巨匠39作家の作品90点を選りすぐって展示するものであった。
 モネ、ピサロ、ルノワールといった印象派及びセザンヌ、ゴッホなど19世紀フランス絵画の巨匠の作品を中心に、ウィルソンからターナー、コンスタブルへと続く英国風景画の代表的作家たちの作品、さらにイタリア古典絵画を加えて、ヨーロッパ絵画、殊に風景画の流れが展望できる内容であった。
関根正二とその時代 大正洋画の青春
会期:1986年10月10日-11月9日

 この展覧会は、三重県立美術館との共同企画展として開催された。内容的には、その展名の示すように関根正二の作品と、伊東深水、河野通勢、上野山清貢など彼と交友のあった同時代の18作家の作品で構成し、大正という時代状況を通じて関根を、また、そのことを通じて大正という時代のある断面を明らかにするものであった。
 関根の現時点での集大成を目指す展覧会として取り組まれた本展は、新たに発見された油彩3点、水彩・素描3点を含め、関根作品の展示総数、油彩21点、水彩2点、彫刻1点、日本画5点、デッサン類58点、合計87点(115画面)、他に「文章世界」など関根の挿画10点、「慰められつゝ悩む」の絵はがき1点、遺作展覧会目録「信仰の悲み」1点を数えることとなった。文学・演劇と関根、河野通勢・安井曽太郎と関根など、本展覧会および展覧会図録によって、関根研究のさらに進むべき方向が少なからず明確にされた。
川上澄生版画展 南蛮情緒と回想の文明開化
会期:1986年11月15日-12月14日

 大正から昭和にかけて活躍した版画家・川上澄生(1895-1972)の作品は、桃山時代の南蛮船や明治の開化風俗を主題とした異国情緒となつかしさにあふれ、現在でも多くの人々に親しまれるとともに、日本近代版画史の上でもその独自性が高く評価されている。なかでも手彩色の施された木版画や、それらに文字を加えて一冊の本とした作品などは、一点一点が微妙な違いを見せ、少部数の作品に丹精を込める制作態度と相まって独特の魅力ある世界を形づくっている。
 本展では、川上澄生の世界をその初めから晩年にいたるまでの作品約200点で回顧し、また版画以外のガラス絵や玩具なども展示して、その豊かな創作精神の軌跡を展観した。
福島の美術家たちI
会期:1987年2月14日-3月22日

 福島県立美術館では、県出身、県在住ならびに県にゆかりのある作家を展覧会の場を通じて、継続的に紹介していく予定である。
 この展覧会は、美術の振興に大きく貢献している作家、独自の作風を確立し美術界で高い評価を受けている作家、新たな表現を求め、注目すべき活動をしている作家などの多様な制作活動を広く紹介するものである。