水と光との出会い 近代日本水彩画の展開
会期:1987年4月11日-5月10日

 日本水彩画は、幕末にヨーロッパからもたらされ、明治中期以降大いに隆盛し、本職の画家たちだけでなく、多くの美術愛好家が水彩画に親しんだ。この時代の画家たちは、水彩画を通して洋画という新しい技術を学び、それとともに自然、とりわけ風景に対する感受性を研ぎ澄まさせていったのである。このように日本人にとって親しみの深い領域でありながら、明治、大正期に描かれた水彩画の多くは今日所在が分からず、当時活躍した水彩画家の中には経歴も未詳の者が少なくない。
 この展覧会では、明治初めから第二次世界大戦に至るまでの日本の水彩画の歩みを鳥瞰し、近代日本文化における水彩画の意味を考察しようとするものであった。
ピカソ展 マリーナ・ピカソ・コレクション
会期:1987年5月16日-6月21日

 パブロ・ピカソは20世紀美術最大の巨匠といわれ、絵画のみならず彫刻・陶器、版画など様々な分野において極めて多彩かつ重要な活動をくりひろげた。ピカソがその生涯に制作した作品は数万点にも及ぶといわれているが、ピカソの死後のアトリエや住居から発見された多くの作品は、とりわけ質の高いものとして広く世界の注目を集めた。そしてそれらの作品は、遺族とフランス国家とに相続され、それぞれがピカソ芸術の重要なコレクションとなっている。
 この展覧会は、ピカソ直系の孫娘であるマリーナ・ピカソ夫人のコレクションから選んだ油絵、素描、陶器150点余を展観するものであり、初期から晩年に至るこれらの作品は、いずれもピカソの芸術の特質を知るのにふさわしいものばかりであった。
第2回具象絵画ビエンナーレ
会期:1987年6月27日-7月26日

 今日のイメージ表現は、現実への鋭い分析や問いかけなど、強い批評精神のもとに時代の貌(かお)といったものを描き出そうとしているように思われる。それは、いわゆる写実と呼ばれるようなものから、抽象的な傾向を示すものまで、作者の様々な視点から得られたイメージとして展開されている。
 本展は、昭和60年度に開催した「第1回具象絵画ビエンナーレ」に続くもので、今日活躍する洋画家25名の75点の作品により多彩な具象的表現の現況を紹介し、将来への可能性を展望しようとするものであった。
大原美術館所蔵品展 20世紀・世界の美術
会期:1987年8月1日-9月6日

 この展覧会は、昭和61年度に開催した「大原美術館所蔵品展 近代洋画の名作」に引き続いて開催したもので、大原コレクションの中から内外の現代美術の名品を展示した。
 大原美術館は1930年に大原孫三郎によって開館して以来、固定したコレクションにとどまることなくいくつかの分野へと収集を拡大している。とりわけ現代美術の作品群は、同時代の美術に積極的にかかわっていくという、この美術館の基本姿勢により一貫した収集が続けられてきたものである。その内容はカンディンスキー、クレー、キリコといった今世紀美術の先駆者のものから、現代美術の今日に至る流れを辿ることのできる質と量を誇っている。
 このような作品群を展示、紹介するにあたり、作品が制作された時代を展覧会構成の時間軸とし、このコレクションによって20世紀美術の流れを展望し、また日本と海外の美術の同時代的な関わりをも把握できるよう配慮した。これは展覧会図録の基本的な編集方針としても採用された。
大山忠作展 画業40年の歩み
会期:1987年9月12日-10月11日

 大山忠作(1922-2009)は、大正11年に福島県二本松市に生まれ、東京美術学校日本画科を卒業以降、戦後早くから日展を舞台に活動を開始し、日本画界において高い評価を受けながら現在も精力的に制作を続けている。出品作の人物画を中心に花鳥画、風景、鯉など多彩で幅広い領域をもっており、その作風も端麗な花鳥画から対象の本質に画想を求める人物画にいたるまで多様な展開をみせている。
 本展は、画業40年を迎えた大山の歩みを、日展出品作を中心に初期から近年の代表的作品、素描、パステル画約90点によって紹介し、多彩な作品に込められた画家の美意識の特色を再確認しようとするものであった。
現代東北美術の状況展・II
会期:1987年10月17日-11月23日

 この展覧会は、今日の日本に生起する美術の現況を東北6県の出身またはゆかりのある作家の作品によって紹介し、身近なところから現代美術を理解することを意図して企画された。
 今回は、昭和59年の開館記念展に次ぐ第2回目に当たるが、日本画・洋画・版画・彫刻の4部門、45作家・114点の作品には、いずれも各作家の現在の関心が充分に示されており、今日の美術が<何を><どのように>表現しようとしているかが概観できる内容となった。
北欧デザインの今日 生活のなかの形
会期:1988年2月13日-3月21日

 この展覧会は、デンマーク、フィンランド、アイスランド、ノルウェー、スウェーデン、の五カ国の現代デザインを幅広く紹介するものとして開催された。これらの国々のデザインは、第二次大戦後、インダストリアル・デザインを中心に世界各国のデザインに大きな影響を与えたことで高く評価されている。それは、北欧のデザインに、厳しくも豊かな自然と特殊な地理的環境の中で育まれた文化的伝統が生かされ、人と物との関わりが大切に保ち続けられているからにほかならない。
 当館では、内外の美術を紹介する様々な分野の展覧会を開催してきたが、今回は、私たちの日常生活の視点から美術をとらえる展覧会として、この北欧のデザイン展を位置づけて開催した。会場には日用品のほか、工場労働者の安全具、身障者のための補助具などもあわせて展示し、福祉先進国家と評される北欧のデザインと、それを生み出す社会的環境をも考える機会とした。