巴里の詩 パスキンとエコール・ド・パリ
会期:1988年4月16日-5月15日

 今世紀はじめのパリにはヨーロッパ各国やアメリカ、さらには遠く日本から多くの芸術家志望の若者が滞在して、自由な雰囲気の中で創作に打ち込み、芸術論を闘わせていた。本展ではブルガリア生まれのジュール・パスキンを中心に、シャガール、ヴァン・ドンゲン、キスリング、ローランサン、藤田嗣治らはエコール・ド・パリ(パリ派)の代表的な画家たちを紹介し、今世紀初めのパリの雰囲気を再現することを目指した。
 この展覧会は滋賀県立近代美術館との共同企画であり、北海道立近代美術館の協力によって、同館の所蔵作品の中からパスキンを中心とするエコール・ド・パリの画家たちの名作を展示した。
近代日本の陶芸 土と炎に賭けた人びと
会期:1988年5月21日-6月26日

 日本のやきものは、人々の生活と密接に関わる長い歴史をもっている。それは、日本文化全体に大きな影響を与えた大陸文化の影響下にありながら、独自の展開を遂げてきた。このような背景をもつ日本の陶芸は、明治以降、新たな局面を迎えることになる。明治になって日本の美術が受けた西洋文化の影響は陶芸界にも及び、制作者の意識も従来の陶工・職人としてのそれから、一人の芸術家としてのそれへと大きな変化をみせることになる。
 また、これを造形的な側面から眺めてみると、明治初期の西洋陶磁の影響、大正期に起こった民芸運動、昭和前期の古窯発掘に触発された伝統の復興、戦後の前衛陶芸など、さまざまな潮流が形成され、今日では陶芸の領域そのものがますます拡大する方向にある。この展覧会は、51作家、2製陶会社、3窯業地の作品160点により、明治の初めから今日までの日本の陶芸の展開を辿り、作家の造形意識と陶芸観の変遷を浮き彫りにしようとしたものである。
創造の森への誘い ヨーロッパ版画名作展
会期:1988年7月23日-8月21日

 市民社会の発展にともない、安価で表現力に富む効果的な伝達手段としても重要性を増したヨーロッパ版画は、一層深く社会と市民の生活に根ざしたものとなった。また、優れた芸術的才能をもった多くの作家が活躍したことも、ヨーロッパ版画を魅力あふれるものとした。こうして、ヨーロッパ版画は社会と人々の営みや、その内的世界をイメージ豊かに描いた作品を数多く生み出した。この展覧会は、ヨーロッパ版画にあらわれた人間像に焦点をあて、その展開をたどるとともに、夏休み期間中の展覧会として、特に教育普及的性格をあたえた。15世紀から今世紀までの35作家の作品170点を展示した。
近代日本洋画の巨匠 黒田清輝展
会期:1988年8月27日-10月2日

 黒田清輝(1866-1924)は、明治洋画の確立者、日本近代洋画の方向を決定づけた人として、今もなお高い評価を受けている。
 明治17年、フランスに留学した彼は、外光派の画家ラファエル・コランに師事し、穏やかで、明るい光に満ちた写実的な画風を学んだ。明治26年、パリから帰国した彼がもたらした清新な画風と、近代画家と呼ぶにふさわしい解放的で自由な精神のあり方は、当時の日本洋画壇においては革新的なものであり、多くの画家たちに大きな影響を与えた。また、彼は白馬会を主宰したり、東京美術学校西洋画科の初代教授を勤めるなど、明治後半から大正期にかけて、日本洋画界の指導的な存在として活躍した。
 この展覧会は、東京国立文化財研究所所蔵作品の中から「湖畔」「智・感・情」などの代表作を含む、油彩・パステル60点、木炭素描50点、その他写生帳、書簡、日記などの関係資料も展示して、初期から晩年に至る黒田清輝の画業を紹介するものであった。
日本画の現代 今を生き、そして描く
会期:1988年10月8日-11月6日

 現代の日本画界は、その長い歴史と伝統を背景として、独自の画壇を形成している。これは日本の美術界だけの特殊状況であるが、そのために、日本画の表現には時代や社会との関係が希薄になりがちなことがしばしば指摘されてきた。このようななかで、より今日的な意味を持ち得る日本画の可能性に挑戦している画家たちがいることも事実である。彼らの多くは、人間像や現代社会の諸相を描くことによって、画家自身と時代との関係を模索し、現代絵画として新たな造形表現を追求している。
 この展覧会は、このような制作を続ける日本画家26名の近年の活動に焦点をあて、我々とともに生きる画家たちによって描かれた現代の人間と社会を見つめ、あわせて現代絵画としての日本画の可能性を探ろうとするものであった。
光と色の賛歌 モネとその仲間たち
会期:1988年11月12日-1989年1月16日

 刻々と移り変わる自然の印象をありのままに描くことを目指した印象派の画家たち。その主張は近代絵画に大きな変革をもたらし、また彼らによって描かれた作品は、その明るい光と鮮やかな色彩の輝きによって今も多くの人々を魅了している。
 この展覧会では、印象派の中心として活躍したモネ(1840-1926)の作品40点によってその画業をたどるとともに、モネと親交のあったピサロ、シスレー、ルノワール、シニャック、マネら14作家の作品50点をも展示して、モネとその仲間たちが切り開いた新しい絵画の魅力を紹介した。
福島の美術家たち II
会期:1989年2月11日-3月21日

 この展覧会は、内外の美術界において目覚ましい活動を続けている本県出身、在住およびゆかりのある美術家の制作状況を広く紹介しようとするもので、昭和61年度に開催した第1回展に続く二回目の展覧となる。
 今回は、日本画、洋画、彫刻、工芸、書の5部門にわたる作家40名の作品で構成されているが、出品者は福島県総合美術展覧会をはじめとする県内外の様々な機会にそのすぐれた成果を発表している方々であり、今日の本県美術界の一端を俯瞰するにふさわしい展観となった。