生誕100年記念 中村彜・中原悌次郎と友人たち
本展は、中村彜、中原悌二郎の生誕100年を記念する企画展として、茨城県近代美術館と練馬区立美術館との共同企画のもとに開催された。
出品作品は、中村彜の新出作品を含む主要作品および中原悌二郎の全彫刻作品を中心に、荻原守衛、高村光太郎、石井鶴三、鶴田吾郎など中村屋サロンに集った美術家たち計23名の183点で構成された。特に、研究所時代から、悌二郎とともに四人組の一人に数えられながら忘れられていた本県須賀川市出身の広瀬嘉吉の作品2点と、彜作品と推測される銅版画3点を紹介し、少なからぬ反響を得たことは、成果の一つとして評価することができる。また、明治末から大正にかけての美術の特質、とりわけこの時期の美術家とその芸術観特有の宗教的雰囲気を明らかにし、考察する絶好の機会を提供できた意義は深い。
目黒雅叙園所蔵 日本画抒情名作展
東京・目黒雅叙園は、昭和前期に文展・帝展で活躍した鏑木清方、松林桂月、山本丘人らの当時の日本画の大家や将来有望な作家を招いて制作させた作品を天井、襖などに組み込んだ、有名な美術建築である。また、目黒雅叙園の創業者細川力蔵氏は、昭和初期から昭和18年にかけて文展、帝展、院展の出品作を1千点以上収集したことでも知られている。
この展覧会は、目黒雅叙園の所蔵の中から花鳥、風月、美人等、伝統的なテーマに日本的な情趣を湛えた名作約90点で日本画の抒情美の世界を紹介するものであった。
日本的フォーヴィズムの一断面 感性に生きた画家たち
西欧的な近代化が進んだ1920年代から30年代の日本では、美術の分野においても抽象美術やプロレタリア美術など、多様な芸術観や世界観に立脚した絵画が登場し、さまざまな表現が試みられた。第一次世界大戦の終結とともに日本から多くの若い画家たちが渡欧し、マティスやヴラマンクらフォーヴィズムの画家たちの絵画をはじめとするヨーロッパの新しい造形思考をもたらした。一方で、油彩という西洋絵画の技法によりながら、日本的な絵画の創出をめざした画家たちが多く登場したのもこの時代の特色である。
この展覧会は開館5周年を記念する展覧会として企画されたもので、日本の洋画史上重要な足跡を遺した21作家の代表作約100点を展示し、<日本的フォーヴィズム>の意義と成果を検証しようとするものである。
フランス・ガラス工芸の巨匠 ルネ・ラリック展
今世紀前半のフランスを中心に流行したアール・デコ(装飾美術)の様式は、機械文明の進展を反映した直線と幾何学的な構成によるデザインや量産体制の確立などによって、当時の生活空間に豊かな彩りをもたらした。その中でも、ガラス工芸の分野で中心作家として活躍したのがルネ・ラリック(1860-1945)であった。ラリックは、時代の要求に応じて量産技術と作品の芸術的価値の調和をはかる一方、ガラス素材の研究や型吹き技術に工夫を重ね、従来の一品製作的なガラス工芸のあり方に新風を送り込んだ。
本展は、花瓶、鉢、皿、香水瓶から自動車のラジエーター・キャップや彫像などを含む、ラリックの作品213点を展示してラリックの芸術の精華を示すものであった。
抽象彫刻の旗手たち
日本の現代彫刻は1960年代以降、石や木、鉄、ステンレス、アルミニウム等の様々な素材を駆使しながら、その素材に対する細やかな感性と作品を構成する空間意識において独特の世界をつくり上げ、この分野で高い評価を得る作家が数多く輩出してきた。また、人体などを写実的に表現する具象彫刻とは異なり、様々な素材の持ち味を生かしながら自由な構成体をつくる抽象彫刻は、それ自体が空間をかたちづくるものであり、今日、都市化した私たちの生活環境にも深く浸透している。
本展は、国内外でめざましい活躍ぶりをみせる、わが国の抽象彫刻を代表する作家28名により、近作、新作約35点を一堂に展覧し、その多様な表現に親しむとともに、あわせて将来の方向をも展望しようとするものであった。
第3回具象絵画ビエンナーレ 人の生きる・今
多様な傾向の見られる今日の絵画のなかで、具象絵画も、また、多彩な表現を呈するに至っている。具象絵画の様々な側面を紹介する<具象絵画ビエンナーレ>は、このような状況下で1985年の第1回以来3回目を迎え、今回は、洋画だけでなく、日本画家からも出品を求め、また、<人の生きる・今>というテーマを設定した。
この展覧会は、33名の日本画家、洋画家による66作品によって、多様な技法を用いて試みられた具象的表現の現在を展望するものであった。
浮世絵100年の系譜 北斎、広重から五葉、深水まで
江戸時代に庶民の芸術として盛んになった浮世絵は、個性豊かな絵師たちとすぐれた腕前を持った彫師や摺師たちによって数多くの名作が生み出され、日本の文化を代表するものの一つとして海外でも高く評価されている。
この展覧会では、盛期の浮世絵につながる1830年頃から新版画の時代までのほぼ100年間の木版画の名作約230点の展示を通して、日本人の生活に密着し、伝統的な美意識を反映してきた浮世絵が、明治維新をはさんで急激な近代化の道を歩んだ日本の社会の中で、どのような展開をみせたのかを明らかにしようとした。
会場では、鑑賞の一助として、浮世絵の制作過程を示す資料や道具類、また浮世絵の歴史と表現技法を示す資料や道具類、また浮世絵の歴史と表現技法を示す展示等も併せて行った。
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