シリーズ東北の鼓動I 棟方志功と斎藤清
会期:2000年7月20日-8月27日

 「シリーズ東北の鼓動」は、東北地方ゆかりの作家を分野別に取り上げ、対比的に検証していこうとする展覧会シリーズである。その初回を飾る本展では、版画家、棟方志功(1903-1975)と斎藤清(1907-1997)にスポットをあてた。
 青森県青森市出身の棟方と、福島県会津坂下町出身の斎藤は、日本近代版画の中でも特に木版画の分野でひときわ個性的な表現を打ち出した作家といえる。彼らはともに、日本国内はもとより海外においても高い評価を得ている。
 土着のエネルギーと生命の躍動感が、強烈な白黒対比や華やかな色彩、力強い造形の中に脈打つ棟方の版画と、故郷会津や古都、外国など様々な題材をもとにモダンで清明な画面を生み出した斎藤清の版画。その動静の対照性には、東北地方の精神風土が色濃く感じられる。
 本展では、この対照的な二人の芸術家の200点以上にもおよぶ代表作を一堂に展示し、それぞれの個性あふれる芸術の世界を紹介するとともに、二人の芸術に相通じる文化や風土の固有性をあらためて検証した。
20世紀アメリカン・リアリズムの巨匠 エドワード・ホッパー展
会期:2000年9月2日-10月15日

 エドワード・ホッパー(1882-1967)は、ニューヨーク市の北、ハドソン河沿いの町ナイアックに生まれた。美術を志した彼は、世紀の変わり目にニューヨークへ出て本格的な作家活動を開始している。以来60年間、ホッパーは大都会ニューヨークの下町に住みながら、20世紀の大都市として大きく変貌していく都市風景や、日常生活の中の人々の姿、近代化の波に侵されつつあった田舎町やニューイングランド地方の海岸風景などを題材として、当時のアメリカのありのままの姿を真実味をもって表現した。
 また生涯を貫く彼の徹底したリアリズム絵画は、都市の猥雑でエネルギッシュな姿よりも、都会の孤独な人物、人のいない風景、室内の女性、灯台や静かな海辺のヨットなど、静寂で内省的な情景を独自の詩情をたたえながら描き上げている。こうしたホッパーの独創的な絵画芸術は、万人の心を強く魅了する力を持つとともに、20世紀アメリカ絵画史のなかでとりわけ高く評価され、アメリカの国民的画家として多くの人々の支持を得ている。
 本展では初期から晩年の約90点の作品によりホッパー独自の世界を展観した。
江戸モード大図鑑展
会期:2000年10月28日-12月10日

 小袖は、きものや和服とよばれている日本伝統の衣服の古称である。中世半ばには表着としての品格と形式を獲得し、江戸時代にはいると多彩な文様と独特の装飾様式によって一躍脚光を浴び、時代の流れに応じて、織や染のあでやかさや意匠の斬新さが競われるようになった。
 その形態は、桃山時代から江戸時代を通じて、ほぼ変化しないにもかかわらず、森羅万象のモチーフが意匠にとりこまれ、制作者のさまざまな創意工夫がうかがわれる。このような華麗な小袖が、ある程度の経済力を有する人々に享受される一方、出版や芝居などを通じて庶民にまで浸透して、江戸のモードは活気を帯びた裾野の広いものになった。
 この展覧会では、国立歴史民族博物館が所蔵する名高い野村コレクションの小袖類を中心に、同時代の邸内遊楽図や寛文美人図、浮世絵などを併せて展示し、江戸時代の人々が美を競った小袖の特質やその豊かな展開を紹介した。
特集展示 日本画にみる人物表現
会期:2001年1月27日-2月12日

 「人」を描いた絵画というと、すなわち人物画ということになるが、実はこの名称は、美術の分野において明確な基準で使われている区分ではない。洋の東西、古今によって「人」はさまざまな目的で、さまざまな意味を付加され、さまざまに表現されてきた。そして日本画家にとっては、肖像画や歴史画、風俗画などの枠組みの中で描かれてきたはずの「人」は、実はもっとも難しいテーマの一つとなった。
 この特集展示は「人間とはなにか」を表現するために日本画がたどった軌跡を、収蔵作品20点あまりによって見ていこうとするものであった。
丸沼芸術の森所蔵 アンドリュー・ワイエス水彩素描展
会期:2001年2月24日-4月8日

アメリカ絵画の根底には、リアリズムという写実主義の流れが脈打っている。アンドリュー・ワイエス(1917- )はこの伝統を受け継ぐ作家として、国民的な人気を得てきた。
 ワイエスの描く対象は、住み慣れた故郷ペンシルヴェニア州チャッズ・フォードと別荘のあるメイン州クッシングに限られている。いずれも静かな田舎町で、ワイエスは身近な風景、あるいはそこに住む親しい人たちの日常を、日記を綴るかのように描き続けてきた。特に、メインの海にほど近い質素な一軒家に住むクリスティーナとアルヴァロの姉弟を、出会いから亡くなるまで30年にわたって描き留めたオルソン・シリーズは、ワイエスの画業の中でも重要な位置を占めている。本展では、丸沼芸術の森が所蔵するこのシリーズの作品群の中から115点の水彩と素描を展示した。
 なおこの展覧会に併せて、新潟県立近代美術館の寄託作品10点を紹介する「アンドリュー・ワイエス特別展示」を開催した。