熊田千佳慕展 はな・むし・とり・ゆめ
会期:2002年4月27日-6月2日

 熊田千佳慕(1911-)は、二本松市ゆかりで横浜市出身の童画家である。戦後日本を代表する絵本作家の一人として、イタリア、ボローニャ国際絵本展に招待出品し、小学館絵画賞を受けるなど、近年その特異な画風が注目されている。
 幼少の頃、ファーブル昆虫記の世界に魅せられ、卒寿をこえた現在もひたすら虫や花の世界を精魂込めて緻密に描いていく姿は、まるでファーブルその人の禁欲的な求道精神を体現するかのように思われる。
 『ふしぎの国のアリス』『ピノキオ』『みつばちマーヤ』そして『日本の虫たち』など、だれでも一度は目にしたことのあるなつかしい絵本の世界を改めて見直すとともに、画家のあたたかいまなざしに触れることを目指した。
北澤美術館所蔵 アール・ヌーヴォーガラス名品展
会期:2002年6月14日-8月4日

 フランス語で「新しい芸術」を意味するアール・ヌーヴォーは、19世紀末から20世紀初頭のヨーロッパ各地で起こった装飾デザインの革新運動である。自由奔放な曲線を強調したこの新しい様式は急速に広まり、一世を風靡した。
 なかでもガラス工芸の分野は、自然の世界に息づく昆虫や植物の姿を題材に、流れるような曲線的デザインと華やかな草食性を見せ、まさしく「アール・ヌーヴォーの華」的な存在といえる。エミール・ガレ、ドーム兄弟といった才能豊かなガラス工芸家が、こまやかな自然観察をもとに、豊かな想像力と多彩なガラス技法を駆使して作り上げた幻想的な作品は、現在に至るまで高い人気と評価を得ている
 長野県諏訪市と山梨県清里町にある北澤美術館は、世界的なアール・ヌーヴォーガラスのコレクションで知られている。本展では北澤美術館のコレクションから、140点余の名品を厳選し、紹介した。
特集展示1 屏風絵の世界
会期:2002年8月10日-18日

 間仕切りの道具であった屏風は、ふすま絵とともにかつては室内装飾の華として、日本画家たちの腕の見せ所であった。明治以降は和室の調度品というよりは、次第に展覧会用の大画面作品へと性格を変えていった。今回の特集展示では、小茂田青樹、福田豊四郎など館蔵・寄託の屏風絵の名品10点を展示し、その魅力を紹介した。
東北の美―縄文から現代まで―
会期:2002年8月31日-10月14日

 厳しくも豊かな恵みをもたらす東北の大地。自然に従い、その恵みを受けてくらしてきた東北の人々は、生活の中から独自の文化を育んできた。その文化は決して孤立したものではなく、都などとの交流と、風土によって磨かれた感性が融合して形作られたものといえるだろう。
 本展では、<信仰><くらし><美術>の三つの視点から、東北の人々の美意識が結実した作品を集めた。土器・土偶などの出土品、仏像や曼荼羅などの仏教美術、さらには幅広い階層職業の人々が身につけた衣装など幅広い分野から選ばれた、国宝・重要文化財を含む約140点により東北の美とは何かを探る企画であった。
ドイツ表現主義の芸術 「ブリュッケ」から「青騎士」—躍動する色彩と生命のかたち
会期:2002年10月26日-12月1日

 ドイツ表現主義は、フォーヴィスムやキュビスムと並んで20世紀初頭に展開した芸術運動です。その名の通りドイツを中心に展開したこの運動は、絵画の分野のみならず、音楽、文学、演劇、映画を含む一大芸術運動であり、同時にそれは、当時のドイツの政治的、社会的状況を色濃く反映した思想的な運動でもあった。
 本展では、中心的な役割を果たした芸術家集団「ブリュッケ」「青騎士」、そしてその周辺の画家たちの油彩、水彩、版画約110点を展示、紹介した。あわせて関連事業としてドイツ表現主義映画の代表作の上映、表現主義音楽についての講演会を開催し、絵画だけにとどまらない、表現主義の広がりも紹介した。
特集展示2 斎藤清 墨の世界
会期:2002年12月14日-2003年2月2日

 木版画として知られる斎藤清(1907-1997)は、1960年代から80年代にかけて墨画の世界でも独自の境地を切り拓いた。濃墨をこすりつけるようにして描いた60年代の外国風景から、水彩風に描いた70年代の「野仏」、墨のにじみで雪景色を描いた80年代の「会津の冬」と、それぞれに独特の趣がある。当館所蔵品を中心にした本展では、版画作品との比較を交え、斎藤の自由な墨の世界を紹介した。
新潟県立近代美術館所蔵 日本近代美術の名作展
会期:2003年2月15日-3月23日

 福島県立美術館と新潟県立近代美術館が全面的に協力して、両館が所有する特徴ある作品を交換しあって展示する初めての試み。
 新潟県立近代美術館は2,500点に及ぶ作品を所蔵しており、その優れたコレクションの中から、浅井忠、佐伯祐三、横山大観、土田麦僊、鏑木清方など、私たちに馴染みの深い日本画、洋画の名作約70点を紹介した。
 なお同時期に新潟県立近代美術館でも、当館所蔵のアンドリュー・ワイエス、関根正二などを中心とした「福島県立美術館コレクション展」を開催した。