名画の散歩道 三重県立美術館名品展
三重県立美術館のコレクションは、江戸期の絵画から西洋近代洋画の優品まで、多彩かつ広がりをもったコレクションを形成しており、その総数は約5,000点にのぼる。今回のノ展覧会では、<日本絵画のダイナミズム><色と形の軌跡><魅惑の西洋絵画>の3つの始点から構成し、重要文化財を含む約70点の作品を展示紹介した。
曾我蕭白の襖絵から、横山操の大作「瀟々八景」、安井曾太郎・梅原龍三郎ら近代絵画、そしてゴヤ、ルノワールらに代表されるスペインとフランスの美術に至るまで、名画に親しむ絶好の機会となった。
フランス近代絵画のながれ ミレー、ルノワール、ゴッホ...美の誘惑
19-20世紀のフランス近代は、さまざまな美術が華開いた百花繚乱の時代である。人間の激しい感情や、光や大気の中で移ろう自然の風景、色彩や線そのものの美しさの表現を求めた画家たちによって、ロマン主義、バルビゾン派、印象派、フォーヴィスムなど、魅力あふれる革新的な絵画が次々と生まれ、近代美術の歴史を形成していった。
この展覧会はさながら、名画でたどる美術のガイドブックのように、ドラクロワをはじめ、コロー、ミレー、モネ、ルノワール、ゴッホまで、約100点の作品によって、フランス近代絵画のながれを紹介するものであった。
大岩オスカール 夢みる世界
大岩オスカールは、ブラジル移民2世として1965年にサンパウロに生まれた。91年のサンパウロ国際ビエンナーレに出品して作家への第一歩を踏み出した後、東京、ニューヨークと移り住みながら、現在まで活躍を続けている。
本展では、サンパウロから始まる大岩の20年にわたる活動の軌跡を、絵画を中心に振り返った。旅を続けてきた大岩は、それぞれの都市で時代や歴史を感じ取りながら世界に向き合ってきた。現実と夢の間を行き来する複眼的なその作品世界は、同時代を生きる私たちに向けて多くの示唆を与えるものとなった。
会期中には大岩オスカールによるトーク、ワークショップを開催したほか、館内の各所に展示した作品を案内するガイドブックを作成するなど、その作品世界の紹介に努めた。
特集展示1 ルオー《ミセレーレ》展
「大岩オスカール 夢みる世界」展と同時開催した特集展示。
20世紀最大の宗教画家ジョルジュ・ルオー(1871-1958)の「ミセレーレ」は、ルオー版画の最高傑作とされる。父の死や第一次世界大戦を契機に構想され、1922-27年にかけて制作、1948年に版画集として刊行された。
本展では、人生の苦悩、悲惨、救済をテーマに、王や裁判官、道化師や娼婦、そしてキリストの受難などを光と闇の世界にとらえ、深い漆黒の画面に表現した「ミセレーレ」全58点を一堂に展示した。
伊砂利彦 志村ふくみ 二人展 ―染める、織る 最前線―
ともに1924年生まれの伊砂利彦と志村ふくみは、日本染織界をリードし、確かな表現技術で常に革新的な作風を展開してきた。
伊砂利彦は型絵染めという技法により作品を作り続けているが、鋭い観察眼に裏付けられた自然の姿は、この技法によって明快な形とリズムを与えられ、普遍的な形象にまで高められている。
志村ふくみは草木染めと紬織りの技術を開拓し、1993年には文化功労者に選ばれている。植物染料による透明感ある色彩と、素材を生かした平明な織りが特徴で、着物を中心とした作品を発表している。
本展では、既に高い評価を受けている二人の作家の活動の軌跡と現在を、代表作と新作約110点により紹介したほか、二人がはじめて取り組んだ共同制作2点を展示した。
福島の新世代2009 CLOSE TO YOU!―もっと近くに
福島県ゆかりの気鋭作家を紹介するシリーズの第4回展。会津若松市出身の宇田義久、郡山市出身の金暎淑(KIM Yongsuk)、石川町出身の車田智志乃と埼玉県出身の土谷享によるユニット、KOSUGE1-16の3組を紹介した。
宇田はパネルに木綿糸を張った独自の技法による抽象絵画「water-line」シリーズから22点を発表。金は100日間にわたって毎日自分の葬儀を行った写真をもとに新作インスタレーション「毎日死んでいく私のためのお葬式」を展示。KOSUGE1-16は、地元の小学生と共同で米づくり、煎餅づくりに取り組んだ「ケンビ煎餅」プロジェクトを展開。三者三様の表現ながら、現代美術の多様性を強く窺わせる展示となった。
本展には制作アシスタントとして福島大学の学生が参加したほか、会期中の関連事業として、県内の学校と連携したワークショップ、レクチャーを開催するなど、地域との協同を試みた。
特集展示2 生誕100年 菊地養之助展 永遠の母子像をもとめて
「福島の新世代2009」展と同時開催した特集展示。
戦後日本画団の革新を担った団体、創画会。その創立会員として活躍した、会津本郷町出身の菊地養之助(1908-2003)の画業を、生誕100年を機に振り返った。
菊地は第二次大戦後、福島市出身の吉井忠らと日本アンデパンダン展に加わり、庶民のかざらない生活や、母子を中心とした家族愛をテーマに作品を描いている。本展では、作家の没後に寄贈された作品を中心に40点あまりを展示、永遠の母子像をもとめた画家の軌跡をたどった。
特集展示3 生誕100年 吉井忠展
「福島の新世代2009」展と同時開催した特集展示。
福島市出身の吉井忠(1908-1999)は、昭和の洋画壇で活躍した画家である。戦前・戦中は池袋モンパルナスと呼ばれる芸術家村で同時代の画家と交友を深めながら、時代不安を反映した作品を発表。戦後は旅を繰り返し、東北に生きる人々をルポルタージュ的な視点でとらえて表現した。
本展では生誕100年を記念し、当館所蔵作品を中心とする油彩約30点のほか、スケッチ、著作や挿絵の仕事にも焦点を当て、吉井の芸術を多方面から振り返った。
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