美のふるさと 秋田県立近代美術館名品展
会期:2010年4月17日-5月16日

 当館ではかねてより、近隣美術館とのコレクション交換展覧会を実施してきた。その第3回展として今回は、秋田県立近代美術館の協力により、同館コレクションを紹介した。
 秋田県は個性的な日本画家を数多く輩出したことで知られる、まさに「美のふるさと」である。小田野直武に代表される秋田蘭画や、平福穂庵・百穂父子、福田豊四郎など、素朴さと気品とをかねそなえた画家たちを排出している。本展では重要文化財を含む名品70余点により、200年の美のあゆみを辿った。
世界で一番美しい庭 アンドレ・ボーシャン展
会期:2010年5月29日-7月4日

 アンドレ・ボーシャン(1873-1958)は、正規の美術教育を受けることなく個性的な創作活動を行った〈素朴派〉の画家である。
 フランス中部の小村シャトー=ルノーで園芸師をしていたボーシャンが本格的に絵画の制作を始めたのは、40代半ばを過ぎてからのことであった。第一次世界大戦の兵役から戻ると静かな森に引き籠もり、ギリシャ神話・聖書・古代史の世界や、身近な花々、自然の風景などを、緻密な描写と鮮やかな色彩によって生き生きと描き出していった。
 その天真爛漫な作品の数々は、後に建築家として有名になるル・コルビュジェらに高く評価されている。展覧会では、80点あまりの作品によってボーシャンの創作の魅力を紹介した。
胸さわぎの夏休み イチハラ×やなぎ×ヤノベ×小沢=∞、美術館で熱くなれ!
会期:2010年7月17日-8月29日

 アートは現代社会とどのように関わっていけるのだろうか。この展覧会では、時代を見据えながらその中でどうしたら生きていくことができるのか、この時代に生きるということはどういうことなのか、創作活動を通じて思考を積み重ねてきた4人の作家たちの活動を紹介した。
 今を生きる女性の本音を言葉にしてきたイチハラヒロコ(1963- )、老い、ジェンダーをテーマにCGを用いた写真や映像作品を制作するやなぎみわ(1967- )、豊かな想像力と確かな技術で奇想天外な機械彫刻を作るヤノベケンジ(1965- )、人々との関係性を築きながら様々なプロジェクトを展開する小沢剛(1965- )。
 展覧会場を訪れた人たちは、各々の作品が持つそうした磁力のようなものに、ざわざわとした胸さわぎを感じたに違いない。
古代エジプト 神秘のミイラ展 オランダ国立古代博物館コレクション
会期:2010年9月18日-12月5日

 オランダ国立古代博物館は1818年に設立されたヨーロッパ有数の博物館で、特に古代エジプトのコレクションは大英博物館やルーブル美術館と並ぶ充実した内容で知られている。
 本展覧会の出品物約200点のほとんどは古代エジプトの墓からの出土品であり、そこには人間の死後の世界に関して、古代エジプトの人々が数千年をかけて作り上げてきた豊かな精神と物質の世界が反映されている。
 本展では、2,650年前のエジプト王国時代の神官アンクホルのミイラと三重の棺。ミイラを作るための道具や装飾品、護符。さらには来世に復活するための呪文と美しい挿図が施された『死者の書』など、「ミイラ」に象徴される古代エジプトの死生観を紹介したほか、古代エジプトの豊かな文化を解明する基礎となったヒエログリフの解読者であるエジプト学者シャンポリオン(1790-1832)のノートも初公開された。
特集展示 追悼・伊砂利彦回顧展
会期:2011年1月26日-2月22日

 2010年3月に86年の生涯を閉じた染織家・伊砂利彦。その一周忌を前に、当館収蔵の「沖縄戦で逝きし人々にささげる鎮魂歌」、「長唄娘道成寺」を始めとする40点の作品を展示し、伊砂利彦の芸術と生涯を振り返った。
 伊砂利彦は、1924(大正13)年京都生まれ。京都市立絵画専門学校卒業後、家業の染物の仕事に就く傍ら、工芸作家として型絵染の作品を、新匠工芸会などで発表した。松の枝葉を再構築した<松>、水の波紋がみせる一瞬の美を追求した<水>、さらにはドビュッシーやムソルグスキーらの音楽から受けるイメージを造形化した<音楽>などの連作は、伊砂の独創的な視点と確かな表現力のなせる技といえる。
 自然を深く観察して得られた斬新な模様を的確な技術でかたちにした伊砂利彦の作品を回顧した。