五味太郎作品展[絵本の時間]
五味太郎(1945年東京生まれ)は、斬新なアイデアとユーモアに満ちた作風で知られる日本を代表する絵本作家の一人である。五味の絵本は、幼児から大人まで幅広く親しまれる息の長いベストセラーになっており、サンケイ児童出版文化賞、ボローニャ国際絵本原画展などの絵本賞を数多く受賞するなど、国際的にも高く評価されている。
この展覧会では、五味太郎の代表的な絵本『まどから おくりもの』『みんな うんち』『ねぇ おはなししてよ』『ももたろう』などの原画を約180点展示するほか、アニメーション資料などで絵本が完成するまでのプロセスを紹介した。また、五味太郎の絵本を集めた閲覧コーナーや五味太郎作品『らくがき絵本』体験コーナーを設け、遊び心にあふれた五味太郎の世界を多角的に楽しめる展示となった。
ベン・シャーン クロスメディア・アーティスト―写真、絵画、グラフィック・アート
アメリカのユダヤ人ベン・シャーン(1898-1969)は、20世紀という激動の時代を見つめ続けた画家である。現在のリトアニアに生まれ、迫害を逃れてアメリカに移住したシャーンは、石版画工として働きながら画家として活動を始めている。当初は「ドレフュス事件」などいくつかの冤罪事件をテーマにした社会を告発するような作品を発表し、注目を集めるが、やがて特定の事件から距離を置き、人間ひとりひとりの存在、普遍的な人間の価値へと目を向けることになる。アメリカの水爆実験で死の灰をあびた焼津のマグロ漁船、第五福竜丸をテーマにした晩年の「ラッキードラゴン・シリーズ」も、そうした関心から生まれたものであった。
わが国で約20年ぶりの回顧展となった本展では、約480点の作品や資料から、絵画だけでなく、版画や写真、ポスターやイラストレーション、書籍などさまざまなメディアを縦横無尽に行き交ったアーティスト、ベン・シャーンの芸術の豊かさと、その創造の神秘を紹介した。
東北三都市巡回展 ルーヴル美術館からのメッセージ:出会い
ルーヴル美術館の誇るコレクションが盛岡・仙台・福島の東北3都市巡回展として公開された。本展では「出会い」というテーマのもと、ルーヴル美術館の8つの美術部門から23点の作品を集め、「聖なる対話」「聖なる愛、世俗の愛」「三美神」を構成の柱として、さまざまな出会いや対話の表現を紹介した。
古代の美術や西洋の美術などあらゆる美術の中に「出会い」というテーマを見出すことができる。このテーマを通し、素描、絵画、美術工芸品、彫刻といった技法の面で、また紀元前2千年紀に始まる古代オリエント、エジプトから、古代ギリシアとイスラム美術、さらに中世と近代の西ヨーロッパという時間的・地理的な側面において、ルーヴル美術館のコレクションの豊かさを実感できるものとなった。
いのちの煌めき 田渕俊夫展
田渕俊夫(1941-東京都出身)は現代を代表する日本画家であり、圧倒的な技術と優れた色彩感覚によって、日本画の魅力を再確認させる作品を次々に生み出している。画題は主に植物と風景であり、雑草を描いた作品では、繊細な一枚一枚の葉の中に、受け継がれていく生命への畏敬を託し、また大地を描いた作品では、スケールの大きな構図によって、悠久の時間に対する感動が再現されている。
東京藝術大学大学院修了後に渡ったナイジェリアに取材した作品から、各地の障壁画を手がけるなかで独自の境地に進みつつある水墨画、昨年の震災後に逡巡しながら筆を執った、20メートルに及ぶ最新作《惶 I、II》まで、52点を展示。田渕の45年にわたる画業を回顧した。
特集展示1 100年前の展覧会 アートクラブから二葉会へ
いまからおよそ100年ほど前、1910(明治43)年に福島県内初の洋画団体が産声をあげた。「アートクラブ」がその団体名であり、福島市でおもに洋画と写真を学ぶ若者たちが結成し、県内初の展覧会を開いた。何もかも初めてづくしだった彼らの活動は、美術というものにあこがれ、突き動かされた若者たちの熱情そのものだったといえよう。
アートクラブ結成100年を記念した本展示では、その活動の足跡を振り返るとともに、後続の写真団体である「二葉会」の作品もあわせて紹介した。
特集展示2 分水嶺・齋藤隆展
齋藤隆(1943-東京都出身)は、福島県内の山村に暮らしながら、黒一色で人間の内面を見つめる絵を描き続けている画家である。その作品は、人間の「業」を白日の下に曝す怖さをもっているが、同時に「これが人間なんだ」と思わせる独特のユーモアにあふれている。震災で住居が損壊した画家が移り住んだ須賀川市勢至堂の集落は、川の流れが分かれる分水嶺の近くにある。分水嶺はまた、今の福島が置かれた状況とも重なる。今回の展示では、人間の顔や手をテーマにした近作を中心に約40点を展示した。
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