長谷川利行展

会期:2018年3月24日-4月22日

 エロ・グロ・ナンセンスの昭和戦前に生きた伝説の画家、長谷川利行。1891(明治24)年、京都山科に生まれた利行は、はじめ歌人を目指すもはたせず、30代後半に二科展や一九三〇年協会展で連続受賞して画家として注目を集める。「リコウ」と愛称され、一部に熱狂的な支持者を生むが、生来の放浪癖から生活は破綻し、極貧のうちに東京市養育院で1940(昭和15)年、49歳の生涯を閉じている。
 新発見作品をふくむ代表作約140 点により、長谷川利行の画業を紹介するこの展覧会では、ホームレス同然で果てた画家の生きざまを通して、「生きること」と「描くこと」の原点をもう一度見つめ直した。

ポーラ美術館コレクション モネ、ルノワールからピカソまで

会期:2018年4月28日-6月24日

 2002年、箱根に開館したポーラ美術館は、西洋近代絵画をはじめ、日本の洋画・日本画、ガラス工芸、東洋陶磁など、約1万点にもおよぶ美術品を所蔵している。
 本展では同美術館が誇るコレクションより、19世紀後半から20世紀まで、フランスを中心に活動した計20名の美術家たちの作品72点を紹介。光の表現を追求した印象派から、色彩の解放を目指したフォーヴィスム(野獣派)、造形の冒険を試みたキュビスム(立体派)まで、西洋美術の個性豊かな展開をたどる。
 同美術館を代表するルノワールの《レースの帽子の少女》をはじめ、モネ、ルノワール、ピカソは各8点、そのほかピサロ、セザンヌ、ゴーガン、マティスなどが出品され、珠玉の作品を鑑賞できる貴重な機会となった。

イラストレーター 安西水丸

会期:2018年7月7日-9月2日

 安西水丸(1942-2014)は、1970年代より小説、漫画、絵本、エッセイや広告など多方面で活躍したイラストレーターである。
 はじめ広告代理店や出版社に勤め、デザイン等の仕事をしながら、嵐山光三郎の勧めで『ガロ』に漫画を掲載、南房総での幼少期を題材とした『青の時代』が高い評価を受ける。独立後は、村上春樹をはじめとする本の装幀や、『がたん ごとん がたん ごとん』などの絵本、和田誠との展覧会、広告や執筆活動など幅広く活躍した。「その人にしか描けない絵」を追求し、身近なものを独自の感性で表現した作品は、私たちをユーモアと哀愁あふれる世界へと誘う。
 本展では、「小さい頃よりずっと絵を描くことが好きだった」という安西の幼少期から晩年に至るまでの足跡を、原画と資料あわせて700点以上により紹介した。

土に挑む ─草泥社の作家たち─

会期:2018年9月15日-10月14日

 戦後、日本の陶芸界に新風を巻き起こした前衛陶芸家集団「走泥社」は、鈴木治(1926-2001)、 八木一夫(1918-1979)、山田光(1923-2001)ら京都の若手陶芸家たちにより1948年に結成。従来の枠組や形式にとらわれない新しい表現が模索されていた中、“土”という素材に向き合い、それぞれ独自の創作活動を展開した。
 この展覧会では、当館が所蔵する鈴木治、山田光の他、走泥社を牽引した八木一夫の作品を展示したほか、走泥社の活動と並行して取り組まれた、実用性を持った器制作の一部も紹介した。前衛的な活動が広く知られている彼らだが、決してそれまでの伝統を否定した訳ではなかった。“土”とどのように向き合い、表現の可能性に挑み続けたのだろうか。
 走泥社の結成から70年、解散から20年となる2018年、三作家の多彩な創作活動の一端をかいま見る機会となった。

生誕130年 佐藤玄々(朝山)展

会期:2018年10月27日-12月16日

 福島県相馬市出身の彫刻家・佐藤玄々(1888-1963、本名・清蔵、旧号・朝山)は、宮彫師の家に生まれ、上京して山崎朝雲に師事。大正初期からは再興日本美術院彫刻部に加わり、平櫛田中、戸張孤雁、中原悌二郎らとともに活躍した。 
 その後、大正11年には渡仏し、ブールデルの指導の下、西洋彫刻を研究している。帰国後は、歴史や神話をテーマにした像や、身の回りの蔬菜、小動物に取材した精緻な木彫作品を手がけた。
 佐藤は、我が国の近代化が進む時代に生きた彫刻家である。本展では、西洋彫刻や日本の古美術の影響を受けながら、日本の伝統木彫が近代彫刻として再構成されていく道程をたどった。木彫、ブロンズ、石膏原型、墨画など約100点を公開。さらに昭和35年に完成した10メートルに及ぶ代表作・三越《天女(まごころ)》を3D撮影し、映像による再現展示を行った。
 県内で初の大規模回顧展となる本展では、天才と呼ばれた稀代の彫刻家の表現世界を振り返った。

Gallery F 2019 コレクション再発見

会期:2019年2月9日-3月10日

 ギャラリーFは小さな展覧会。3回目となる今回は、日本画と、アートカードを使ったコレクション再発見の試みにより構成した。
「福陽美術会100年」では、1919(大正8)年に福島出身の日本画家が結集した〈福陽美術会〉という団体について、その魅力と特色をふりかえった。おもな作家は、勝田蕉琴、荻生天泉、坂内青嵐、太田秋民、湯田玉水、酒井三良、角田磐谷、酒井白澄、須田珙中、木下春、猪巻清明、大平華泉、石川良風、大山忠作など。
「アートカード★チャレンジ」では、当館所蔵作品の画像をカード形式にした鑑賞用補助教材「アートカード」を使って、福島県立福島東高等学校の生徒たちが考えた小さな展覧会を開催。あわせて、生徒がテーマを元に作品を選び、展覧会が完成していくまでの活動風景などをパネルで紹介した。