福島県立美術館ブログ

ワークショップ「私自身のための広告ポスターをつくろう」 4月27日

2013年5月1日 15時37分
企画展

先週土曜日、4月27日に「横尾忠則ポスター展」ワークショップが開催されました。

詩人の和合亮一さん、グラフィック・デザイナーの中山千尋さんと一緒に、2日かけて「私自身のための広告ポスター」を作ります。ちょっと奇妙なタイトルのワークショップですね。

実は展覧会と大いに関係があるのです。横尾さん29歳の時、「ペルソナ展」というデザイン展に出品します。参加者は田中一光、福田繁雄、勝井三雄、宇野亜喜良、和田誠、永井一正、粟津潔、細田巌、木村恒久、片山利之と横尾さんの11人。まだ若き横尾さんにとって、蒼々たるグラフィック・デザイナーとともに出品できるまたとないチャンス。意気込んで自主制作にとりかかりました。

その時制作したのが、「誰もが考えながら誰もがやらなかった自分自身のための広告ポスター」(『横尾忠則自伝』より)でした。



旭を背景に、薔薇を手にした横尾さんが首つりをしています。そこに英文で「ぼくは29歳でついに頂点に達し、首を吊って死ぬ」という死亡宣言のコピーを書き加えました。
「このポスターには過去の自分を埋葬すると同時に未来の自分を再生させるという願いと意味があったが、同時にモダニズム・デザインへの決別宣言でもあった。」(『横尾忠則自伝』)と、横尾さんは書いています。

この作品はもちろん展覧会に出品されています。

私たちも「自分自身ための広告ポスター」に挑戦しようという、考えてみれば無謀なワークショップ。しかし事前に和合さん、中山さんと打ち合わせをましたが、なかなか奥が深い面白いテーマです。

初日は和合さんとことばのワークショップ。

まず、和合さんは横尾さんの作品との出会いからお話しを始められました。
高校の国語の先生になりたての20代。何か表現をしたい、でもどうしたらいいのかわからない、そんな悶々とした日々を送っていたときに横尾さんの画集と出会ったそうです。そして「死後の世界」を描くということからヒントを得ます。自分は一度死んでしまった。死の側から世界を見たらどうなるのか。



生きることと死ぬこと。創作の原点はそこにあるのではないかとおっしゃっていたのが印象的でした。

さて、では実際にどのように言葉を組み上げていったらいいのでしょう。
二つのキーワードがありました。一つは「無意識」。そしてもう一つが「コラージュ」。無意識の中から拾い上げてきた言葉を、ぶつけ、つなげ、つづける。そうしてひとつながりの文章に作り上げていく。







ワークシートを書きながら、横尾展で作品を見たときの言葉を書きとめながら、最後にそれぞれがいくつかのコピー(らしきもの)を作り、発表しました。かなり斬新なものもありましたよ。



ポスターに作り上げるのは二週間後の5月11日。ポスターも「コラージュ」の手法を使い、雑誌の切り抜きや写真やさまざまなイメージを貼り合わせて作っていきます。そのための素材集めが宿題となります。

最後に和合さんと中山さんからのアドヴァイス。言葉がイメージを規定することもあるけれど、イメージが言葉を引き出すこともある。素材集めをする中で言葉が変化することもあっていいのです。

さてさて、参加者のみなさん、どのようにイメージを膨らませていらっしゃるでしょう。楽しみにしています!

A.Y.

横尾忠則『少年マガジン』です

2013年4月23日 09時36分
企画展

前回のブログに、横尾忠則ポスター展、オープニング対談のことをご報告しました。
そこで、横尾さんが1970年に描かれた『少年マガジン』9冊の表紙について触れたところ、早速横尾さんのツイッターですべての画像をアップして下さっています。
是非ご覧下さい!

http://www.tadanoriyokoo.com/vision/index.html

A.Y.

横尾忠則ポスター展オープン

2013年4月21日 17時28分
企画展



今朝の美術館前庭。なんと雪が!昨日でなくて本当によかったです。

昨日、「横尾忠則ポスター展」がオープンしました!
この展覧会は実は3年前から企画していましたが、東日本大震災後、一時延期となり、今年ようやく実現しました。待ちに待ったオープンです。


《横尾忠則ポスター展(福島県立美術館)》2013年 ©TADANORI YOKOO

横尾忠則さんといえば、戦後日本を代表するグラフィック・デザイナーであり、美術家であり、作家でもあり、いろいろな顔を持つマルチな才人です。本展はポスターに焦点を絞り、約400点の作品をご紹介します。

横尾さんは1936年兵庫県生まれ。この6月で77歳とは思えぬエネルギッシュな創作活動を展開されています。「隠居宣言」をしたとはいえ、実は隠居とは忙しいのだそうです。自分のやりたいことをやるのが隠居。やりたいことがまだまだたくさんある、ポジティブな隠居生活を送っていらっしゃるとのこと。(すごい!)

そんなお話しが聞かれたのは、昨日行われたオープニング対談の中でした。
日本美術史家の山下裕二さんとの1時間半にわたる対談は、終始リラックスした雰囲気に包まれ、250席満席になった会場の笑いも絶えませんでした。


横尾忠則氏


山下裕二氏

「話しはどこに飛ぶかわからないよ。」と事前にお二人に言われていました。しかし「飛ぶ」というより、ほぼ『少年マガジン』の話しで終わりました。1970年に横尾さんは『少年マガジン』の表紙を9冊描いていらっしゃいます。その中の1冊は「横尾忠則特集」。実は山下さんがこの道に入られたのは、これら『少年マガジン』と出会ったからと言っても言い過ぎじゃない、とまでおっしゃる作品。それらをご紹介いただきながら、当時の横尾さんのグラフィックの仕事に大きな影響を与えた、様々な人たちとの交流が引き出されていきました。
唐十郎、寺山修司、澁澤龍彦、三島由紀夫や大島渚、ジョン・レノンやミック・ジャガー、そして当時の編集者たち。それから70年の大阪万博の話しも。



(ぶっ飛んでる)『少年マガジン』の表紙にしろ、中味にしろ、そういう時代の文化が背景にあったんだということがよくわかりました。残念ながら『少年マガジン』は本展に出品されていませんが、60年代のポスターはまさにこの中から生み出されたものなのです。

最後に横尾さんが話された印象深いひとこと。「いろいろなことがバラバラに存在しているみたいだけど、結局は根っこにある一つに繋がってるんだよね。」(う~む、なるほど。)

横尾さん、そして面白いお話しを引き出して下さった山下さん、本当に有り難うございました。

展覧会は6月16日まで開催。是非皆様、お出かけいただき、横尾ワールドをご堪能下さい。

(A.Y.)

わんぱくミュージアムのご案内(主に小学生対象)

2013年3月3日 19時03分
教育普及



常設展示室の彫刻作品:保田春彦「季節の残像」シリーズなどを鑑賞しながら、木片を組み合わせ「不思議な形の家」をつくります。丸や四角、三角など、様々な形の木片に色を付けたり、線を描きながら組み合わせ、自分が住んでみたい家を想像し、制作します。

(くに)

平成24年度 学校連携共同ワークショップのご紹介。

2013年2月27日 18時45分
教育普及

本日は、現在エントランスホールにて展示開催しております、当館学校連携事業ワークショップ作品について、その活動内容をご紹介いたします。


当館の学校連携事業は、2003年より実施しております。現在活躍中のアーティストを講師として招き、各学校を会場に児童・生徒と交流しながら、創作活動を中心とした出張ワークショップを展開する事業です。
プロの美術家と交流する貴重な経験と通常の授業では取り上げられていない題材、素材、技法を体験できる機会として県下小、中、高校へ公募し開催しております。
 
今年度は、講師に現代美術家の三瀬夏之介先生をお招きし、三春町立三春中学校、福島県立福島南高等学校、福島県立福島工業高校を会場に開催いたしました。



今回のワークショップは、三瀬夏之介先生の制作の素材でもある水墨の技法を用いて、伝統的な水墨画と現代のマンガが融合した表現に挑戦しました。
 
中国を源流として日本に伝わった水墨画は、京都高山寺に伝わる絵巻物「鳥獣戯画」にも代表されるように、日頃私たちが目にするマンガと深い共通点があります。

ワークショップの中で三瀬先生は、水墨が創り出す白黒濃淡世界の奥深さや現代マンガとの不思議な繋がりをわかりやすく・おもしろく生徒の皆さんにご教授してくださいました。





10月29日午前中は福島工業高校へ



工業高校の生徒さん達は、図面を引くように正確な線を描いております。
筆を使って細い輪郭線を引くためには、高い技術力と集中力が求められます。
作業が始まると、生徒のみなさんは一言も発せず机に向かっていました。

10月29日午後は放課後、福島南高校へ



こちらは、美術部のみなさんと有志の方々。使う画材は墨と筆、普段あまり使うことのない道具に最初はちょっと緊張ぎみでしたが、さすがに美術部と有志の方々です、完成した作品のレベルの高さは初めてと思えませんね。
ぜひ、美術館でご覧ください。

「筆の使い方、輪郭線の太さや細さなど、筆さばき一つで描いたものの個性を表現することができる。」と三瀬先生。こうしたところにも着目して作品を鑑賞してみてはいかがでしょうか。

11月19日は三春中学校にお邪魔しました。



2年生の美術の授業(27名)クラスが参加してくれました。三瀬先生は、ワークショップの中でマンガと水墨画の共通点について分かりやすく解説してくださったほか、先生本人が美術を好きになったきっかけなど、小学生時代の実体験等のエピソードを交えながら作品制作の魅力についても話してくださいました。生徒さん達は熱心に耳を傾け、作品制作にとりかかると創意工夫を凝らし、集中して作業に取り組んでいました。



この度の展示は、江戸時代に使われた「模本」と生徒さん達が自ら探し選び出した「現代マンガ」の模写による組み合わせ作品です。筆先の緊張感が伝わる輪郭線の表情や、「江戸時代の模本」と「現代マンガ」の不思議な調和など、生徒さん達が描き出したモノクロームの見応えある作品の数々をどうぞご観覧ください。

展示期間〇2月15日(金)から3月24日(日)
開館時間〇9:30~17:00(最終入館は16:30)
休 館 日 〇月曜日(祝祭日にあたる場合は開館)
     祝祭日の翌日は休館(土日にあたる場合は開館)

来年度(平成25年度)の学校連携共同ワークショップの応募内容は6月号の「福島県立美術館ニュース」に掲載いたします。
来年度も素敵なワークショップを開催する予定です。ぜひご応募お待ちしております!

(くに)

新年恒例 年賀状展開催中!

2013年1月20日 15時40分
教育普及

恒例の年賀状展、只今開催中です!



この展覧会は『生活習慣と美術の関わりを知り、美術により親しんでもらう機会とする事』や『子供の自由な発想と多様な表現の発表の場をつくる事』などを目的に、開かれた美術館づくりの一環として1984年の開館時より開催してきました。



年賀状展は、主に小中学生を中心に応募しております。今年は617通もの年賀状をいただきました!送ってくださったみなさま、本当にありがとうございます!



送って頂いた年賀状は「今年の抱負」や「親しい人へのメッセージ」なども添えられ、どれも力作揃いです!
展覧会は1月31日(木)まで県立美術館エントランスホールにて開催しておりますので(無料)ぜひご覧ください!




2013年 みなさまに たくさんのいいえがおが おとずれますよう  こころより おいのりもうしあげます。

(くに)

大雪!

2013年1月18日 17時32分
その他

いやぁ、福島も久しぶりの大雪です。

今日は、美術館の前に広がる雪原に思いっきり足跡をつけてきました。
何枚も靴下履いて、雪靴を履いて、帽子かぶって、万全の態勢。
きゅっ、きゅっ、という小気味いい音を立てながら、真っ白い雪の上を進んでいくのはとてもいい気持ち。
そしておもむろに、銀の棒を雪の上に差し出すのでした。

なんと放射線測定の当番。

皮肉にも、雪の中の美術館庭園をこんなに歩き回る経験は、今日が初めてかも。

明日の朝は雪かきだなぁ。
さらさらの粉雪がしんしんと降り積もっています。


裏の職員駐車場風景

A.Y.

あけましておめでとうございます。

2013年1月11日 16時09分
常設展

皆様、あけましておめでとうございます。
昨年中は、県美ブログを読んでいただき、本当に有り難うございました。
本年もまたご愛顧下さいますようお願い申し上げます。
時々遊びに来て下さいね。
スタッフ一同、楽しいブログを目指したいと思います。
どうぞよろしくお願い申し上げます。

さて、美術館は1月5日から開館しております。

常設展第Ⅳ期が始まりました。

展示室Aで開催中の特集展示は、凄いボリュームです。ご紹介しましょう。

「特集展示:100年前の展覧会-アートクラブから二葉会へ-」


(垂れ幕からして、担当のかなりの力の入れようがご覧頂けるかと・・・)

およそ100年前の1911(明治44)年春のこと、福島市に県内初の洋画団体「アートクラブ」が誕生しました。
東京美術学校洋画科を卒業したばかりの油井夫山(ゆいふざん・1884-1934)が中心となり、展覧会の開催と洋画、写真、日本画の啓蒙普及を目指して結成されたグループです。みんなまだ20代の作家の卵たちでした。
展覧会などどうやって開けばいいのか見当もつかなかった若者たちが、福島の地で、創ることから何かを始めようとしていたのです。

会場には、会員たちの作品や彼らが編集した雑誌、写真アルバムが所狭しと展示されていて、100年前の熱気がそのままに伝わってきます。

 



「アートクラブ」は1922年に解散しますが、写真の方はその後「二葉会」に引き継がれていきました。今回は小関庄太郎らの写真で、その活動もご覧いただきます。



資料も充実させた、担当学芸員渾身の展示をどうぞじっくりとご覧下さい。

明日1月12日には、学芸員によるギャラリートークがあります。

 日時:1月12日[土] 14:00~
 *観覧券をお持ちの上、展示室にお集まり下さい。

皆様のお越しをお待ちしております。

ちなみに、本展示のギャラリートークは、2月9日[土]、3月9日[土]にも開催予定です。

第2室目以降のご紹介は、またあらためて。

ではまた。

A.Y.

ふとん山日誌 フィナーレ報告

2012年12月28日 16時05分
イベント

12月24日、フィナーレが終了し、25日にふとん山は撤去されました。
美術館は年末年始の休暇に突入しております。
子どもたちの歓声が聞こえていたのが嘘のよう。静まりかえった美術館です。

今日は美術館は仕事納めの日。しかし私自身は掃除もできず、さっき、別のスタッフが周りを掃いていってくれました。ああ、なんということ!

さて、最終日の報告をしないでは仕事納めはできません。
楽しかったフィナーレの様子をご紹介しましょう。



午前中は、「ふとん山に雪が降る!」というスノードームを作るワークショップをしました。
福島市の隣、伊達市にある霊山子どもの村のスタッフ、小笠原恵さんの企画。

瓶の蓋の裏に発泡スチロールの山を貼り付けます(これはすでに準備しておきました)。
子どもたちにはそこに思い思いのかわいいふとん山の絵を描いてもらいました。
そして瓶にはスパンコールや小さく切ったアルミホイルを入れます。
最後に石けん水を混ぜた水を詰めればできあがり。



 

 

ここ2日、お天気のせいもあったのか、子どもたちの数はそれほど多くはないなぁと思っていました。
フィナーレは大丈夫かと、実は内心心配していたスタッフ。
しかしみんなこの日に照準をあわせていたようです。
10時から始まり、一時間くらいの間で100個近くがあっという間になくなりました。嬉しい悲鳴です。
最後の水を詰めるバケツ班を急遽増やして対応。みんな素敵なスノードームにご満悦でした。

午後は、クリスマス・ミニ・コンサートです。
前日23日に来てくれた方達に描いてもらったランップシェードや、12月2日のワークショップで作ったポストさんの帽子で飾り付けをしました。
それにしても、ふとん山に座ったり寝そべったりしながらコンサートを聴くという、前代未聞のシチュエーション。こんなことありですか?





美術館の近くの福島県立橘高等学校管弦楽部の演奏から始まりました。
始まる前は子どもたちの歓声が響いていたのに、演奏が始まると一気にし~んと静まりかえり、教会のような雰囲気に。
荘厳なバッハの曲が美術館にしみわたりました。



続いて、教会の聖歌隊の衣装を纏って、桜の聖母学院高等学校音楽部の生徒さんたちが登場。
クリスマスの曲を、柔らかくて暖かい歌声で披露してくれました。



最後のとりは、福島大学アカペラサークルGraniteのコーラス。結成してまだ2ヶ月ほどというフレッシュなグループだそうです。
途中でトークを挟みながら、初舞台に挑戦。高校生たちとはちょっと違ったポップな大人のクリスマスソングをエントランスに響かせました。



実はふとん山の奥では、子どもたちがいつも通りに遊んでいて、しかもその日に限って紙飛行機が飛び交うという状況。いったい誰が思いついたんでしょう!
ちょっとざわざわとしたコンサートではありましたが、これもまたふとん山だからお許しいただけたのかもしれません。

そんなこんなで、本当に楽しくフィナーレを終えることができました。
閉館間際の、最後の最後まで粘ってくれたお子さんもいました。次はどこに行くの?という声も多く聴きました。
きっとまたどこかでお会いしましょうね!それまでさようなら・・・(ふとん山の声を代弁)

ふとん山をかわいがって下さったみなさん、本当に有り難うございました。
そしてこの企画にご協力いただきました多くの方々に美術館一同、心よりお礼申し上げます。

さあて、そろそろ仕事納め。
みなさまよいお年をお迎えください。

A.Y.

ふとん山日誌 12月24日

2012年12月24日 18時19分
イベント

9月30日から始まった「ふとん山」、なんと今日が最終日。
長いようで、短い3ヶ月でした。

ワークショップには、最終日ということで、満を持して参加して下さったご家族がたくさんいらっしゃいました。有り難うございました。
100個のそれぞれのふとん山スノードームができあがりました。

そして午後は、クリスマス・ミニ・コンサート。福島県立橘高等学校の管弦楽部、桜の聖母学院高等学校のコーラス、福島大学アカペラサークル・Graniteのコーラス。どれもフレッシュで、美術館の中は暖かい雰囲気に包まれました。
みなさん、どうも有り難うございました。

本当に今日で終わっちゃったんですね・・・・。

メリークリスマス!

皆さん、素敵なクリスマス・イブをお過ごし下さい。

A.Y.