2012年7月の記事一覧

キックオフフォーラム「福島をつなぐ・つたえる」を開催しました。

6月30日、午前中の日比野克彦さんによるワークショップに続き、トークが開催されました。

パネラー:日比野克彦氏(アーティスト)
     大友良英氏(ミュージシャン)
     川延安直氏(福島県立博物館専門学芸員)
司会:森司氏(Art Support Tohoku-Tokyoプログラム・ディレクター)



まずは、日比野さんが今進めていらっしゃるマッチフラッグ・プロジェクトの活動と今回の福島のフレンドシップ・フラッグについてお話されました。
大友さんも、昨年のプロジェクト・FUKUSHIMAで作った「大風呂敷」を旗にリメイクし、今年のプロジェクトで会場をつないでいく一つのシンボルにするという企画を立てていらっしゃった。お二人の今年の福島での活動のキーワードが「フラッグ」。フラッグでつなぐ、つたえる。予言的で印象的でした。

そして壇上で、何か一緒にやろうよ、という話が盛り上がる。なんともスリリングな現場に、会場にいたみんなが立ち会ったわけです。もしかしたら、8月15日からのプロジェクトFUKUSHIMAで・・・。

日比野さんは、「種は船」プロジェクトで、それぞれの漁村の記憶を次の村へと伝え、つなげていくことを実践されています。このプロジェクトで一番難しいのは、前の村からその記憶を受け取る、その受容の作業だとおっしゃっていました。つなぐ・つたえるには、まずは受け取り消化することが大切だということなのです。

社会の中にはいくつものボーダーが存在します。見えるものもあれば、見えない、無意識のボーダーもある。そのボーダーにどうブリッジをかけていくのか。もともと福島には浜通り、中通り、会津というボーダーがあると川延さん。そして震災後、避難する人、しない人、危ない、大丈夫、さまざまな溝、ボーダーが新たにできてしまった。しかし、そのボーダーが機能する土俵とは違う土俵をアート、音楽あるいはスポーツが用意することで、ボーダーそのものを乗り越える可能性が開かれていくのではないか、と大友さん。
それとともに、大友さんの活動は、作り手、受け手、スタッフ、それぞれの間のボーダーを取り除く活動でもある。作り手が受け手にもなり、スタッフが作り手ともなる。その意味でもボーダーレスだとおっしゃいました。

昨年のプロジェクトFUKUSHIMAを振り返り、そうせざるを得ない今の福島における切実さに後押しされていると思うと大友さん。
日比野さんは続けて、人間の心にはいつも何かモヤモヤしたものがある。そのモヤモヤ感を外在化する。つまり心の中にあるものをアクションによって信号化する。そういうことを日常的にし続けることによって、何かが見え、聞こえ、形になっていく。後の時代からみたらそれがアートシーンというものなのだろう。
今、自分や大友さんたちが、ワークショップなどを通じてみんなの気持ちを紡ぎ、一つの空間に吐き出す作業をしてきているわけだけれど、それを継続することで、次の時代の新しい価値観、文化を創り出すことができるんじゃないかな。



フォーラムの中からいくつかの印象的なトピックを断片的に拾い出してみました。日比野さん、大友さんの言葉は、福島での「つなぐ・つたえる」活動に方向性を与えて下さる心強い言葉でした。
さて、これからの福島藝術計画の活動にどう生かしていくことができるでしょう。いよいよ始動です!

A.Y.

それぞれの思いをこめた福島のフラッグを、みんなで作りました!

福島県立美術館は、「福島藝術計画×Art Support Tohoku Tokyo(東京都による芸術文化を活用した被災地支援事業)」に参加しています。これは、福島県、東京都、東京文化発信プロジェクト室の三者が共催し、地域の団体と共働してアートプログラムを実施する事業。

そのキックオフイベントが6月30日(土)に福島県立美術館で開催されました。

午前中のプログラムは美術家・日比野克彦さんによるワークショップ。日比野さんは、個人での作品制作のみならず、より多くの人とワークショップ形式で地域の特性を生かした創作活動を行ってきました。今回の福島藝術計画のフラッグシップ・アーティストでもあります。

午前10:30、このワークショップに、なんと80人の子供、大人たちが集まりました!主催者も正直びっくり。

みんなで福島のマークを作ろう!でもこんな大勢で、どうやって作るの?



まず、ひとりひとりが福島のマークをデザインします。住んでいる町のマークでもいいし、学校、家族、自分のマークでもいい。それぞれ違っていていいのです。紙に下書きをしたマークを、次に50㎝角の布に写します。そして、そのマークに3㎝角のはぎれを貼り付けながら色をつけていきました。できあがったら、形を切り抜いてパーツが完成です。



そこからが日比野さんのすご技。それぞれの想いが込められた小さなマークを、一人一人にその意味を聞きながら、大きな白い布の上に貼り付けていくのです。福島のくだものがあったり、鳥が飛んでいたり、笑顔があったり、音楽があったり。知らない人たちが一つの場所に集まり、それぞれの福島がつながって、一つの大きな福島の形が生まれました。達成感満点。日比野マジックです。



最後にみんなでフラッグを囲んで記念撮影。



このフラッグはこれから福島藝術計画とともに県内を歩きます。
9月下旬までは美術館エントランスホールで展示をしていますが、その後どこかでお会いするかもしれませんね。

A.Y.

コレクション展II、はじまりました!

ベン・シャーン展をご覧になった後は、2階「コレクション展」にも足をお運びください。

今回は、皆で夜まで展示作業をがんばった力作です。
コーナーごとにそれぞれの学芸員が企画しているので、
小さな7つの展覧会をお楽しみいただけます!

まず、「伊砂利彦の染織」。
ご遺族から去年度ご寄贈をいただいた作品を中心に展示しています。
京都の染織家、伊砂さんのテーマは「松」「水」「音楽」など。



涼しそうです。

「斎藤清と長谷川雄一の版画」。
先週全館復旧を果たしたお隣の県立図書館では、「長谷川雄一 希望の大地」展を開催中。
タイアップ企画です。ぜひあわせてご覧ください。




「戦後の具象と社会」
ベン・シャーン展の関連企画。
福島市出身の吉井忠は、常磐炭田や松川事件に取材するなど、
社会への視点を持ち続けた洋画家です。
京都に滞在中のベン・シャーンを訪ねて、肖像を描いています。
吉井のほか、麻生三郎、鈴木新夫、菊地養之助、横山操、野地正記ら社会派の画家を取り上げています。

 

「河野保雄コレクションⅡ」。
昨年に続いて、寄託作品のご紹介です。
谷中安規のカワユくて強い、小さな宇宙。
6月に新たにコレクションに加わったばかりの、山口薫「水」。昭和19年の作品。

 


そのほか、「夏の日本画」「フランス美術の名品」「大正期の洋画」では、
おなじみのモネ、ルオーや関根正二の作品をご覧いただけます。

 

最後に。
震災で転倒、傷ついてしまったエミリオ・グレコ「スケートをする女」です。
修復が済み、免震台の上で晴れやかにポーズ。
常設展示室を出たところにあります。




コレクション展Ⅱは、9月30日までです。(途中、版画の展示替あり)

(増)