福島県立美術館ブログ

創作プログラム「うるしをみがいて作るピカピカ猫のブローチ」を開催しました

7月30日(土)に当館実習室にて創作プログラム「うるしをみがいて作るピカピカ猫のブローチを午前と午後の部で開催しました。今回は、当館にて開催中の特集展示「みんな大好き!福島ねこづくし展」の関連ワークショップです。講師は、漆芸家の平井岳さんと綾子さんです。

 

岳さんは、制作に加えて漆掻きの仕事もしています。国産の漆が貴重で手に入りにくくなっていることから、自分で漆を採取するようになったそうです。映像を見ながら漆掻きの現場について解説していただきました。

 

 

実際に使っている漆掻きの道具をみせてもらいました。

 

数日前に山に入って漆を掻いた岳さんの道具です。刃の形状が独特で、掻く道具はずっと昔から変わっていない伝統的なものです。漆掻きに携わっている人は岳さんを含めて福島県ではお二方だけ。自然と向き合いながら、木から樹液を1滴1滴採取するという話をみなさん興味深く聞きました。

 

漆のお話を聞いた後は、猫のブローチをつくっていきます。まずは、綾子さんの実演です。

 

 

作業工程がわかったところで、制作開始です。岳さん、綾子さんがつくった漆が塗られた猫型のプレートをみがいていきます。塗ってある色、塗り方もランダムなので、どんな色や模様がでてくるかはみがいてみてのお楽しみです!

 

 

みがくのに3種類の研磨剤を使います。1番目に使うペースト状の研磨剤、2番目、3番目のクリーム状の研磨材です。1番目はこの中では粒子が粗いですが、粗いといっても目には見えない粒子の大きさです。2番目、3番目に進むにつれて粒子が細かくなっていきます。粒子を細かくしていくことでツヤを出していきます。また、どのくらい模様を出すかはそれぞれの好みで、銀色の表面を残してもOKです。いい感じになったと思えば、次の研磨剤に進みます。

 

 

細かい所は綿棒を使ってみがいていきます。

 

 

ヤスリも使います。日常生活では使うことのない目がとても細かいヤスリで、光沢を出していきます。銀色部分をこするとメタリック感が出ます。

 

 

3番目の研磨剤の段階にいっても、みがきが足りないと思ったら、1、2番目の研磨剤にもどってみがいても大丈夫です。いったりきたりしながら自分好みのピカピカ具合までみがいていきます。

 

 

 

ブローチの表面をエタノールで拭き取ります。岳さんにピンを付けてもらって完成です!

 

 

岳さんと綾子さんから「漆は年月が経つと強くて固くなる不思議な塗料」「漆は経年で色が明るくなり発色がよくなるので、猫ブローチは使ううちに明るくなっていきます」「お手入れはたまに指でみがいてみてください」と教えていただきました。

 

最後に出来上がったばかりの「ピカピカ猫ブローチ」を付けて、特集展示「みんな大好き!福島ねこづくし展」を鑑賞しました。今回は、制作も鑑賞も楽しむプログラムでした。

 

受講者の声です。

 

・うるしが身近に感じられるワークショップでした。

・1人1人ちがう模様でかわいかったです。

・うるしのことがわかってよかったです。国産うるしの伝統を感じました。

・磨くのに没頭できたので、気持ちもすっきりしました。

 

暑い中参加してくださったみなさまありがとうございました!漆に親しむ機会を提供してくださった岳さん、綾子さん、ありがとうございました!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

令和4年度 第Ⅱ期コレクション展

当館では、7月16日(土)から10月16日(日)まで、2階常設展示室にて「第Ⅱ期コレクション展示」を開催しております。
今回はその展示の様子をご紹介します。

【展示室A】

  
入って最初のコーナーでは、『特集展示 みんな大好き!福島ねこづくし展』(7月23日~8月21日)に関連して、「動物づくし」を展示しています。
この展示は当館の収蔵作品から、佐藤玄々(朝山)や斎藤清などの、動物をモチーフにした愛らしい彫刻や絵画の数々を紹介しています。


その奥では、「関根正二と大正期の洋画」を展示しています。
関根正二は福島県白河市に生まれ、1915年には二科展に初入選するも、1919年に20歳という若さでこの世を去った夭逝の画家です。
ここでは関根正二を始めとし、岸田劉生や石井柏亭、飛田昭喬など、大正期から昭和期にかけて活躍した画家たちの油彩画を展示しています。

【展示室B】

展示室Bでは、『生誕100年 朝倉摂展』(9月3日~10月16日)に関連して、「戦後社会とリアリズム」の展示をおこなっています。


戦後間もない時期、日本では多くの社会問題が噴出していました。
そうじた時代の中で美術家たちは、1940年代に起こったリアリズム論争を出発点とし、単なる自然の再現に留まらない「現実」の描写を社会の中に求めていきました。
安部公房は社会事象を記録して伝えるルポルタージュの手法を唱え、それに触発された高山良策など前衛美術会の画家たちはシュルレアリスムに通じた手法で政治や社会によって歪曲された心象を描き出しました。
また、画家が社会に身を置いて切実な実感のもとに対象を描き出すべきだと主張した美術評論家の針生一郎に影響を受け、朝倉摂や佐藤忠良、中谷泰、吉井忠らは研究会を立ち上げ、漁村や工場に取材して具象表現による絵画を追究しました。
とりわけ福島県いわきの常磐炭田には多くの美術家たちが訪れ、上記に挙げた人物たちの他、宮崎進や伊藤和子らがズリ山や炭坑長屋の風景を描いています。
さらに、こうした社会にまなざしを向けたリアリズムの美術は、洋画のみならず、横山操や渡辺学といった日本画家たちにも波及しています。

【展示室C】

展示室Cでは、アメリカの美術とヨーロッパの美術を展示しています。

ジョン・スローンや清水登之、野田英夫といったアメリカン・シーンの画家たちの他、アンドリュー・ワイエス《農場にて》、ベン・シャーンのポスターや《ラッキードラゴン》など、アメリカのリアリズム絵画を展示しています。
また、ヨーロッパの美術ではカミーユ・コローの作品を展示しています。

【展示室D】

最後の部屋では、「斎藤清の版画」「現代の版画」を展示しています。

斎藤清の版画では「霊峰」シリーズを中心に1980年代の作品を公開しています。
その向かい側で、加納光於と百瀬寿による、主に1980年代から1990年代にかけての版画作品を展示しています。
構成的な手法を凝らした斎藤清後年の作品と、色彩による実験を試みている加納光於と百瀬寿の作品をぜひ見比べてみてください。


「第Ⅱ期コレクション展示」は10月16日(日)までとなっております。

一般・大学生 280円(団体220円)
高校生以下 無料

企画展と関連した展示が目白押しですので、ご来館の際には併せてご覧ください。

ぜひお誘いあわせの上、ご来館をお待ちしております。

創作プログラム「お気に入りの絵を彫ろう 漆の沈金体験」を開催しました

7月10日(日)に当館実習室にて創作プログラム「お気に入りの絵を彫ろう 漆の沈金体験」を午前と午後の部で開催しました。講師は、今年の2~3月にかけて当館にて開催した、福島県ゆかりの若手アーティストを紹介する企画展「福島アートアニュアル2022」に出品いただいた漆芸家の吾子可苗さんです。

 

はじめに作業工程を説明していただきました。

 

 

次に実演です。

 

 

「面にしたい場合は線を交差させたり、何本も線を彫る」「線を太くしたい場合は数本線を引いていく」など、わかりやすく教えていただきました。

 

さあ、各自で制作の時間です。

 

まずは、皿の上にチャコペーパーをおいて、各自用意したイラストをのせて、鉛筆でなぞっていきます。

 

 

図案が漆の皿に写りました。

 

お皿に写った線を加工した太い釘でなぞり、浅く彫っていきます。釘を立てて持ち、ギリギリと音がすればうまく彫れている証拠です。

 

 

 

「漢字を彫るのが難しい!」との声に、「最初は大まかなところを彫って、釘に慣れてきたら細かいところに彫り進んでいきましょう」と吾子さん。

 

彫り終わると、表面をきれいに拭き取ります。そして、漆を模様にすり込んでいきます。漆は触れるとかぶれることもあるのですが、挑戦した人は吾子さんの丁寧な指示のもと、気をつけて漆を擦り込みました。

 

 

表面についた漆を拭き取って、いよいよ本金を、真綿をつかって模様に蒔き付けます。丸くふわふわふわと蒔き付けていくのがポイントです。

 

 

線が金色で浮かび上がると、その美しさにみなさん気持ちが高まります!

 

お皿の表面についた金粉をきれいに拭き取ったら、完成です。1週間漆が乾くまで、濡れたティッシュを入れた袋で保存します。袋は密閉せずに口を3㎝ほど開けておきます。

 

 

受講者の声です。

 

・初めて漆をつかって模様をつけたので、楽しかった。工夫して彫ったりするのも楽しかった。

・非常に素敵な経験ができました。金粉をつけた時の華やかな瞬間は素晴らしかったです。

・大人がするような沈金の体験をさせて頂けるのがありがたかったです。

 

ご参加いただいた受講者のみなさま、1週間経ちましたね。お皿にカステラを載せたい、飾りたい、愛でたいとそれぞれ使い方をお考えでしたが、使うのが楽しみですね!

 

 

今回のワークショップは、アートアニュアルにあわせた2月開催の予定が、新型コロナウイルスの影響で延期となりました。受講者のみなさまが待ち望んでいたので、無事に開催することができうれしい限りでした。お申し込みいただいたみなさま、吾子さんありがとうございました!

 

 

 

 

創作プログラム「こけしの源流を想像して、こけしに絵を描こう」を開催しました

6月26日(日)に当館実習室で創作プログラム「こけしの源流を想像して、こけしに絵を描こう」を、午前と午後の部で開催しました。今回は、当館にて開催中の企画展「東北へのまなざし1930-1945」の関連ワークショップです。展覧会のポスター、チラシのデザインを担当された軸原ヨウスケさん(デザイナー)が講師です。

 

 

はじめに、伝統こけしの系統の特徴を説明していただきました。

     

 

続いて、熟練の伝統こけし工人さんの制作工程の映像を見せていただき、制作意欲が高まっていきます。

 

いよいよ「幼少期の自分を投影したこけしをつくる」に挑戦です。

まずは、小さい頃の自分を思い出しながら、シートに自分の顔を筆で描く練習です。墨汁と食用の染料(赤・青・黄・緑)を水で溶いたものを使います。

 

軸原さんにいただいたアドバイスは、「筆に慣れること」「気持ちよくすすっと描ける線、柄を考案して描いていく」でした。

 

次はロクロの使い方の実演です。ロクロを使ってこけしの髪や模様を描くことができます。

 

 

みなさんもロクロを使って模様を入れていきます!

 

 

一発勝負なので、筆を入れる受講者の方も手回しロクロを回す軸原さん、美術館スタッフも集中しています。

 

さらに顔や髪、胴模様を自分好みに仕上げていきます。

 

 

 

最後に、みなさんでこけしの記念撮影をしました!どのこけしもつくった人の“その人らしさ”が表れています。

 

 

                                    軸原さんと伝統こけし工人の早坂さんです。

 

震災で落ち込んでいた時に軸原さんの本(残念ながら絶版)をきっかけにこけしに魅了され癒やされた「こけ女」の方、おじいさまが土湯のこけし工人だった方、現在も鳴子でご活躍されている工人さんなど、こけしと密接な関わりがある方々が軸原さんとこけしに引き寄せられるように集まりました。こけしの奥深さを感じた一日でした。

 

受講者の方からの感想です。

 

・想像した以上に筆づかいや絵付けは難しかったが、作品を作る過程が楽しかった。ロクロで色をつけることもできてよかった。

・とてもたのしかったです!!

・工人の方のすごさを体感できました。

 

ご参加くださったみなさま、ありがとうございました。小さなこけしに大きな魅力がつまっていることを教えてくださった軸原さん、本当にありがとうございました。

 

 

芸術鑑賞講座を開催しました

今年も当館前館長の早川博明氏を講師に、全4回講座の「芸術鑑賞講座ー名画との対話」を開催いたします。

西洋美術史のバロック時代の巨匠たちを各回1人ずつ取り上げ、名画に秘められた絵画表現の意味と魅力を解説します。

 

6月11日(土)に第1回めの講座が行われました。今回ご紹介したのはルーベンスです。

ルーベンスは「王の画家にして画家の王」という異名を取るほど、当時のヨーロッパで名声を響かせた天才画家です。
代表作《マリー・ド・メディシスの生涯》などの歴史画や、神話画、祭壇画ではドラマチックな表現の力量がふんだんに表れており、一方で肖像画や家族を描いた絵では、人物の生命力が伝わってくる生き生きとした感じが、色づかいや肌の表現によって巧みに再現されています。

宮廷や当時の権力者から沢山の注文を受け、画家として大成功をおさめた彼の多才な手腕ぶりを、作品をお見せしながら解説しました。

 

  

ご参加いただいたみなさま、早川さん、ありがとうございました!

次回第2回めの開講予定は、
日時:8月13日(土) 10:30~12:00
テーマ:「バロックの巨匠たち(2)-ベラスケス」
です。

今年は会場を講堂にし、受講の事前申込みは不要ですので、開催日に直接当館講堂までご来場ください(聴講無料)。

次回以降の予定については下記のページに載せております。
https://art-museum.fcs.ed.jp/%E3%81%9D%E3%81%AE%E4%BB%96%E3%81%AE%E4%BA%8B%E6%A5%AD/%E3%81%9D%E3%81%AE%E4%BB%96%E3%81%AE%E4%BA%8B%E6%A5%AD/%E9%A4%A8%E9%95%B7%E8%AC%9B%E5%BA%A7

 

ご来場をお待ちしております!

令和4年度 第Ⅰ期コレクション展

当館では、3月23日から7月10日まで常設展示室にて「令和4年度第Ⅰ期コレクション展」を開催しております。
今回はその展示の様子をご紹介します。

【展示室A】

最初の部屋では、入ってすぐそばのケース内で「ブロンズ小品の魅力~石原コレクションから」を展示しています。
横浜市の会社経営者であった石原巖氏は、彫刻やパブリックアートの設置に関わる事業に参画する中で、彫刻や油彩画、版画、素描など多彩な作品を蒐集していきました。
今回は、石原氏が築き上げたコレクションの一部から、オーギュスト・ロダンや佐藤忠良、船越保武などによる11点のブロンズ彫刻を紹介しています。


その向かい側では、「春の日本画」として、尾竹越堂、安田靫彦、星茂の作品を展示しています。


奥のスペースでは、関根正二を中心に、岸田劉生や恩地孝四郎、長谷川利行、松本竣介などによる大正期から昭和初期にかけて描かれた洋画を紹介した「関根正二と近代の洋画」を展示しています。


【展示室B】

展示室Bでは「特集展示:東北が育んだ作家たち」と題して、東北地方にゆかりある作家の作品を展示しています。

見どころは酒井三良の《帰樵》《雨はれ》《そばの秋》《雪暮》(それぞれ1930年)です。三良が1924年に日本美術院の同人に推挙されてから院展の中心作家として活躍し始める時期の、代表作とも呼べるような逸品です。
その他にも、三良が師事した小川芋銭の作品を併せて展示しています。
また、そのそばには斎藤清の版画や、福田豊四郎の日本画を展示しています。


奥側の壁面では、新たな表現を目指した東北地方ゆかりの作家の作品を紹介しています。
吉井忠の描く安達太良山は大胆な色面で構成されています。
また、コンセプチュアル・アートや環境芸術といった同時代の潮流を独自に捉えた村上善男や、具象と抽象の間を往来する表現を試みた田口安男、針生鎮郎が並びます。
その他にも、福島県の前衛芸術をけん引した鎌田正蔵や橋本章の作品を展示しています。


【展示室C】

展示室Cでは「海外の名品選」を展示しています。

ベン・シャーンやアンドリュー・ワイエスといったアメリカのリアリズム絵画をはじめとし、クロード・モネ、カミーユ・ピサロといった印象派の巨匠らによる油彩画、フェルナン・レジェやパブロ・ピカソの版画、ヘンリー・ムーアの彫刻など、当館所蔵の海外作家作品の中から選りすぐりのものを紹介しています。
とりわけ、パブロ・ピカソによる版画の連作『二人の裸婦』(1945~46年)は新古典主義とキュビスムを往来する作家の作風の変遷がうかがえる内容となっています。


【展示室D】

最後の部屋では、当館の所蔵作品の中から、明治の終わりから昭和の初めにかけて隆盛した創作版画運動を担った作家を紹介する「創作版画の世界」を展示しています。
現在出品している前川千帆の『版芸術(合本B)』(1932~33年)所収の版画は、初夏の風物を描いたこれからの季節にぴったりの作品です。
また、その対面では、平塚運一や深沢索一、武藤六郎などのモダンな都会風景を展示しています。


「第Ⅰ期コレクション展」は7月10日(日)までとなっております。

一般・大学生 280円

高校生以下  無料

ぜひお誘いあわせの上、ご来館をお待ちしています。

もののけワークショップを開催しました

5月8日(日)に当館実習室で創作プログラム「もののけワークショップ」を開催しました。講師は画家の香川大介さんです。

今回は親子向けの講座です。香川さんがつくった素焼きのオブジェに絵付けをし、自分だけの“もののけ”をつくります。

 

まずは、オブジェを選びます。

ひとつとして同じ形のない約30体のオブジェから、自分のお気に入りを選ぶのは楽しい時間です。

 

選んだら、絵付けの開始です。

 

 

「制作時は、集中しないで周りと話しながら、なるべく考えずに手を動かしてほしい」「みなさんに話しかけます、なんならひとりで勝手にラジオになっています」と、香川さん。

 

考えないで手を動かすという作品づくりに、子どもたちはすいすいと手を動かし、色を付けていきました。大人も筆を動かし始めると夢中モードに。香川さんと話しながらも制作の手は止めず、親子でそれぞれの表現を楽しんでいました。

 

 

最後にみなさんと出来上がった作品を鑑賞しました。

 

“もののけ”集合!

 

自分だけの“もののけ”が出来上がりました。

 

素敵なコメントをいただきました。

 

・ぬるのがたのしかった!

・0から何かを考えるのは難しいと思いますが、今回のような素材をもとにつくり上げていくのは取り組みやすく刺激的でした!

・親子それぞれ作るのが新鮮でした。自分で作るのも楽しいものですね。

・普段できないことを体験し、まわりのみんなの作品に触れ、ますます表現に興味がでたと思います。

 

ご参加いただいたみなさま、ありがとうございました。そして、楽しい時間を提供してくださった香川さん、本当にありがとうございました!

創作プログラム「写真のような鉛筆デッサン」を開催しました

4月16日土曜日、当館実習室で創作プログラム「写真のような鉛筆デッサン-自画像を描く-」を開催しました。講師は当館学芸員の大北です。

 

今回の講座では、形を取ることを省くために写真をトレースして描きます。

形のくるいが無いことで自分の扱えるトーンの幅を増やすことに集中できます。

 

使用する画材は鉛筆3種類(3B・HB・2H)と、ねりゴム、綿棒です。

2Hの鉛筆は固いので、芯を長めに出してねかせて使います。綿棒は擦筆の代わりです。

 

左半分は写真をトレースして輪郭やあたりをつけた状態。

右半分は3種類の鉛筆、ねりゴム、綿棒を使って描きました。

 

まずは、白黒コピーした写真の裏面に、鉛筆の芯の粉末をティッシュペーパーですりこみ、トレースするための準備をします。

 

 

次に、色ペンを持ってトレース開始。

目や鼻などの輪郭や明暗が分かれているところをなぞってあたりをつけます。

 

トレースが終わると、鉛筆で色を入れていきます。固さの違う3種類を使い分けます。

一番暗い色を最初に置くのがポイントで、それを基準にすれば間のトーンをつくりやすくなります。

 

午前はここで終了。

 

午後は、立体感を出すべく、ひたすら描きます。受講者の方それぞれ描き方が違うので、その特徴を活かして、個別にアドバイスをしていきます。

苦しい修行のようなデッサンですが、みなさん根気強く取り組み、終盤はそれぞれが何かをつかみ、鉛筆さばきが軽やかになっていきました。

 

もっと伝えたいことがあったのですが講座終了の時間です。

みなさん扱えるトーンの幅が増えたと思いますので、その感覚を今後の制作に生かしていただければ幸いです。

 

「今日は楽しかった」「また絵を描く講座を開いてください」「これからもデッサンがんばります!」などのお声をいただきました。嬉しいです。

ご参加いただいたみなさま、ありがとうございました。

学校連携共同ワークショップ参加校作品展がはじまりました。

当館では、県内の子どもたちを対象とした「学校連携共同ワークショップ」を行っております。今年度は、福島県ゆかりの作家であるアーティストの門馬美喜さん、画家の宮嶋結香さん、当館学芸員を講師として、各学校等でワークショップを開催しました。その成果展である、子どもたちが制作した作品約220点を一堂に会する展覧会が2月8日からはじまりました。

 

 

門馬さんのワークショップのテーマは「建築廃材で小さなまちをつくろう」です。門馬さんのふるさと相馬市をはじめ、復興に使われたさまざまな形の建築廃材を自由に組み合わせて、ひとりひとりが思い描く、自分が行きたい世界・場所・街を制作しました。廃材の木をそのまま使ったり、のこぎりで切ったり、おもいおもいの街をかたちにしたブックスタンドをつくりました。柿渋で彩色して、味わいある作品に仕上がっています。

福島県立相馬高等学校(美術部)

〈生徒たちの声〉

  • 自分の行きたい世界、街、場所をつくることなんてしたことがなかったので、とても新鮮でした。
  • 粘土や絵の具などを使用せず木だけの表現のやり方に悩まざるを得ない反面、木がうまく組み合わさった時の達成感を強く感じることができました。
  • のこぎりで切ったり、きりで穴をあけたり、くぎを打ったりと普段の生活ではしないことをして、手が痛くなりましたが、とても楽しかったです。

 

 

宮嶋さんのワークショップのテーマは、「古紙をつかって絵を描いてみよう」です。紙袋や包装紙、ポスター、チラシなど、一度役目を終えた紙に描きます。破いて描きやすい大きさにして、断面やシワや紙に入っている模様からイメージを膨らませて、描きたい絵を自由に描きます。

 

二本松市立渋川小学校(4年生) 田村市立要田小学校(5・6年生)

 

南相馬市立太田小学校(5・6年生) 田村市立大越小学校(6年生)

 

会津坂下町立坂下中学校(文化部) 須賀川市立小塩江中学校(全校生)

 

会津若松市立第二中学校(美術部) 郡山市立日和田中学校(美術部)

〈子どもたちの声〉

  • 普段使わない紙に、その場で思いついた絵を描いていくと、次の場面が次々にうかんできて、描く手が止まらなくなって、正直悩むと思っていたので、とても楽しくできました。
  • 題名は「自然の中にきえた記憶」です。ポスターの絵はそれにぴったりだったので、写真を破って記憶がわれたように使いました。いろいろな記憶があるようにしようと思いました。
  • ポスターのジャンプしている女の人を見て、「天使やん」と思ったので、羽をつけました。米袋のぼこぼこを使って犬の毛を再現しました。適当に切った紙からイメージをふくらませるのが楽しかったです。
  • 小さい頃、何も考えずに描いた楽しさを思い出すことができた。共同で作品を作ることもできた。

 

 

当館学芸員のワークショップのテーマは、「目や鼻や口を描かないで友達の顔を描いてみよう」です。友達の雰囲気や友達から教えてもらった好きな音や物などから想像し、いろいろな画材を使って友達を描きました。

子どもたちは、マチエール(絵肌)作りからこだわりをみせ、作業に没頭する姿が印象的でした。五感を使って友達から感じ取ったことを画面上で表現し、目や鼻はないけれど友達が持っている空気感が伝わる作品をつくりました。紙を貼ったり、ビーズを付けてみたりと、リズミカルな作品に仕上がりました。

福島市教育委員会教育研修課(ふれあい教室)

 

 

福島の子どもたちの心豊かな成長を願い、貴重な時間を提供してくださった2名の作家と当事業に協力してくださった多くの方々に深く感謝いたします。

 

 

作品をご覧いただいた方から、「賑やかな音楽が流れているイメージ。楽しい!」「子どもたちの元気いっぱいの作品をみて楽しかった」「自由で楽しそうなアウトプットと、その隙間からのぞく現代の子どもたちの鬱屈した感情が見えるところがよかった」など、さまざまな感想をお寄せいただいております。

 

学校連携共同ワークショップ参加校作品展は2月27日(日)まで展示しています。子どもたちのきらきらした感性、パワーが感じられる作品展となっております。どうぞご覧ください。

 

場所:当館企画展示室B

観覧料:無料

開館時間:9:30~17:00(最終入館は16:30まで)

休館日:14日(月)、21日(月)、24日(木)

 

瀬戸語録:「瀬戸正人写真学校 in 福島」第5回報告

写真学校の最終回が、12月26日、雪の中、開催されました。

この日は、1月5日から始まる「成果展」の展示作業がメインでしたが、前回、受講生のみなさんからご要望がでて、急遽、瀬戸さんによるギャラリートークが行われることになりました。

通常の13:30開始の1時間前、12:30に企画展示室入口に集合。

美術館でも慌てて告知をしたので、写真学校の受講生以外の方も来られ、約50名の方とともに、会場をめぐりながら瀬戸さんのお話しを聞きました。

まずは、ギャラリートークの様子を、例によって瀬戸さんの言葉を拾いながらご紹介します。

 

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〈Living Room, Tokyo〉

当初から等身大の大きさで展示することを考え、大型カメラで撮っていた。今回の展覧会でそれがようやく叶った。

ここに写し出された外国人たちの見えない背景を、写真だからこそ写せるんじゃないかと思った。見えないものを撮りたい。

記憶が埋め込まれているのが写真の特徴。絵と違って具体的に見える物しか撮れない。でも写っているものを見せたいわけじゃない。それを見た人の眼を見て欲しい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

写真ってなんだろう。

まぼろし。写真はフィクション。でもリアルでないとフィクションにならない。

まぼろしのように見せるためにリアルに撮った。

その人がどんな本を読んでいるのか、本棚の本のタイトルまで全部読めるように撮った。

僕らの人生もまぼろしだという感覚。ひとりひとりの記憶の地図を辿ってみたら幻だった、本当に人生を歩いてきたのか自信が持てない、そんな感覚がある。

 

〈Picnic〉

最初35mmカメラで撮ろうと思ってお願いしたけれど断られた。ところが、三脚のついた大型カメラを持って、正面から正々堂々と近づくとみんな快く引き受けてくれる。写真の半分以上は交渉力。

聞いてみたら、付き合って平均3か月のカップル。見方によっては儚い風景。

 

〈Binran〉

檳榔(びんろう)は、南太平洋から中東まである、たばこと同じような嗜好品。しかしこうして販売しているのは台湾だけ。夜道を歩いていると、ネオンに輝くビンラン・スタンドはきれいだった。

デジカメ、5000万画素の中判カメラで撮っている。

カメラは、自分が見ていない、感じていたいものまで写し撮ってしまうもの。

 

〈Silent Mode 2020〉

モデルはどこも見ていない。視点がない。カメラとつながっていない。僕とこの人の間には断絶がある。

 

シャッタースピードは5秒。5秒、じっとしてもらう。その間に自分らしさというものが消えていくはずだ、という考え。そのための時間が必要。

その人らしさ、表情はなくなって欲しい。もしかしたら、そこに人間の哀しみ、人生観とかが浮き出て来るんじゃないか。そう写ればいいなぁと期待して撮っている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〈Fukushima〉

長年東京に住んでいるけれど、震災後、福島いいなぁと、いつの間にかそう思えるようになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

水の波紋の写真。波紋が写っているだけ。でもここから何かを感じて欲しい。

原発事故がなかったら、こういう気持ちにならなかったかもしれない。こういうものの見方をしなかったかもしれない。

 

 セシウムは見えない。どうやって撮ったいいかわからないけれど、写るはずだという思いがあった。


見えないものを見せたい。その決意をこれらの写真(写真集『Cesium-137Cs-』)で表明したかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

桃畑の写真。きれいな写真だけど、大げさに言うと、この文明が破綻しつつあるんじゃないかということを写したいと思った。

 

〈Bangkok, Hanoi〉

父はラオスで終戦を迎えた。メコン川に引き揚げ船が来ると上官に言われたが、負けた日本に帰れないだろうと考え、現地に残る。しかし離脱したということは脱走したということ。名乗り出ることもできず、タイのベトナム人社会に受け入れてもらい、やがて写真館を経営し、家族を持って暮らした。

 

国王が父の住む町に来た時に、町の他の写真館がみな断った随行カメラマンの仕事を父は引き受けた。その国王の写真で一財産を築くことができた。もしこのお金がなかったら、福島に戻ってこなかったかもしれない。

 

父から、どんな仕事も断らないことを教わった。そこから重要なつながりが広がっていくかもしれない。そうやって仕事をしてきた。

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さて、1時間ほどのギャラリートークが終了し、いよいよ成果展の展示作業です。

 

正面の壁に展覧会の看板と瀬戸さんのステートメントを展示。

 

両脇に受講生のみなさんの写真を貼ります。複数展示写真がある人は、写真を左右にわけ、なるべくかたまらないように、ばらばらに、まずはマスキングテープで思い思いに壁に留めていきます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

上下も左右も気にすることなく、まずは貼っていく。その後、全体のバランスを見ながら、少しずつ動かして調整していきました。

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

位置が決まったら、プッシュピンで壁に貼っていきます。

キャプションは付けません。そのかわりそれぞれの番号を写真の下に貼り、誰の写真かわかるようにしました。

 テーマもなく、誰の写真かもすぐにはわかりません。

これまでの講座で瀬戸さんのお話しを聞きながら、写真から何かにじみ出て来るもの、そういうものを目指して写真を撮り、選び、あらためて写真に向き合ってきました。写真に写し出されたそれぞれの記憶の片鱗が集まることで、この展覧会全体から、見る方々に伝わるものが何かあるのではないかと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

皆さんで記念写真を撮り、瀬戸さんから卒業証書をいただき、この写真学校は終了しました。

瀬戸正人という写真家を知り、瀬戸さんとともに写真について考え、もっと写真が好きになってもらえたのであれば大変嬉しいです。

 

是非たくさんの方に展示を見ていただき、その喜びを共有していただければと思います。