2018年11月の記事一覧

創作プログラム「木彫の鑑賞と制作~佐藤玄々の動物彫刻をたよりに~」②③

創作プログラム「木彫の鑑賞と制作~佐藤玄々の動物彫刻をたよりに~」

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2日目・・・11月11日(日)

前回の続きを進めていきます。

講座開始前にいらして、制作を始めている方もいました!

2回目、ということでみなさん鑿などの道具の扱いにも慣れ、どんどん彫っていきます。

 

途中、どのように進めたらよいか迷う部分や難しい部分について、黒沼さんからアドバイスをいただきました。

それぞれがつくる動物のイメージやかたちに合わせ、一人一人丁寧にアドバイスをいただきました。

だんだん顔や胴体、脚などのかたちが見えてきました!

 

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3日目・・・11月18日(日)

 いよいよ制作も後半に入りました!

みなさん協力し合いながら制作を進めています。

  

彫刻刀を使った細かい彫りに入る方も出てきました。

途中、黒沼さんがこの講座のために作ってくださった猿の作品を見ながら、制作過程についてお話を伺いました。

第1回から、講座の進度に合わせ、徐々に制作を進めてくださっていた猿も完成しました。

毛並みや表情、手の動きなどが繊細に表現されています。

次回はいよいよ最終回です!

館長講座第4回目

11月17日(土)、館長講座「古典に帰れ ─西洋美術の巨匠たち─」の第4回目が開講されました。

今回はイタリア・ルネサンス、ヴェネツィア派の作家を取り上げました。

具体的にはジョルジョーネ、ティツィアーノ、ティントレットです。

 

本題に入る前に、当時のヴェネツィアの社会状況や歴史を振り返るところから始まります。

時代の様子を予め頭に入れた上で作品を鑑賞すると、より理解が深まりますね。

 

みなさんとても真剣にメモを取りながら聞いてらっしゃるのが印象的でした。

 

次回(1月)の第5回目の講座からバロックに入ります。次回見ていく作家はカラヴァッジオ、ルーベンス、ヴェラスケスです。

日時は以下の通りです。

日にち:1月19日(土)

時間:10:30~12:00

場所:美術館講義室(聴講無料)

*各回の進行具合で内容が変更になる可能性もございます。

*本年度は事前申込を不要としていますので、聴講ご希望の方は直接会場までお越しください。

 

ご参加をお待ちしております!

創作プログラム「木彫の鑑賞と制作~佐藤玄々の動物彫刻をたよりに~」①

当館実習室にて、「木彫の鑑賞と制作~佐藤玄々の動物彫刻をたよりに~」を開催しました!

現在開催中の「佐藤玄々(朝山)展」に合わせた講座です。

講師は、彫刻家で現在郡山女子短期大学部で講師をされている黒沼令さんです。

 

 

11月4日、11日、18日、25日の4日間にわたる創作プログラムの様子をご紹介します。

 

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1日目・・・11月4日(日)

講座の大体の流れについてお話いただき、早速「佐藤玄々展」の会場へ。

展示会場をゆっくりめぐりながら、自身がつくるもののイメージをふくらませていきます。

 

実習室に戻り、自分がつくりたい動物のスケッチをします。

みなさん写真や本などの資料をもとに、進めていきます。

 

だいたい決まったら、正面と横から見たかたちを、木の面にうつしていきます。

今回使った木は、桂の木です。

ここまでかけたら、不要になる部分をのこぎりで落としていきます。

この作業で、みなさん「暑い!」と汗をかきながら進めていました。

切り落として消えてしまった線は、その都度書き足していきます。

だいたい落としたら、次は鑿でさらに削っていきます。

みなさん真剣に、それぞれ作品に向き合っていきます。

1日目が終了しました!

 

2018コレクション展第Ⅲ期 開催中

現在開催中の「佐藤玄々展」にあわせて、常設展では今年度第三期目を開催しています。

今回も中身の濃い展示です。

 

まず一室目。ここでは河野保雄コレクション、安齋勇雄コレクションの特集展示を行っております。二人は共に福島市に生まれ、福島商業高等学校で学んだ経済人であり、コレクターです。

劉生、村上華岳、青木繁、松本竣介などの優品もお持ちの方でした。

   

 

また、一方では荻原朔太郎による詩集『月に吠える』の挿絵(田中恭吉、恩地孝四郎)をまとめて展示しています。(安齋コレクション)

コレクターの作品を見る「眼」の確かさをご実感頂けると嬉しいです。

 

 

二室目は、大山忠作と室井東志生の特集展示、そして玄々展にちなんで福島の彫刻家の作品を並べています。

日本画はいずれも大作です。存在感に圧倒されてしまいます。そして、室井東志生の3作品『悠(柳家小さん像)』、『白煌(楊貴妃に扮する玉三郎像)』、『洸』は昨年度新たに収蔵されたものです!

     

 

もう一方の彫刻作品においても、今回は人物像を中心に出品しています。木の質感を大事にして彫り出しているのが、鑿の跡から感じられます。

 

 

続いて三室目は、海外の名品展示です。ワイエス、ベン・シャーン、そしてエルンストを多めに出しました。

ラッキードラゴンとヤノベさんのコラボレーションは今期も継続展示です。

   

 

フランス美術の壁面ではモネ、ピサロ、ゴーギャンが並びます。モネは巡回展から帰ってきて、久しぶりのお目見えです。

 

 

最後の四室目は、版画のコーナーです。今期は片側が斎藤清のパリシリーズ、もう一方が秀島由己男、そして今年亡くなられた浜田知明氏を追悼しての特集展示です。小型ながらじっと見ていると作品の深い世界に吸い込まれそうです。

    

 

   

 

今期の常設展は12月24日(月・祝)まで!お見逃しないよう是非お越し下さい。

佐藤玄々展 触って、話して、見て楽しむ美術鑑賞ワークショップ開催

11月3日、「触って、話して、見て楽しむ美術鑑賞ワークショップ」を開催しました。

毎年1回、視覚障がい者の方々を中心に、視覚以外の様々な感覚や言葉を通じて作品を鑑賞するワークショップを開催しています。今年は現在開催中の「佐藤玄々展」に際して、玄々の作品を皆で鑑賞しました。その様子をご紹介します。

 

今年、講師をして下さったのは筑波大学助教授で彫刻を教えていらっしゃる宮坂慎司さん。宮坂さんは、彫刻家でもあり佐藤玄々の専門家、また視覚障がい者の方々との鑑賞ワークショップの経験も豊富にお持ちの先生です。

筑波大学宮坂研究室の伊藤奏太さん、中田ちひろさん、これまでも関わって下さってきた半田こづえさん(明治学院大学非常勤講師)、真下弥生さん(ルーテル学院大学非常勤講師)、福島点字図書館の高橋粛子さんにもご協力いただきました。有り難うございました。

 

今年は午前と午後合わせて、8名の視覚障がい者の方がご参加下さいました。

まずは自己紹介から。

そして、ウォーミングアップとして、つがいの鳥をかたどった宮坂さんの小さな彫刻を触りました。同じ形で、石膏でできたものとブロンズでできたものを2種類。肌触りや温度、重さの違いから、印象の不思議な違いを感じ取りました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

木彫の材料である木を触りました。宮坂さんが実際にクスノキを彫って下さり、その音、木の匂いを感じました。すごくいい匂いなんです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だんだんと彫刻に迫っていきます。宮坂研究室の学生さんが制作された木彫の人物像の小品を二つ。次は少し難しい作品。これはいったい何か当ててもらいました。「雲」です。知ってはいるけれど触ったことのないもの。難しいですね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

玄々の晩年のお弟子さんの手元にあったという彫刻刀を2本。おそらく玄々の使っていたものとかなり近い道具だと思われるとのこと。とても美しい彫刻刀です。それらを触りながら、玄々の制作風景を思い浮かべました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、いよいよ展示室に移動し、作品の触察です。

皆でまずは入口から展示室をゆっくりと巡って出口に到着。最後に置かれている《麝香猫》(ブロンズ)から鑑賞です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

麝香猫とはなかなかすぐにはわからなかったのですが、丸く滑らかな背中の曲線を確かめるとともに、胸毛や髭のふさふさした毛の繊細な表現を感じ取りました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《神狗》(ブロンズ)の部屋に移動。

1mくらいある大きな狗を、手を伸ばしながら体一杯使って鑑賞しました。大きく開いた口、牙、舌、そして大きくて飛びだした目。踏ん張った足や爪、背中の毛や胸毛。大きく巻いた尻尾。一方、繊細な胸の飾り。そのスケールの大きさと力強さに感動です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《巣鶏》(木彫)の部屋に移動。

展覧会には出品されていないのですが、《哺牛》(ブロンズ)と《鼠》(ブロンズ)を触察したあと、固定ケースの中に展示されていた《巣鶏》を取り出して、今回唯一となる木彫の触察です。学芸員でもなかなかこんな機会はありません。なんと贅沢なひととき。

これまでのブロンズ作品に比べ、羽根の部分が粗い彫りだったので雌鳥が二羽の雛を抱えている姿と把握するのには少し時間がかかりました。しかし、先生等からの言葉の助けを得て少しずつ全体像がわかってきます。そして脇の雛の小さな頭を見つけ、また彫刻を置いてしまうと見えない足が、きちんと裏に彫り込まれていることを確認しました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

感動のうちに展示室を出て、実習室に戻り、感想を共有します。

今まで触ったことのない動物が彫刻で触れてよかった。

木という素材であんなに細かいところまで表現できて凄かった。

曲線がきれいだった。

触察をして、見えていた時代には実は見えていなかったのだと感じた。(途中失明の方)

触れてみて、作者の思いが想像できた。

 

私たちにも毎年新しい発見があります。

楽しい1日でした。

宮坂先生、ご協力いただいた皆さまに感謝いたします。本当に有り難うございました。