2017年6月の記事一覧
創作プログラム「リトグラフで描こう」開催しました
6月17日(土)・18日(日)、当館実習室にて「リトグラフで描こう」を開催しました!
講師は、版画家として活躍している宮崎文子さんです。
今回の「ミューズ」展示作品にも用いられている版画技法のひとつである“リトグラフ(石版画)”。
1798年、アイロス・ゼネフェルダーがインク台(石灰石)に書いた何気ない覚え書きがきっかけとなり、発明されたそうです。
彫ったり削ったりせずに描く事だけで製版できる手軽さから、その後またたく間にヨーロッパで広がりました。
1日目は版づくりです。
まずは宮崎さんからリトグラフの技法について説明がありました。
言葉だけで聞くとなかなかリトグラフの技法は分かりづらいため、今回宮崎さんは手づくりの図を使って説明してくださいました。
さらに、ご自身の作品を例に、制作に使っている画材と、刷った後にどのような絵になるかということをお話いただきました。
説明の後は版づくりです。日本では石が取れないため、代わりにアルミ板が使われています。
みなさん事前に考えてきた下絵をもとに様々な画材を使ってアルミ板に描画しました。
ダーマトグラフやカーボンが入っている鉛筆。
柔らかい感じを出したいときには解き墨。
細かい描写をしたり、シャープな線を出したいときには油性ボールペン・・・などと、
脂肪分が強いもので描くことによって版をつくることができます。
それぞれ描きたいイメージに合わせて画材を選び、みなさん集中して制作に取り組んでいました。
1日目の最後は刷りのデモンストレーション。2日目にやる刷りの流れを確認しました。
◆◆◆◆◆
講座2日目。まずは午前中に1日目に描画したアルミ板をもとに製版の作業を行いました。
製版は使用する液体や手順が多いので、みなさん慎重に確認しながら進めていました。
午後からはいよいよ刷りの作業です。
水を含ませたスポンジで版面を湿らせながらローラーでインクを盛ります。
版が乾かないように注意しながらプレス機の上に置き、紙をのせて刷ります。
1人3~5枚程度色を変えたりしながら刷ることができました。
最後にそれぞれ1枚ずつ作品を貼りだし、全員で作品を鑑賞し合いました。
一枚一枚、想いの込められた作品が完成しました。
宮崎文子さん、ご参加いただいたみなさまありがとうございました!
常設展Ⅰ期ご紹介②
4月から始まった常設展Ⅰ期も同じく終わりに近づいてまいりました。
今回は展示室B・Cの様子を紹介します。
展示室Bでは洋画を展示しています。「あなたが生まれた時代の絵」をキーワードに、作品が制作された時代の社会的出来事もキャプションで併せて紹介しています。
左から、関根正二『井上郁像』、清水登之『十四番街の地下鉄駅』、宮川教助『逍遙』、石井柏亭『果樹園の午後』
左:橋本章『国鉄新幹線』、右:針生鎮郎『王と妃・面ーM』
展示室Cでは海外作品を展示しています。
左から、ゴーギャン『ブルターニュの子供』、モネ『ジヴェルニーの草原』、コロー『ヴィル・ダヴレー 林をぬけてコロー家へ向かう池沿いの道』
そのほか、ピカソの版画やロダンの彫刻なども展示しております。モネ、コロー、ロダンなどは、1Fのミューズ展にも出品されている作家です。常設展に出ている作品と比較してみると、違いや発見などが感じられるかと思います。
常設展Ⅰ期は7月9日まで、ミューズ展は7月2日までです。
まだご覧になっていない方は、ぜひお越し下さい!
ミューズ展特集記事
記事を切ったり、折ったりすると、カペの《自画像》が現代ふうの女性に変身!
会期中に記事を持参して、展覧会を観覧いただいた方には、
先着でカペの作品のポストカードと福島民報社の伝次郎グッズをプレゼント中です。
福島民報6月13日掲載
興味があればチェックしてみてください!
ミューズ展プレゼント企画
くわしくはコチラ
展覧会のポストカードが欲しいという方はこのチャンスをお見逃しなく!
国立西洋美術館ポストカード(土日限定・1枚のみ・中身は選べません)
左から、ドルチ《悲しみの聖母》/カペ《自画像》
コロー《ナポリの浜の思い出》/ピサロ《立ち話》
福島県立美術館ポストカード(1枚のみ・中身は選べません)
右 関根正二 《姉弟》
左 上から 斎藤清 《地の幸》/ベン ・ シャーン 《スイミング ・ プール》/ワイエス 《松ぼっくり男爵》/ワイエス 《農場にて》
予告・ミューズ展講演会
出品作品から③
当日は天気もよく、多くの皆さんに足をお運びいただき、企画者としてもうれしい一日でした。
やはり一番人気だったのは、チラシとポスターに使われているカペの《自画像》。
マリー=ガブリエル・カペ《自画像》1783年頃 国立西洋美術館所蔵
実はここに描かれているカペは、手にチョークホルダーを持ち、
背後にはカンヴァスが置かれています。
彼女はチョークで何かを描いている途中のようで、
カンヴァスにはうっすらと白い線が見えています。
皆さん身を乗り出して、何が描かれているか見ていました。
これから展覧会にいらっしゃる方はぜひ、その点もチェックしてみてください。
県立図書館×県立美術館
カルロ・ドルチの《悲しみの聖母》が出品されています。
県立図書館では、この作品にちなんで、関連書籍の特集「描かれた聖母たち」を開催中です。
美術作品は知識がなくても楽しめますが、知識があればもっと面白くなります。
県立美術館にお越しの際には、ぜひ図書館にもお立ち寄りください!
スライドトーク開催!
講師は国立西洋美術館主任研究員の川瀬佑介氏。今回の展覧会の企画者のおひとりです。
個々の作品の見どころについて大変興味深いお話をお聞きしました。
今回特に印象的だったのが、アンリ・マルタンの《習作》という作品が、いったい何の下絵だったのか、というお話です。
この問題は長らく謎とされていましたが、川瀬さんは様々な手がかりをもとに、公の場で初めて(!)その謎を解き明かしてくれました。
研究業績の泥棒になると困るので、ここでは詳しく述べられませんが、
最先端のご研究を平易な言葉で分かりやすくご紹介いただき、たいへん有意義な機会となりました。
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「ミューズ:まなざしの先の女性たち」展は7月2日まで
関連事業
〇ギャラリートーク 6月10日 14:00~ 場所:企画展示室(要観覧券)
〇講演会「アルカディアの女性たち:西洋美術のもうひとつの側面」
講師:高橋建一氏(和歌山大学准教授・いわき市出身)
6月24日 14:00~ 場所:講堂(聴講無料)
企画展 出品作品から②
ベルナルド・カヴァッリーノ《ヘラクレスとオンファレ》1640年頃 国立西洋美術館所蔵
左手前の男性は、ギリシャ神話に登場するヘラクレス、右の女性は恋人のオンファレ。
ヘラクレスはその怪力によって数々の困難を切り抜けた英雄ですが、
恋人を前に、少し様子がおかしいようです。
彼はこちらに背を向け、どこか頼りなげです。そしてよく目を凝らしてみてみると、
耳元には赤いイヤリングを付け、右手に糸つむぎの道具を持っているのが分かります。
一方、オンファレは堂々とこちらを見つめ、手元にこん棒を置き、
ライオンの毛皮をひざに敷いています。
つまりここでは、男女の持ち物や関係性があべこべになっています。
いわゆる「かかあ天下」に似た主題を描いたものと考えてもよいでしょう。
作者のベルナルド・カヴァッリーノは17世紀ナポリで活躍した画家です。
17世紀初頭のナポリには、光と闇の表現で一世を風靡(ふうび)したカラヴァッジョという画家が一時期滞在しました。
カラヴァッジョはローマで殺人をおかし、警察の手を逃れて南に逃亡するのですが、
その途中でナポリに立寄り、そこで活動していた画家たちに強い影響を与えました。
この作品では、光と影のコントラスとが印象的ですが、ここにカラヴァッジョからの影響を見ることができます。
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「ミューズ:まなざしの先の女性たち」展は7月2日まで
会期中、毎日数量限定でポストカードをプレゼント中!
週末は、展覧会出品作品のポストカードももらえるチャンス。
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