カテゴリ:震災関連

遅まきながら震災レポート4床篇

間があいてしまいましたが、「遅まきながら震災レポート」の第4弾です。
今回は事務室・廊下の床です。

当館のある福島市の震度は6弱でした。
その時、事務室とつながっている応接室にて、デザイナーさんと打ち合わせをしていた私。
最初の一撃からなみなみならぬ横揺れで、橋本学芸員はすぐに展示室へと急行。
私は、「もしかしたらじきに収まるかも」(実に甘かった・・・)と思い、デザイナーさんと一緒に様子を見ていました。
ところが、揺れは収まるどころか、激しくなるばかり。

「このままではまずい。展示室のお客さんを誘導しに行かなくては」と思った私は、席をたち、事務室を通って展示室へ行こうとしました。
ところが事務室に出たところで、歩けないほどのものすごい揺れ。
立っているのがようやく。という状態でした。
総務課の職員の事務机から次々と引き出しが飛び出して、事務机が半倒れになり、書類やファイルが床中に飛び散りました。
飛び出してきた副館長が「これは一体なんなんだべ!」(福島弁(^_^;))と叫んだのを覚えています。
そんなことあんな状況下で私に聞かれても!(笑)

その後少し揺れが収まったところで、エントランスホールに走り出ましたが、そこで最大級の激震。
もはや立っていることもできず、総務課の職員さんと一緒に館長室脇の石の壁にへばりついていたのでした。

ということで、その激震をくぐり抜けてきた事務室や廊下の床はいまやこんな状態です。


↑事務室ソファーの下にも。長靴姿の足が見えているのは、除染工事の方。総務課職員と立ったまま打ち合わせ中。


↑かなり大きいです。


↑私が今作業している机の下にも。


↑こちらもかなり。パーテーションを超えて2mほど広がっています。


↑こちらは事務室前廊下。廊下いっぱいに広がっています。今度震度6がきたらどうなるんだろう・・・(不安)。

(吉)

除染なう!

現在、福島県立美術館は庭園除染工事と災害復旧工事のため休館中です。
そこで、本日はこの除染工事の模様をレポートしたいと思います。
福島の方は「もう見飽きたよ・・・(-_-;)」とおっしゃる方もいるかもしれませんが、お許し下さい。
県外の方は、こんな情景、もちろん初めてですよねぇ。


↑ベロリとはがされた芝生之図。
当館の前庭の芝生は、ご多分に漏れず高く2μSV/時弱あります。
(雪が降り積もると、水の遮蔽効果で2~3割ほど低くなりますが)
そこで、「芝生をはがす」という除染工事が行われるわけなのです。


↑美しい芝生がはがされて、野球のグラウンドのようになっていきます。
はがした芝生がどうなるのかって?
当館の敷地内に広さ15×10m、深さ6mの巨大な穴を掘り、埋め立てられます。


↑埋め立てられた汚染芝は、中間貯蔵施設が決まるまでの間そのまま敷地内で保管します・・・。
中間貯蔵施設は一体いつ決まるんでしょうか?
まさかこのままずっと・・・なんてことないでしょうねぇ。
それにしても、桜井造園の作業員さん、マスクしてください~!

(吉)

美術館の放射線量測定

今回は、当館で行っている放射線量測定の一端をご紹介します。
世界広しと言えども、定期的に放射線量測定を行っている美術館は福島県内の美術館、数館くらいでしょうか・・・。

まず、測定器(サーベイメーター)ですが、ちまたでよく売られている簡易型線量計とはちがって、日立アロカメディカル社製の本格派(と言っていいのかどうか・・・)
聞くところによるとお値段も簡易型線量計とは二桁くらい違う本格派。


↑「さっ!計測するわよ!」之図。


↑原子力環境センターや山梨管工業の文字が記された金属製ケース。
以前お借りした中には富山大学のサーベイメーターもありました。
日本全国からかき集められている感じがします。


↑左が、γ線計測に使用される、日立アロカメディカル社製シンチレーション式サーベイメーターTCS172。
右が、β線計測に使用される、同じく日立アロカメディカル社製GMサーベイメーターTGS146。
ものすごく重厚感が・・・。こんなものを使う日が来るとは夢にも思っていませんでした・・・。

(吉)

遅まきながら震災レポート3書庫篇

当館には学芸員のための書庫があります。
1階の学芸員室のお隣に1ヶ所。2階に1ヶ所。
画集、展覧会図録、美術雑誌など、美術に関連する実に様々な図書資料が置かれており、本棚が林立しています。
震災の際は当然その書庫も、本は床に崩れ落ち、本棚はねじ曲がったり、変形したりと、ひどい状態でした。


↑1階の書庫。なんだかもうグダグダ・・・。


↑同じく1階の書庫。いやはや。「いらかの波」ならぬ「本の波」です。


↑二階の書庫。
巨大なスチール製の本棚が平行四辺形に変形しています。
向かって右側の壁にボルトでがっちりと留めてあったのですが、ボルトが地震の揺れで抜けてこの惨状。


↑同じく二階の書庫。
前の本棚の奥にある小さめの(といっても幅90cm、高さ170cmほど)本棚です。
本の重みと地震の揺れの板挟みで、スチール製の本棚がゆがみ、倒れかかっています。

(吉)

遅まきながら震災レポート2彫刻篇

さて、本日は震災レポート第2弾彫刻篇です。

彫刻は大きな被害を受けた作品がありました。
エミリオ・グレコの《スケートをする女》です。
腰に手をあてて、身をねじった女性像だったので、その不安定なポーズがわざわいしたのでしょうか。


↑完全に倒れてしまいました。

 
↑ブロンズ(青銅)の下部と石の台座を留めていたボルトがねじ切れてしまったのです。すさまじい破壊力・・・。


マリソルの《ママと私》も敷き板から作品が飛び上がって移動。
女の子がさしていたパラソルもズドンと落下して女の子の頭に激突しています。


↑敷き板もずれていますね。普段は6、7人がかりでもなかなか動かないシロモノなのに!


↑アイタタタ・・・。女の子の頭に傷がついてしまいました。生きてる女の子だったら即死ですよ~。


佐藤忠良の《若い女》は・・・ビクともしませんでした!
もし、この重量級のブロンズ像がひっくりかえっていたら、二階のガラスの手すりを突き破り、一階へ落下。
大変な惨事になっていたことでしょう。

↑この美しいバランスのおかげか・・・さすが忠良先生!

(吉)

遅まきながら震災被害レポート

震災の時、玄関のひさしが落ちてきたり、彫刻が倒れて傷ついたりと、県立美術館もかなりの被害を受けました。
いろいろな会議や報告会でその状況はご報告させていただいているのですが、このブログでもその一端をレポートしますね。

地震の揺れはすさまじく、当館の頑健な建物が巨人の両手でもって揺らされているかのように、揺れました。
お客さまを誘導しに展示室へ向かったのですが、歩けないほど、いや、立っていられないほどの揺れで、しばし壁にしがみついていました。
エントランスホールは吹き抜けなので、丈高いガラス窓や天井のガラス窓からガラスが降り注いでくるのではないかと怖かったです。
しかし、奇跡的にもお客様は全員怪我もなく、無事でした。
本当によかったです。
正面玄関から避難していただこうとしたら、「玄関の屋根が落ちてる!」という声が聞こえました。
玄関のひさし部分が落ちて、こんな状態になっていたのです。


↑ひさしの内側が落ちて、自動ドアを突き破っています。


↑アップで。すさまじいですね。


結局お客さまには裏口から避難していただきました。
その間も余震がひっきりなし。
正面の庭園に回って、お客さまや監視員さんたちと状況を見守っていると、余震のたびに地鳴りがし、お隣の県立図書館の軒先がものすごい音を立てて崩落しはじめました。
お客さまの間からも悲鳴があがり、あまりのすさまじさに呆然としました。


震災後、当館はいち早く応急修理をしていただき、玄関も一見元通り。


↑きれいになってます。


↑きれいなんだけど、ベニヤ板・・・(笑)。
あまりにきれいに応急修理してくれたので、「『このままでいいんじゃないですか』とか言われて、ずっとベニヤ板のままだったらどうしよう~」と某学芸員が怯えていました(笑)。

玄関に出たついでにもういっちょ。
福島県内施設では珍しくない情景となりました。
館内放射線量測定値の掲示です。


↑エントランスホール 0.11
 一階企画展示室 0.05~0.07
 二階常設展示室 0.09~0.10
 

福島のみなさん、プチ避難にも県立美術館をご利用くださいね。
常設展は高校生以下無料です!(一般・大学生の方の常設展料金は260円)

(吉)