2022年5月の記事一覧
令和4年度 第Ⅰ期コレクション展
当館では、3月23日から7月10日まで常設展示室にて「令和4年度第Ⅰ期コレクション展」を開催しております。
今回はその展示の様子をご紹介します。
【展示室A】
最初の部屋では、入ってすぐそばのケース内で「ブロンズ小品の魅力~石原コレクションから」を展示しています。
横浜市の会社経営者であった石原巖氏は、彫刻やパブリックアートの設置に関わる事業に参画する中で、彫刻や油彩画、版画、素描など多彩な作品を蒐集していきました。
今回は、石原氏が築き上げたコレクションの一部から、オーギュスト・ロダンや佐藤忠良、船越保武などによる11点のブロンズ彫刻を紹介しています。
その向かい側では、「春の日本画」として、尾竹越堂、安田靫彦、星茂の作品を展示しています。
奥のスペースでは、関根正二を中心に、岸田劉生や恩地孝四郎、長谷川利行、松本竣介などによる大正期から昭和初期にかけて描かれた洋画を紹介した「関根正二と近代の洋画」を展示しています。
【展示室B】
展示室Bでは「特集展示:東北が育んだ作家たち」と題して、東北地方にゆかりある作家の作品を展示しています。
見どころは酒井三良の《帰樵》《雨はれ》《そばの秋》《雪暮》(それぞれ1930年)です。三良が1924年に日本美術院の同人に推挙されてから院展の中心作家として活躍し始める時期の、代表作とも呼べるような逸品です。
その他にも、三良が師事した小川芋銭の作品を併せて展示しています。
また、そのそばには斎藤清の版画や、福田豊四郎の日本画を展示しています。
奥側の壁面では、新たな表現を目指した東北地方ゆかりの作家の作品を紹介しています。
吉井忠の描く安達太良山は大胆な色面で構成されています。
また、コンセプチュアル・アートや環境芸術といった同時代の潮流を独自に捉えた村上善男や、具象と抽象の間を往来する表現を試みた田口安男、針生鎮郎が並びます。
その他にも、福島県の前衛芸術をけん引した鎌田正蔵や橋本章の作品を展示しています。
【展示室C】
展示室Cでは「海外の名品選」を展示しています。
ベン・シャーンやアンドリュー・ワイエスといったアメリカのリアリズム絵画をはじめとし、クロード・モネ、カミーユ・ピサロといった印象派の巨匠らによる油彩画、フェルナン・レジェやパブロ・ピカソの版画、ヘンリー・ムーアの彫刻など、当館所蔵の海外作家作品の中から選りすぐりのものを紹介しています。
とりわけ、パブロ・ピカソによる版画の連作『二人の裸婦』(1945~46年)は新古典主義とキュビスムを往来する作家の作風の変遷がうかがえる内容となっています。
【展示室D】
最後の部屋では、当館の所蔵作品の中から、明治の終わりから昭和の初めにかけて隆盛した創作版画運動を担った作家を紹介する「創作版画の世界」を展示しています。
現在出品している前川千帆の『版芸術(合本B)』(1932~33年)所収の版画は、初夏の風物を描いたこれからの季節にぴったりの作品です。
また、その対面では、平塚運一や深沢索一、武藤六郎などのモダンな都会風景を展示しています。
「第Ⅰ期コレクション展」は7月10日(日)までとなっております。
一般・大学生 280円
高校生以下 無料
ぜひお誘いあわせの上、ご来館をお待ちしています。
もののけワークショップを開催しました
5月8日(日)に当館実習室で創作プログラム「もののけワークショップ」を開催しました。講師は画家の香川大介さんです。
今回は親子向けの講座です。香川さんがつくった素焼きのオブジェに絵付けをし、自分だけの“もののけ”をつくります。
まずは、オブジェを選びます。
ひとつとして同じ形のない約30体のオブジェから、自分のお気に入りを選ぶのは楽しい時間です。
選んだら、絵付けの開始です。
「制作時は、集中しないで周りと話しながら、なるべく考えずに手を動かしてほしい」「みなさんに話しかけます、なんならひとりで勝手にラジオになっています」と、香川さん。
考えないで手を動かすという作品づくりに、子どもたちはすいすいと手を動かし、色を付けていきました。大人も筆を動かし始めると夢中モードに。香川さんと話しながらも制作の手は止めず、親子でそれぞれの表現を楽しんでいました。
最後にみなさんと出来上がった作品を鑑賞しました。
“もののけ”集合!
自分だけの“もののけ”が出来上がりました。
素敵なコメントをいただきました。
・ぬるのがたのしかった!
・0から何かを考えるのは難しいと思いますが、今回のような素材をもとにつくり上げていくのは取り組みやすく刺激的でした!
・親子それぞれ作るのが新鮮でした。自分で作るのも楽しいものですね。
・普段できないことを体験し、まわりのみんなの作品に触れ、ますます表現に興味がでたと思います。
ご参加いただいたみなさま、ありがとうございました。そして、楽しい時間を提供してくださった香川さん、本当にありがとうございました!
創作プログラム「写真のような鉛筆デッサン」を開催しました
4月16日土曜日、当館実習室で創作プログラム「写真のような鉛筆デッサン-自画像を描く-」を開催しました。講師は当館学芸員の大北です。
今回の講座では、形を取ることを省くために写真をトレースして描きます。
形のくるいが無いことで自分の扱えるトーンの幅を増やすことに集中できます。
使用する画材は鉛筆3種類(3B・HB・2H)と、ねりゴム、綿棒です。
2Hの鉛筆は固いので、芯を長めに出してねかせて使います。綿棒は擦筆の代わりです。
左半分は写真をトレースして輪郭やあたりをつけた状態。
右半分は3種類の鉛筆、ねりゴム、綿棒を使って描きました。
まずは、白黒コピーした写真の裏面に、鉛筆の芯の粉末をティッシュペーパーですりこみ、トレースするための準備をします。
次に、色ペンを持ってトレース開始。
目や鼻などの輪郭や明暗が分かれているところをなぞってあたりをつけます。
トレースが終わると、鉛筆で色を入れていきます。固さの違う3種類を使い分けます。
一番暗い色を最初に置くのがポイントで、それを基準にすれば間のトーンをつくりやすくなります。
午前はここで終了。
午後は、立体感を出すべく、ひたすら描きます。受講者の方それぞれ描き方が違うので、その特徴を活かして、個別にアドバイスをしていきます。
苦しい修行のようなデッサンですが、みなさん根気強く取り組み、終盤はそれぞれが何かをつかみ、鉛筆さばきが軽やかになっていきました。
もっと伝えたいことがあったのですが講座終了の時間です。
みなさん扱えるトーンの幅が増えたと思いますので、その感覚を今後の制作に生かしていただければ幸いです。
「今日は楽しかった」「また絵を描く講座を開いてください」「これからもデッサンがんばります!」などのお声をいただきました。嬉しいです。
ご参加いただいたみなさま、ありがとうございました。