2017年6月の記事一覧

出品作品から③

6月10日にミューズ展の2回目のギャラリートークを行いました。



当日は天気もよく、多くの皆さんに足をお運びいただき、企画者としてもうれしい一日でした。

やはり一番人気だったのは、チラシとポスターに使われているカペの《自画像》。


マリー=ガブリエル・カペ《自画像》1783年頃 国立西洋美術館所蔵


実はここに描かれているカペは、手にチョークホルダーを持ち、
背後にはカンヴァスが置かれています。

彼女はチョークで何かを描いている途中のようで、
カンヴァスにはうっすらと白い線が見えています。

皆さん身を乗り出して、何が描かれているか見ていました。

これから展覧会にいらっしゃる方はぜひ、その点もチェックしてみてください。

県立図書館×県立美術館

ただいま開催中の「ミューズ:まなざしの先の女性たち」展には、
カルロ・ドルチの《悲しみの聖母》が出品されています。

県立図書館では、この作品にちなんで、関連書籍の特集「描かれた聖母たち」を開催中です。


美術作品は知識がなくても楽しめますが、知識があればもっと面白くなります。
県立美術館にお越しの際には、ぜひ図書館にもお立ち寄りください!

スライドトーク開催!

6月3日に「ミューズ:まなざしの先の女性たち」展のスライドトークを行いました。


講師は国立西洋美術館主任研究員の川瀬佑介氏。今回の展覧会の企画者のおひとりです。

個々の作品の見どころについて大変興味深いお話をお聞きしました。

今回特に印象的だったのが、アンリ・マルタンの《習作》という作品が、いったい何の下絵だったのか、というお話です。

この問題は長らく謎とされていましたが、川瀬さんは様々な手がかりをもとに、公の場で初めて(!)その謎を解き明かしてくれました。

研究業績の泥棒になると困るので、ここでは詳しく述べられませんが、

最先端のご研究を平易な言葉で分かりやすくご紹介いただき、たいへん有意義な機会となりました。




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「ミューズ:まなざしの先の女性たち」展は7月2日まで

関連事業
〇ギャラリートーク 6月10日 14:00~ 場所:企画展示室(観覧券)

〇講演会「アルカディアの女性たち:西洋美術のもうひとつの側面」
講師:高橋建一氏(和歌山大学准教授・いわき市出身)
6月24日 14:00~ 場所:講堂(聴講無料)

企画展 出品作品から②


ベルナルド・カヴァッリーノ《ヘラクレスとオンファレ》1640年頃 国立西洋美術館所蔵



左手前の男性は、ギリシャ神話に登場するヘラクレス、右の女性は恋人のオンファレ。

ヘラクレスはその怪力によって数々の困難を切り抜けた英雄ですが、
恋人を前に、少し様子がおかしいようです。

彼はこちらに背を向け、どこか頼りなげです。そしてよく目を凝らしてみてみると、
耳元には赤いイヤリングを付け、右手に糸つむぎの道具を持っているのが分かります。

一方、オンファレは堂々とこちらを見つめ、手元にこん棒を置き、
ライオンの毛皮をひざに敷いています。

つまりここでは、男女の持ち物や関係性があべこべになっています。
いわゆる「かかあ天下」に似た主題を描いたものと考えてもよいでしょう。


作者のベルナルド・カヴァッリーノは17世紀ナポリで活躍した画家です。

17世紀初頭のナポリには、光と闇の表現で一世を風靡(ふうび)したカラヴァッジョという画家が一時期滞在しました。

カラヴァッジョはローマで殺人をおかし、警察の手を逃れて南に逃亡するのですが、
その途中でナポリに立寄り、そこで活動していた画家たちに強い影響を与えました。

この作品では、光と影のコントラスとが印象的ですが、ここにカラヴァッジョからの影響を見ることができます。


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「ミューズ:まなざしの先の女性たち」展は7月2日まで

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