福島県立美術館ブログ
横尾忠則ポスター展 無事に終了しました
4月20日[土]にオープンした「横尾忠則ポスター展」は、本日無事に終了いたしました。今日は、最終日ということもあり、いつもより多くのお客様が来て下さいました。
この展覧会では、横尾さんをはじめ、ヨコオズ・サーカス、国立国際美術館、横尾忠則現代美術館、富山県立近代美術館のご協力をいただき、400点という数の作品を会場一杯に展示することができました。本当に有り難うございました。横尾作品のエネルギーをたっぷりと浴び、満足してお帰りになる方が多かったように思います。
アンケートからいくつかご紹介しましょう。
「点数が多く、横尾さんのエネルギー(世界)が感じられた。」(60代女性)
「作品の多さに驚きました。青春時代を思い出し楽しかった。」(60代女性)
「すごく衝撃を受けました。」(20代女性)
「作品を見てスゴイなと思いました。」(高校生)
「未経験な絵だった。よかった。」(高校生)
「福島でこんなにたくさんの横尾さんの作品を見ることができて嬉しいです。」(10代女性)
横尾さんと世代が近くて、作品を見ながら自分の若かりし時代を思い出された方も多かったのですが、若い方は若い方で今までにない刺激を受けたようです。
横尾さんからたくさんのエネルギーをいただき、展覧会は幕を閉じました。
あらためて、展覧会にご協力をいただきました多くの方々に心からお礼申し上げます。
A.Y.
「横尾忠則ポスター展」第二回ギャラリートーク終了
先週土曜日、6月8日、ギャラリートークの二回目が行われました。
僭越ながら、私が担当させていただきました。
今回は、私がお話しをするというよりも、いろいろな方に「私の気になる横尾ポスター」というようなテーマでお話しをしていただきました。
まずは私から簡単に展覧会の概要をお話ししたところで、1番バッターは展示室で監視員のお仕事をして下さっている荒川さん。
今、美術館には16名の監視員が展示室で作品を見守って下さっています。彼女たちは、実は私たち学芸員よりもずっと長い時間、作品を眺めているわけです。彼女たちの意見、感想も聞きたいと思って協力してもらいました。
荒川さんが選んでくれたのは《西高祭》。高校生時代の、いわゆる横尾スタイルになる前の作品ですが、ピュアな感性が感じられて、今見るとちょっとレトロな感じが気に入っているとのことでした。荒川さんは若い頃から横尾さんの作品を見ていて、その時代を思い出しながら、絵について話してくれました。
2番目は、この前のワークショップで講師をして下さったグラフィック・デザイナーの中山千尋さん。彼女の1点は《京都労音B 春日八郎艶歌を歌う》。デザイナーの目から見れば、やはりこれは画期的。3色という限られた色で、これほど目を引くインパクトのある作品ができるということに、驚きを感じたとおっしゃっていました。本当にそうです。ミスマッチなのに不快ではなく、何故か惹かれる。そこが横尾マジックなのではないでしょうか。
3番目は、監視員の佐瀬さん。彼女は天井桟敷のポスターを選んでくれました。《天井桟敷 定期会員募集》の輪切りのレモンを持った女の子がなんだか好き。そういうの、よくわかりますね。何かうまく言葉にできないけれども、気になる。佐瀬さんにいわれるまで、この女の子のことをあまり気に留めなかったのですが、そういわれたらやたら気になり始めました。
ワークショップにも参加してくれた大学院生の舟木君が選んだのは《新宿泥棒日記》。つい先日、福島フォーラムでの上映会で映画も見てくれたそうです。学生時代から横尾さんの作品についていろいろと考えて来た舟木君は、最近、横尾さんを理解するのに演劇や映画などを見ていかなくてはならないのではないかと考え始めているそうです。
今回展覧会を担当している國島学芸員が選んだのは《衝撃のUFO》。実は國島さんは学生時代、来福した横尾さんを隣の飯野町にあるUFOふれあい館にお連れしたことがあったそうです。そこは頻繁にUFOが現れるというミステリースポット。ふれあい館の館長さんとその友人、横尾さんでUFO談義が盛り上がり、近くの千貫森にみんなで登ったけれども残念ながらUFOには会えなかったということ(この前お聞きしたら、横尾さんはそのことはすっかり忘れておられました)。しかし、こうして思いもかけず、美術館で横尾さんと再会できた運命の不思議。まさに人生ミステリー。そんなエピソードを話してくれました。
絵を見る経験は人それぞれですが、どこかで自分の記憶、思い出と交差させていたりします。「なんか好き」「気になる」ということの奥にも、きっと理由があるはずで、それを探っていくと何かに出会えるのかもしれません。
特に横尾さんのポスターは、その時代、そしてそこに生きていた自分というものを重ね合わせ思い起こさせてくれるのだ、ということをあらためて感じました。
ご協力いただいたみなさま有り難うございました。楽しいギャラリートークになりました。
さて、展覧会も残すところあと4日。どうぞお見逃しなく。ご来館をお待ちしております。
ショップも楽しいですよ!
A.Y.
福島をつなぐ・つたえるフォーラム 6月15日開催
福島県立美術館は、昨年から「福島藝術計画×Art Support Tohoku×Tokyo」に参加しています。
福島藝術計画とは、福島県、東京都、東京文化発信プロジェクト室(公益財団法人東京都歴史文化財団)の三者が共催し、地域の団体と協働してアートプログラムを実施する事業です。文化芸術に触れる機会や地域コミュニティの交流の場をつくり、文化芸術による地域活力の創出と心のケアという視点から復旧・復興を支援します。
今年最初の事業として「福島をつなぐ・つたえるフォーラム」を6月15日に開催いたします。
こまばアゴラ劇場芸術監督、劇団「青年団」主宰の平田オリザ氏と、詩人の和合亮一氏をお招きしたフォーラムを開催し、アートによる「まちづくり」や「教育」といった視点から、それぞれの想いを語っていただきます。
第一部はお二人の講演会。第2部では、東京文化発信プロジェクト室の森司をモデレータとして、「被災地とアートの関わり」というテーマから、被災地におけるアートプロジェクトの可能性、そこで創造されるコミュニティの必要性などについて、みなさんと考えます。
現在、参加申込を受け付けています。下記要領にてお申し込み下さい(先着200名様)。
・インターネットでのお申込み
http://f-geijyutsukeikaku.info にお申込みフォームがあります。
・電話/Eメールでのお申込み
福島藝術計画×Art Support Tohoku-Tokyo事務局
(特定非営利活動法人Wunder ground 担当:島﨑)
電話:090-1938-0170
Eメール:tas.fukushima(a)gmail.com
福島県立美術館
電話:024-531-5511
A.Y.
映画「新宿泥棒日記」の上映会、お見逃しなく!
「横尾忠則ポスター展」関連企画として、福島市内の映画館フォーラム福島で横尾忠則主演の「新宿泥棒日記」(1969年/創造社)を上映いたします。
もちろんポスターも横尾忠則制作。こちらは展覧会に出品されています。
《新宿泥棒日記(創造社)1968年》©TADANORI YOKOO
監督は、今年1月15日に80歳で亡くなった大島渚。撮影当時は大島監督も横尾さんもまだ30代。若き作家たちの熱いエネルギーがぶつかり合って生まれた映画です。
『横尾忠則自伝』を読むと、映画にまつわる面白いエピソードが語られているので、いくつかご紹介しましょう。
「・・・ぼくを使って成功するかどうかということになると、とても自信はなかった。こんな気持ちを監督に話すと、『それはぼくにまかして下さい、絶対心配ないです。大丈夫です』という言葉が返ってきたが、やっぱり不安であった」
・・・
(女優の横山リエと横尾さんが性心理学者・高橋鐵にカウンセリングを受けるシーンの撮影)「高橋先生にはあらかじめカウンセリングの内容が伝えられていたが、われわれ二人は何も聞かされていなかった。その上ぼくは信じられないことだが台本を全く読まないまま初日の撮影に入ってしまった。だからそのシーンの前後の話が全くわからなかったので、自分が演っていることの意味がさっぱり理解できず、不安のどん底で演っていた。まさか台本を読んでいないと監督にいうわけにはいかなかったので、このことがバレはしまいかと撮影中は恐れ続けた」
・・・
「何かをしゃべらなければならないが、横尾忠則としてか、それとも役柄の岡ノ上鳥男としてしゃべるべきなのか、ぼくは完全にぼくの中でパニックを起こしてしまった。何がおこっているのかわからないままドキュメント風にカウンセリングは延々続いた。そして突然二人は高橋先生によって上半身裸にさせられてしまった」
これを読んでも、撮影現場はかなり凄まじいものであったのだろうと予想できます。
そして、
「ぼくの目には大島監督は映画を創っているのか壊しているのかよくわからなかったが、恐らくその両方であったのだろう。虚構の中でドキュメントやハプニング、それにぼくという実像と虚像の両方の観念の解体を試みようとしていたのではなかっただろうか」
と締めくくっています。どんな映画ができあがったのか見たくなりますね。
1960年代。従来の美的価値観や芸術概念が問い直され、権力や権威に縛られない自由な発想に基づいた新しい動向が芸術のいろいろな分野に芽吹いた時代。背景にそんな時代を感じさせる映画です。
展覧会を見て、そのチケットを持って、是非フォーラム福島へ。
「新宿泥棒日記」
監督:大島渚
出演:横尾忠則、横山リエ、渡辺文雄、唐十郎ほか
1969年/創造社/本編1時間36分
上映日:6月1日[土]-5日[水]
上映時間:6月1日[土]-3日[月]12:30~、4日[火]、5日[水]19:00~
観覧料金:横尾忠則展観覧券、案内葉書、福島県立美術館友の会会員証をご呈示いただければ700円になります。
会場:フォーラム福島(024-533-1515)
http://www.forum-movie.net/fukushima
協力:福島県立美術館協力会
A.Y.
常設展示「横尾忠則と同時代のポスター」のご紹介
企画展示室で開催している「横尾忠則ポスター展」。
実は福島県立美術館では、横尾さんの版画を収蔵しており、今、常設展示室の最後の部屋Dにおいて「横尾忠則と同時代のポスター」という特集で展示をしています。
企画展をご覧になった方は、是非常設展にもお立ち寄り下さい。企画展観覧券をお持ちの方は観覧無料です。
収蔵しているのは1974年制作の《聖シャンバラ》(シルクスクリーン、オフセット)10点組。
1970年代はじめ、入院生活や三島由紀夫の割腹自殺などショッキングな出来事を体験した横尾さんは、徐々に精神世界へと傾倒していきます。
特にビートルズに強い関心を持っており、彼らがインドに深く傾倒していたことを知って、ヒンズー文化に強い興味を抱くようになます。そして1974年にはインド行きを実現しました。
横尾さんのインドへの関心は主にシャンバラに向けられていました。
シャンバラとは、地球の内部の空洞に存在するアガルタ王国の首都の名前であり、その地下世界のピラミッドには巨大な四次元エネルギーが秘められ、太陽と交流しているというのです。横尾さんは自らもこのシャンバラにたどり着きたいと願っていました。
そのためにはチャクラ(人間の身体にある神のエネルギーのセンター)の覚醒が必要なのだそうです。
《聖シャンバラ》は、そこにいたるまでの瞑想のプロセスをテーマとした作品です。
常設でこの作品を見て、また企画展に戻ることも可能です。
版画作品とポスターでは確かに表現は異なりますが、比べることで、この時代の横尾さんの関心のありかがよく見えてくるはずです。
ところで、今日は、ワークショップ「私自身のための広告ポスターを作ろう!」に参加してくれた高校生たちがワークショップ作品の展示を見に来てくれました。
こちらは2F常設展示から降りてきたところ、エントランスホール奥の壁面です。是非お忘れなくご覧下さい。
A.Y.
「横尾忠則ポスター展」関連ワークショップの作品を展示しました。
4月27日、5月11日と二日間にわたって、横尾忠則ポスター展関連ワークショップ「私自身のための広告ポスターを作ろう!」を開催しました。その模様はブログでご紹介しましたので、是非ご覧下さい。
5月11日に完成できなかった方もいらしたので、後日完成させて持ってきていただくことをお願いしておりましたが、20日、全員の作品が集まりました。早速、美術館エントランスホール奥に展示しております。
みなさん、四苦八苦していらっしゃるようでしたが楽しく制作できました。どれも力作ぞろいです。高校生8名(全員女子)もユニークな作品を出品してくれています。展覧会を見た後に、是非お立ち寄り下さい!
A.Y.
「横尾忠則ポスター展」ギャラリートーク開催
5月18日、土曜日、午後2時から「横尾忠則ポスター展」のギャラリートークが行われました。今回は久慈伸一学芸員が担当です。
20名くらいの方々が展示室入り口にお集まり下さいました。
第1室の初期作品から開始です。
京都勤労者音楽協議会に依頼されたコンサートポスターの数々は、やはりはずせません。
久慈が選んだのは坂本スミ子と雪村いづみのポスター、中尾ミエと東京キューバンボーイズのポスターなど。
懐かしい名前だと思う人はこのポスターを見て「にやり」とするでしょうし、初めて見る人は「いったいどんな人なのだろう」と興味をそそられるでしょう。
いずれにせよ、見る人の目を必ず留めさせるポスターであることに間違いはありません。
状況劇場や天井桟敷のポスターのコーナー。
《毛皮のマリー》のポスターの中に小さく書き込まれた文章に注目します。
「愛しの我がピエール・ボナール様 貴殿の御作品を犯した私の姦通の罪をお許し下さいませ 横尾忠子」。
イメージの借用を確信犯としてやってのけ、それをさらにブラックなユーモアで包んでしまうやり方は、ある意味演劇的といえるのではないか、と久慈学芸員。作品の細部に注目です!
第2室、1970年代のスピリチュアルな作品の背景には、ベトナム戦争時代のアメリカのヒッピー文化、あるいはビートルズのインドへの傾倒、ノストラダムスの大予言、日本沈没、超能力の流行などがあったことが紹介されました。
そして第3室の1980年代に入ったところで、地震!
みなさん一瞬、固まりました。あとから聞いたところでは、福島市内は震度4。久しぶりに少し大きな揺れでしたが、さすが福島の方々は慣れています。早々にトークは再開されました。
資生堂オイデルミンのポスターや、箱根駅伝のポスターなどを紹介しながら、最終展示室へ。
2010年に国立国際美術館で開催された「横尾忠則全ポスター展」のポスターを紹介。
唇や目、眉がピンクに塗り残された真っ黒い女性のプロフィールという、度肝を抜くようなイメージの作り方には驚かされます。
2012年に神戸市に開館した横尾忠則現代美術館のポスターに描かれる機関車のイメージ。横尾さんは機関車を随分使ってきていますが、もしかしたらこれは自画像的な意味があるのではないかと、久慈学芸員。
横尾さんの作品にはいろいろな解釈が可能なのでしょう。そしてつい見る私たちも解釈したくなってしまいます。必ずしもそれがうまくわけではありませんが、楽しかったりします。
細部に注目です。細かいところをよく見ると、いろいろな発見が必ずあります。その時代を知っていてもいなくても大丈夫。是非、皆さんも作品の前で妄想を膨らませて下さい。
途中でハプニングもありましたが、楽しくギャラリートークは終了いたしました。
次回は6月8日[土]午後2時です。
A.Y.
横尾忠則ポスター展、明日ギャラリートークです。
横尾忠則ポスター展も会期半ばとなりました。早いですね。
先週、詩人の和合亮一さん、グラフィック・デザイナーの中山千尋さんによるワークショップを行いましたが、引き続き明日は、当館学芸員・久慈伸一によるギャラリートークを開催いたします。
会場をまわりながら、作品にまつわるお話しをしていきます。作品を巡ってさまざまな角度から語られる言葉は、時に鑑賞の邪魔になることもありますが、新たな発見につながることもあります。面白さを引き出してくれることもあります。すでにご覧になった方にも、これから展覧会を楽しもうという方にも、鑑賞のガイドとなるような楽しいトークができればと、私たちも努力をしております。なかなか難しいのですが・・・。
5月18日[土]14:00~ チケットをご持参の上、企画展示室入り口にお集まり下さい。
ここです↓
皆様のご来館を心からお待ちしております。
A.Y.
ワークショップ「私自身のための広告ポスターを作ろう!」 5月11日
先週土曜日、5月11日に「横尾忠則ポスター展」関連ワークショップの二日目が開催されました。
4月27日の初日は、詩人の和合亮一さんとともに自分自身と向き合って言葉を探しました。その後二週間の間に、それぞれイメージを膨らませ、コラージュの技法でポスターを作るための材料集めをしてもらいました。さて、いよいよ制作です。
二日目の講師は、福島市でグラフィック・デザイナーの仕事をしていらっしゃる中山千尋さん。グラフィック・デザインには「クライアント」が必ず存在します。実際は、そのクライアントの意向や予算に合わせて仕事をしなくてはならない、と作例を見ながらお話しして下さいました。でも今回はクライアントも自分、そしてデザイナーも自分です。自分の表現したいものを、クライアントの目とデザイナーの目との二方向から見つめるという作業が必要だったといえるでしょう。
作業が始まると、皆さん真剣そのもの。しーんと静かな室内で、紙がこすれる音やハサミの音が響きました。
「他の人の作品も見てみましょう。」
「横尾展をもう一度見に行ってもいいですよ。」
時々頭の中を解きほぐしながら、制作が続きました。
三時過ぎ、和合さんが駆けつけて下さって、講評会です。
実は完成できなかった方もいらっしゃいましたが、それぞれがプレゼンテーションをし、中山さん、和合さんの講評をいただきました。どれもがそれぞれに自分と向き合って見つけた形、言葉、そしてポスターだということがよくわかりました。
未完成だった方は、一週間の間に完成品を提出していただき、最後には横尾さんから講評をいただくことになっています。そしてエントランスホールに展示もいたします。どうぞご期待下さい。
講師をして下さいました和合亮一さん、中山千尋さん、有り難うございました。
そして横尾先生、どうぞよろしくお願いいたします。
A.Y.
ワークショップ「私自身のための広告ポスターをつくろう」 4月27日
先週土曜日、4月27日に「横尾忠則ポスター展」ワークショップが開催されました。
詩人の和合亮一さん、グラフィック・デザイナーの中山千尋さんと一緒に、2日かけて「私自身のための広告ポスター」を作ります。ちょっと奇妙なタイトルのワークショップですね。
実は展覧会と大いに関係があるのです。横尾さん29歳の時、「ペルソナ展」というデザイン展に出品します。参加者は田中一光、福田繁雄、勝井三雄、宇野亜喜良、和田誠、永井一正、粟津潔、細田巌、木村恒久、片山利之と横尾さんの11人。まだ若き横尾さんにとって、蒼々たるグラフィック・デザイナーとともに出品できるまたとないチャンス。意気込んで自主制作にとりかかりました。
その時制作したのが、「誰もが考えながら誰もがやらなかった自分自身のための広告ポスター」(『横尾忠則自伝』より)でした。
旭を背景に、薔薇を手にした横尾さんが首つりをしています。そこに英文で「ぼくは29歳でついに頂点に達し、首を吊って死ぬ」という死亡宣言のコピーを書き加えました。
「このポスターには過去の自分を埋葬すると同時に未来の自分を再生させるという願いと意味があったが、同時にモダニズム・デザインへの決別宣言でもあった。」(『横尾忠則自伝』)と、横尾さんは書いています。
この作品はもちろん展覧会に出品されています。
私たちも「自分自身ための広告ポスター」に挑戦しようという、考えてみれば無謀なワークショップ。しかし事前に和合さん、中山さんと打ち合わせをましたが、なかなか奥が深い面白いテーマです。
初日は和合さんとことばのワークショップ。
まず、和合さんは横尾さんの作品との出会いからお話しを始められました。
高校の国語の先生になりたての20代。何か表現をしたい、でもどうしたらいいのかわからない、そんな悶々とした日々を送っていたときに横尾さんの画集と出会ったそうです。そして「死後の世界」を描くということからヒントを得ます。自分は一度死んでしまった。死の側から世界を見たらどうなるのか。
生きることと死ぬこと。創作の原点はそこにあるのではないかとおっしゃっていたのが印象的でした。
さて、では実際にどのように言葉を組み上げていったらいいのでしょう。
二つのキーワードがありました。一つは「無意識」。そしてもう一つが「コラージュ」。無意識の中から拾い上げてきた言葉を、ぶつけ、つなげ、つづける。そうしてひとつながりの文章に作り上げていく。
ワークシートを書きながら、横尾展で作品を見たときの言葉を書きとめながら、最後にそれぞれがいくつかのコピー(らしきもの)を作り、発表しました。かなり斬新なものもありましたよ。
ポスターに作り上げるのは二週間後の5月11日。ポスターも「コラージュ」の手法を使い、雑誌の切り抜きや写真やさまざまなイメージを貼り合わせて作っていきます。そのための素材集めが宿題となります。
最後に和合さんと中山さんからのアドヴァイス。言葉がイメージを規定することもあるけれど、イメージが言葉を引き出すこともある。素材集めをする中で言葉が変化することもあっていいのです。
さてさて、参加者のみなさん、どのようにイメージを膨らませていらっしゃるでしょう。楽しみにしています!
A.Y.