カテゴリ:教育普及

カラーキューブで円空展を楽しみました!

2月28日(日)、福島第四中学校美術部の生徒さんが、現在企画展示室にて開催中の「飛騨の円空―千光寺とその周辺の足跡―」の鑑賞に来てくれました。



今回は顧問の丹野先生のアイデアで、アートキューブのなかのカラーキューブを使った円空展の鑑賞です。アートキューブとは、郡山市立美術館と当館で開発した、鑑賞補助ツールです。
この四中の美術部さんは1月にも常設展示を見に来てくださり、その際は型どりキューブを使って、彫刻作品を中心とした鑑賞活動をしました。

今回は企画展の鑑賞。
まずは顧問の丹野先生からの説明で、美術資料集や手書きのワークシートなどを元にして、仏像全般についてみんなで学んでいきます。先生からは、「資料集に載っている仏像と円空の仏像はどう違うか」という点にも注目してみるようお話がありました。



さて、活動のメインは、展示されている仏像のうちの何点かのイメージカラーを決めること。
アートキューブの使い方などについて、当館学芸員から簡単に説明が入ります。
今回使ったカラーキューブは、“色”をテーマにカラーフィルターを積み重ねたキューブです。
それぞれのフィルター越しに作品を見て印象の違いを感じたりすることができます。

説明を終えると、一人ひとつずつカラーキューブを手にいよいよ展示室へ!
カラーフィルター越しに円空仏をのぞき、それぞれの仏像から受ける印象から、イメージカラーを考え、ワークシートに記入していきます。



暗い展示室では、少し色が見えづらい部分もあったかもしれませんが、みんな真剣に円空仏をみて、友だちと意見を交換しながら、じっくりとイメージカラーを考えていました。

会議室に戻ると、今度は先生が用意した円空仏の輪郭線を写し取ったワークシートに、イメージカラーとして選んだ色を色鉛筆で塗っていきます。ピンク、黄色、青、紫・・・陰影を色づけていくことにより、円空仏がカラフルに生まれ変わっていきました。



みんな丁寧に塗っていたので、完成はしませんでしたが、それぞれが仏像から受ける印象に想いをめぐらせた、楽しい鑑賞活動となりました!そして私たち美術館のスタッフも、活動をみながら一緒に楽しむことができました!!
みんなの手によって、どのような色の円空仏が現れてきたのでしょうか?完成したカラフルな円空仏たちは、学校内で掲示するようです。

2005年に郡山市立美術館と当館との共同開発で生まれ、約10年経ったアートキューブ。
今回使ったキューブも含め、12種類のキューブがあり様々な視点から作品を楽しむことができます。
ご興味のある方はぜひ美術館にお問い合わせ下さい!

S.Y.

学校連携共同ワークショップ・参加校作品展 始まりました!

今年度のワークショップは『不思議な世界の入口』をテーマに、まったく違う材料を組み合わせ新たな世界を創り上げるイラストレーター・グラフィックデザイナーの酒井賢司氏と東北芸術工科大学美術科准教授で画家の鴻崎正武氏をお招きし開催してきました。
参加校は県内全域より12 校(幼稚園3、小学校2、中学校3、高校4[養護学校高等部1含]で参加者総数約531 名です。
本展覧会では、ワークショップで作られた全ての作品を展示いたします。子ども達の思いやときめきがギッシリ詰まった素敵な作品をぜひご堪能ください!

会期■2014年12月9日(火)~2015年1月12日(月・祝)
会場■福島県立美術館 企画展示室A-1
開館時間■9:30~17:00 最終入館は16:30
休館日■12月15日(月)、22日(月)、24日(水)、年末年始休館12月28日~1月5日
入場無料





 



(くに)

美術館への年賀状展 作品大募集!!

福島県内の小・中学生からイラストや版画などで描いた手づくりの年賀状を募集します。
新年の目標や願いを1枚に込めて楽しい作品に仕上げて送って下さい。
賞の授与はいたしませんが、届いた年賀状はすべて展示します。

◆ 募集内容
はがきサイズ(14.8×10cm)の用紙に、年賀状のために制作した作品1人1点。技法や画面の縦横は自由。あて名面に「郵便番号」「住所」「氏名」「学校名」「学年」を明記の上、下記のあて先まで送って下さい。
学校・学年・クラスなどでまとめて送付いただいてもかまいません。
なお、応募対象は福島県内の小・中学生に限らせて頂きます。

【応募〆切】
 2015年1月4日[日]まで必着

【あて先とお問合せ】
 〒960-8003 福島市森合字西養山1
 福島県立美術館「美術館への年賀状展」係 
 Tel. 024-531-5511




(くに)

視覚障がい者のための鑑賞ワークショップを開催

昨年度の「ベン・シャーン展」に引き続き、今年度も3月21日(金・祝)に視覚障がい者の方々と収蔵作品のベン・シャーンを鑑賞するワークショップを開催しました。
午前と午後の2回。午前は10:30から。午後は14:00のスタート。


講師は真下弥生さん(ルーテル学院大学非常勤講師)と半田こづえさん(筑波大学大学院)。

前日は雪が降る寒い日で、足元が悪いのではないかと心配しましたが、当日はみなさん予定通りというよりも、楽しみにされていたようで早々とお集まりいただき、いい雰囲気でスタートしました。

まずは自己紹介。
そして介添えの方々も一緒に、ウォーミングアップ。

 
簡単な図形の触図を触ってみました。見てはいけません。私もやってみたのですが、意外と難しいものです。丸と八角形がなかなかわかりません。触図を把握するのには思ったより時間がかかるのですね。そういうことを頭に置いて、まわりの私たちもゆっくりと鑑賞をサポートしていきたいと思いました。

さて本番です。作品はベン・シャーンの版画作品《詩篇133篇》(1963年 リトグラフ・紙)。
鳩が2羽向き合っています。その鳩を囲む唐草模様。そこに旧約聖書の詩篇133篇が書き込まれています。絵の構図は複雑なので、鳩と唐草と二つ別々の触図が用意されていました。


まずは鳩の触図。
線描のみで描かれた鳩と、色が塗られた鳩。最初は何が描かれているかよくわからず、先生から「鳥」というヒントをもらいました。そうすると嘴、眼、足、しっぽなどが見えてくるようです。気づいたことを自由に発言しあい、お互いの言葉に耳を傾けながら鑑賞を進めていきます。

 
次は唐草模様。ぽっかりとあいた二つの空間のところに鳩が入ることがわかってきました。そして唐草模様を辿りながら、ベン・シャーン独特の線描を感じていきました。

今回の触図に文字は入っていませんでしたので、先生が内容を日本語訳にして朗読して下さいました。
  見よ、兄弟が共に座っている。
  なんという恵み、なんとういう喜び。
  ・・・・

そして、ベン・シャーン(1898-1969)という画家について、この絵の描かれた時代背景が説明されました。
旧ロシア帝国内だった現・リトアニアのユダヤ人家庭に生まれたシャーンは、20世紀初頭、ロシアの迫害を逃れて家族でアメリカに移住。貧しい中、リトグラフの工房で働きながら絵を学び、常に社会に厳しい視線を投げかけ、人々の慎ましい暮らしを暖かく見守った作家でした。1960年代初頭は、国外では冷戦が緊迫し、国内では公民権運動が盛り上がった時代でした。そういうことを知ってあらためて作品を鑑賞すると、もっといろいろなものが作品から感じ取れるようになります。

触図による鑑賞を一旦終え、版画のプレス機がある部屋に移動。今度は作品を技法の点から見てみます。

 
リトグラフの原版(アルミ板)とシャーンも使ったアルシュ紙、そしてリトグラフのプレス機を触ってみました。
みなさん、プレス機の大きさにびっくりされていました。


そして実際の作品の前で鑑賞するために常設展示室に移動です。
天井の高いエントランスホール、常設展の第一室、第二室と歩き、やっとシャーンの作品がある第三室に到着。



今まで得た情報と、今度は作品を目の前に、先生や介添えの方の言葉を手がかりにしてより深く鑑賞を進めていきました。みんなで会話しながら、感想を述べながら想像を膨らませていく作業は、私たちにとってもとても楽しいものでした。

《詩篇133篇》だけでなく《ラッキードラゴン》も鑑賞。

再び講義室に戻って、みなさんにひとことずつ感想を言っていただきました。
触図を使っての鑑賞が初めての方が多かったので、それが意外と難しいこと。でも言葉を媒介にしたサポートがあるとだんだんとわかってくること。こういう美術鑑賞の機会をまた作って欲しいという要望も出ました。「目が見えなくても美術鑑賞はできる。」見えないからこそ想像し、鑑賞が膨らむこともある、という感想には私もハッとしました。

午前、午後、みなさん堪能され、また美術館に来てみたいと感じていただけたのは本当に嬉しい限りです。有り難うございました。

そして真下弥生さん、半田こづえさんをはじめ、ご協力いただきました福島県点字図書館、福島県立盲学校、そして福島県立美術館協力会に心からお礼申し上げます。

A.Y.