福島県立美術館ブログ

「横尾忠則ポスター展」第二回ギャラリートーク終了

先週土曜日、6月8日、ギャラリートークの二回目が行われました。
僭越ながら、私が担当させていただきました。
今回は、私がお話しをするというよりも、いろいろな方に「私の気になる横尾ポスター」というようなテーマでお話しをしていただきました。

まずは私から簡単に展覧会の概要をお話ししたところで、1番バッターは展示室で監視員のお仕事をして下さっている荒川さん。
今、美術館には16名の監視員が展示室で作品を見守って下さっています。彼女たちは、実は私たち学芸員よりもずっと長い時間、作品を眺めているわけです。彼女たちの意見、感想も聞きたいと思って協力してもらいました。



荒川さんが選んでくれたのは《西高祭》。高校生時代の、いわゆる横尾スタイルになる前の作品ですが、ピュアな感性が感じられて、今見るとちょっとレトロな感じが気に入っているとのことでした。荒川さんは若い頃から横尾さんの作品を見ていて、その時代を思い出しながら、絵について話してくれました。



2番目は、この前のワークショップで講師をして下さったグラフィック・デザイナーの中山千尋さん。彼女の1点は《京都労音B 春日八郎艶歌を歌う》。デザイナーの目から見れば、やはりこれは画期的。3色という限られた色で、これほど目を引くインパクトのある作品ができるということに、驚きを感じたとおっしゃっていました。本当にそうです。ミスマッチなのに不快ではなく、何故か惹かれる。そこが横尾マジックなのではないでしょうか。



3番目は、監視員の佐瀬さん。彼女は天井桟敷のポスターを選んでくれました。《天井桟敷 定期会員募集》の輪切りのレモンを持った女の子がなんだか好き。そういうの、よくわかりますね。何かうまく言葉にできないけれども、気になる。佐瀬さんにいわれるまで、この女の子のことをあまり気に留めなかったのですが、そういわれたらやたら気になり始めました。



ワークショップにも参加してくれた大学院生の舟木君が選んだのは《新宿泥棒日記》。つい先日、福島フォーラムでの上映会で映画も見てくれたそうです。学生時代から横尾さんの作品についていろいろと考えて来た舟木君は、最近、横尾さんを理解するのに演劇や映画などを見ていかなくてはならないのではないかと考え始めているそうです。

今回展覧会を担当している國島学芸員が選んだのは《衝撃のUFO》。実は國島さんは学生時代、来福した横尾さんを隣の飯野町にあるUFOふれあい館にお連れしたことがあったそうです。そこは頻繁にUFOが現れるというミステリースポット。ふれあい館の館長さんとその友人、横尾さんでUFO談義が盛り上がり、近くの千貫森にみんなで登ったけれども残念ながらUFOには会えなかったということ(この前お聞きしたら、横尾さんはそのことはすっかり忘れておられました)。しかし、こうして思いもかけず、美術館で横尾さんと再会できた運命の不思議。まさに人生ミステリー。そんなエピソードを話してくれました。

絵を見る経験は人それぞれですが、どこかで自分の記憶、思い出と交差させていたりします。「なんか好き」「気になる」ということの奥にも、きっと理由があるはずで、それを探っていくと何かに出会えるのかもしれません。
特に横尾さんのポスターは、その時代、そしてそこに生きていた自分というものを重ね合わせ思い起こさせてくれるのだ、ということをあらためて感じました。

ご協力いただいたみなさま有り難うございました。楽しいギャラリートークになりました。

さて、展覧会も残すところあと4日。どうぞお見逃しなく。ご来館をお待ちしております。
ショップも楽しいですよ!






A.Y.

福島をつなぐ・つたえるフォーラム 6月15日開催

福島県立美術館は、昨年から「福島藝術計画×Art Support Tohoku×Tokyo」に参加しています。

福島藝術計画とは、福島県、東京都、東京文化発信プロジェクト室(公益財団法人東京都歴史文化財団)の三者が共催し、地域の団体と協働してアートプログラムを実施する事業です。文化芸術に触れる機会や地域コミュニティの交流の場をつくり、文化芸術による地域活力の創出と心のケアという視点から復旧・復興を支援します。

今年最初の事業として「福島をつなぐ・つたえるフォーラム」を6月15日に開催いたします。
こまばアゴラ劇場芸術監督、劇団「青年団」主宰の平田オリザ氏と、詩人の和合亮一氏をお招きしたフォーラムを開催し、アートによる「まちづくり」や「教育」といった視点から、それぞれの想いを語っていただきます。

第一部はお二人の講演会。第2部では、東京文化発信プロジェクト室の森司をモデレータとして、「被災地とアートの関わり」というテーマから、被災地におけるアートプロジェクトの可能性、そこで創造されるコミュニティの必要性などについて、みなさんと考えます。

現在、参加申込を受け付けています。下記要領にてお申し込み下さい(先着200名様)。

・インターネットでのお申込み
    http://f-geijyutsukeikaku.info にお申込みフォームがあります。
・電話/Eメールでのお申込み
    福島藝術計画×Art Support Tohoku-Tokyo事務局
      (特定非営利活動法人Wunder ground 担当:島﨑)
        電話:090-1938-0170
        Eメール:tas.fukushima(a)gmail.com
    福島県立美術館
        電話:024-531-5511

 

A.Y.

映画「新宿泥棒日記」の上映会、お見逃しなく!

「横尾忠則ポスター展」関連企画として、福島市内の映画館フォーラム福島で横尾忠則主演の「新宿泥棒日記」(1969年/創造社)を上映いたします。
もちろんポスターも横尾忠則制作。こちらは展覧会に出品されています。


《新宿泥棒日記(創造社)1968年》©TADANORI YOKOO

監督は、今年1月15日に80歳で亡くなった大島渚。撮影当時は大島監督も横尾さんもまだ30代。若き作家たちの熱いエネルギーがぶつかり合って生まれた映画です。

『横尾忠則自伝』を読むと、映画にまつわる面白いエピソードが語られているので、いくつかご紹介しましょう。

「・・・ぼくを使って成功するかどうかということになると、とても自信はなかった。こんな気持ちを監督に話すと、『それはぼくにまかして下さい、絶対心配ないです。大丈夫です』という言葉が返ってきたが、やっぱり不安であった」
・・・
(女優の横山リエと横尾さんが性心理学者・高橋鐵にカウンセリングを受けるシーンの撮影)「高橋先生にはあらかじめカウンセリングの内容が伝えられていたが、われわれ二人は何も聞かされていなかった。その上ぼくは信じられないことだが台本を全く読まないまま初日の撮影に入ってしまった。だからそのシーンの前後の話が全くわからなかったので、自分が演っていることの意味がさっぱり理解できず、不安のどん底で演っていた。まさか台本を読んでいないと監督にいうわけにはいかなかったので、このことがバレはしまいかと撮影中は恐れ続けた」
・・・
「何かをしゃべらなければならないが、横尾忠則としてか、それとも役柄の岡ノ上鳥男としてしゃべるべきなのか、ぼくは完全にぼくの中でパニックを起こしてしまった。何がおこっているのかわからないままドキュメント風にカウンセリングは延々続いた。そして突然二人は高橋先生によって上半身裸にさせられてしまった」

これを読んでも、撮影現場はかなり凄まじいものであったのだろうと予想できます。

そして、
「ぼくの目には大島監督は映画を創っているのか壊しているのかよくわからなかったが、恐らくその両方であったのだろう。虚構の中でドキュメントやハプニング、それにぼくという実像と虚像の両方の観念の解体を試みようとしていたのではなかっただろうか」
と締めくくっています。どんな映画ができあがったのか見たくなりますね。

1960年代。従来の美的価値観や芸術概念が問い直され、権力や権威に縛られない自由な発想に基づいた新しい動向が芸術のいろいろな分野に芽吹いた時代。背景にそんな時代を感じさせる映画です。

展覧会を見て、そのチケットを持って、是非フォーラム福島へ。

「新宿泥棒日記」
 監督:大島渚
 出演:横尾忠則、横山リエ、渡辺文雄、唐十郎ほか
 1969年/創造社/本編1時間36分
 上映日:6月1日[土]-5日[水]
 上映時間:6月1日[土]-3日[月]12:30~、4日[火]、5日[水]19:00~
 観覧料金:横尾忠則展観覧券、案内葉書、福島県立美術館友の会会員証をご呈示いただければ700円になります。
 会場:フォーラム福島(024-533-1515)
 http://www.forum-movie.net/fukushima
 協力:福島県立美術館協力会

A.Y.

常設展示「横尾忠則と同時代のポスター」のご紹介

企画展示室で開催している「横尾忠則ポスター展」。
実は福島県立美術館では、横尾さんの版画を収蔵しており、今、常設展示室の最後の部屋Dにおいて「横尾忠則と同時代のポスター」という特集で展示をしています。
企画展をご覧になった方は、是非常設展にもお立ち寄り下さい。企画展観覧券をお持ちの方は観覧無料です。

収蔵しているのは1974年制作の《聖シャンバラ》(シルクスクリーン、オフセット)10点組。



1970年代はじめ、入院生活や三島由紀夫の割腹自殺などショッキングな出来事を体験した横尾さんは、徐々に精神世界へと傾倒していきます。
特にビートルズに強い関心を持っており、彼らがインドに深く傾倒していたことを知って、ヒンズー文化に強い興味を抱くようになます。そして1974年にはインド行きを実現しました。
横尾さんのインドへの関心は主にシャンバラに向けられていました。
シャンバラとは、地球の内部の空洞に存在するアガルタ王国の首都の名前であり、その地下世界のピラミッドには巨大な四次元エネルギーが秘められ、太陽と交流しているというのです。横尾さんは自らもこのシャンバラにたどり着きたいと願っていました。
そのためにはチャクラ(人間の身体にある神のエネルギーのセンター)の覚醒が必要なのだそうです。
《聖シャンバラ》は、そこにいたるまでの瞑想のプロセスをテーマとした作品です。



常設でこの作品を見て、また企画展に戻ることも可能です。
版画作品とポスターでは確かに表現は異なりますが、比べることで、この時代の横尾さんの関心のありかがよく見えてくるはずです。

ところで、今日は、ワークショップ「私自身のための広告ポスターを作ろう!」に参加してくれた高校生たちがワークショップ作品の展示を見に来てくれました。
こちらは2F常設展示から降りてきたところ、エントランスホール奥の壁面です。是非お忘れなくご覧下さい。




A.Y.

「横尾忠則ポスター展」関連ワークショップの作品を展示しました。

4月27日、5月11日と二日間にわたって、横尾忠則ポスター展関連ワークショップ「私自身のための広告ポスターを作ろう!」を開催しました。その模様はブログでご紹介しましたので、是非ご覧下さい。

5月11日に完成できなかった方もいらしたので、後日完成させて持ってきていただくことをお願いしておりましたが、20日、全員の作品が集まりました。早速、美術館エントランスホール奥に展示しております。



みなさん、四苦八苦していらっしゃるようでしたが楽しく制作できました。どれも力作ぞろいです。高校生8名(全員女子)もユニークな作品を出品してくれています。展覧会を見た後に、是非お立ち寄り下さい!

A.Y.