福島県立美術館ブログ

2014年の常設展オープンしました

年度末にメンテナンスのため休館させていただきましたが、4月12日の土曜日に開館。常設展がオープンしました。ご紹介しましょう。

まずは春を感じさせる日本画の部屋から。



小杉放庵の《水荘訪客》や酒井三良の《江南春色》、そして平福百穂の《ふき》、福田豊四郎の《ふるさとへ帰る》が並びます。



反対側には、斎藤清の墨画《野仏田代》。芽吹き始めた春の草花に囲まれて、ひっそりとたたずむお地蔵さんたちを思わせます。その奥には2012年度に新収蔵になった黒沢吉蔵の《桜谷》そして《白い連峰(飯豊)》。福島の春山の風景です。
4月5日から三春町歴史民俗資料館でも黒沢吉蔵の《滝桜》が展示されています。連携企画です。是非そちらと合わせてご鑑賞下さい。
http://www.town.miharu.fukushima.jp/site/rekishi




洋画の部屋に入ると、久しぶりに高橋由一の《鐸木西美像》《栗子山昔時景》が並び、明治から大正期の洋画をご紹介しています。関根正二も《自画像》や《神の祈り》など7点展示しています。



その隣は福島の彫刻家、佐藤朝山(玄々)特集。ごろんとした不思議な木彫《冬眠》や新収蔵の《釈迦如来像》など10点をご紹介します。



そして中谷泰の《常滑》と《炭坑》。実は中谷泰は、26日から始まる「ちひろ美術館コレクション 世界をめぐる絵本の旅」でご紹介する絵本画家いわさきちひろの絵の先生でもありました。最初の夫が亡くなって大連から戻ってきたちひろは、1942年、23歳の時に、すでに文展にも入選し活躍し始めていた洋画家、中谷泰に師事し、油絵を描き始めました。ちひろにとって、再出発のきっかけとなったのです。

 

海外の部屋では、シャガールの版画《死せる魂》、カミーユ・コロー、ポール・ゴーギャン、オーギュスト・ルノワール、カミーユ・ピサロなどフランス美術の名品や、ベン・シャーン、アンドリュー・ワイエスの作品をご紹介しています。

最後の部屋は、いつもとは少し違ったおもむきの空間になっています。



版画の山中現と彫刻の保田春彦のコラボレーション。
山中の作品からは初期のモノクローム、《第一夜》から《第十一夜》。保田春彦は白い木彫《季節の残像》シリーズ。二人の間に特に繋がりはありませんが、展示をしてみるとお互いが引き立て合う不思議な関係が生まれました。この空間から何を感じとるかはご覧になる方しだい。しばし自由に空想を羽ばたかせてみてください。

26日からは先に書いたとおり、「ちひろ美術館コレクション 世界をめぐる絵本の旅」展が始まります。高校生以下無料です。是非お子様とご一緒にお越し下さい。

A.Y.

除染レポート

4月に入り、だいぶ暖かくなりました。
昨年、12月21日から始まった美術館・図書館の除染第二弾が3月31日に無事終了しました。2月の大雪で除雪作業が加わり、現場の方々は寒い中の作業が続きました。本当にご苦労さまでございました。

年間1ミリシーベルト以下を目指して、駐車場や植え込み、日本庭園などを除染してきました。線量は以前の半分以下になり、大幅に低減しています。詳しくはHPに掲載されている放射線測定結果をご覧下さい。(4月中旬に除染後の最新データをアップします)



美術館の前庭には大きな穴が掘られていました。そこに、はぎ取られた土が入ったフレコンバッグが運び込まれ、新しい土が被せられ、芝生が植えられました。今はまだつぎはぎの芝生も、いずれ新しい芽を出し青々と美しくなるでしょう。



下の土をはぎ取られた梅も花を咲かせています。



水仙のつぼみも膨らんできました。



現在はメンテナンスで休館をしておりますが、4月12日(土)に常設展が、26日(土)には「ちひろ美術館コレクション 世界をめぐる絵本の旅」展がオープンします。
是非また美術館に遊びに来て下さい。お待ちしております。

A.Y.

視覚障がい者のための鑑賞ワークショップを開催

昨年度の「ベン・シャーン展」に引き続き、今年度も3月21日(金・祝)に視覚障がい者の方々と収蔵作品のベン・シャーンを鑑賞するワークショップを開催しました。
午前と午後の2回。午前は10:30から。午後は14:00のスタート。


講師は真下弥生さん(ルーテル学院大学非常勤講師)と半田こづえさん(筑波大学大学院)。

前日は雪が降る寒い日で、足元が悪いのではないかと心配しましたが、当日はみなさん予定通りというよりも、楽しみにされていたようで早々とお集まりいただき、いい雰囲気でスタートしました。

まずは自己紹介。
そして介添えの方々も一緒に、ウォーミングアップ。

 
簡単な図形の触図を触ってみました。見てはいけません。私もやってみたのですが、意外と難しいものです。丸と八角形がなかなかわかりません。触図を把握するのには思ったより時間がかかるのですね。そういうことを頭に置いて、まわりの私たちもゆっくりと鑑賞をサポートしていきたいと思いました。

さて本番です。作品はベン・シャーンの版画作品《詩篇133篇》(1963年 リトグラフ・紙)。
鳩が2羽向き合っています。その鳩を囲む唐草模様。そこに旧約聖書の詩篇133篇が書き込まれています。絵の構図は複雑なので、鳩と唐草と二つ別々の触図が用意されていました。


まずは鳩の触図。
線描のみで描かれた鳩と、色が塗られた鳩。最初は何が描かれているかよくわからず、先生から「鳥」というヒントをもらいました。そうすると嘴、眼、足、しっぽなどが見えてくるようです。気づいたことを自由に発言しあい、お互いの言葉に耳を傾けながら鑑賞を進めていきます。

 
次は唐草模様。ぽっかりとあいた二つの空間のところに鳩が入ることがわかってきました。そして唐草模様を辿りながら、ベン・シャーン独特の線描を感じていきました。

今回の触図に文字は入っていませんでしたので、先生が内容を日本語訳にして朗読して下さいました。
  見よ、兄弟が共に座っている。
  なんという恵み、なんとういう喜び。
  ・・・・

そして、ベン・シャーン(1898-1969)という画家について、この絵の描かれた時代背景が説明されました。
旧ロシア帝国内だった現・リトアニアのユダヤ人家庭に生まれたシャーンは、20世紀初頭、ロシアの迫害を逃れて家族でアメリカに移住。貧しい中、リトグラフの工房で働きながら絵を学び、常に社会に厳しい視線を投げかけ、人々の慎ましい暮らしを暖かく見守った作家でした。1960年代初頭は、国外では冷戦が緊迫し、国内では公民権運動が盛り上がった時代でした。そういうことを知ってあらためて作品を鑑賞すると、もっといろいろなものが作品から感じ取れるようになります。

触図による鑑賞を一旦終え、版画のプレス機がある部屋に移動。今度は作品を技法の点から見てみます。

 
リトグラフの原版(アルミ板)とシャーンも使ったアルシュ紙、そしてリトグラフのプレス機を触ってみました。
みなさん、プレス機の大きさにびっくりされていました。


そして実際の作品の前で鑑賞するために常設展示室に移動です。
天井の高いエントランスホール、常設展の第一室、第二室と歩き、やっとシャーンの作品がある第三室に到着。



今まで得た情報と、今度は作品を目の前に、先生や介添えの方の言葉を手がかりにしてより深く鑑賞を進めていきました。みんなで会話しながら、感想を述べながら想像を膨らませていく作業は、私たちにとってもとても楽しいものでした。

《詩篇133篇》だけでなく《ラッキードラゴン》も鑑賞。

再び講義室に戻って、みなさんにひとことずつ感想を言っていただきました。
触図を使っての鑑賞が初めての方が多かったので、それが意外と難しいこと。でも言葉を媒介にしたサポートがあるとだんだんとわかってくること。こういう美術鑑賞の機会をまた作って欲しいという要望も出ました。「目が見えなくても美術鑑賞はできる。」見えないからこそ想像し、鑑賞が膨らむこともある、という感想には私もハッとしました。

午前、午後、みなさん堪能され、また美術館に来てみたいと感じていただけたのは本当に嬉しい限りです。有り難うございました。

そして真下弥生さん、半田こづえさんをはじめ、ご協力いただきました福島県点字図書館、福島県立盲学校、そして福島県立美術館協力会に心からお礼申し上げます。

A.Y.

追悼コンサート

三寒四温、ぽかぽかだったり、肌寒い雨だったり、春のお天気は気まぐれです。
3月2日、河野保雄コレクションの全貌展関連のコンサートが、肌寒いなか開催されました。
音楽評論家だった河野保雄さんが、生前楽しみにしていた、作曲家・湯浅讓二さんとの音楽とふるさとをめぐる対談。
これが未完におわったため、湯浅讓二さんが追悼コンサート「おやすみなさい」をやりましょう!と仰って実現しました。



会場はエントランスホール。残響音が長くて、ふつうの話し声は聞きづらいと言われるのですが、歌声にはぴったり!
「合唱には最高の会場だよ」とほめていただいたのには、こちらもびっくり。



リハーサルにも熱が入ります。

湯浅讓二さんのごあいさつで、コンサートが始まりました。



「朝早い新幹線に乗らなくちゃ!と勢い込んでガラス扉にぶつかっちゃって…」
赤いお鼻の湯浅先生。

 

 

合唱は、女声合唱団「暁」と混声合唱団「空(くう)」のみなさん、指揮は西川竜太さん、東京から駆けつけて下さいました!

2時間ちかい熱唱!河野さんも満足だったことでしょう。



最後に、この日発行された河野保雄追悼『夢の花』が、来場者の皆さんに配られました。
河野さんのご遺族と湯浅さんの心からの贈り物でした!




HY

除染レポート

先週は除染よりもまず除雪。
5㎝の表土を剥ぐために50㎝の雪かきだ、と作業の方はおっしゃっていました。
大雪のため、除染作業も遅れています。

さて、昨日の作業をレポートしましょう。

美術館の前の庭に大きな穴を掘ったことは前回お伝えしました。
今、ここにフレコンバッグ(除染袋)を納める作業が進んでいます。

 
庭に設置された大きなクレーンで次々と黒い袋がつり上げられ、穴に納められていきます。



800個以上になったというフレコンバッグもなんとか納まりそうだということでした。
それにしてもすごい光景です。
レジェの彫刻《歩く花》は、この光景を脇で静かに眺め続けています。

同時並行で、図書館駐輪場の屋根の除染も行われていました。
高圧洗浄で流された水が集まる升の沈殿物も取り除かれます。





相変わらず、庭園植栽の除染も進められていました。



一方、美術館側の駐車場では、雪で折れた木の枝を処分する作業も行われていました。
本当にこの大雪は大変でした。
それでも少しずつ暖かくなってきています。
春が待ち遠しいですね。

A.Y.