福島県立美術館ブログ
WORKSHOP MART開催しました
8月2日(日)、当館庭園にて「WORKSHOP MART~おうちを美術館にしよう~」開催しました!
連日雨が続いていましたがこの日は晴れ、暑いくらいのお天気でした。
今回は新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、いつもと形式を変えての開催となりました。
これまでのようなワークショップ出店ではなく、持ち帰って家で楽しめるワークショップキットを準備しました。
家の中で制作し、完成した作品を飾っておうちの中を彩ります。
準備されたキットは8種類。
絵画、彫刻、グラフィック、テキスタイル、版画の各ジャンルに加え、過去に参加してくれた作家のワークショップ3種類が並びました。
一番上から
画家になってみよう!「静物画を描くキット」
彫刻家になってみよう!「《歩く花》のとなりを歩く彫刻をつくろう」
グラフィックデザイナーになってみよう!「レイアウト・レイヤーキット」
染色家になってみよう!「キッチンでもできるハーブ染めキット」
版画家になってみよう!「フロッタージュキット」
さっそく美術館の石畳を使って作品づくりをしている方もいました!
こちらは、過去に参加してくださった作家さんによるワークショップキット。
左から、
工房マートル(キャンドル作家)さんの「揺らめく色のワックスモビール」
佐藤恭子(綿花農家)さんの「サシェをつくろう 鼻で絵を見たことがありますか?」
Decca*chi (革コモノ作家)さんの「とったどー!大漁だぞー♪モビール」
8種類のキットは、すべて完成後におうちで飾れるよう、額縁が入っていたり、ひもでかけられるようになっていました。
みなさん、キットでどんな作品ができるのかスタッフの説明を聞きながら、選んでいました。
また、当日参加できるワークショップが1つだけありました。
「いつもの街角」
軽くて水に強い素材でできたクラッチバッグに、スタンプを押して、オリジナルバッグをつくりました。
こちらもたくさんの方にご参加いただきました。
キットを使っておうち時間を楽しみ、完成した作品で部屋を彩っていただけたらうれしいです!
ご参加いただいたみなさま、ワークショップキットを企画・制作していただいたみなさま、ありがとうございました。
また、当日暑い中スタッフとしてお手伝いいただいた方々、FRIDAY SCREENの坂内さん、鈴木さんありがとうございました。
「勝手に!大津絵ふきだしグランプリ」結果発表
「大津絵展」にあわせ、エントランスホールで開催していた「勝手に!大津絵ふきだしグランプリ」。
28日(日)で展覧会が終了しました!
たくさんのナイス!を獲得した「グランプリ」は…
「どこまでが額ですか?」
18ナイス!を獲得しました!
他の作品も、「〇〇賞」で紹介していきます。
「館長賞」
当館の館長が選んだ一枚は…!
「福島の酒はんめーべ? もっと飲まんしょ!」
「担当学芸員賞」
今回の「大津絵展」を担当した学芸員が選んだのは…!
「きみといっしょにいたい」
「監視員賞」
日々、作品の安全を見守ってくれている監視員さん達の票を最も集めたのは…!
グランプリも獲得した 「どこまでが額ですか?」でした。
惜しくも一票差で2位だったのは、
「これからデートなんでよろしくお願いします」
みなさま、おめでとうございます!
今回ご紹介できなかったふきだしの中にも、楽しいものがたくさんありました!
ご参加いただきましたみなさま、ありがとうございました!
「ミニ大津絵をつくろう!」
現在、当館企画展示室では「大津絵展」開催中です。
これにあわせて、13日(土)と14日(日)の2日間、エントランスホールに小さな体験コーナー「ミニ大津絵をつくろう!」を設けました。
江戸時代に東海道の大津周辺で旅人へのおみやげものとして親しまれた「大津絵」。
量産のため、版木押しや型紙で骨格をつくり、素早い筆づかいで色が塗られたものもありました。
今回は、和紙にスタンプされた黒い骨格を元に、色を塗ったり、表情を描き入れたりして、小さな大津絵をつくりました。
塗る前はこのような感じ。
左から《瓢箪鯰》、《大黒外法の相撲》、《鷲》、《鬼の念仏》の4種類。
顔の部分が抜けているので、表情を自由に描きこむことができます。
着彩の道具はポスカを準備。
基本の7色以外にも、使いたい色を自由に使って色を塗っていただきました。
みなさんとっても集中して塗ったり描きこんだりしていました。
完成したミニ大津絵の一部ご紹介。
元になっている黒い骨格は一緒ですが、色合いや表情によって全く異なる印象の作品が完成しました。
オリジナルのキャラクターを生み出す方もいて、発想に私たちスタッフもびっくり!
ご参加いただいた方からは、「たのしかった」、「塗り絵なんて久しぶりでおもしろかった」、「展覧会の思い出になった」などのご感想をいただきました!
短時間のワークショップでしたが、「大津絵」の魅力を感じていただけたらうれしいです。
ご参加いただいたみなさま、ありがとうございました!
「もうひとつの江戸絵画 大津絵展」は6月28日(日)まで開催しています。
ぜひご来館ください。
ジャポニスム展 第六章
企画展「ジャポニスムからアール・ヌーヴォーへ」展より、全6章からなる展示の様子を引き続き、ご紹介していきます。
今回は最終回、第6章「アール・デコとジャポニスム」です。
アール・ヌーヴォーに続く様式のアール・デコは、20世紀前半の両大戦間期に流行をみせた装飾様式です。
植物モチーフは抽象的な形となり、シンプルかつモダンなスタイルが人気を得ました。
また、工業の進展に伴い、数多くの新しい素材の使用が可能となったのも特徴的な点です。
本章で展示されるアール・デコ様式の作品は、日本美術の影響がアール・ヌーヴォーを超えて存続したことを示しています。
それでは、作品をご紹介していきます。
アール・デコを代表する作家、ルネ・ラリックの《ナーイアス図飾皿》(1920年頃)。
ギリシャ神話に登場する川や泉の妖精ナーイアスが型押し技法で表されています。
無数の水泡が妖精の体の動きに合わせるように揺らめき、躍動感を感じさせます。
まるで今まさに妖精が水中から浮かび上がってきたかのような錯覚を覚えます。
スウェーデンのエドワルド・ハルド、オレフォスガラス工場による《網にかかった魚文鉢》(1924年)。
器の周りに、漁網と網にかかった魚がぐるりと一周描かれている面白いデザインです。
水中で魚たちが、徐々に狭まる網の中で戸惑う様子が伝わってきます。
フランスのガブリエル・アルジー=ルソー《蝶文鉢》(1915年頃)。
茶色がかった色合いの蝶が羽を大きく広げて、器の周りを取り囲むように配されています。
羽の斑紋や立体的な造形など、なかなかリアルな蝶の表現です。器の淡い紫色と羽の緑色の色合いによって、幻想的な雰囲気が醸し出されています。
ドーム兄弟《ガラス水差》(1910年頃)。
ドーム兄弟は、アール・ヌーヴォー期から活躍していましたが、時代の流れに合わせてアール・デコ様式を取り入れた作品も手掛けるようになり、モダンなセンスによる造形で名声を保持しました。
本作は、表面に艶消しの加工を施して劣化しているような風味をわざと出しています。
フォルムのユニークさと相まって、特殊な色合いと質感により、存在感を感じさせます。
こちらもドーム兄弟、《多層間金箔封入小鉢》(1925-1930年)。
典型的なお茶碗の形です。色ガラスペーストが全体に滲みとして広がり、不規則な形状の金箔がガラス層の間に挟み込まれることによって、高貴な輝きを放っています。
驚くほど美しい本作は、日本の造形美と漆工芸の世界を集約した名品と言えるでしょう。
ジャポニスムの影響は、様々な形で表現を変えながら、アール・ヌーヴォー、そしてアール・デコまで続いていたことが分かります。
「ジャポニスムからアール・ヌーヴォーへ」展の紹介は以上となります。
約100年以上前に起こった東西文化交流の熱を、その結果生み出された美しい名作群の魅力を少しでも感じて頂けたら幸いです。
本展は残念ながら中止となってしまいましたが、新型コロナウイルスが収束し、美術館で皆さまとまたお会いできる日を楽しみにしております。
ジャポニスム展 第五章
企画展「ジャポニスムからアール・ヌーヴォーへ」展より、全6章からなる展示の様子を引き続き、ご紹介していきます。
今回は第5章「もうひとつのアール・ヌーヴォー―ユーゲントシュティール」です。
19世紀末から20世紀初頭にかけて欧米で同時多発的に流行したアール・ヌーヴォー様式ですが、その表現は主にふたつの潮流から成っていました。
ひとつは、植物など有機的なモチーフを曲線美豊かに、アシンメトリーな配置で表すフロレアル・アール・ヌーヴォーというもので、フランスを中心に流行しました。
もう一方は、主にドイツ語圏でもてはやされた幾何学的アール・ヌーヴォー「ユーゲントシュティール」です。
直角や幾何学的なディティールが特徴で、左右対称に表すシンメトリー性や様式化された植物モチーフが好まれました。
本章のユーゲントシュティールの作品を見ると、3章で紹介した作品群とは明らかにデザインの特徴が異なることが分かります。
それでは、これから作品をご紹介していきます。
ベルリン王立磁器製作所による、(右):《花束文鉢》(1900-1905年)と、(左):《四つ葉クローバー文花器》(1900-1905年)。
1751年に設立されたベルリン王立磁器製作所は、ユーゲントシュティールの時代に最盛期を迎えました。
豊かなフォルムと装飾モチーフで有名となり、幾多の万博で成功を収めました。
両作品とも植物が様式化されており、洗練された優雅さを感じさせます。
こちらもベルリン王立磁器製作所、(右):《エナメル彩花器》(1910年頃)と、(左):《植物文花器》(1910年頃)。
鮮やかなエナメル彩と小さな金の連珠で装飾されたデザインが規則正しいリズムで配されています。
同製作所が誇る装飾図案の豊富さ、技術の高さが分かります。
ドイツのビレロイ&ボッホ製陶所による《樹文花器(一対)》(1903年)。
幾何学的に様式化された濃紺の樹木が立ち上がっています。スタイリッシュな造形で、ユーゲントシュティールの特徴を明確に示しています。
最後にご紹介するのは、フランスのウッツシュナイダー社の《洋蘭文ティーセット》(1910年頃)。
クリーム色の器は、いずれも両側面に豪華な洋蘭のモチーフが配され、金彩や緑色の水滴模様で装飾されています。
このようなティーセットでお茶会をしたらとても優雅なひと時となるでしょうね。
同じアール・ヌーヴォー様式といえども、ユーゲントシュティールでは幾何学的デザインやシンメトリー性が明確に示されているのが分かります。
同時代の流行でも国や文化圏によって、デザインの特徴が大きく異なる点が面白いと思います。
次回は最終章の第6章をご紹介します。