福島県立美術館ブログ

館長講座「みちのくの美-その源流を巡る旅」第3回 岩手編

本日、当館講義室にて、館長講座を開催しました。

青森から福島に至る東北地方の近代美術を中心にご紹介しています。

3回となった今回は「岩手編」。



はじめに、岩手山や北上川、浄土ヶ浜。盛岡さんさ踊りやチャグチャグ馬コ、中尊寺。
さらに岩手で生まれた石川啄木、宮沢賢治らの写真を見ながら、さまざまな視点から岩手県のイメージをふくらませていきました。

では、岩手県で美術の分野ではどのような作家が活躍し、どのような作品が生み出されたのか。
各作家とその作品について画像を映し出しながら紹介しました。


 


近代塑像の礎を築いたといわれる彫刻家、長沼守敬(ながぬま もりよし)。
強烈な色彩と、大胆な筆致による作品で知られる画家、萬鉄五郎 (よろず てつごろう)。
岩手に美術教育を根付かせ、自ら美術館を創設した画家、橋本八百二(はしもと やおじ)。
社会や時代を深く見つめ、詩情溢れる絵を描き続けた画家、松本竣介(まつもと しゅんすけ)。
そして清らかな女性像や、カトリック信仰を題材にした作品で知られる彫刻家の舟越保武(ふなこし やすたけ)。
5名の芸術家たちの魅力についてじっくりと語りました。
ご参加いただいたみなさま、ありがとうございました!

 

次回、「山形編」は、1119()10:3012:00まで開催いたします。

みなさまのご参加をお待ちしております。

 

一日創作教室「絵封筒をつくろう!」


「エドワード・ゴーリーの優雅な秘密」展最終日の828()、当館エントランスホールにて、「絵封筒をつくろう!」ワークショップを開催しました。




ゴーリーは若い頃、母親に宛てて手紙を送っています。その封筒には絵が描きこまれ、不思議な世界が広がっています。絵本などの原画とはまた違った魅力があり、今回の出品作のなかでも、人気のあるもののひとつでした。
今回のワークショップでは、封筒という小さな画面に絵を描いたり、コラージュをしたりして、オリジナルの絵封筒づくりをしました。
午前中は、博物館実習に来ていた学生さんにも、お手伝いをしていただきました。




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種類ある洋封筒の中からひとつ好きな形のものを選び、画材を考えます。ゴーリー風に細い黒ペンで描きこむ。和紙などを切り、きれいに貼り付ける。水彩色鉛筆を用いて優しい風合いに仕上げる・・・
他の郵便物を汚したり、傷つけないものにすること。そして宛名や住所などを書く部分を残しておくことなどに気をつけながら、みなさん様々な方法で制作に取り組んでいました。


 

 






























参加者の方に、作った絵封筒を誰に送るのかお聞きしたところ、「孫に」、「お母さんに」、「先生に」・・・などと、ひとりひとり誰かを想って作り出していました。
作るのも楽しいですが、送った相手の方に楽んでいただくのも、絵封筒の魅力のひとつかもしれません。
もちろん、送らないで記念に手元に残しておくという方もいらっしゃいました。素敵なものができると、誰に送るか悩んでしまいます。


 


今回のワークショップは、展覧会最終日ということもあり、小さなお子さんから大人の方まで幅広く、たくさんの方々にご参加いただきました。
参加して下さったみなさま、お手伝いしてくれた実習生のみなさんありがとうございました!

 

ワークショップ絵本完成しました!

87()に開催した、親と子の美術教室「みんなで絵本をつくろう!!」の絵本が印刷製本され、当館に届きました!


絵本のタイトルは「どんなこえでなくのかな?」

参加者のみなさんの作品が各4ページずつ入り、一冊の絵本になっています。























さらに、最後の方には、ワークショップ中の参加者の様子や集合写真などが入っています。



思い出に残る、素敵な絵本ができあがりました!

 

28()まで、1階企画展示室ショップ付近にある「読書コーナー」に展示しています。

ご来館の際はぜひご覧ください。

 

親と子の美術教室「みんなで絵本をつくろう!!」

87()、当館実習室にて、親と子の美術教室「みんなで絵本をつくろう!!」を開催しました。


講師は絵本作家の加藤志異さん。

アシスタントに西田伸昌さんをお迎えしました。

 

まずは加藤さんが文を書いている絵本のよみきかせ。不思議なおはなしにみんな興味津々です。

次に参加者とスタッフみんなで自己紹介。加藤さんから「お名前と、好きな妖怪をひとつ言って下さい。」とお題が出されます。和気あいあいと自己紹介が進みました。

 

さて、今回のワークショップで加藤さんからだされたテーマは、

「どんなこえでなくのかな?」

参加者のみなさんに自由に動物やおばけ、ロボットなどを描いてもらい、どんな風に鳴くのかを考えてもらいます。例えば、巨大な怪獣が「ギャパギャパギャパ!!」と鳴いたり、河童が「ヤーポーヤーポー」と鳴いたり・・・。

 

テーマに合わせ、子ども達はお母さんやお父さんに相談しながら、好きな動物やオリジナルのキャラクターなどを描き、鳴き声を考えます。







下描きができたら、加藤さんからアドバイスをもらい、今度は本番の紙に描きます!

色鉛筆などを使ってきれいに絵を完成させていきました。



 

描き終えて、時間のある参加者の方々は企画展示室へ。今回のワークショップは、企画展「エドワード・ゴーリーの優雅な秘密」展に合わせたものでした。

ゴーリーの絵本は、絵だけではなくテキストも魅力的です。彼は「絵をやる前にテキストが全部できていないとだめだ」とインタビューでも語っているほど、ことばへのこだわりを持ち、遊び心を作品の随所に含ませています。

 

みなさんが戻ってきたら、発表会。ひとりひとり自分が描いたページを見せながら、発表します。
子ども達の手によって生みだされたキャラクターたちが、様々な鳴き声で現れます。



 

発表会が終わると、加藤さんによる絵本のよみきかせ。子ども達は真剣におはなしに聞き入ります。





最後に、加藤さんから「みなさんの夢を書いてください」と紙を渡され、ひとりひとり自分の夢を書きました。
その紙を元に、加藤さんによる「夢の演説」が繰り広げられ、大盛り上がりの中、ワークショップは終了しました。

 

みなさんが描いた絵本は、後日印刷製本され、参加者の方々に送り届けられます。完成した絵本を見るのが楽しみです!

加藤さん、西田さん、ご参加いただいたみなさま、ありがとうございました!

 

ゴーリー展ギャラリートークを開催しました!

猛暑となった86()、濱中利信さんによるギャラリートークを開催しました!

濱中さんは、日本におけるゴーリー研究とコレクションの第一人者であり、今回の「エドワード・ゴーリーの優雅な秘密」展にご出品いただいています。

 


展示室をめぐりながら、ゴーリー作品の特徴やポイントとなるキャラクター、コレクションにいたる裏話まで・・・と幅広くお話しいただきました。




ゴーリーの代表作のひとつである『うろんな客』。そこに登場する鼻の長い謎のいきもののぬいぐるみ。これは濱中さんのコレクションのひとつです。

このぬいぐるみは、ファンが勝手に制作し、箱までつくったもの。しかし完成後心配になり、ゴーリーに確認したところ、販売を認め、その上サインまでしてくれたそうです。
50体ほどあり、マフラーの裏にそのシリアルナンバーとゴーリーのサインが入っています。(展示ではマフラーの裏を見ることができません)
作品から怖い人というイメージを抱かれることが多いゴーリーですが、実際は気さくな方だったようです。

 

また、ゴーリー作品によく現れるものについても濱中さんからご紹介がありました。顔の長い人、コートを着た人、ブラックドール・・・。
「ブラックドールとはなにか?というのを考えるのも面白いかもしれません。私のなかでは、映画監督ヒッチコックの“マクガフィン”のようなものではないかと考えています。なんでもないけど、ちょっと気になるもの、注意をそちらに引かせるもの。そういうものではないでしょうか?」
ゴーリーの世界に引き込まれていくのも、このような仕掛けが様々なところに散りばめてあるからなのかもしれません。

 


『キャッテゴーリー』は、150までの数字と一緒にほのぼのとした猫たちの姿が描かれています。濱中さんはその中の4点の原画をお持ちです。No.1926345252番?

「実は50枚じゃなかったらしいんです。最初の計画だと100枚つくる予定だったみたいですね。どういう訳か頓挫してしまい、50枚分だけで出版されたようです。」
51番を持っているコレクターの方もいるとのこと。これから別の番号の猫たちが見つかるかも・・・?
これもゴーリーの謎のひとつになるのかもしれません。

 

濱中さんが今回の展示の中で「個人的に一番の目玉」とお話していたのは絵封筒。
展示している絵封筒は、ゴーリーが母親に宛てたもの。
濱中さんは、これをもらった人はうれしいとしつつも、中には「これをお母さんに送ったら心配しちゃいますよね?」というものも・・・。
お客様からも笑い声があがります。

 

他にも海外のコレクター仲間との交流や、これから手に入れたいものなど、コレクターの濱中さんならではのお話をたっぷりと伺い、約1時間、ゴーリーの魅力にじっくりと浸ることができました。

 

ギャラリートーク終了後には、濱中さんのサインと、今は発売されていないゴーリーのスタンプを押していただく時間が設けられました。

 

午前・午後と2回にわたりお話しいただいた濱中さま、ご参加いただいたみなさま、ありがとうございました!

 

 

 

コレクション展Ⅱ エルンスト『博物誌』

常設展示室の最後の部屋では、清宮質文の版画の正面に、マックス・エルンストの『博物誌』を展示しています。



全34点のうち、現在13点を展示しています。

様々なものの表面をこすりだすことによって生まれた偶然の模様から、幻想的なイメージが広がっています。



1階の企画展では「エドワード・ゴーリーの優雅な秘密」展(~28日まで)を開催していますが、エルンストは、1972年にアメリカのゴサム・ブックマート・ギャラリーでゴーリーの作品を見て、非常に興味を示し、熱狂的な賞讃を与えました。また、ゴーリーは、「マックス・エルンストのコラージュ作品は素晴らしい」とインタビューで話しています。

常設展、企画展とぜひ両方をお楽しみください。

わんぱくミュージアム「ものの表面採集をして、描いてみよう」

731日(日)の10001500、当館エントランスホールにて、わんぱくミュージアム「ものの表面採集をして、描いてみよう」を開催しました!

講師は多摩美術大学教授、美術家の海老塚耕一先生。

小学生から高校生まで幅広く参加者が集まりました。

まずは海老塚先生から、「フロッタージュ」という技法について簡単な説明がありました。参加者のみなさんは「フロッタージュ」という言葉は聞いたことがないようでしたが、「コインの模様とか鉛筆でこすりとったことない?」と聞かれると、ピンときた子もいたようでした。

その「フロッタージュ」を使っている作品を見に行こう!ということで、2階の常設展示室へ。4つに分かれた展示室の最後に、その作品は展示されています。



マックス・エルンスト(18911976)の『博物誌』(1926)現在34点のうち、13点が展示されています。そこで当館学芸員から作品について説明を聞き、作品をじっくり鑑賞しました。



「この作品はどんなものをこすっているか分かる?」という問いかけには、参加者のみなさんから「木」「布」「葉っぱ」などと、作品から思い浮かぶものが出されます。さらに、エルンストの作品は、タイトルもおもしろい。《予防接種を受けたパン》というタイトルに子ども達から「え~!」という声が上がります。

 

鑑賞が終わったら、いよいよ表面採集!まずはみんなで大きな紙にエントランスホールの床のでこぼこをうつしとります。小学生から高校生、そしてスタッフが入り交じり、大きな紙がエントランスホールの床の表面で埋められていきます。






次は自分で探してみよう!表面採集図鑑と鉛筆、クレヨンを手に、美術館の外や中でエントランスのスロープのデコボコ、傘立て、庭にある岩、木、石畳、壁・・・いろいろなものの表面を採集していきます。







お昼をはさみ、午後からは表面採集したものを元に、ひとりひとりの作品づくり。
紙に描きたいものの輪郭線を描き、中をフロッタージュで埋めていき、
色とりどりの作品ができあがりました!



最後に完成した作品をみんなで囲み、最後に鑑賞会。



普段何気なくみているものも、少し視点を変えてみてみると、作品づくりのおもしろい素材になる。そんなわくわくした一日になりました!

今回の企画は、たくさんの方々にご協力をいただきました。

講師をしてくださった海老塚先生、一般社団法人CWAJのみなさま、多摩美術大学のみなさま参加して下さったみなさま、ありがとうございました!

今回のワークショップでつくった作品は、「エドワード・ゴーリーの優雅な秘密」展の会期中、エントランスホールにて展示しています。ぜひ会場に来て、みなさんの作品をご覧下さい!

県立図書館でエドワード・ゴーリー展の関連展示やってます。

「エドワード・ゴーリーの優雅な秘密」展はおとなりの県立図書館との連携企画です。

図書館では、ゴーリー関連図書を展示し、貸出しています。
ご紹介しましょう。

 

まずは美術館でも展示しているゴーリーの本。

なんと全部貸し出し中でした。展覧会場にも最後に読書コーナーがありますので、そちらでもご覧いただけます。

 



ここから先が図書館ならではの展示。もっと深くゴーリーを知りたい人のための参考図書になっています。

まずはゴーリー自身が好きだったという作家たち。

18世紀のイギリスの小説家、ジェイン・オースティン。


『源氏物語』を書いた日本の作家、紫式部。



イギリスの推理小説家、アガサ・クリスティー。



19
紀フランスの画家、版画家、挿絵も描いたギュスターヴ・ドレ。



20
世紀ドイツのシュルレアリスムの画家、マックス・エルンスト。



19
世紀イギリスのナンセンス詩人で画家、エドワード・リア。

『不思議の国のアリス』のルイス・キャロル。これに挿絵をつけたジョン・テニエル。

神秘的で静寂な絵画を描いた20世紀の画家、バルチュス。


 

ゴーリーを愛した人々で紹介されているのは、

『ムーミン』の作者として知られる、作家で画家のトーベ・ヤンソン。

ヤンソンにはゴーリーに捧げた短編もあります。

 


美術館と図書館は隣どうし。外に出ないで移動できます。

展覧会と併せて、是非お出かけ下さい。

コレクション展Ⅱ 版画作品のご紹介―斎藤清・清宮質文

コレクション展Ⅱについて、今回は版画の展示をご紹介します。

常設展示室Aでは、斎藤清の特集展示として、《凝視》や《会津の冬》シリーズなどの代表作を展示しています。

今回は版画だけではなく墨画もあり、その表現の違いを比べてみることもできます。
版画は展示替えがあり、現在の展示は8月25日まで。
8月26日からの後期には、《競艶》などが出る予定です。

また、展示室Dでは、清宮質文の版画とガラス絵を展示しています。

その深く澄んだ世界は、観る人の心に静かな涼やかな風をはこんできます。
こちらも展示替えがあり、清宮の展示は8月25日まで。
8月26日からは木口木版を展示する予定です。

そろそろ梅雨も明け、いよいよ夏本番。
斎藤清の《会津の冬》、清宮質文の作品と、涼みに美術館へいらしてはいかがでしょうか。

 

講演会「エドワード・ゴーリーを見る/読む/訳す楽しみ」

展覧会がオープンして三日目の718日、ゴーリー本のほとんどを訳されている柴田元幸先生にご講演をいただきました。ゴーリーのTシャツにスニーカーという出で立ちと気さくなお人柄。とても和やかな雰囲気の中で時間が過ぎていきました。

その時の様子を、ご紹介しましょう。

 

お話しは、ゴーリーが仕事を始めたばかりの1950年代から始まりました。

タブルデイ出版のブックデザイナーになったゴーリーは、人文系の良書を揃えた人気ペーパーバック・シリーズ、アンカー・ブックスの装幀を手がけました。例えばH.G.Wellsの『The War of the Worlds』、Thomas SzaszThe Age of Madness』など。柴田先生も、学生時代、ゴーリーの装幀とは知らずに手に取ったとおっしゃっていました。

 

そののち、1950年代、60年代前半にはゴーリーの代表作が出そろいます。

中でも一番有名なのは『ギャシュリークラムのちびっ子たち』。アルファベットブックですが、子どもたちが次々と悲惨な目にあうお話。「絵本とはこういうものだ」という固定観念に飽き飽きしていた人たちに解放感を与えました。ご自分にとってもそういう本だったそうです。


『うろんな客』も人気の絵本。先生は、ゴーリーファンの方が手作りされたぬいぐるみの「うろん君」を持ってきて下さいました。かわいい、愛すべき「うろん君」でした。

このお話のある一つの解釈を、先生は本の後書きの中で紹介しています。「うろん君」は子供という存在そのものであると。しかしそうではない読み解きもあるのではないか。例えば、本の扉に描かれた、風にマフラーをたなびかせて外から窓の中をじっとのぞき込む「うろん君」。自分には入り込めない暖かい団らんの風景を、寒い外からじっと見つめているのかもしれません。「マッチ売りの少女」のように。であれば、ここから始まるお話は「うろん君」の空想の物語だということになります。
でもこれも一つの解釈。いい物語は読む人によっていろいろな読み方が可能なのです、と柴田先生はおっしゃいました。

 

1973年、『アンフィゴーリー』という本が出版されます。これまでなかなか広く読まれることのなかったゴーリーの本が15冊まとめられ1冊の本になりました。ゴーリーは次第にファンを増やしていきました。

そして80年代、アメリカのテレビ番組「ミステリー!」のタイトルアニメを手がけたのがゴーリー。これはとても人気の番組で、多くのアメリカ人は、ゴーリーのことを「あのミステリー!の人」として知っているそうです。これはYouTubeでも見られるので、是非チェックして下さい。

 

その後、まだ翻訳が出版されていない本を朗読して下さいました。

アメリカで一番人気があるという『The Curious Sofa 奇妙なソファ』。

先生お気に入りの『ジャンブリーズ』(これはすでに出版)。

ゴーリーを売れない時代からずっと支持してきたアンドレアス・ブラウンが一番好きな『The Remembered Visit 思い出した訪問』。

今年出版されるという『僕たちが越してきた日からそいつはそこにいた』。

最後にライブ翻訳『Jack the Giant Killer 巨人殺しジャック』。

 

講演後には大サイン会になりました。1時間近く、皆さんに丁寧にサインをしていただきました。

 

朗読をお聞きするのも楽しかったですし、たっぷりとゴーリーの世界に浸ることができた、とても幸せな時間でした。

 

本当に有り難うございました!