福島県立美術館ブログ
創作プログラム「光を描く―メゾチント体験―」開催しました
7月16日(日)、22日(土)、23日(日)の3日間、当館実習室にて創作プログラム「光を描く―メゾチント体験―」開催しました。
講師は、版画家の安部直人さんです。
安部さんは当館でも作品を収蔵させていただいており、第Ⅱ期常設展示室で作品を展示していました。
銅版画技法のひとつであるメゾチントは、深みのある黒を背景に、細かな明暗の調子が表現できます。
この講座では、ベルソー(ロッカー)を使った銅板の「目立て」から始め、それぞれが考えた下絵を元に、はがきサイズ(10×15cm)の作品をつくりました。
~1日目~
安部さんから技法と3日間の流れ、道具の使い方などについて説明を受けました。
メゾチントは、以下のような技法です。
キズがないきれいな状態の銅板(はがきサイズ)が受講者に1枚ずつ渡されます。
ここに、ベルソーを使って目立てをしていきます。
ベルソーは、櫛のように刃が細かく入っている道具で、ロッカーとも呼ばれます。
これをベルソーの重さを生かしながら、ゆらゆらと横に動かし、少しずつずらしながら傷をたくさんつけていきます。
縦・横・斜め・斜めの4方向に細かい傷をつけていきます。
これを10回やることが目標!と安部さんからお話があり、受講者の方からは「えー!!」と驚きの声が挙がります。
この作業と並行して、安部さんが事前に目立てして準備してくださった5×7.5cmサイズの作品制作を行います。
銅板に下絵を写し、パニッシャーとスクレーパーを用いて製版していきます。
「線ではなく、面で表現する」ことが安部さんからアドバイスされました。
道具を鉛筆のように使わず、なでるように使うのですが、コツをつかむまでみなさん何度も試したり、道具や持ち方を変えたりと、工夫していました。
ある程度製版できたところで試し刷りをします。
版にインクをしっかりつめて、余分な分を寒冷紗などでふき取ります。
版の上に紙を置き、プレス機で刷っていきました。
白くなるようかなり磨いたつもりでも、刷ってみると思ったよりも絵が出てこないことも。
最低1回は全員試し刷りをして1日目は終了。
小さな版を一度製版して刷ってみることで、調子のつけかたや、白くなるように磨く感覚をつかんでいきました。
はがきサイズの銅板の目立て作業は、次回までの宿題とされました。
~2日目~
まずは宿題となっていた目立ての出来具合を安部さんがひとりひとり確認。
みなさん1週間のあいだに、目立て作業に取り組んできてくださいました。
20回やりました!という方も。
目立てが済んだ人から下絵を銅板に写し、製版作業に入ります。
並行して、1日目に作った小さい版の本刷りをしました。
黒インクで刷ってみて、作品によってカラーインクをつめて刷っていきます。
さらに、雁皮摺りをすると、柔らかな黒の調子が出てきます。
小さな版の作品がみなさん完成しました。
はがきサイズの試し刷りをして2日目が終了しました。
~3日目~
講座最終日です!
前日の試し刷りをもとに、それぞれはがきサイズの作品の製版作業を進めました。
版が完成したところで本刷りへ。
部分的にカラーインクをつめる、雁皮を貼って刷るなどして、それぞれの作品を仕上げていきました。
完成した作品に、エディション、タイトル、日付、サインを記入。
全日程が終了しました!
受講者からは、次のような感想(一部)をいただきました。
●目立てをつくる作業がとてもたいへんだったけれど、すべての工程が興味深く楽しかった。
●とても良かったです!充実した3日間でした。ありがとうございます!!
●超楽しかった!!新しい世界がひらけました。
●大好きな愛犬をフワフワにかくことができて大満足です。
●最初どういうものかよく分からずに来てしまい不安だったけど、とても楽しかった!!です!!
目立ては腕がもげるのでは…となるくらいツラかったですが、キレイに色がでたとき、頑張ったかいがあったなと思った。
普段描かない感じの絵ができてよかったです。版画作品をみる際に考えることが変わりそうだと思いました。
講師をつとめていただいた安部直人さん、受講者のみなさん、ありがとうございました!
受講者の作品は、1か月ほど当館のエントランスホールで展示させていただきました。
「ブルターニュの光と風」展イベントを開催しました
7月1日から開催中の「ブルターニュの光と風」展。
フランス北西部のブルターニュに所在するカンペール美術館のコレクションを中心に、現地を描いた19世紀以降の絵画作品をご紹介しております。
モネやゴーギャンなど数々の画家達を惹きつけたブルターニュの魅力を堪能しつつ、西洋近代における絵画様式の変遷も同時に分かるのが本展のポイントです。
同じ海景色を描いても作家によってどうして描き方がこれほど違うのか、そもそも画家達は何故ブルターニュに足を運んだのか、超大型の作品から何故サイズが徐々に小さくなっていったのかなど、本展をとおして様々な謎を発見することができます。
開幕してからイベントとして開催した講演会やギャラリートークでは、これらの謎について解説を行ってきました。
そのイベント時の様子を以下にまとめて振り返ります。
◆7月2日(日) 「ブルターニュの光と風」展記念講演会 14:00~15:30
講師:千足伸行氏(本展監修者、成城大学名誉教授、広島県立美術館館長)
会場:美術館講堂
開幕2日目に、本展の監修を務めて頂いた広島県立美術館長の千足伸行先生にご講演いただきました。
講堂が満員になるほどの盛況ぶりでした。
ブルターニュはキリスト教信仰が特に篤い地域ですが、信仰心の深さが分かるような宗教主題の作品や、ブルターニュの荒れた海を描いた海景画について多く触れていただきました。
人々の信仰心を描いた作品は、アカデミックな画風のものだけではなく、ゴーギャンもブルターニュの伝統衣装のコワフを身につけた女性がお祈りする傑作を多く残しています。
本展には出品されなかった作品群もいつかは見てみたいものです。
ブルターニュに実際に足を運んだことがある先生ならではの現地の写真資料やご感想など、貴重なお話しをたっぷりお伺いできました。
千足先生とご参加いただいた皆さま、誠にありがとうございました。
◆7月22日(土)、29日(土) 担当学芸員によるギャラリートーク 14:00~15:00
会場:美術館 企画展示室
各日なんと約100人ぐらいのお客様に参加頂きました。
ここまで集まって頂けるなんてびっくり!本当にありがとうございました。
やはり実物を前にして、作品のサイズ感や質感、迫力を肌で感じるのが一番です。
ギャラリートークでは、制作された当時の社会背景や作家に関すること、描かれた主題についてなどなど解説しました。
情報が少しでもあると作品の理解度が深まり、より充実した鑑賞にもなります。
実は、イベントのご好評につき、8月もギャラリートークを追加で行うこととなりました!
8月13日(日)、20日(日)の両日14:00~15:00に行います。
申込みは不要です。ご希望の方は観覧券をご購入の上、企画展示室入口にお集まりください。
これからご来館予定の方は、予定を立てられる際の参考としていただければと思います。
本展は一部の作品を除いて写真撮影可能、選りすぐりのグッズを揃えた特設ショップも展開しているので、来場されたらぜひ展覧会の思い出をお持ち帰りくださいませ。
みなさまのご来館をお待ちしております!
色で遊ぼう!マグネットづくりワークショップ
7月9日(日)に、マグネット作りのワークショップを行いました。
今回は色のにじみを楽しんで、気に入った部分を切り取ってマグネットにしました。
まずは油性ペンで自由に色を置いて・・・
そこにアルコールを数滴垂らすと・・・
どんどんどんどん滲んでいきます!
どんな色でもどんな滲み方でも、かっこよく、きれいな模様になりました。
模様ができたら円形カッターで切り取ります。
切り取ったらスタッフがマグネットにしていきます。
きれいな模様がたくさんできて、一枚の紙の模様からから2つのマグネットを作ったり、たくさんマグネットを作る人もいました。
小さなお子さんから大人の方まで、親子での参加やお友達、ご夫婦と様々な方に参加してもらいました。
お子様はもちろん、大人の方にもおもしろい、と喜んでもらえたことが印象的です。
たくさんのご参加ありがとうございました!
次回は8月5日(土)14:30~16:30に行います。
申込は不要です。当館エントランスにお越しください。マグネットを1つ作るにあたり材料費が100円かかります。
夏休みの思い出作りにいかがでしょうか。
ぜひご参加ください。
中学生の職場体験を実施しました
7月4日(火)~7月6日(木)の3日間で中学生の職場体験を実施しました。
新型コロナの影響でここ数年は行われなかったため、令和元年以来の久しぶりの実施となりました。
初日は美術館見学と鑑賞体験ワークショップを実施。
まずはアートカードを使って使って自分を表すカードを選び、理由とともに自己紹介をしました。
自己紹介後は美術館内の見学です。展示室やエントランスなど開かれている場所や、事務室や収蔵庫(の前)など裏側をまわり、また美術館に関わる様々な仕事についての説明を受けながら館内を見学しました。
下の写真は、現在の企画展「ブルターニュの光と風」を見学している様子です。ギュダンの「ベル=イル沿岸の暴風雨」の絵の中にウサギと羊がいると聞き、探しているところです。
午後は展示室で作品を鑑賞するワークショップを行いました。
おみくじキューブで出てきた形容詞に自分が当てはまると思う作品を選んび、その理由とともに発表しました。
今回は「こわい」というワードが出てきて、それぞれ選んだ作品がまさかのかぶりで3人ずつ2作品を選んだ結果となりました。同じ作品を選んでも、自分で感じたことを言葉にするとそれぞれ異なる発表になりました。同じ作品でもいろんな感想を聞くことができるのが複数人で鑑賞する楽しさです。
そのあとは2班に分かれて作品当てクイズを行いました。
1班は作者の情報からどの作品か当てるクイズ。
2班はジェスチャーからどの作品か当てるクイズ。
時間が限られた中でしたが、問題にする作品を選び、回答者が分かるようにヒントを考えてクイズを行っていました。
2日目は館内の清掃体験と、子ども用作品解説シートの作成を行いました。
子ども用作品解説シートを作って発表することが今回の職場体験の目玉となるため、当館のコレクションから作品を一つ選び、レイアウトや解説シートの内容を考えました。
3日目はいよいよ作成した子ども用解説シートを使ってのギャラリートークです。ぎりぎりまで解説シートを作成していたこともあり、とても緊張して発表を迎えました。
それぞれが工夫して作成した解説シートをもとに、立派に発表しました。
3日間お疲れさまでした。
この時に発表した解説シートは現在常設展示室内に展示しております。
お立ち寄りの際にはご覧ください。
「アートなおはなしかい」開催しました!
6月17日(土)、おとなりの図書館さんと「アートなおはなしかい」を開催しました。
今回は美術館のエントランスホールからスタート!
まずは図書館さんによる絵本のよみきかせです。
『まほうのえのぐ』林明子
主人公の女の子と様々な生き物たちが絵具を使って絵を描く様子が楽しい絵本です。
『びじゅつかんへいこう』絵:ピーター・レイノルズ、文:スーザン・ベルデ、訳:なかがわちひろ
美術館で作品と出会うことによって生まれる心の変化を描いており、美術館に行ってみたり、絵を描いてみたくなるような絵本でした。
ここからは展示室へ行き、作品を鑑賞しつつ、関連する絵本などを紹介してもらいます。
まずは2階の常設展示室へ。
最初にみたのは、佐藤玄々(朝山)《蜥蜴》1940年代作。
何の生き物かな?
「トカゲ!」「カナチョロ?」「イモリとかヤモリとか…」
この作品は、《蜥蜴》とタイトルが付いていますが、尻尾の長さなどからカナヘビだと考えられます。
(余談ですが、カナヘビのことを県北出身の美術館スタッフも“カナチョロ”と呼んでいます。)
カナヘビは何をしているところなのかな?
「獲物を見てる」「川に流されているんじゃないかな?」
作品をみながら自由に思ったことをお話します。
カナヘビがどんな生き物なのか、知ることができると、もっと色々な想像が膨らむかもしれません。
図書館さんから『かなへび』文:竹中践、絵:石森愛彦 を紹介してもらいました。
絵本の中には、作品とそっくりの体勢で木の上でひなたぼっこしているカナヘビがいました。
作品を見ながら、何をしているところなのかな?と想像してみるのもおもしろいですね。
ここでクイズ!この作品はどうやってできているでしょうか?
「粘土」「下は竹で、上が木でできてる」「プラスチック」…。
子ども達はもう一度作品をじっくり見ながら予想します。
ヒントになる隣の作品を見てみました。
佐藤玄々(朝山)《巣鶏》1920年頃作。
「木だ!」と子ども達から声があがりました。
《蜥蜴》と《巣鶏》は作者が同じであること、実際に木を彫っている様子の写真などを紹介しました。
今日は特別!展示ケースを外し、普段は見られない作品の裏側をみんなでみます。
《巣鶏》はにわとりと2羽のひよこ、それぞれの足が彫られ、色が塗られています。
玄々の作品は、裏側まで彫ってある作品がいくつかあります。
ここで、図書館さんからにわとりの親子をテーマにした絵本をよみきかせしてもらいました。
『ロージーのひよこはどこ?』作:パット・ハッチンス、訳:こみやゆう
めんどりのロージーがひよこを探して歩き回るおはなしです。鮮やかな色彩がとても可愛らしい絵本でした。
次は絵を見てみましょう。
山口華楊《畑》1925年
何が見えるかな?
「スイカ」「ナス」「豆」「スズメ」「判子」…。
作品には様々な種類の野菜が描かれています。
作者が押した印に気づいてくれた子もいました。
ナスや豆は普段目にしているものとはちょっと種類が違うかも?
京都の野菜が描かれているようです。
描いてある野菜をよーく見てみると、スイカの模様やナスのヘタのとげなど細かい部分まで描かれていることが分かります。
ここで、畑をテーマにした絵本を紹介してもらいました。
『はたけうた』作:田島征三
畑で育つ野菜たちが生き生きと、力強く描かれています。
ヨイショ、ドッコイショ、チョイトナーなどと合いの手が散りばめられ、聞いていて楽しい絵本でした。
1階の特集展「眼にうつる詩」の展示室へ。
美術作品と文学をテーマにした当館所蔵作品のテーマ展示です。
まずはみんなで休憩室へ入り、山中現『きたのまち』をよみきかせしてもらいました。
「山のむこうに山が見える」そんな一文からはじまる本は、優しい色合いが魅力的です。
作者の山中さんは喜多方市出身の作家で、『きたのまち』は故郷をイメージして作られたそうです。
展示室へ移動し、今回展示している山中さんの《水の庭》2003年刊をみます。
作品を見ると、子ども達から「切り絵かな?」などと作り方に関心を寄せる言葉がありました。
この作品は木版画であること、よーく見るとインクがきらきらしていることなどをお話しました。
最後はとっても小さな作品をみんなで見ました。
タイトルを隠し、何が描いてあるか、みんなでお話しながら見ていきます。
「キツネ」「アジサイ?」「池?」
「隣の作品と似てるからブドウ!」など、鋭い意見も飛び出しました。
この作品には実は元になっている物語があることを伝え、図書館さんに本を紹介してもらいました。
『キツネとブドウ』文:蜂飼耳、絵:さこももみ
キツネが必死でブドウを取ろうとする様子がユーモラスに描かれた絵本です。
ということで、この小さな作品は桂ゆき《ブドウとキツネ》制作年不詳。
この作品は、紙やキャンバスではなく、透明なガラスに描かれていることをお話しました。
最後は実習室での工作です!
今回は《ブドウとキツネ》をテーマに、ガラス絵風の絵をつくりました。
危ないのでガラスではなく、透明な下敷きを使います。
短時間で仕上げるため、2枚の下敷きで絵具を挟む方法で実施しました。
1枚目にキツネと自分のイニシャル、丸いスタンプを押していきます。
ここまでできたら2枚目。
紙パレットの片側に、自分の好きな色を出していきます。
二つに折って手で絵具をのばし、紙パレットを開くと、不思議な模様の出来上がり!
絵具を挟むようにして、2枚をぴったり重ねます。
作品が完成!
スタッフが窓に貼り付けていきました。
光にかざすと絵具がよりきれいに見えます。
最後にみんなで記念撮影。
ご参加いただいたみなさま、図書館スタッフのみなさま、ありがとうございました!