福島県立美術館ブログ
もののけワークショップを開催しました
5月8日(日)に当館実習室で創作プログラム「もののけワークショップ」を開催しました。講師は画家の香川大介さんです。
今回は親子向けの講座です。香川さんがつくった素焼きのオブジェに絵付けをし、自分だけの“もののけ”をつくります。
まずは、オブジェを選びます。
ひとつとして同じ形のない約30体のオブジェから、自分のお気に入りを選ぶのは楽しい時間です。
選んだら、絵付けの開始です。
「制作時は、集中しないで周りと話しながら、なるべく考えずに手を動かしてほしい」「みなさんに話しかけます、なんならひとりで勝手にラジオになっています」と、香川さん。
考えないで手を動かすという作品づくりに、子どもたちはすいすいと手を動かし、色を付けていきました。大人も筆を動かし始めると夢中モードに。香川さんと話しながらも制作の手は止めず、親子でそれぞれの表現を楽しんでいました。
最後にみなさんと出来上がった作品を鑑賞しました。
“もののけ”集合!
自分だけの“もののけ”が出来上がりました。
素敵なコメントをいただきました。
・ぬるのがたのしかった!
・0から何かを考えるのは難しいと思いますが、今回のような素材をもとにつくり上げていくのは取り組みやすく刺激的でした!
・親子それぞれ作るのが新鮮でした。自分で作るのも楽しいものですね。
・普段できないことを体験し、まわりのみんなの作品に触れ、ますます表現に興味がでたと思います。
ご参加いただいたみなさま、ありがとうございました。そして、楽しい時間を提供してくださった香川さん、本当にありがとうございました!
創作プログラム「写真のような鉛筆デッサン」を開催しました
4月16日土曜日、当館実習室で創作プログラム「写真のような鉛筆デッサン-自画像を描く-」を開催しました。講師は当館学芸員の大北です。
今回の講座では、形を取ることを省くために写真をトレースして描きます。
形のくるいが無いことで自分の扱えるトーンの幅を増やすことに集中できます。
使用する画材は鉛筆3種類(3B・HB・2H)と、ねりゴム、綿棒です。
2Hの鉛筆は固いので、芯を長めに出してねかせて使います。綿棒は擦筆の代わりです。
左半分は写真をトレースして輪郭やあたりをつけた状態。
右半分は3種類の鉛筆、ねりゴム、綿棒を使って描きました。
まずは、白黒コピーした写真の裏面に、鉛筆の芯の粉末をティッシュペーパーですりこみ、トレースするための準備をします。
次に、色ペンを持ってトレース開始。
目や鼻などの輪郭や明暗が分かれているところをなぞってあたりをつけます。
トレースが終わると、鉛筆で色を入れていきます。固さの違う3種類を使い分けます。
一番暗い色を最初に置くのがポイントで、それを基準にすれば間のトーンをつくりやすくなります。
午前はここで終了。
午後は、立体感を出すべく、ひたすら描きます。受講者の方それぞれ描き方が違うので、その特徴を活かして、個別にアドバイスをしていきます。
苦しい修行のようなデッサンですが、みなさん根気強く取り組み、終盤はそれぞれが何かをつかみ、鉛筆さばきが軽やかになっていきました。
もっと伝えたいことがあったのですが講座終了の時間です。
みなさん扱えるトーンの幅が増えたと思いますので、その感覚を今後の制作に生かしていただければ幸いです。
「今日は楽しかった」「また絵を描く講座を開いてください」「これからもデッサンがんばります!」などのお声をいただきました。嬉しいです。
ご参加いただいたみなさま、ありがとうございました。
学校連携共同ワークショップ参加校作品展がはじまりました。
当館では、県内の子どもたちを対象とした「学校連携共同ワークショップ」を行っております。今年度は、福島県ゆかりの作家であるアーティストの門馬美喜さん、画家の宮嶋結香さん、当館学芸員を講師として、各学校等でワークショップを開催しました。その成果展である、子どもたちが制作した作品約220点を一堂に会する展覧会が2月8日からはじまりました。
門馬さんのワークショップのテーマは「建築廃材で小さなまちをつくろう」です。門馬さんのふるさと相馬市をはじめ、復興に使われたさまざまな形の建築廃材を自由に組み合わせて、ひとりひとりが思い描く、自分が行きたい世界・場所・街を制作しました。廃材の木をそのまま使ったり、のこぎりで切ったり、おもいおもいの街をかたちにしたブックスタンドをつくりました。柿渋で彩色して、味わいある作品に仕上がっています。
福島県立相馬高等学校(美術部)
〈生徒たちの声〉
- 自分の行きたい世界、街、場所をつくることなんてしたことがなかったので、とても新鮮でした。
- 粘土や絵の具などを使用せず木だけの表現のやり方に悩まざるを得ない反面、木がうまく組み合わさった時の達成感を強く感じることができました。
- のこぎりで切ったり、きりで穴をあけたり、くぎを打ったりと普段の生活ではしないことをして、手が痛くなりましたが、とても楽しかったです。
宮嶋さんのワークショップのテーマは、「古紙をつかって絵を描いてみよう」です。紙袋や包装紙、ポスター、チラシなど、一度役目を終えた紙に描きます。破いて描きやすい大きさにして、断面やシワや紙に入っている模様からイメージを膨らませて、描きたい絵を自由に描きます。
二本松市立渋川小学校(4年生) 田村市立要田小学校(5・6年生)
南相馬市立太田小学校(5・6年生) 田村市立大越小学校(6年生)
会津坂下町立坂下中学校(文化部) 須賀川市立小塩江中学校(全校生)
会津若松市立第二中学校(美術部) 郡山市立日和田中学校(美術部)
〈子どもたちの声〉
- 普段使わない紙に、その場で思いついた絵を描いていくと、次の場面が次々にうかんできて、描く手が止まらなくなって、正直悩むと思っていたので、とても楽しくできました。
- 題名は「自然の中にきえた記憶」です。ポスターの絵はそれにぴったりだったので、写真を破って記憶がわれたように使いました。いろいろな記憶があるようにしようと思いました。
- ポスターのジャンプしている女の人を見て、「天使やん」と思ったので、羽をつけました。米袋のぼこぼこを使って犬の毛を再現しました。適当に切った紙からイメージをふくらませるのが楽しかったです。
- 小さい頃、何も考えずに描いた楽しさを思い出すことができた。共同で作品を作ることもできた。
当館学芸員のワークショップのテーマは、「目や鼻や口を描かないで友達の顔を描いてみよう」です。友達の雰囲気や友達から教えてもらった好きな音や物などから想像し、いろいろな画材を使って友達を描きました。
子どもたちは、マチエール(絵肌)作りからこだわりをみせ、作業に没頭する姿が印象的でした。五感を使って友達から感じ取ったことを画面上で表現し、目や鼻はないけれど友達が持っている空気感が伝わる作品をつくりました。紙を貼ったり、ビーズを付けてみたりと、リズミカルな作品に仕上がりました。
福島市教育委員会教育研修課(ふれあい教室)
福島の子どもたちの心豊かな成長を願い、貴重な時間を提供してくださった2名の作家と当事業に協力してくださった多くの方々に深く感謝いたします。
作品をご覧いただいた方から、「賑やかな音楽が流れているイメージ。楽しい!」「子どもたちの元気いっぱいの作品をみて楽しかった」「自由で楽しそうなアウトプットと、その隙間からのぞく現代の子どもたちの鬱屈した感情が見えるところがよかった」など、さまざまな感想をお寄せいただいております。
学校連携共同ワークショップ参加校作品展は2月27日(日)まで展示しています。子どもたちのきらきらした感性、パワーが感じられる作品展となっております。どうぞご覧ください。
場所:当館企画展示室B
観覧料:無料
開館時間:9:30~17:00(最終入館は16:30まで)
休館日:14日(月)、21日(月)、24日(木)
瀬戸語録:「瀬戸正人写真学校 in 福島」第5回報告
写真学校の最終回が、12月26日、雪の中、開催されました。
この日は、1月5日から始まる「成果展」の展示作業がメインでしたが、前回、受講生のみなさんからご要望がでて、急遽、瀬戸さんによるギャラリートークが行われることになりました。
通常の13:30開始の1時間前、12:30に企画展示室入口に集合。
美術館でも慌てて告知をしたので、写真学校の受講生以外の方も来られ、約50名の方とともに、会場をめぐりながら瀬戸さんのお話しを聞きました。
まずは、ギャラリートークの様子を、例によって瀬戸さんの言葉を拾いながらご紹介します。
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〈Living Room, Tokyo〉
当初から等身大の大きさで展示することを考え、大型カメラで撮っていた。今回の展覧会でそれがようやく叶った。
ここに写し出された外国人たちの見えない背景を、写真だからこそ写せるんじゃないかと思った。見えないものを撮りたい。
記憶が埋め込まれているのが写真の特徴。絵と違って具体的に見える物しか撮れない。でも写っているものを見せたいわけじゃない。それを見た人の眼を見て欲しい。
写真ってなんだろう。
まぼろし。写真はフィクション。でもリアルでないとフィクションにならない。
まぼろしのように見せるためにリアルに撮った。
その人がどんな本を読んでいるのか、本棚の本のタイトルまで全部読めるように撮った。
僕らの人生もまぼろしだという感覚。ひとりひとりの記憶の地図を辿ってみたら幻だった、本当に人生を歩いてきたのか自信が持てない、そんな感覚がある。
〈Picnic〉
最初35mmカメラで撮ろうと思ってお願いしたけれど断られた。ところが、三脚のついた大型カメラを持って、正面から正々堂々と近づくとみんな快く引き受けてくれる。写真の半分以上は交渉力。
聞いてみたら、付き合って平均3か月のカップル。見方によっては儚い風景。
〈Binran〉
檳榔(びんろう)は、南太平洋から中東まである、たばこと同じような嗜好品。しかしこうして販売しているのは台湾だけ。夜道を歩いていると、ネオンに輝くビンラン・スタンドはきれいだった。
デジカメ、5000万画素の中判カメラで撮っている。
カメラは、自分が見ていない、感じていたいものまで写し撮ってしまうもの。
〈Silent Mode 2020〉
モデルはどこも見ていない。視点がない。カメラとつながっていない。僕とこの人の間には断絶がある。
シャッタースピードは5秒。5秒、じっとしてもらう。その間に自分らしさというものが消えていくはずだ、という考え。そのための時間が必要。
その人らしさ、表情はなくなって欲しい。もしかしたら、そこに人間の哀しみ、人生観とかが浮き出て来るんじゃないか。そう写ればいいなぁと期待して撮っている。
〈Fukushima〉
長年東京に住んでいるけれど、震災後、福島いいなぁと、いつの間にかそう思えるようになった。
水の波紋の写真。波紋が写っているだけ。でもここから何かを感じて欲しい。
原発事故がなかったら、こういう気持ちにならなかったかもしれない。こういうものの見方をしなかったかもしれない。
セシウムは見えない。どうやって撮ったいいかわからないけれど、写るはずだという思いがあった。
見えないものを見せたい。その決意をこれらの写真(写真集『Cesium-137Cs-』)で表明したかった。
桃畑の写真。きれいな写真だけど、大げさに言うと、この文明が破綻しつつあるんじゃないかということを写したいと思った。
〈Bangkok, Hanoi〉
父はラオスで終戦を迎えた。メコン川に引き揚げ船が来ると上官に言われたが、負けた日本に帰れないだろうと考え、現地に残る。しかし離脱したということは脱走したということ。名乗り出ることもできず、タイのベトナム人社会に受け入れてもらい、やがて写真館を経営し、家族を持って暮らした。
国王が父の住む町に来た時に、町の他の写真館がみな断った随行カメラマンの仕事を父は引き受けた。その国王の写真で一財産を築くことができた。もしこのお金がなかったら、福島に戻ってこなかったかもしれない。
父から、どんな仕事も断らないことを教わった。そこから重要なつながりが広がっていくかもしれない。そうやって仕事をしてきた。
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さて、1時間ほどのギャラリートークが終了し、いよいよ成果展の展示作業です。
正面の壁に展覧会の看板と瀬戸さんのステートメントを展示。
両脇に受講生のみなさんの写真を貼ります。複数展示写真がある人は、写真を左右にわけ、なるべくかたまらないように、ばらばらに、まずはマスキングテープで思い思いに壁に留めていきます。
上下も左右も気にすることなく、まずは貼っていく。その後、全体のバランスを見ながら、少しずつ動かして調整していきました。
位置が決まったら、プッシュピンで壁に貼っていきます。
キャプションは付けません。そのかわりそれぞれの番号を写真の下に貼り、誰の写真かわかるようにしました。
テーマもなく、誰の写真かもすぐにはわかりません。
これまでの講座で瀬戸さんのお話しを聞きながら、写真から何かにじみ出て来るもの、そういうものを目指して写真を撮り、選び、あらためて写真に向き合ってきました。写真に写し出されたそれぞれの記憶の片鱗が集まることで、この展覧会全体から、見る方々に伝わるものが何かあるのではないかと思います。
皆さんで記念写真を撮り、瀬戸さんから卒業証書をいただき、この写真学校は終了しました。
瀬戸正人という写真家を知り、瀬戸さんとともに写真について考え、もっと写真が好きになってもらえたのであれば大変嬉しいです。
是非たくさんの方に展示を見ていただき、その喜びを共有していただければと思います。
創作プログラム「窓に描くクリスマス」を開催しました
12月18日(土)、当館実習室、庭園にて創作プログラム「窓に描くクリスマス」を開催しました。
講師は南相馬市在住の画家で絵本作家の小原風子さんです。
今回のワークショップは、みんなでフロッタージュした紙を使って、大きな窓をキャンバスにもみの木やクリスマスの風景を描いて、切って、ちぎって、貼って、つくっていきます。
当日の天気は雪。
まずは、フロッタージュの材料になる葉っぱや実などを採りに、美術館の庭園に。さむい!!!
次に、寒さに負けずにあつめた葉っぱや実を、実習室でフロッタージュします。葉っぱの上に半紙を置き、上からクレヨンなどでこすり、かたちをうつし取ります。
実習室の中の凸凹も探して作品にします。
さらに、等身大の自分を窓に飾るべく、大きな和紙を使って、自分で考えたポーズを型取りしてもらいます。そこに自分の顔を描いていきます。
そして、こんにゃくのりで等身大の自分を窓に貼り付けます。
午前中の活動は、ここで終了です。
午後は、窓に貼り付けたもみの木や等身大の自分に、フロッタージュしたものを使っておもいおもいに制作していきます。
風子さんが海から拾って集めてくださった貝も飾りつけました(こどもたちに大人気だった貝は“ナミマガシワ”といい、幸せを呼ぶ貝といわれているそうです)。
窓にむかって夢中で制作しました。
シンプルな大窓が、躍動感あふれるアート作品に変わりました!信夫山をバックに、たのしく遊ぶ冬景色の作品ができあがりました!
最後にみなさんで鑑賞しました。
のびのびと、また集中して活動されていたので、完成後のみなさんのお顔は充実感に満ちていました。「たのしかった!」「またやりたい!」とのお声、ありがとうございました!
すてきな時間をつくってくださった風子さん、ほんとうにありがとうございました!