福島県立美術館ブログ

創作プログラム「お気に入りの絵を彫ろう 漆の沈金体験」を開催しました

7月10日(日)に当館実習室にて創作プログラム「お気に入りの絵を彫ろう 漆の沈金体験」を午前と午後の部で開催しました。講師は、今年の2~3月にかけて当館にて開催した、福島県ゆかりの若手アーティストを紹介する企画展「福島アートアニュアル2022」に出品いただいた漆芸家の吾子可苗さんです。

 

はじめに作業工程を説明していただきました。

 

 

次に実演です。

 

 

「面にしたい場合は線を交差させたり、何本も線を彫る」「線を太くしたい場合は数本線を引いていく」など、わかりやすく教えていただきました。

 

さあ、各自で制作の時間です。

 

まずは、皿の上にチャコペーパーをおいて、各自用意したイラストをのせて、鉛筆でなぞっていきます。

 

 

図案が漆の皿に写りました。

 

お皿に写った線を加工した太い釘でなぞり、浅く彫っていきます。釘を立てて持ち、ギリギリと音がすればうまく彫れている証拠です。

 

 

 

「漢字を彫るのが難しい!」との声に、「最初は大まかなところを彫って、釘に慣れてきたら細かいところに彫り進んでいきましょう」と吾子さん。

 

彫り終わると、表面をきれいに拭き取ります。そして、漆を模様にすり込んでいきます。漆は触れるとかぶれることもあるのですが、挑戦した人は吾子さんの丁寧な指示のもと、気をつけて漆を擦り込みました。

 

 

表面についた漆を拭き取って、いよいよ本金を、真綿をつかって模様に蒔き付けます。丸くふわふわふわと蒔き付けていくのがポイントです。

 

 

線が金色で浮かび上がると、その美しさにみなさん気持ちが高まります!

 

お皿の表面についた金粉をきれいに拭き取ったら、完成です。1週間漆が乾くまで、濡れたティッシュを入れた袋で保存します。袋は密閉せずに口を3㎝ほど開けておきます。

 

 

受講者の声です。

 

・初めて漆をつかって模様をつけたので、楽しかった。工夫して彫ったりするのも楽しかった。

・非常に素敵な経験ができました。金粉をつけた時の華やかな瞬間は素晴らしかったです。

・大人がするような沈金の体験をさせて頂けるのがありがたかったです。

 

ご参加いただいた受講者のみなさま、1週間経ちましたね。お皿にカステラを載せたい、飾りたい、愛でたいとそれぞれ使い方をお考えでしたが、使うのが楽しみですね!

 

 

今回のワークショップは、アートアニュアルにあわせた2月開催の予定が、新型コロナウイルスの影響で延期となりました。受講者のみなさまが待ち望んでいたので、無事に開催することができうれしい限りでした。お申し込みいただいたみなさま、吾子さんありがとうございました!

 

 

 

 

創作プログラム「こけしの源流を想像して、こけしに絵を描こう」を開催しました

6月26日(日)に当館実習室で創作プログラム「こけしの源流を想像して、こけしに絵を描こう」を、午前と午後の部で開催しました。今回は、当館にて開催中の企画展「東北へのまなざし1930-1945」の関連ワークショップです。展覧会のポスター、チラシのデザインを担当された軸原ヨウスケさん(デザイナー)が講師です。

 

 

はじめに、伝統こけしの系統の特徴を説明していただきました。

     

 

続いて、熟練の伝統こけし工人さんの制作工程の映像を見せていただき、制作意欲が高まっていきます。

 

いよいよ「幼少期の自分を投影したこけしをつくる」に挑戦です。

まずは、小さい頃の自分を思い出しながら、シートに自分の顔を筆で描く練習です。墨汁と食用の染料(赤・青・黄・緑)を水で溶いたものを使います。

 

軸原さんにいただいたアドバイスは、「筆に慣れること」「気持ちよくすすっと描ける線、柄を考案して描いていく」でした。

 

次はロクロの使い方の実演です。ロクロを使ってこけしの髪や模様を描くことができます。

 

 

みなさんもロクロを使って模様を入れていきます!

 

 

一発勝負なので、筆を入れる受講者の方も手回しロクロを回す軸原さん、美術館スタッフも集中しています。

 

さらに顔や髪、胴模様を自分好みに仕上げていきます。

 

 

 

最後に、みなさんでこけしの記念撮影をしました!どのこけしもつくった人の“その人らしさ”が表れています。

 

 

                                    軸原さんと伝統こけし工人の早坂さんです。

 

震災で落ち込んでいた時に軸原さんの本(残念ながら絶版)をきっかけにこけしに魅了され癒やされた「こけ女」の方、おじいさまが土湯のこけし工人だった方、現在も鳴子でご活躍されている工人さんなど、こけしと密接な関わりがある方々が軸原さんとこけしに引き寄せられるように集まりました。こけしの奥深さを感じた一日でした。

 

受講者の方からの感想です。

 

・想像した以上に筆づかいや絵付けは難しかったが、作品を作る過程が楽しかった。ロクロで色をつけることもできてよかった。

・とてもたのしかったです!!

・工人の方のすごさを体感できました。

 

ご参加くださったみなさま、ありがとうございました。小さなこけしに大きな魅力がつまっていることを教えてくださった軸原さん、本当にありがとうございました。

 

 

芸術鑑賞講座を開催しました

今年も当館前館長の早川博明氏を講師に、全4回講座の「芸術鑑賞講座ー名画との対話」を開催いたします。

西洋美術史のバロック時代の巨匠たちを各回1人ずつ取り上げ、名画に秘められた絵画表現の意味と魅力を解説します。

 

6月11日(土)に第1回めの講座が行われました。今回ご紹介したのはルーベンスです。

ルーベンスは「王の画家にして画家の王」という異名を取るほど、当時のヨーロッパで名声を響かせた天才画家です。
代表作《マリー・ド・メディシスの生涯》などの歴史画や、神話画、祭壇画ではドラマチックな表現の力量がふんだんに表れており、一方で肖像画や家族を描いた絵では、人物の生命力が伝わってくる生き生きとした感じが、色づかいや肌の表現によって巧みに再現されています。

宮廷や当時の権力者から沢山の注文を受け、画家として大成功をおさめた彼の多才な手腕ぶりを、作品をお見せしながら解説しました。

 

  

ご参加いただいたみなさま、早川さん、ありがとうございました!

次回第2回めの開講予定は、
日時:8月13日(土) 10:30~12:00
テーマ:「バロックの巨匠たち(2)-ベラスケス」
です。

今年は会場を講堂にし、受講の事前申込みは不要ですので、開催日に直接当館講堂までご来場ください(聴講無料)。

次回以降の予定については下記のページに載せております。
https://art-museum.fcs.ed.jp/%E3%81%9D%E3%81%AE%E4%BB%96%E3%81%AE%E4%BA%8B%E6%A5%AD/%E3%81%9D%E3%81%AE%E4%BB%96%E3%81%AE%E4%BA%8B%E6%A5%AD/%E9%A4%A8%E9%95%B7%E8%AC%9B%E5%BA%A7

 

ご来場をお待ちしております!

令和4年度 第Ⅰ期コレクション展

当館では、3月23日から7月10日まで常設展示室にて「令和4年度第Ⅰ期コレクション展」を開催しております。
今回はその展示の様子をご紹介します。

【展示室A】

最初の部屋では、入ってすぐそばのケース内で「ブロンズ小品の魅力~石原コレクションから」を展示しています。
横浜市の会社経営者であった石原巖氏は、彫刻やパブリックアートの設置に関わる事業に参画する中で、彫刻や油彩画、版画、素描など多彩な作品を蒐集していきました。
今回は、石原氏が築き上げたコレクションの一部から、オーギュスト・ロダンや佐藤忠良、船越保武などによる11点のブロンズ彫刻を紹介しています。


その向かい側では、「春の日本画」として、尾竹越堂、安田靫彦、星茂の作品を展示しています。


奥のスペースでは、関根正二を中心に、岸田劉生や恩地孝四郎、長谷川利行、松本竣介などによる大正期から昭和初期にかけて描かれた洋画を紹介した「関根正二と近代の洋画」を展示しています。


【展示室B】

展示室Bでは「特集展示:東北が育んだ作家たち」と題して、東北地方にゆかりある作家の作品を展示しています。

見どころは酒井三良の《帰樵》《雨はれ》《そばの秋》《雪暮》(それぞれ1930年)です。三良が1924年に日本美術院の同人に推挙されてから院展の中心作家として活躍し始める時期の、代表作とも呼べるような逸品です。
その他にも、三良が師事した小川芋銭の作品を併せて展示しています。
また、そのそばには斎藤清の版画や、福田豊四郎の日本画を展示しています。


奥側の壁面では、新たな表現を目指した東北地方ゆかりの作家の作品を紹介しています。
吉井忠の描く安達太良山は大胆な色面で構成されています。
また、コンセプチュアル・アートや環境芸術といった同時代の潮流を独自に捉えた村上善男や、具象と抽象の間を往来する表現を試みた田口安男、針生鎮郎が並びます。
その他にも、福島県の前衛芸術をけん引した鎌田正蔵や橋本章の作品を展示しています。


【展示室C】

展示室Cでは「海外の名品選」を展示しています。

ベン・シャーンやアンドリュー・ワイエスといったアメリカのリアリズム絵画をはじめとし、クロード・モネ、カミーユ・ピサロといった印象派の巨匠らによる油彩画、フェルナン・レジェやパブロ・ピカソの版画、ヘンリー・ムーアの彫刻など、当館所蔵の海外作家作品の中から選りすぐりのものを紹介しています。
とりわけ、パブロ・ピカソによる版画の連作『二人の裸婦』(1945~46年)は新古典主義とキュビスムを往来する作家の作風の変遷がうかがえる内容となっています。


【展示室D】

最後の部屋では、当館の所蔵作品の中から、明治の終わりから昭和の初めにかけて隆盛した創作版画運動を担った作家を紹介する「創作版画の世界」を展示しています。
現在出品している前川千帆の『版芸術(合本B)』(1932~33年)所収の版画は、初夏の風物を描いたこれからの季節にぴったりの作品です。
また、その対面では、平塚運一や深沢索一、武藤六郎などのモダンな都会風景を展示しています。


「第Ⅰ期コレクション展」は7月10日(日)までとなっております。

一般・大学生 280円

高校生以下  無料

ぜひお誘いあわせの上、ご来館をお待ちしています。

もののけワークショップを開催しました

5月8日(日)に当館実習室で創作プログラム「もののけワークショップ」を開催しました。講師は画家の香川大介さんです。

今回は親子向けの講座です。香川さんがつくった素焼きのオブジェに絵付けをし、自分だけの“もののけ”をつくります。

 

まずは、オブジェを選びます。

ひとつとして同じ形のない約30体のオブジェから、自分のお気に入りを選ぶのは楽しい時間です。

 

選んだら、絵付けの開始です。

 

 

「制作時は、集中しないで周りと話しながら、なるべく考えずに手を動かしてほしい」「みなさんに話しかけます、なんならひとりで勝手にラジオになっています」と、香川さん。

 

考えないで手を動かすという作品づくりに、子どもたちはすいすいと手を動かし、色を付けていきました。大人も筆を動かし始めると夢中モードに。香川さんと話しながらも制作の手は止めず、親子でそれぞれの表現を楽しんでいました。

 

 

最後にみなさんと出来上がった作品を鑑賞しました。

 

“もののけ”集合!

 

自分だけの“もののけ”が出来上がりました。

 

素敵なコメントをいただきました。

 

・ぬるのがたのしかった!

・0から何かを考えるのは難しいと思いますが、今回のような素材をもとにつくり上げていくのは取り組みやすく刺激的でした!

・親子それぞれ作るのが新鮮でした。自分で作るのも楽しいものですね。

・普段できないことを体験し、まわりのみんなの作品に触れ、ますます表現に興味がでたと思います。

 

ご参加いただいたみなさま、ありがとうございました。そして、楽しい時間を提供してくださった香川さん、本当にありがとうございました!