福島県立美術館ブログ

実技講習会「シャーンと立つ私の姿」報告

「ベン・シャーン展」開催に併せて、6月9日(土)から現代美術家タノタイガ氏の実技講座「シャーンと立つ私の姿」が行われています。6月の週末を使った計6回連続の講座は、量質ともにかなりのボリュームです。



タノタイガ氏の現在の活動は、地域に潜む社会問題や出来事を自身の作品や制作過程の中で表現しようとするもの。また一方で、東日本大震災以来、独自の取り組み方で被災地のボランティア活動を行うなど、アーティストという枠を越えた幅広い活動を手がけられております。



講座は、べイマツ 【米松】の杙(くい)の先端に自分の胸像を彫り、美術館の庭に立てて鑑賞するもの。行程はいたってシンプルですが、タノ氏曰く「ベン・シャーンがその当時の社会と向き合う作品づくりをしていたように、参加者のみなさんが、震災を経た今の福島や日本、自分を取り巻く環境とどう向き合う自分自身がいるか、その姿をこの作品制作に投影してもらえたら・・・。」ということ。とても深いテーマが込められている講座になっているのです。



参加して頂いた方々は、タノ氏のアドバイスに熱心に耳を傾け、作業は真剣そのもの。さすが6回連続の講座に参加されるだけあって気合いも十分です。



四角い杙の先端に、だんだん人の姿が現れはじめました。木彫は「マイナスの作業」。削るだけの作業で作品づくりを進めます。間違って削ってしまえば、後戻りは出来ません。実習室には緊張感が漂います。
 
来週は、いよいよ完成へ向けて仕上げに入ります。そして鑑賞。

(くに)

「ベン・シャーン」展、開催中です!

6月3日から、企画展「ベン・シャーン クロスメディア・アーティスト」を開催しています。

ベン・シャーン(1898-1969)は、20世紀という激しく揺れ動いた時代をアメリカという場所から見つめ続けた画家でした。
本展は、日本で約20年ぶりの回顧展となります。



アメリカのリアリズムの流れをコレクションの柱としてきた福島県立美術館にとって、ベン・シャーンは大切な画家です。開館以来、50点の作品を収蔵してきました。
回顧展も今回が2回目。小企画、常設展示を通じて、幾度となくご紹介してきた作家です。



本展は国内3会場を巡回して、福島が最終会場となります。

展覧会ホームページで展覧会の見どころや、出品リスト、関連事業などを是非チェックして下さい。
http://benshahn2011-12exh.info *リンクは終了しました

福島会場では毎週、関連事業を開催しています。
すでに山田太一氏の講演会、沼辺信一氏による講演会が終了しました。
そのようすは、ブログでご紹介していますので、こちらもチェックして下さい。
http://benshahn2011-12exh.info/cat17 *リンクは終了しました

6月17日(日)には、「視覚障がい者のための鑑賞ワークショップ」を開催します。
こちらも終了後にアップする予定。お楽しみに。

一般・大学生は600円、高校生以下無料です。
是非皆様でお出かけ下さい。お待ちしております!

A.Y.

「鯉アートのぼり」展示はじまりました

27日から、美術館庭園で「鯉アートのぼり」の展示をしています。



福島在住の作家・渡邊晃一氏と福島大学の「芸術による地域創造研究所」によるプロジェクトです。
震災後、全国から、世界中から寄せられた手作りの鯉のぼり240匹が泳ぎます。
一匹一匹に、福島へのメッセージが込められています。

26日の展示作業風景です。池の上のインスタレーションはもしかすると初めてのことです。
安全を考えて大がかりな設営になりました。

 

昨年の夏休み、「あそVIVA☆びじゅつかん」の展示室にも鯉のぼりが登場しましたが、今回は庭園の除染をしましたので、外で展示することになりました。
やっぱり、鯉のぼりは空が似合います。

 
水に映る鯉のぼり。


吾妻小富士と鯉のぼり。



「五味太郎展」鑑賞のため、小学生が連日団体で来てくれています。


鯉のぼりは5月20日まで展示しています。庭園ですので、自由にご覧ください。

(この鯉のぼり展は、福島県立博物館、郡山市立美術館などでも同時に開催されています。)

(増)

「五味太郎作品展 絵本の時間」オープンしました

子供が大好き、大人も大好きな絵本作家、五味太郎さんの展覧会がはじまりました。



「みんなうんち」「みんながおしえてくれました」「ことわざ絵本」「がいこつさん」「かかかかか」「ねえ おはなししてよ」「ぽぽぽぽぽぽ」「あそぼうよ」「ももたろう」「まどから おくりもの」の10種類の絵本原画、175点が展示されています。
どれか読んだこと、ありませんか?



初日の講演会+サイン会には、五味さんがかけつけてくださいました。雨でしたが、多くの方が整理券のために並んでくださいました。



会場内には、絵本がゆっくり読めるコーナーや、「らくがき絵本」を体験できるコーナーなどもあります。
 

書籍販売、グッズコーナーも充実しています。手前に見えるのは「さる・るるる」のぬいぐるみです。



会期中、穂積保氏(こどもの本WAVE代表)によるギャラリートーク、県立図書館司書によるおはなしかい、内田由紀子氏(製本家)のワークショップ「親子で絵本をつくろう!」が開催されます。どうぞご参加ください。

(増)

美術館、再オープンしました!

皆様、お久しぶりです。

美術館は無事に建物の復旧工事と庭の除染作業を終え、4月7日土曜日、ほぼ2ヶ月ぶりに再オープンいたしました。

2012年度第1期のコレクション展の見所をご紹介しましょう。

まずは小川芋銭の《鍾馗図》。
入り口で仁王立ちになったごっつい表情の鍾馗さまが邪気を払ってくれます。
新学期に胸をはずませている福島の子供たちが、どうか元気で過ごせるように祈りをこめて。




2室目に移りましょう。
6月3日から開催される「ベン・シャーン」展に向けて、当館で収蔵しているアメリカの美術をご紹介しています。
ベン・シャーンが学んだアート・ステューデンツ・リーグで教鞭をとっていたジョン・スローン。
1930年代、ニューヨークの熱気を描き出したレジナルド・マーシュ。
アメリカの田舎の生活を取り上げたトーマス・ハートベントン。
アメリカで活躍していた国吉康雄、清水登之や石垣栄太郎など日本の画家たち。
そこにアンドリュー・ワイエスが加わります。
シャーンの芸術を育んだアメリカ・リアリズムの流れをご覧いただきます。




3室目は版画です。
「斎藤清 木版画の魅力 木目を生かす、版木をひっかく」と題して、技法の側面から斎藤清の木版画をご紹介します。
あわせて版木も展示していますので、是非ご覧ください。




ところで、彫刻はどこかとっつきにくいと思っている方はいらっしゃいませんか?
4室目では、石原コレクションの中から彫刻5点を展示しています。
これらの小彫刻たちは、作家の手が一つ一つの形を愛おしむように生み出していることを示しています。
落ち着いた雰囲気の中で、彫刻とのあらたな出会いを体験していただければ幸いです。




コレクション展は装いもあらたに、皆様のご来館をお待ちしております。

A.Y.