カテゴリ:教育普及

実技講習会「シャーンと立つ私の姿」報告

「ベン・シャーン展」開催に併せて、6月9日(土)から現代美術家タノタイガ氏の実技講座「シャーンと立つ私の姿」が行われています。6月の週末を使った計6回連続の講座は、量質ともにかなりのボリュームです。



タノタイガ氏の現在の活動は、地域に潜む社会問題や出来事を自身の作品や制作過程の中で表現しようとするもの。また一方で、東日本大震災以来、独自の取り組み方で被災地のボランティア活動を行うなど、アーティストという枠を越えた幅広い活動を手がけられております。



講座は、べイマツ 【米松】の杙(くい)の先端に自分の胸像を彫り、美術館の庭に立てて鑑賞するもの。行程はいたってシンプルですが、タノ氏曰く「ベン・シャーンがその当時の社会と向き合う作品づくりをしていたように、参加者のみなさんが、震災を経た今の福島や日本、自分を取り巻く環境とどう向き合う自分自身がいるか、その姿をこの作品制作に投影してもらえたら・・・。」ということ。とても深いテーマが込められている講座になっているのです。



参加して頂いた方々は、タノ氏のアドバイスに熱心に耳を傾け、作業は真剣そのもの。さすが6回連続の講座に参加されるだけあって気合いも十分です。



四角い杙の先端に、だんだん人の姿が現れはじめました。木彫は「マイナスの作業」。削るだけの作業で作品づくりを進めます。間違って削ってしまえば、後戻りは出来ません。実習室には緊張感が漂います。
 
来週は、いよいよ完成へ向けて仕上げに入ります。そして鑑賞。

(くに)

館長講座最終日

2005年4月から続いてきた館長による美術鑑賞講座。略して「館長講座」。
テーマは「日本の近代美術」です。
月に1回、第三土曜日に、日本の近代美術について貴重な作品図版を使って時には力強く、時にはまったりと語る人気講座でした。
常連さんも数多く(意外にも?熟年男性にも根強い人気があったんですよ!)、夏の殺人的な暑さにもマケズ、冬の凍てつくような寒さにもマケズ、通ってくださいました。
感謝の念にたえません。

館長が今年度(今年3月)で退任すること、そして、当館が2~3月、前庭の除染作業と建物の災害復旧工事で休館することから、本日1月21日が最終講義でした。
雪が降りしきり、足元のお悪い中、みなさんお集まり下さいまして、ありがとうございました!


↑「館長、熱弁をふるう」之図


↑「館長、赤ちゃんもあやせます」之図
最終講義後、生まれたばかりの赤ちゃんを抱いて元事務補助の女性が訪ねてきてくれました。
その女性と赤ちゃん、館長講座を聴きにきて下さった福島市出身の画家佐藤幸代さん、福島県立美術館
友の会の丹治会長さん、荒木学芸員と共にパチリ!

(吉)

こちらも毎年恒例、学校連携ワークショップ!

こちらも毎年恒例の学校連携ワークショップ「アーティストinスクール」です。
エントランスホール2階に、昨年の学校連携ワークショップで中学生や高校生が制作した作品を展示しています。

昨年のお題は、「光で遊ぶ-メディアアート」。
講師は東北芸術工科大学准教授のメディアアーティスト松村泰三さんです!

まず、安達郡大玉村立大玉中学校、福島県立会津学鳳中学校・高等学校、会津若松市立一箕中学校のみなさんが参加してくれた、「光の箱」。
どんなんだと思うでしょう?


↑こんなんです。え?もっとよく見たい?ハイハイ。


↑幻想的でしょう。窓の外の雪景色とあいまって、この世のものとは思われぬ美しさです。


↑え?もっとアップで?しょうがないなぁ。


↑どうよ、どうよ。(エッヘン)


制作方法もパネルにてご紹介しています。ぜひ足をお運びくださいね。
さて、もうひとつの昨年のお題は「コマ撮りアニメーション」。
こちらは当館のご近所の福島県立工業高校情報電子科のみなさんが参加してくれました。
講師はやはり、松村泰三さんです!

アニメと言っても、セル画をたくさん描くのではなく、デジタルカメラの画像を利用したいわば「実写版アニメ」です。
これは実際にテレビ画面で見てもらわないと面白さが伝わってこないのですが、ちょっとご紹介。

 

人間サーフィンあり(どんな意味かって?あなたも見れば分かる!)、ジャッキー・チェンばりの(古い?)格闘技ありの楽しい映像作品に仕上がってます。
突っ込みどころもマンサイ!
テレビ画面にエンドレスで映し出していますので、どうぞ突っ込みながら見てくださいね!

「光の箱」も「コマ撮りアニメーション」も「美術館への年賀状展」と同じく今月末まで展示しています。ぜひ足をお運びください。

(吉)

アート・キューブ☆メガ、郡山美術館へ!

みなさん、アート・キューブを覚えておいででしょうか?
会津若松市文化センターでの福島県立美術館移動美術館ワークショップで活躍した、あの「ヒミツ兵器」です。


↑コレ。

アート・キューブには、約30cm四方の手提げバッグサイズのケースに7cm四方のキューブが詰まった普通サイズの「アート・キューブ」と、約1mメートル四方の(死体の2つや3つ詰められるような)巨大なケースに約30cm四方のキューブが詰まった「アート・キューブ☆メガ」があります。
この「アート・キューブ☆メガ」2セットのうち1セットが、この「アート・キューブ」プロジェクトの偉大なパートナー、郡山市立美術館さんに引き取られていきました。


↑なんとか積み込み完了!もう、ぎゅうぎゅう詰めでございます。

ちょっとハイになっている郡山市立美術館の永山学芸員さんと杉原学芸員さんです。
「アート・キューブ」製作へのひとかたならぬご協力、本当にありがとうございました。

今後は、郡山市立美術館さんで子供たちを出迎えることでしょう。
郡山のお友だち、楽しみにしていてね!
あまりの迫力にびっくりすんなよ!

(吉)

アーティストinスクール最終回。

アーティストinスクール~光で遊ぶ メディア・アートの第3回目は、会津若松市にある福島県立会津学鳳中学校・高等学校にお邪魔しました。今回は同じ町にある会津若松市立一箕中学校の生徒さんも一緒に、22名で「光の箱」を作りました。

 

原広司氏設計の校舎は2007年に完成したばかり…斬新で美しい建築です。

最初は「光」についてのレクチャーからスタート。
色彩の三原色(赤青黄)は混色すると黒に近づくけれど、光の三原色(赤青緑)は混色すると白になる。角度を少しずらした3色の光源を使って影絵遊びをしながら体感します。



同じ原理を応用した松村さんの作品「光の彫刻」を鑑賞しました。



「今日は絵の具で描いたり、木を彫ったりするのではなく、《光》を使って作品を作ってみよう。」…「光の箱」の制作をスタートします。



前面と背面が切り抜かれた白い枠を組み立て、その中に丸・三角・四角・ハート・しずく・雲・星などの形の筒状に加工したフィルムミラーを並べ、組み合わせたりして造形していきました。この「筒」の中に入った《光》が乱反射して、様々な表情を生み出す仕組みです。



さすがは美術部…それぞれが作品全体のイメージを持ちつつ、一つ一つの工程を丁寧にすすめていました。

 

箱の中が筒で埋まってくると…少しずつ個性的な表情が見えてきました。



制作途中の作品を蛍光灯にかざして確認、調整を繰り返していきました。制作する生徒さん達も、次第にこだわりの表情になっていました。



「筒」を詰め終わったところで、作品背面に4色(赤・青・黄・緑)の帯状のカラーセロハンを自由に組み合わせて貼ります。色同士を重ねたり、筒にテープがかかる割合を調整することで、様々な色彩が生まれます。

 



同じ材料、同じ時間で作っても、本当に様々な表情の作品ができあがるものです。

最後に作品を合体させて、スポットライト、蛍光灯、間接照明、自然光…さまざまな光を楽しみます。思わず見とれてしまうほどの美しさ…。



最後に生徒を代表して会津学鳳高美術部の部長さんが、お礼の言葉をくれました。



「光を使って作るなんて初めての経験でしたが、とても綺麗な作品ができました。松村先生、素晴らしい時間をありがとうございました。」




今回のワークショップの作品は、しばらく自宅や学校で飾って楽しんでもらった後、1月に福島県立美術館でお借りして展示させてもらう予定です。(詳しくは、また改めて…。)


講師:松村泰三先生のブログでもWSの様子を紹介しています。

http://taizoinfolog.seesaa.net/article/236988297.html

(橋)

「アートなおはなしかい」開催しました!

11月3日(木)、お隣の県立図書館との共同ワークショップ「アートなおはなしかい」を開催しました!
2006年から毎年1回開催しており、今年で6回目です。
美術館と図書館がお隣あっているからこそできるこのワークショップ。実は日本初、いや、世界初か?!

今回は「変わる」がテーマ。
まずは、「変わる」がテーマになっている絵本の数々を、図書館で読み聞かせ。
リサイクルでお洋服が「変わる」、卵がいろんなお料理に「変わる」など、いろんな「変わる」があるものです・・・。大人もついつい聞き入ってしまう面白さ。


↑吉田司書、演技力抜群です!


↑安齋司書の癒し系の読み聞かせに、こどもたちうっとり・・・。


その後は美術館に移動。
おトイレ休憩をはさんで、あの秘密兵器「アート・キューブ」を使ってのワークショップです!

「素材キューブ」を使って、「彫刻」の素材を当てっこした後で、「型どりキューブ」登場!
シリコンの型に石膏を流し込み、人生初の彫刻制作に挑戦です。
かわいい白ワンコが作れて、しかも、おみやげに持って帰れるとあって、みんな真剣そのもの。


↑型に石膏を流し込み中。

石膏を流し込んだ後は、キューブを回してまんべんなく石膏を型に行き渡らせます。
大体固まってきたら、20分くらい待つのだぞ!
その間、展示室で「感覚キューブ」、「絵画キューブ」、「おみくじキューブ」を使って、いろんな絵を見ます。


↑ふかふかの「感覚キューブ」を投げて、出た目に書かれたミッション遂行!


↑「絵画キューブ」で、「日本画ってどんな手触り~?」


↑「おみくじキューブ」で、おみくじに書かれた言葉にぴったりの作品を見つけます。
実は、毎回人気ナンバーワンのキューブなんです。

さて、最後に「型どりキューブ」のところに戻ってきて・・・、型を開けますよ~!
上手くできてるかな?


↑おおお!大成功!


実は失敗しちゃった子もいたんですが、「もう1回やる~!」とリベンジ。
二度目は見事に成功させました。
粘り強いところ感心しました。ハナマルです~。

そして、「無事終了」といきたかったんですが、今回はなんと!
「おみくじキューブ、もっとやる~」と、おみくじキューブを奪い取って展示室に駆け出すこどもたち。
学芸員は置いてけぼり・・・。(笑)
唖然としましたが、嬉しかったです~!
また、来てね!

(吉)

アーティストinスクール第2回目、行ってきました。

アーティストinスクール《光で遊ぶ~メディアアート》の第2回目は、安達郡大玉村立大玉中学校で開催。美術部員と有志の16名が、講師考案の「光の箱」を制作しました。

美術と聞くと《絵の具》で描いたり、《粘土》で作ったりする事を連想しがちですが…今回のワークショップは《光》を素材に作ります。

はじめに、講師の松村さんの作品「光の彫刻」を鑑賞します。黒い縦長のボックスの中心の支柱がモーターで回転すると「赤」「青」「緑」…光の三原色の影が現れます。回転速度が変化するようにプログラミングされていて、見える形も速度にあわせて変化します。

 

いよいよ「光の箱」の制作。
「ハサミで切る」「セロテープでとめる」など、身近な用具で、初めてでも無理なく作ることができます。工程を一つ一つ追いながら制作が進んでいきます。

 



時間が経つにつれ、だんだんと箱の中は銀色のフィルムミラーの「筒」で埋まっていきました。この「筒」の中で《光》が乱反射し、様々な表情を生み出します。制作途中の作品を蛍光灯にかざしたり、後ろからライトを当てて具合をみます。



全体のバランスがとれたら、赤・青・黄・緑の帯状のカラーセロハンを作品の背面に、自由に組み合わせて貼ります。



 

自然と制作に夢中になって、いつの間にか教室内はセロテープを使う音しか聞こえなくなっていました。校長先生が様子を見にいらして「みんな、いい顔になってるなぁ。」とおっしゃっていました。

最後に完成した作品を積み重ねて…教室の電気を消し、作品の背面からスポットライトをあてて鑑賞会。職員室にいらした先生達も駆けつけてくれました。





作品の中を通過する光が「筒」の中で乱反射し、色同士が溶け合って、鮮やかな煌めきとなり、歓声と拍手がわき起こりました。みんなの目もキラキラと輝いて、驚きと発見にあふれたワークショップになりました。


講師:松村泰三さんのブログにも記事が掲載されています。

http://taizoinfolog.seesaa.net/article/232308384.html

(橋)

アーティストinスクール第1回目、行ってきました。

活躍中のアーティストが福島県内の学校を会場にワークショップを開催する『アーティストinスクール』。《光で遊ぶ~メディアアート》と題して松村泰三さん(メディアアーティスト、東北芸術工科大学准教授)を講師に10月~11月に開催希望の3校を訪ねます。

今日はその第1回目。福島県立福島工業高等学校(福島市)で「コマ撮りアニメーション」を制作しました。

アニメーションの制作には膨大な枚数の絵(画像)が必要になります。大変な労力と時間が必要になるイメージがあるかと思いますが、今回は画材を使って絵を描くのではなく…デジタルカメラで撮影した写真(画像)を素材に使います。つまり「実写コマ撮りアニメーション」。参加者は全員「撮影者」であり、全員「役者(登場人物)」でもある訳です。

はじめに、参考作品を鑑賞しながらコマ撮り独特の不思議な動きの仕組みを少しだけ紹介しました。デジタルカメラを三脚に取り付け、カメラ・フレームを固定して、少し動いては撮影、また少し動いては撮影を繰り返す。それが「動き」になる仕組み。

情報電子科1年生は女子が1名のみ…男子率9割以上のクラス。約40人が8つのグループに分かれて、校舎内の思い思いの場所で撮影します。



最初はなかなか進みませんでしたが、撮影・プレビューを繰り返しているうちに、「○○したら面白くない?」「ここは△△でしょう!」「おー、いいねぇ~。」と、だんだんと会話も生まれ、ワイワイ盛り上がりながら撮影は進みました。アイデアは次第に形になっていき、みんなの表情も豊かに、表現も大胆になっていきました。





撮影時間は1時間ほど。時間ギリギリまで熱中して撮影しました。

画像データをパソコンに集約して映像編集ソフトで処理し、みんなで鑑賞。クラスメートがどんな作品を作ったか…すぐに見られるのはデジタルメディアの恩恵です。



自然と笑いや歓声、拍手が生まれていました。

遊ぶ感覚で即興で作った作品でしたが、「足を動かさずに廊下を滑る」「小さな箱に5人で入っていく」「大ジャンプ」などなど…コマ撮りアニメーションならではの表現も織り込まれていて、みんなのアイデア満載のユニークな動きの映像作品に仕上がりました。


講師:松村泰三さんのブログにも記事が掲載されています。

http://taizoinfolog.seesaa.net/article/230307620.html

(橋)