カテゴリ:教育普及
創作プログラム「シルクスクリーンでオリジナルTシャツを作ろう!」を開催しました
1月15日(日)に当館実習室にて創作プログラム「シルクスクリーンでオリジナルTシャツを作ろう!」を開催しました。講師は、版画家の大河原健太さんです。
大河原さん着用のTシャツは大河原さんがデザインしたもの。大河原さんは人気ブランドのデザインの仕事もされています。
「シルクスクリーンはどんな版画?」「木版みたいに反転しないの?」の受講者の質問に、大河原さんは実演開始。下準備が済んだ版に白いインクをのせてスクィジーでのばすと・・・
黒い画用紙に大河原さんが描いた絵が現れました!実際の工程を見て、みなさん納得。
仕組みがわかったところで、作業に入ります。
まずは、下絵の準備です。下絵をあらかじめ準備されていた方も多くて、木枠のついたA4サイズの版と下絵のサイズ調整を行いました。木枠の内側2㎝ほど余白をつくると、印刷しやすくなるので、そのサイズに収まるようにします。
下絵を版にトレースします。版を浮かせて、ペンタイプの描画材を使って下絵をなぞります。
面の部分は、面相筆に描画剤をつけて塗っていきます。
絵を版に写し終わったら、版を裏にしてスクィジーで乳剤をのばして、目止めをします。
乳剤をドライヤーで乾かし乾燥させます。
洗い油を版に塗り、筆を使って描画剤を溶かします。その後、版を水で洗い、乾燥させます。
洗い油で描画剤を溶かすと、トレースした線や面部分の細かな目にインクが通る状態になります。
午前はここまでです。
午後からいよいよ印刷していきます。初めに、多色刷りとグラデーションの色付けの仕方をレクチャーしてもらいました。
シルクスクリーン用の絵具やアクリル絵具から自分の使いたい色を選びます。アクリル絵具を使う場合はメディウムを混ぜて、水飴くらいの固さに調整していきます。また、色に透明感を出していきたい場合はメディウムを足すと効果的です。
さあ、印刷開始です。
版上の使わない絵はマスキングテープで目止めをしておき、インクを絵の横に多めに置きます。
スクィジーを斜め45度の角度で引きます。
絵が写りました!
刷り終わったら、版を水洗いし、乾かします。版を何度も使うことができるので、持参のトートバッグやTシャツなどにどんどん印刷していきました。
こだわりの作品が次々と出来上がりました!
受講者の方からです。
・とても楽しかった。シルクスクリーンについてよく理解できた。
・自分の絵がプリントされてうれしい!
・反転など考えなくてもそのまま版にできるなど簡単で大変楽しめた。
みなさん、ご自分のこだわりがつまった作品をつくりあげていて、どの作品も素敵でした。困っている時にはすぐにアドバイスをして、細やかに指導してくださった大河原さん、ありがとうございました!
創作プログラム「想像のお庭を作ろう」を開催しました
12月11日(日)に当館実習室にて創作プログラム「想像のお庭を作ろう」を開催しました。講師は、美術作家の杉浦藍さんです。
今回のプログラムは、事前準備として、参加者に日常生活の中で自分のまわりにあるものを写真に撮ってきてもらいました。それをA4の紙に印刷し、色紙として制作に使っていきます。
参加者も杉浦さんもいろんな写真を前にワクワク。「これは何かな?」「ロディだよ!」「これは?」「水滴が付いた麦茶のコップ」など、聞いてみないとなんだかわからない不思議なものから、脂がのったステーキ、タイヤ、レゴなど、ユニークなお気に入りのものがたくさん集まりました。
次に、杉浦さんに葉や茎のつくり方のコツを教えてもらいました。
見本の想像の植物には葉脈があると思ったら、葉脈に見えていたのは道ばたで見かけたカラスよけネットだったり、穴が開いている葉っぱと思いきやプラスティックのカゴだったり。写真の柄や形、色などを生かして切り取り、貼り付けて立体にしていきます。
さあ、好きな色紙と容器を選んで制作開始です。
杉浦さんは自分のやりたいように自分だけの植物をつくってください!とのことで、自分のペースで制作していきます。
撮った写真の模様を生かして、想像力を使って、手を動かして、いろいろな植物ができていきます。
和気あいあいと活動して、あっという間に制作時間が過ぎました。
完成です!作品をみんなで鑑賞しました。
どれもおもしろい植物です。それぞれのこだわりを聞くのも楽しい時間です!
がんばりました!ダイナミックな植物ができたね。
受講者の方からです。
・手の中でいろんな花や葉ができてきて、楽しかった。頭の中の完成図と違うものができた。
・子どもの想像力はこちらが思いもしないものを作り出すので、とても楽しく過ごせました。
・面白かったです。3歳でも参加できることがわかったのが1番の収穫でした。
楽しくて想像力を刺激する制作時間をつくってくださった杉浦さん、ありがとうございました!
創作プログラム「鍾馗様の小旗を作ろう」を開催しました
11月20日(日)に当館実習室にて創作プログラム「鍾馗様の小旗を作ろう」を開催しました。今回は、当館にて開催中の企画展示「亜欧堂田善展」の関連ワークショップです。講師は、伝統工芸須賀川絵のぼりの吉野屋六代目大野青峯さんです。
まず、大野さんから絵のぼりの成り立ちについてお話がありました。江戸時代に男の子が生まれると、のぼり旗に絵を描きお祝いするようになりました。「須賀川絵のぼり」は白河藩主松平定信の御用絵師亜欧堂田善が、和紙や布地に唐の守り神である鍾馗を描き、庭先に立てたのが始まりで、田善から弟子・安田田騏へ、田騏から吉野屋の初代大野松岳へと継承されて、今に至ります。
お話が終わり、制作の開始です。
はじめに、オリジナルの落款を作ります。自分の名前をそれぞれ考えたデザインで型紙に書いていきます。
型紙から各自がデザインした文字をカッターで切り取っていきます。ここで切り取る際のポイントがあります。型紙の字や図がスポッと抜けないよう、線が曲がるところやぶつかるところは、切り取らないでつなぎとして残すようにします。
落款ができあがったら、鍾馗様の図柄を選びます。
左の鍾馗様は不動、真ん中は四方八方に目を配り、右は動きがあるポーズをとっています。大野さんは、左は長男、真ん中は三男、右は次男へののぼり旗としておすすめするそうです。みなさんは、自分の好きな図柄、お孫さんへのおくりものなど、それぞれ選ばれていました。
さあ、馬毛のハケを使って顔料をすりこんでいきます。
顔料を付けすぎると滲み、逆に足りないとかすみます。加減を調整しながらすりこみます。
仕上がりはどうでしょうか?
第1段階はこれで完了です。鍾馗様の全体図が小旗に付きました。
第2段階は、顔料が付かなかったつなぎの部分(サンプルでは赤い箇所)を、面相筆で描いていきます。
細い線が途切れたつなぎ部分は、繊細な筆づかいが求められるので、サンプルと見比べながらみなさん慎重にじっくりと筆を運んでいました。
同様に、自作の落款にも顔料をすりこみ、つなぎ部分をうめていきます。
みなさん途切れている部分を丁寧につないで仕上げていきました。
最後に、アイロンをして小旗に棒とひもをつけてもらいます。
完成しました!
自分だけのオリジナルの小旗が出来上がりました。
受講者の方からです。
・こんなに本格的にやるとは思っていなかったのでびっくりです。感動です。
・大変良かったです。孫にプレゼントいたします。
・筆でかくのは難しかったけれど、きれいにできあがってよかったです。
お子さんが小さい時に吉野屋さんにのぼりを作ってもらい、毎年端午の節句にのぼり旗を立てている参加者の方がいらっしゃいました。地元に根付く伝統工芸を体験できる機会をつくってくださった大野さん、アシスタントの安齋さんありがとうございました!
創作プログラム 「ドローイング、ドローイング、ドローイング。」楽しかったです!
創作プログラム
「ドローイング、ドローイング、ドローイング。」
講師:美術家・小沢剛氏
日時:11月3日(祝・木)
場所:美術館エントランスホール、庭園
参加者:高校生23名
11月3日、秋晴れの気持ちのいい日、美術家の小沢剛先生をお招きし、23名の高校生とともに、ドローイングをテーマにしたワークショップを開催しました。その様子をご紹介しましょう。
9時半。開館と共に大きなクラフト紙が敷き詰められたエントランスホールに集合。
さて、これからいったい何が始まるのでしょうか。
まずは小沢さんが「ドローイング」って何、そしてこれから何をするのかを簡単に説明して下さいました。「ドローイング」とは画材を手にして紙の上で腕を動かす、その痕跡のこと。今日は二つの方法でドローイングをしていきます。
その前に、緊張をほぐすアイスブレイク。みんなで常設展示室に向かいました。
それぞれの展示室で、「自分だったらどの絵が欲しい?」という小沢さんの問いに10秒で回答。絵の前で、どこが好き、どこが気になったかを発表しながら、少しずつ気持ちをほぐしていきました。
最後の展示室には小沢さんの「ベジタブル・ウェポン」シリーズ8点が展示されています。若い女性が野菜の銃を構えた不思議な写真を前に、どのように作品が制作されたのか、そこに込められた小沢さんの想いをお聞きしました。
鑑賞が終わったところで、エントランスホールに再集合。
いよいよドローイングに取りかかります。最初は約2メートル四方のクラフト紙に墨でドローイング。しかも音楽に耳を傾けながらの描画です。
でも、いきなり大きな紙に描くのは大変。まず小さな紙でエクセサイズです。小沢さんがのこぎりを叩いたり、縄跳びをぶんぶんとまわしたりして音を出し、それを聞きながらA3の画用紙にドローイングをして墨の感じをつかみました。
さあ、本番です。15分程度のオーケストラの演奏を聴きながらクラフト紙にドローイングをしていきました。演奏が終わったところで、一旦手を止め、それぞれの作品について参加者の話を聞きながら小沢さんが丁寧に講評。そして今聞いた音楽が、クラウディオ・アバド指揮ベルリンフィルの演奏によるチャイコフスキーの「1812年」という曲で、1812年のフランス・ナポレオン軍のロシア進軍を撃退するロシア軍の様子を表現したものであることが紹介されました。しかし今年2月のロシアのウクライナ進攻後、演奏するのはふさわしくないという意見もあるいわくつきの曲だそうです。芸術が政治に利用されることがある、そして社会状況によって作品の解釈が大きく変化することを知りました。
次に、自衛隊による同じ曲の演奏が流れました。実際の大砲の音が加わり、印象がかなり異なります。
午前中は二つの演奏をバックグラウンドに、筆に一杯墨を含ませて滲みを用いて描いたり、ドリッピングしたり、あるいは細い筆で線を描いたり、思い思いに耳と手と体を使って大きな紙に描きました。
さて、午後は一転、美術館の庭でパノラマドローイングです。最初は4人ずつ、次に8人ずつ、位置を換えながらグループで円を作り、A4の大きさの画用紙に鉛筆で、それぞれが目の前に見えている風景を描いていきます。それらを円形につなげればパノラマになるのです。
最後は、美術館正面の彫刻、井上武吉作《my sky hole 82-2》の周りに集まって全員で大きな一つの円を作り、庭園、美術館、図書館など周囲の風景をスケッチしました。
それらを一つのパノラマ画にする作業は美術館スタッフの担当。別室でパソコン作業により個々の画像を繋げて1枚の長い紙にプリントアウトし、パノラマに仕上げていきます。
その間、エントランスホールで高校生たちはアートブックの制作に取り掛かりました。午前中、自分が描いた墨ドローイングから好きなところをA3の大きさにトリミングし、切り取ります。8枚切り取り、ストーリーを思い描き、構成を考えて順番を決めていきました。そして最初のエクセサイズで描いたA3のドローイングを表紙にして、糊で貼り合わせていけば、1冊のアートブックが完成です。
大きな紙に描いたものを、小さくトリミングしていくと、イメージの印象が大きく変わるものです。余白を大きく入れてみたり、ある部分にフォーカスしてみると不思議に物語が見えてくることがあります。
それぞれのアートブックができたところで、お互いの作品を鑑賞。自分は誰のどこのページが気に入ったか、好きか、いいところを見つけて発表し、作品を講評しあいました。
そうこうしている間に、パノラマドローイングが出来上がってきました。最後にみんなで作った一つの風景を観賞。
観察、接続、思考、感情、偶然、即興、鉛筆、墨汁、小さな画用紙、身体サイズの紙、そして編集。今日体験したいろいろなドローイングのやり方、そして楽しみ方を振り返りました。
盛りだくさんの一日。スタッフも、高校生たちのパワーに圧倒された熱い一日でした。
それぞれの墨ドローイングを1枚ずつ使って作った共同アートブック、パノラマドローイングは、現在エントランスホールで展示しています。是非ご覧ください。
実は震災後の2012年、小沢さんは同じエントランスホールで《あなたが誰かを好きなように、誰もが誰かを好き》(通称ふとん山)を展示して下さいました。多くの子供たちが遊びに来てくれたのですが、今回の参加者の中にも二人いました。感無量でした。今回のワークショップも参加者の記憶のどこかにとどまり、10年後、20年度、何かのきっかけで思い起こしてもらえれば嬉しいです。小沢さん、本当に有難うございました。
「アートなおはなしかい2022」を開催しました
9月23日(金・祝)、県立図書館さんと「アートなおはなしかい2022」を開催しました。
今回は、当館で開催中の企画展「生誕100年朝倉摂展」の関連イベントでもありました。
はじめに図書館で絵本をよみきかせてもらいました。美術館での作品鑑賞に関連する絵本を選んでいただきました。
1冊目は、『アンジェリーナ はじめてのステージ』(キャサリン・ホラバード 著/ヘレン・クレイグ 絵/おかだよしえ 訳)です。バレエ好きのアンジェリーナとヘンリーが舞台に出演するお話です。2冊目は、『あいうえおうた』(谷川俊太郎 文/降矢なな 絵)です。谷川さんの生み出すことばがリズミカルで耳に心地のよい絵本です。
それから、美術館へ移動して「生誕100年 朝倉 摂展」を鑑賞しました。彫刻家・朝倉文夫さんの娘の朝倉摂さんの回顧展です。絵画、舞台、絵本と多彩に活躍した女性アーティストです。
まず鑑賞したのは、珠玉の挿絵が展示されている絵本のパートにある「てまりのうた」です。
「てまりのうた」は、うさぎ、まり、みかん、雨など絵本に出てくる題材が美しく描かれた挿絵で構成されています。ここでは「うさぎ」の作品を観て、うさぎが画面から前足やしっぽがはみ出しているくらい大きく描かれていることに気付きました。
次に「てんぐのかくれみの」を鑑賞しました。
こちらの作品は、「かくれみの」の部分が光沢あるフィルムでコラージュされています。「この絵の中で、1カ所だけ違う方法でつくられているのはどこかな?」と問いかけると、「もくもくしたけむりの描き方!」「天狗と女の子の着物の赤が違う!」「かくれみのが光っている!」など、子どもたちはいろいろな視点から答えを出してくれました。子どもたちの豊かな感性に拍手です。
そのあとは、お楽しみのよみきかせタイムです。展示室内の特設の絵本コーナーで読んでいただきました。
実際の作品を観てすぐに『てんぐのかくれみの』(岡本良雄 案/朝倉摂 画)を読んでもらいました。彦一が天狗の子どもから透明人間になれるかくれみのをだまし取って、いたずらをしていく展開にハラハラ。みんな集中してお話に聞き入っていました。
そして、原画が展示されている本を紹介していただきました。
『てまりのうた』(与田準一 さく/朝倉摂 え)、『三月ひなのつき』(石井桃子 さく/朝倉摂 え)、『スイッチョねこ』(朝倉摂 絵/大佛次郎 文)の3冊です。『スイッチョねこ』は、ねこが虫を食べちゃうと聞いてみんなびっくり!
本の紹介が終わると再び作品鑑賞へ。舞台美術のパートに移動しました。舞台美術家としても活躍された摂さんが手がけた舞台模型「ハムレット」を鑑賞しました。
図書館でよみきかせてもらった『アンジェリーナ はじめてのステージ』を参考に、模型の中でアンジェリーナやヘンリーがどのようにステージに立つか想像しました。
そして、摂さんと詩人・谷川俊太郎さん、グラフィックデザイナー・粟津潔さんで合作した「衝立」を鑑賞しました。
「この絵からどんな音がするかな?」と子どもたちに聞いてみると・・・。目玉がびっしり描かれたワンピースからはギョロギョロ、包丁からザクザク、瓶からリンリン、電球からピカピカ、釘からトントン、虫からニョロニョロ、カサカサ、目玉からパチパチなどなど。絵からいろいろな音が聴こえてきたようです。
作品鑑賞と絵本のよみきかせの後は、美術館の実習室で工作の時間です。今回は、《スイッチョねこ》の作品から、ガチャガチャスタンプを使ってポストカードをつくりました。
まず、スポンジを輪ゴムと毛糸でまとめてガチャ玉の中に入れてスタンプを作ります。
子どもたちの小さな手でひとつにまとめるのは大変そうでしたが、みんな頑張りました。
次に、ガチャガチャスタンプとアクリル絵の具を使って、美術館スタッフお手製のポストカードにスタンプします!
みんなポンポンポンとスタンプを押して、素敵なポストカードが出来上がりました!
本好きな子どもたちが集まったので、貸し出し可能な摂さんの絵本を借りに、図書館へ戻っていきました。きっと絵本を読んだら、みんなで一緒に鑑賞した摂さんの作品を思い出すね!ガチャガチャスタンプも再利用できるので、また家で工作してみてね!
ご参加くださったみなさま、図書館スタッフのみなさま、ありがとうございました!
創作プログラム「うるしをみがいて作るピカピカ猫のブローチ」を開催しました
7月30日(土)に当館実習室にて創作プログラム「うるしをみがいて作るピカピカ猫のブローチを午前と午後の部で開催しました。今回は、当館にて開催中の特集展示「みんな大好き!福島ねこづくし展」の関連ワークショップです。講師は、漆芸家の平井岳さんと綾子さんです。
岳さんは、制作に加えて漆掻きの仕事もしています。国産の漆が貴重で手に入りにくくなっていることから、自分で漆を採取するようになったそうです。映像を見ながら漆掻きの現場について解説していただきました。
実際に使っている漆掻きの道具をみせてもらいました。
数日前に山に入って漆を掻いた岳さんの道具です。刃の形状が独特で、掻く道具はずっと昔から変わっていない伝統的なものです。漆掻きに携わっている人は岳さんを含めて福島県ではお二方だけ。自然と向き合いながら、木から樹液を1滴1滴採取するという話をみなさん興味深く聞きました。
漆のお話を聞いた後は、猫のブローチをつくっていきます。まずは、綾子さんの実演です。
作業工程がわかったところで、制作開始です。岳さん、綾子さんがつくった漆が塗られた猫型のプレートをみがいていきます。塗ってある色、塗り方もランダムなので、どんな色や模様がでてくるかはみがいてみてのお楽しみです!
みがくのに3種類の研磨剤を使います。1番目に使うペースト状の研磨剤、2番目、3番目のクリーム状の研磨材です。1番目はこの中では粒子が粗いですが、粗いといっても目には見えない粒子の大きさです。2番目、3番目に進むにつれて粒子が細かくなっていきます。粒子を細かくしていくことでツヤを出していきます。また、どのくらい模様を出すかはそれぞれの好みで、銀色の表面を残してもOKです。いい感じになったと思えば、次の研磨剤に進みます。
細かい所は綿棒を使ってみがいていきます。
ヤスリも使います。日常生活では使うことのない目がとても細かいヤスリで、光沢を出していきます。銀色部分をこするとメタリック感が出ます。
3番目の研磨剤の段階にいっても、みがきが足りないと思ったら、1、2番目の研磨剤にもどってみがいても大丈夫です。いったりきたりしながら自分好みのピカピカ具合までみがいていきます。
ブローチの表面をエタノールで拭き取ります。岳さんにピンを付けてもらって完成です!
岳さんと綾子さんから「漆は年月が経つと強くて固くなる不思議な塗料」「漆は経年で色が明るくなり発色がよくなるので、猫ブローチは使ううちに明るくなっていきます」「お手入れはたまに指でみがいてみてください」と教えていただきました。
最後に出来上がったばかりの「ピカピカ猫ブローチ」を付けて、特集展示「みんな大好き!福島ねこづくし展」を鑑賞しました。今回は、制作も鑑賞も楽しむプログラムでした。
受講者の声です。
・うるしが身近に感じられるワークショップでした。
・1人1人ちがう模様でかわいかったです。
・うるしのことがわかってよかったです。国産うるしの伝統を感じました。
・磨くのに没頭できたので、気持ちもすっきりしました。
暑い中参加してくださったみなさまありがとうございました!漆に親しむ機会を提供してくださった岳さん、綾子さん、ありがとうございました!
創作プログラム「お気に入りの絵を彫ろう 漆の沈金体験」を開催しました
7月10日(日)に当館実習室にて創作プログラム「お気に入りの絵を彫ろう 漆の沈金体験」を午前と午後の部で開催しました。講師は、今年の2~3月にかけて当館にて開催した、福島県ゆかりの若手アーティストを紹介する企画展「福島アートアニュアル2022」に出品いただいた漆芸家の吾子可苗さんです。
はじめに作業工程を説明していただきました。
次に実演です。
「面にしたい場合は線を交差させたり、何本も線を彫る」「線を太くしたい場合は数本線を引いていく」など、わかりやすく教えていただきました。
さあ、各自で制作の時間です。
まずは、皿の上にチャコペーパーをおいて、各自用意したイラストをのせて、鉛筆でなぞっていきます。
図案が漆の皿に写りました。
お皿に写った線を加工した太い釘でなぞり、浅く彫っていきます。釘を立てて持ち、ギリギリと音がすればうまく彫れている証拠です。
「漢字を彫るのが難しい!」との声に、「最初は大まかなところを彫って、釘に慣れてきたら細かいところに彫り進んでいきましょう」と吾子さん。
彫り終わると、表面をきれいに拭き取ります。そして、漆を模様にすり込んでいきます。漆は触れるとかぶれることもあるのですが、挑戦した人は吾子さんの丁寧な指示のもと、気をつけて漆を擦り込みました。
表面についた漆を拭き取って、いよいよ本金を、真綿をつかって模様に蒔き付けます。丸くふわふわふわと蒔き付けていくのがポイントです。
線が金色で浮かび上がると、その美しさにみなさん気持ちが高まります!
お皿の表面についた金粉をきれいに拭き取ったら、完成です。1週間漆が乾くまで、濡れたティッシュを入れた袋で保存します。袋は密閉せずに口を3㎝ほど開けておきます。
受講者の声です。
・初めて漆をつかって模様をつけたので、楽しかった。工夫して彫ったりするのも楽しかった。
・非常に素敵な経験ができました。金粉をつけた時の華やかな瞬間は素晴らしかったです。
・大人がするような沈金の体験をさせて頂けるのがありがたかったです。
ご参加いただいた受講者のみなさま、1週間経ちましたね。お皿にカステラを載せたい、飾りたい、愛でたいとそれぞれ使い方をお考えでしたが、使うのが楽しみですね!
今回のワークショップは、アートアニュアルにあわせた2月開催の予定が、新型コロナウイルスの影響で延期となりました。受講者のみなさまが待ち望んでいたので、無事に開催することができうれしい限りでした。お申し込みいただいたみなさま、吾子さんありがとうございました!
創作プログラム「こけしの源流を想像して、こけしに絵を描こう」を開催しました
6月26日(日)に当館実習室で創作プログラム「こけしの源流を想像して、こけしに絵を描こう」を、午前と午後の部で開催しました。今回は、当館にて開催中の企画展「東北へのまなざし1930-1945」の関連ワークショップです。展覧会のポスター、チラシのデザインを担当された軸原ヨウスケさん(デザイナー)が講師です。
はじめに、伝統こけしの系統の特徴を説明していただきました。
続いて、熟練の伝統こけし工人さんの制作工程の映像を見せていただき、制作意欲が高まっていきます。
いよいよ「幼少期の自分を投影したこけしをつくる」に挑戦です。
まずは、小さい頃の自分を思い出しながら、シートに自分の顔を筆で描く練習です。墨汁と食用の染料(赤・青・黄・緑)を水で溶いたものを使います。
軸原さんにいただいたアドバイスは、「筆に慣れること」「気持ちよくすすっと描ける線、柄を考案して描いていく」でした。
次はロクロの使い方の実演です。ロクロを使ってこけしの髪や模様を描くことができます。
みなさんもロクロを使って模様を入れていきます!
一発勝負なので、筆を入れる受講者の方も手回しロクロを回す軸原さん、美術館スタッフも集中しています。
さらに顔や髪、胴模様を自分好みに仕上げていきます。
最後に、みなさんでこけしの記念撮影をしました!どのこけしもつくった人の“その人らしさ”が表れています。
軸原さんと伝統こけし工人の早坂さんです。
震災で落ち込んでいた時に軸原さんの本(残念ながら絶版)をきっかけにこけしに魅了され癒やされた「こけ女」の方、おじいさまが土湯のこけし工人だった方、現在も鳴子でご活躍されている工人さんなど、こけしと密接な関わりがある方々が軸原さんとこけしに引き寄せられるように集まりました。こけしの奥深さを感じた一日でした。
受講者の方からの感想です。
・想像した以上に筆づかいや絵付けは難しかったが、作品を作る過程が楽しかった。ロクロで色をつけることもできてよかった。
・とてもたのしかったです!!
・工人の方のすごさを体感できました。
ご参加くださったみなさま、ありがとうございました。小さなこけしに大きな魅力がつまっていることを教えてくださった軸原さん、本当にありがとうございました。
もののけワークショップを開催しました
5月8日(日)に当館実習室で創作プログラム「もののけワークショップ」を開催しました。講師は画家の香川大介さんです。
今回は親子向けの講座です。香川さんがつくった素焼きのオブジェに絵付けをし、自分だけの“もののけ”をつくります。
まずは、オブジェを選びます。
ひとつとして同じ形のない約30体のオブジェから、自分のお気に入りを選ぶのは楽しい時間です。
選んだら、絵付けの開始です。
「制作時は、集中しないで周りと話しながら、なるべく考えずに手を動かしてほしい」「みなさんに話しかけます、なんならひとりで勝手にラジオになっています」と、香川さん。
考えないで手を動かすという作品づくりに、子どもたちはすいすいと手を動かし、色を付けていきました。大人も筆を動かし始めると夢中モードに。香川さんと話しながらも制作の手は止めず、親子でそれぞれの表現を楽しんでいました。
最後にみなさんと出来上がった作品を鑑賞しました。
“もののけ”集合!
自分だけの“もののけ”が出来上がりました。
素敵なコメントをいただきました。
・ぬるのがたのしかった!
・0から何かを考えるのは難しいと思いますが、今回のような素材をもとにつくり上げていくのは取り組みやすく刺激的でした!
・親子それぞれ作るのが新鮮でした。自分で作るのも楽しいものですね。
・普段できないことを体験し、まわりのみんなの作品に触れ、ますます表現に興味がでたと思います。
ご参加いただいたみなさま、ありがとうございました。そして、楽しい時間を提供してくださった香川さん、本当にありがとうございました!
創作プログラム「写真のような鉛筆デッサン」を開催しました
4月16日土曜日、当館実習室で創作プログラム「写真のような鉛筆デッサン-自画像を描く-」を開催しました。講師は当館学芸員の大北です。
今回の講座では、形を取ることを省くために写真をトレースして描きます。
形のくるいが無いことで自分の扱えるトーンの幅を増やすことに集中できます。
使用する画材は鉛筆3種類(3B・HB・2H)と、ねりゴム、綿棒です。
2Hの鉛筆は固いので、芯を長めに出してねかせて使います。綿棒は擦筆の代わりです。
左半分は写真をトレースして輪郭やあたりをつけた状態。
右半分は3種類の鉛筆、ねりゴム、綿棒を使って描きました。
まずは、白黒コピーした写真の裏面に、鉛筆の芯の粉末をティッシュペーパーですりこみ、トレースするための準備をします。
次に、色ペンを持ってトレース開始。
目や鼻などの輪郭や明暗が分かれているところをなぞってあたりをつけます。
トレースが終わると、鉛筆で色を入れていきます。固さの違う3種類を使い分けます。
一番暗い色を最初に置くのがポイントで、それを基準にすれば間のトーンをつくりやすくなります。
午前はここで終了。
午後は、立体感を出すべく、ひたすら描きます。受講者の方それぞれ描き方が違うので、その特徴を活かして、個別にアドバイスをしていきます。
苦しい修行のようなデッサンですが、みなさん根気強く取り組み、終盤はそれぞれが何かをつかみ、鉛筆さばきが軽やかになっていきました。
もっと伝えたいことがあったのですが講座終了の時間です。
みなさん扱えるトーンの幅が増えたと思いますので、その感覚を今後の制作に生かしていただければ幸いです。
「今日は楽しかった」「また絵を描く講座を開いてください」「これからもデッサンがんばります!」などのお声をいただきました。嬉しいです。
ご参加いただいたみなさま、ありがとうございました。