福島県立美術館ブログ
スライドトーク開催!
講師は国立西洋美術館主任研究員の川瀬佑介氏。今回の展覧会の企画者のおひとりです。
個々の作品の見どころについて大変興味深いお話をお聞きしました。
今回特に印象的だったのが、アンリ・マルタンの《習作》という作品が、いったい何の下絵だったのか、というお話です。
この問題は長らく謎とされていましたが、川瀬さんは様々な手がかりをもとに、公の場で初めて(!)その謎を解き明かしてくれました。
研究業績の泥棒になると困るので、ここでは詳しく述べられませんが、
最先端のご研究を平易な言葉で分かりやすくご紹介いただき、たいへん有意義な機会となりました。
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「ミューズ:まなざしの先の女性たち」展は7月2日まで
関連事業
〇ギャラリートーク 6月10日 14:00~ 場所:企画展示室(要観覧券)
〇講演会「アルカディアの女性たち:西洋美術のもうひとつの側面」
講師:高橋建一氏(和歌山大学准教授・いわき市出身)
6月24日 14:00~ 場所:講堂(聴講無料)
企画展 出品作品から②
ベルナルド・カヴァッリーノ《ヘラクレスとオンファレ》1640年頃 国立西洋美術館所蔵
左手前の男性は、ギリシャ神話に登場するヘラクレス、右の女性は恋人のオンファレ。
ヘラクレスはその怪力によって数々の困難を切り抜けた英雄ですが、
恋人を前に、少し様子がおかしいようです。
彼はこちらに背を向け、どこか頼りなげです。そしてよく目を凝らしてみてみると、
耳元には赤いイヤリングを付け、右手に糸つむぎの道具を持っているのが分かります。
一方、オンファレは堂々とこちらを見つめ、手元にこん棒を置き、
ライオンの毛皮をひざに敷いています。
つまりここでは、男女の持ち物や関係性があべこべになっています。
いわゆる「かかあ天下」に似た主題を描いたものと考えてもよいでしょう。
作者のベルナルド・カヴァッリーノは17世紀ナポリで活躍した画家です。
17世紀初頭のナポリには、光と闇の表現で一世を風靡(ふうび)したカラヴァッジョという画家が一時期滞在しました。
カラヴァッジョはローマで殺人をおかし、警察の手を逃れて南に逃亡するのですが、
その途中でナポリに立寄り、そこで活動していた画家たちに強い影響を与えました。
この作品では、光と影のコントラスとが印象的ですが、ここにカラヴァッジョからの影響を見ることができます。
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「ミューズ:まなざしの先の女性たち」展は7月2日まで
会期中、毎日数量限定でポストカードをプレゼント中!
週末は、展覧会出品作品のポストカードももらえるチャンス。
詳しくはコチラ
講演会開催
講師は国立西洋美術館副館長兼学芸課長の村上博哉氏
国立西洋美術館のコレクションの母体は、実業家松方幸次郎(1865‐1950)の収集した美術品です。彼の所蔵作品の中には、
なんと(!)現在パリ、オルセー美術館に所蔵されるゴッホの《アルルの寝室》もあったんです。
彼がヨーロッパで収集した美術品は、一時ロンドンに保管されていましたが、その後倉庫の火災により、ほとんど消失してしまいました。
その絵画リストは昨年発見され、ニュースにもなりましたね。
松方は収集した作品をみんなが楽しめるよう、美術館の建設を計画していましたが、
その意思を引き継ぐ形で国立西洋美術館は建てられました。
今回のミューズ展でも松方コレクションがいくつか出品されています。
松方の夢は、福島でも実を結びました!
展覧会は7月2日まで。
6月3日には、国立西洋美術館主任研究員の川瀬佑介氏をお迎えして、
スライドトーク(講堂にて展覧会の見どころ解説)を行います。
日時:6月3日(土) 14:00~
場所:美術館講堂
週末はプレゼント企画も実施予定です。
詳しくはコチラ
皆さんのお来館をお待ちしております。
常設展Ⅰご紹介
今日はその展示風景の一部をご紹介いたします。
展示室を入ってすぐの様子です。
両側に並んでいるのは工芸作品です。福島にゆかりのある作家達の手によるもので、大小さまざまな作品を展示しています。工芸作品を展示するのは久しぶりなので、この機会に是非ご覧になっていただきたいです。
また、昨日展示替えをおこない、最後の部屋がすべて後期展示になりました。今期は、谷中安規と斎藤清の版画を扱っています。
谷中作品は、ご覧の通り小さいですが、幻想的な雰囲気で満ちており、作品の世界はとても広大です。
常設展Ⅰ期は、7月9日(日)までです。
みなさまのお越しをお待ちしております!
企画展ギャラリートーク
西洋美術と聞くと、聖書やギリシャ神話など、
あらかじめ物語の内容を知らないといけないという方もいらっしゃると思います。
今回のギャラリートークでは、そういった話も盛り込みながら、
知識なしでも作品を楽しめるお話を心掛けました。
たとえば聖母マリアとイエスの絵は、我が子をいとしむ母親の絵です。
そしてイエスが十字架にかけられて死んでしまったことを知っていれば、
悲しみにくれるマリアの絵は、最愛の息子を失った母の絵だとわかります。
カルロ・ドルチ《悲しみの聖母》1655年 国立西洋美術館所蔵
母親がいつもどんな気持ちで我が子を想っているのか、想像することができるのです。
この展覧会は、お母さんに対して、ついつい素直になれない人に見て頂きたいと思っています。
そういえば、今日は母の日です。
みなさん、お母さんにありがとうは言いましたか??
館長講座第1回「モディリアーニ」
本年度の館長講座「~パリの異邦人~ エコール・ド・パリの芸術家たち」が始まりました。
今からおよそ100年前のパリは、20世紀前衛美術運動の中心地といえる場所でした。セーヌ河左岸のモンパルナスに諸外国から多くの若い画家たちが移り住み、芸術に青春を捧げました。彼らはエコール・ド・パリと命名され、独創的な作品を数多く残しました。彼らの中から9人の芸術家を選出し、全6回の講座に分けてご紹介いたします。
第一回目は、「モディリアーニ」です。
当時の雰囲気を伝えるパリの写真もスライドでお見せしつつ、35歳という若さでこの世を去った作家の生涯と、彼が残した作品の魅力についてお話しました。
次回は、「シャガール」です。詳細は以下の通りです。
日時:7月8日(土)
時間:10:30~12:00
場所:美術館講義室(聴講無料)
みなさんのご参加をお待ちしております!
「親子で作ろう! シルバーアクセサリー」開催!
様々な宝飾作品が展示されることにちなんで開催いたしました。
竹田さんからは、純銀粘土のこと・制作の流れと注意・作品例などについて説明を頂きました。
全体のザックリとした流れは、デザインを考える→粘土成形→乾燥→研磨→焼成→研磨で完成です。
デザイン考え中。指輪にするか?ネックレスにするか?
でも粘土は意外に扱いが難しいのです。(慣れるまでは)受講された皆さん、悪戦苦闘です。
今回は、特別にアシスタントの方が4人も来て下さいました。(心強い)
成形が終わり乾燥(約20分)の後は研磨の作業に入ります。
粘土は乾燥の後はカチカチになりますが、力を入れて握るとパリンと割れてしまうので、
慎重に研磨しなくてはなりません。
繊細な作業が続きます・・・でも皆さん楽しそうです。
次は焼成です。本日は美術館の七宝焼き用の電気炉を使います。
800度〜840度ぐらいで、約20分から30分ぐらい焼きます。
焼くと1割2割小さくなるので、それを見込んで粘土を成形するのがこつだそうです。
焼成されると、粘土は純銀(金属)になります。(不思議ですねぇ)
後はひたすらヤスリがけ。スポンジ研磨剤→磨きベラ→シルバークロスで磨きます。
磨くと磨くだけ輝きだします!(「おおっ!」と皆さんから歓声があがります)
そしていよいよ完成です!
羽の形をしたネックレス。
模様をあしらった指輪。
かわいい猫と鳥のアクセサリー。
羽の形をしたキーホルダーに、おしゃれな指輪。
ばらの花の指輪などなど。
キラキラ輝く素敵な作品が完成して・・・。
みなさんの笑顔もキラキラ輝きました!
GWの素敵な思い出をお持ち帰りです。
おしまい。
美術館では年間を通じて、大人の方、お子さん、ご家族の方々が気軽に参加頂ける
楽しい創作プログラムをたくさん実施しております。
情報は、当ホームページ、美術館ニュース、展覧会チラシまたはポスターなどをご覧ください。
ご応募は、美術館総合受付、電話、ホームページで受付しております。
ぜひ、展覧会とあわせて美術館創作プログラムをお楽しみください!
皆さまのお越しをお待ちしております!
企画展 出品作品から①
「国立西洋美術館所蔵 ミューズ:まなざしの先の女性たち」展を開催しています。
東京・上野の国立西洋美術館は、フランスの建築家ル・コルビュジエが
建物の一部を設計し、昨年世界遺産に登録されたことで話題になりましたね。
この展覧会は、女性たちのを描いた作品をテーマごとに展示したものです。
その中から今日は一点ご紹介したいと思います。
カミーユ・ピサロ《立ち話》1881年頃 国立西洋美術館所蔵
カミ―ユ・ピサロは印象派を代表するフランスの画家です。
当館には《エラニーの菜園》が所蔵されているので、
ご存知の方も多いかと思います。
《立ち話》は、家事の合間におしゃべりをする二人の女性が描かれています。
彼女たちは何を話しているのでしょうか。
左の女性はどこか疲れているようで「旦那が休みの日には、
昼ごはんもつくらなくちゃいけないから、やんなっちゃうわ」と
愚痴をこぼしているのかもしれません。いろいろと想像が膨らみます。
この作品は点を重ねて描かれています。これは「点描」という技法です。
作品を近くで見ると、点の密度が異なることに気がつくと思います。
たとえば、左の女性の顔は細かな点で構成されています。
右の女性の下半身は粗い点で描かれ、足がどこにあるのかさえよくわかりません。
ピサロは点描の密度を変えることによって、
スナップショット写真のような効果を追求し、画面に臨場感を与えているのです。
是非実際の作品を前にして、その効果を体感してみてください。
企画展が始まりました!
前日には開会式と内覧会が開かれました。
この展覧会は、東京・上野の国立西洋美術館の所蔵品で構成されています。
今回はその珠玉のコレクションから、女性をテーマに作品を選びました。
西洋美術には、さまざまな女性の姿が表現されてきました。
たとえば、かわいらしい恋人として、つつましやかな妻として、愛情あふれる母として、、、
そうした彼女たちの姿を7つのテーマに分け、展示しています。
ほかにも、当時まだまだ珍しかった女性作家たちの描いた作品も展示しています。
国立西洋美術館に足を運んだことのある方にも、新鮮な気持ちで楽しんでもらえる内容になっています。
もちろん出品されているのは、西洋美術を代表する作家たちばかりです。
たとえば、ドイツ・ルネサンスを代表するデューラや、優美な色彩が目を引く16世紀ヴェネツィアの画家ヴェロネーゼ。
そのほかにもピサロやモネやルノワールといった印象派の画家たちや、ロートレック、ミュシャなどの世紀末の作家たち、
20世紀絵画ではピカソやマティスの版画作品が出品されています。
絵画や版画の他にも、ロダンの彫刻や貴重な指輪も展示されています。
是非この機会に県立美術館に足をお運びください。
「コラージュでつくるブックカバー」開催しました
3月12日(日)、当館実習室にて「コラージュでつくるブックカバー」を開催しました。
講師は、キャッサバコラージュデザインの佐藤洋美さんです。
ハンドメイドの時計である「Time lag」の制作、HPやチラシなどのグラフィックデザインなど様々なお仕事をされています。
今回は、紙の表情を知りながら、包装紙や古い雑誌を使ってブックカバーをつくります。
まずは台紙となる紙が一人1枚ずつ配られます。
参加者のみなさんには事前にブックカバーをかけたい本を持参してもらっていました。
持ってきた本のサイズに合わせて、紙を折ります。折り目を外側にすると、しおりを収納できるポケットにもなります。
次に洋美さんが準備してくださった様々な種類の紙から、ブックカバーに使いたい紙を自由に選びます。
みなさん使いたい紙の質感や色の感じ、模様などの組み合わせを考えながら選んでいました。
紙を選び終えると、洋美さんからのアドバイスを受けながら、はさみで切り抜いたり、折ったり、くしゃくしゃにしてみたり、破ってみたり・・・と、質感を楽しみながら配置を考えました。
組み合わせができたら、のりで丁寧に台紙に貼っていきます。
完成後、みなさんの作品をひとつのテーブルにのせ、お互いの作品を楽しみました。
紙を折って立体的にしたり
ブックカバーの内側にしおりを収納するポケットを作ってみたり・・・
みなさん様々な工夫を凝らして制作に取り組んでいました。
今回のワークショップには、「色んな肌触りを楽しめるブックカバーで、読書の時間がより心地よいものになりますように。」という洋美さんの想いが込められています。
参加者のみなさんそれぞれにとって、読書をする度にあたたかい気持ちになるようなブックカバーが完成したのではないかと思います。
洋美さん、ご参加いただいたみなさま、ありがとうございました!