福島県立美術館ブログ
コレクション展Ⅳ
美術館では本日より2階常設展示室にてコレクション展Ⅳが始まりました。
その内容について、各展示室ごとに簡単にご紹介いたします。
まずは展示室Aから。今回は現代の日本画を展示しています。
重厚で力強い作品たちです。
展示室Bでは抽象絵画を展示しています。
また、新収蔵作品についてもご紹介しています。
展示室Cは海外の作品。
ベン・シャーンのポスターや、ラッキードラゴンなど。その発する問いかけに考えさせられます。
また、いつもお問い合わせをたくさんいただくワイエスの作品も。
ルオーの作品も展示しています。
最後の展示室Dでは版画を展示しています。
斎藤清は外国シリーズ。
山中現は《時の器》シリーズ全作品を展示しています。
版画は半期で展示替えを行い、後期は安部直人の作品を展示予定です。
1階企画展示室では、学校連携共同ワークショップ参加校作品展を開催中です。
また、12日からはホールにて毎年恒例の年賀状展が始まります。
本年も美術館をどうぞよろしくお願いいたします。
親と子の美術教室「クリスマスを彩るどうぶつライトをつくろう!」
2016年、12月11日(日)、当館実習室にて、「クリスマスを彩るどうぶつライトをつくろう!」を開催しました。
講師は、光のアトリエPAPERMOON主宰の冬野朋子先生です。
今回は、好きな動物のかたちのフットライト(足下灯)を親子で一緒に作ります。
先生から自己紹介などのあと、まずはどんな動物にするか決めます。
今回は事前の準備として、子ども達につくりたい動物のイラストを描いてきてもらいました。丸い形にした針金を基本形として、冬野先生と相談しながら、あかりにする動物のかたちを決めていきます。
次に、イラストを描いた紙に合わせて、針金を切ったり、曲げていきました。これは少し力がいる作業です。ハンダづけするためののりしろも考えつつ、ペンチやパイプを使いながら、みなさん丁寧に曲げていました。
針金ができたらいよいよ接着!
まず冬野先生からハンダごての使い方や、扱うときの注意点について説明がありました。
針金をつける手順を、実際にやってみせてもらいます。
次は自分たちで挑戦!お母さんやお父さんと協力しながら、針金をハンダづけしていきます。みんな先生の説明をしっかり聞いていたので、上手にできました。
針金の枠をたくさん入れる子もいて、少し大変そうでしたが、みんな集中して一生懸命取り組み、それぞれ自分が考えた動物形の針金の枠が完成しました。
できた枠をきれいに洗い、今度は和紙を貼る作業です。
まず、白い和紙をくしゃくしゃにして広げます。
次に針金の枠の片面にボンドを塗り、先ほどの白い和紙を貼り付けました。
ボンドが乾いたら、はさみで針金より少し大きめに和紙を切っていきます。
切り終わると、こんどはその上に自由にカラフルな和紙を貼り付けていきます。
色ごとに並べられた和紙の山から、自分の好きな和紙をいくつか選びました。
選んだ和紙を、自分がつくりたいイメージに合わせてちぎりながら白い和紙の上に貼り付けていきます。
子ども達はどのような感じに透けて見えるのか、色が重なるのかを見るために、前に置いてあるライトにかざして何度も確認していました。
黄色一色でも、同じ色の和紙を使うのではなく、濃い黄色やオレンジに近い黄色など、様々な黄色を組み合わせて重ねることによって、光を通して美しいグラデーションが生まれます。
世界にひとつだけのフットライトが完成しました!
最後は点灯式。部屋を暗くして、ひとりひとりの作品をライトに付け、みんなで楽しみます。
寒い冬を彩る、あたたかく素敵なフットライトが完成しました。
おうちであかりを灯すたびに、一緒につくった時のことを思いだしてもらえたらいいなと思います。
冬野先生、参加してくださったみなさま、ありがとうございました!!
「アートなおはなしかい」開催しました!
12月3日(土)、おとなりの図書館さんと一緒に「アートなおはなしかい」を開催しました。
今回のテーマは、来年の干支である「とり」です。
まずは図書館の研修室で、「とり」に関連する素敵な絵本のよみきかせをしてもらいました。
1、『にわとりとたまご』 作: イエラ・マリ エンゾ・マリ
にわとりとたまごが変化していく様子が絵だけで表現された、美しい絵本でした。
2、『ロージーのおさんぽ』 作:パット・ハッチンス 訳:渡辺茂男
ある日、めんどりのロージーがおさんぽに出かけます。背後にはロージーを狙う動物がいますが…?黄色や赤、だいだいなどの同系色でまとめられ、黒く細い線で描きこまれた絵にひきこまれます。
3、『十二支のはじまり』 作:岩崎京子 絵:二俣英五郎
「ね、うし、とら、う、たつ、み…」みんなが知っている十二支。
この動物達の順番はどの様に決められたのか知ることができる絵本です。
4、『でんごんでーす』 文:マック・バーネット 絵:ジェン・カラーチー 訳:林木林
お母さん鳥が、小さなピーターへ伝言を送ります。いろんな種類の鳥たちが次々と伝言していきます。果たしてピーターにお母さんからのメッセージはきちんと伝わるのでしょうか?鳥たちによる愉快な伝言ゲームが描かれた、楽しい作品でした。
5、『しまふくろうのみずうみ』 作・絵: 手島圭三郎
ある湖のほとりにすむ、しまふくろうの親子のお話。大きく翼をひろげて魚をつかまえるシーンは、とても迫力があります。
さて、おはなしかいの後は秘密の抜け道(連絡通路)を通って美術館へ。
美術館では、2階の常設展示室で作品を一緒に鑑賞していきました。
まずは展示室入口すぐの作品、《雪に埋もれつつ正月はゆく》(1919年)
作者は三島町出身の画家、酒井三良(1897‐1969)。この作品では、囲炉裏を囲む家族の様子が描かれています。画面上部には会津の小正月行事のひとつである「だんごさし」が描かれており、「学校でやったことがある」と話してくれた子もいました。
みんなで作品の真ん中に集まり、低い姿勢から作品をみてみます。そうしてみると、あたたかい囲炉裏を囲んでいる家族の一員になったような、そんな気持ちにもなってきます。
次に紹介したのは、佐藤忠良(1912-2011)作、《ジャコビン》(1977年)。
これは絵ではなく、立体の作品です。ケースのまわりをぐるりと1周してみます。
ジャコビンとは鳩の一種で、首の周りがふわふわとしています。今期の展示作品の中で唯一はっきりと「鳥」がモチーフになっている作品でした。
最後に紹介したのは、河野コレクションのひとつである高橋忠弥(1912-2001)の作品です。
まずはタイトルを言わず、なにが描かれているように見えるか聞いてみました。
はっきりとはなにが描かれているのか分からない絵に、みんな困り顔です。
この作品には《花・鳥・ランプ》(1950年)というタイトルがついています。
子どもたちと「どこの部分が鳥に見えるかな?」と絵をもう一度みて考えてみます。
「右側の大きな丸いところが目に見える」
「ここが胴体で、ここが羽に見える」などと、絵を指さしながら、お話してくれました。
現在の展示が始まってから、子どもたちや大人の方と、何度か≪花・鳥・ランプ≫を一緒に見る機会がありましたが、みんなそれぞれ異なる部分に鳥の姿を見つけるので、毎回色々な発見があります。
少し急ぎ気味に展示室をまわってしまいましたが、「これなに?」「これ不思議」などと、子どもたちは展示されている作品に対して、様々な反応をしてくれました。またゆっくりと作品に会いに来てほしいです。
最後は工作の時間です。図書館の研修室に戻り、ステンシルでカラフルな鳥を描いていきます。
まずははがきサイズの紙にやってみよう!
自分の気に入った鳥の型をひとつ選び、紙の上に置きます。マスキングテープでずれないようにしっかりととめます。
スポンジに絵の具をつけて、トントンと紙に色をのせていきます。
ふちの方までしっかりと。何色か重ねてカラフルな鳥をつくっている子もいました。
ステンシルが終わったら、今度は文字や絵を描きこんでみよう!背景に山や空を描いたり、枝や卵を描いてみたり…。
みんな一枚一枚丁寧に描き、素敵なはがきが完成しました。はがきサイズなので、年賀状にも使うことができます。
今度はもっと大きなステンシルに挑戦!ロール紙を準備しました。
真ん中には「HAPPY NEW YEAR!! 2017」
その周りに、カラフルな鳥をどんどんステンシルで写していきました。
みんな手を絵の具だらけにしながら、制作に取り組んでくれました。(作品は展示の時にご紹介したいと思います。)
ご参加いただいたみなさま、ありがとうございました!
美術館では、毎年「美術館への年賀状」展を開催しています。小学生から高校生による手づくりの年賀状を募集し、届いた年賀状全てを展示しています。
今回大きな紙にみんなでつくった作品は、2017年の年賀状展会期中、エントランスホールに展示します。
会期は2017年1月12日(木)~1月31日(火)までです。
子ども達の作品を見に、ぜひ遊びにいらしてください。
ギャラリートーク
今回は、広重展担当の紺野学芸員です!
これを楽しみに待っていたお客様もたくさんいらっしゃいました。
紺野学芸員によれば、広重の視線を作品を通して追体験できるのが楽しいとのこと。
たとえば、《名所江戸百景 深川洲崎十万坪》では、大空を飛ぶ鷲の視線から絵を見ますが、これは、広重が火消しの仕事で高い火の見櫓に登ったことがあるからだそうです。なるほど!
(上の写真は《六十余州名所図会 阿波鳴門の風波》ですネ)
身振り手振りで約一時間、あっという間にギャラリートークが終わりましたが、さらに質問のある方もいて、約30分の質問ぜめ!
熱心なお客様がとても多く、改めて広重人気のすさまじさを実感した次第です。
会期もあとわずか。もう一度作品をじっくり見ると、また新たな発見があるかも!
紺野さん、お疲れさまでした。
聞き終わったお客様の晴れ晴れした表情がとても印象的でした。
HY
広重グッズ
気になるのは…
どれを買うかで迷っちゃう、特設ショップの広重グッズ。
以前もちらっとご紹介しましたが、だんだん売り切れ商品も出てきているようです。
ほしい商品はお早めに、ということで、とうとう念願の広重グッズをGET!
左から一筆箋(国芳もの、¥432)、トートバッグ(オリジナル商品、¥2,376)、手前のカード立て(¥1,296)、図録(公式図録、¥2,800)、そして浮世絵キューブ(¥1,296)。
複製版画などの高額商品はクレジットカード決済もできるそうです。
特設ショップならではのサービスですね。
やっぱり絵はがきも買おうかな…。
HY
広重展一万人&展示替え&地震!
11/21 休館日に展示替えをしました。今回は通期展示の作品4点と資料等をのぞき、作品が総入れ替え!
それから、一部のお客様から「パネル解説低すぎ」「展示室が暗い」という声がありましたので。照度はかえずに、ライトの角度をすこし上向きにして、部屋を明るく見えるようにしました!
パネルも若干上めにしましたので、前期より見やすくなったかもしれません。
ところが!
翌朝地震がありました。広重展は何も異常はありませんでしたが、福島市は震度4。
(もっと大きい感じがしましたよね)
2階常設展の彫刻をのせた免震台が作動しました。
こうしたことは、ないにこしたことはありませんが、実際に作動するところを見たのは今回が初めて(東日本大震災の時は免震台が設置されてなかった)。
もうこれ以上大きな地震はないといいなあ。
そうこうしているうちに、11/25には広重ビビッド展の入場者が1万人をこえました。折り返しをすぎて、平日でも混み合う時間帯が増えています。
お天気の悪い日の方が狙い目だったりして。
お天気が悪くても、熱心に鑑賞くださるお客様が思いのほか多くいらっしゃるのには本当に頭が下がります。
HY
コレクション展Ⅲご紹介 その3
まずは河野保雄コレクション。
福島市の実業家・故河野保雄氏が蒐集されたコレクションから、洋画を中心に展示しています。
小ぶりながらどれも宝石のようなきらめきを放つ作品たちです。
石原コレクションはⅡ期から内容を変えて展示しています。
ロダンなどの彫刻のほか、小磯良平の版画や佐藤忠良の素描など。
1階の企画展示室で開催中の広重ビビッド展は今週から後期展示が始まり、2階常設展の版画も先週展示替えをしました。
あらたな魅力を発見に、ぜひご来館くださいませ。
館長講座「みちのくの美-その源流を巡る旅」第4回 山形編
11月19日(土)、当館講義室にて館長講座を開催しました。
今年度は、「みちのくの美-その源流を巡る旅」ということで、青森から福島に至る東北地方の近代美術を中心にご紹介しています。
第4回は「山形編」です。
山形県では、美術の分野でどのような作家が活躍し、どのような作品が生み出されたのか、各作家とその作品について画像を映し出しながら紹介しました。
今回は、画家の菅原白龍、小松均、今野忠一、福王寺法林、高橋由一、椿貞雄、真下慶治。
そして彫刻家の新海竹太郎、新海竹蔵、桜井祐一、吾妻兼治郎・・・計11名の作家を取り上げました。
次回、「宮城編」は1月21日(土)、10:30~12:00まで開催いたします。
広重展特設ショップ
広重、北斎、国芳の作品をつかった展覧会グッズがいっぱい!
ショップの方にうかがったところ、
「一番の売れ筋は、クリアファイルですね」とのこと。
ねこグッズ…。
こっちはルービックキューブみたいなふしぎな浮世絵キューブ。
こちらのショップも広重ビビッド展と同じ9:30〜17:00の営業です。
残念ながら通信販売はできませんが、ショップのみのご利用は入場券がなくても大丈夫!! 人気商品は売り切れのおそれもありますので、お早めにどうぞ!
(※一部、展覧会出品作でないグッズも含まれています※)
以上、グッズ情報でした。(HY)
わんぱくミュージアム「キラキラつやつや七宝焼きバッジに挑戦!!」
11/13(日)の午前と午後、2回にわたり、
今回は小学1年生~6年生まで、23名の子ども達が参加してくれました。
七宝焼きとは、簡単にいうと金属の土台(銅板)に、
まずは丸か楕円のかたちの土台を選び、どんなバッジにしたいか、
あまり細かい模様は難しいですが、
どんどんアイディアが浮かぶのか、もう一枚描く!
スケッチが終わったら、お気に入りのひとつを選びます。
いよいよ一番難しい作業へ。考えた絵柄に沿って、ガラス絵の具を選び、
子ども達は、透明色(すける色)、不透明色(はっきりした色)を使い分けながら、丁寧に土台の上にのせていました。
のせている時の表情はみんな真剣!細かい模様にした子も、慎重にホセを動かしながらガラス絵の具をのせていました。
完成すると、スタッフが800度に熱した電気がまで焼きます。
かまの小さな窓から、ガラスが溶ける様子を見てもらいました。
焼き上がった熱々のバッジ。焼きたては絵の具の状態と全く色が異なります。
子ども達はどきどきしながら作品が焼き上がるのを待っていました。
バッジが冷めたら縁をやすりで削り、後ろにピンをつけます。
キラキラでつやつやの、世界にひとつだけのバッジが完成しました!
参加して下さったみなさま、お手伝いいただいたみなさま、ありがとうございました!
「触って、話して、見て楽しむ美術鑑賞ワークショップ」開催
福島県立美術館では、2012年から毎年1回、視覚障がい者の方々とコレクション作品を鑑賞する「視覚障がい者のための美術鑑賞ワークショップ」を開催してきました。回を重ねるごとに、「今度はこういうのをやってみたらどうだろう?」というようなアイディアも出てきて、今年は見えない人と見える人一緒に作品を鑑賞するワークショップに挑戦することになりました。タイトルは「触って、話して、見て楽しむ美術鑑賞ワークショップ」。
新しい試みでしたので、いろいろな方々にご協力をいただき、打ち合わせを重ねました。2012年の初回から講師をして下さっている真下弥生さん、半田こづえさん、そして福島県点字図書館の方に加え、県内の視覚障がい者の方、福島市内で活動されている「てつがくカフェ@ふくしま」の世話人の方々。その中で、昨年度新収蔵のロダンの彫刻《影の頭部》《髪をすく女》を鑑賞作品として選び、ワークショップの進め方を話し合ってきました。
11月3日(木・祝)ワークショップの当日。
午前と午後二回開催されたワークショップには、見えない方、見える方合わせて22人の方がご参加下さいました。
その様子をご紹介しましょう。
場所は常設展示室。
彫刻を触察するので、まずは手を洗い、時計やアクセサリーを外し準備をととのえてロダンの彫刻が展示してあるところに集合。
スタッフも大勢いましたし、いろいろな人たちが集まっていたので、まずは自己紹介から始まりました。多分、みんな緊張していたと思います。なんせ初めてのことですから。まずは緊張をほぐしウォーミングアップ。
そして講師の真下弥生さんがこれから鑑賞する作品の制作者、彫刻家のオーギュスト・ロダンについて、いつの時代のどこの作家なのか、どんな作品を作った人なのかをお話しして下さいました。
これから鑑賞する《影の頭部》という作品は、頭部だけなのですが、実はロダンの代表作である巨大な《地獄の門》のてっぺんに置かれた3人の男性の全身像《三つの影》に由来するものだということも紹介されました。
いよいよ鑑賞です。見えない人2人、見える人2人がチームになります。3チームで以下の3つの作品を鑑賞していきました。
ロダンの《影の頭部》と《髪をすく女》。
いずれもブロンズでできています。彫刻ってどうやって作るんだろう、ということを少しわかっていただくために、今回はいわきの彫刻家、髙野正晃さんにご協力をいただき、制作途中の粘土の人物頭部を拝借し、それも触察していただきました。
見えない人から鑑賞が始まります。触りながら、「これは何?」「ここはどうなっているの?」など、見える人と会話をしながら鑑賞を進めました。もちろん見える人も触ってみます。
《影の頭部》では、「目は開いてるの?」「あれっ、閉じてるのかしら?」お互いに対話をすることで、気がつかなかったいろいろなことが見えてきたようです。
鑑賞が終わったところで、「てつがくカフェ@ふくしま」の渡部純さん、小野原雅夫さんがファシリテーターとなり、それぞれが感じたことを共有し、深める場を持ちました。
午前中の「てつがくカフェ」では、どんな話しが出たかご紹介しましょう。
触ることと見ること
見える人:(見えない人から)、このところどうなっているのかと質問されましたが、それは触れるからこそ出てきた質問だと思いました。あらためて自分で触ってみて、彫刻って触ってみると一番いいところが見えるという思いがしました。(視覚障がい者の方は)いつも触っていらっしゃるので感覚が研ぎ澄まされているのだということが伝わってきました。
見えない人:《髪をすく女》は女だということはわかりましたが、果たして髪の毛がどこにあるかわからなかったです。前か後ろかもわからなかった。触ってみて、胸がある、お腹も出てるとかわかりました。手や足を触って、こうなってるから髪は前にあるんだとわかりました。Tさん(見える人)から前にあるんだよ、と聞かなければイメージできなかったと思う。
見える人:鑑賞の最初は、あまりヒントを与えないでいました。全体を触った後にだんだん細かいところをこういう風に触るとわかるわよと。
一緒に鑑賞しながら、見える者が無視しているものがあることがわかりました。例えば継ぎ目。それは鑑賞している時には全く目に入っていませんでした。今回、細かいところも一緒に触って、初めてこういうところもあるんだと逆に教えていただきました。
《影の頭部》の表情について
見える人:口のところがへの字に曲がっているようでした。苦悩というか、恍惚感と言ったらいいか。目のところには安堵感のようなものも感じられましたが、全体として、希望がない、諦念のような世界が表現されていると思いました。
見える人:そういう感じ方と、技巧的にこういう風になっているのだと感じることとは違うのですね。世界観を感じるためにもう一度触ってみたいです。
見える人:普段は眼鏡をかけています。今日は眼鏡を外して目を閉じて触ったのですが、触っての感想は、表情もへったくれもなかったです。《髪をすく女》はそもそも何のことかよくわからない。視覚をシャットアウトして触ってみて、最低限の情報が得られただけだったという感想でした。
伝えるということについて
見える人:障がい者の方は、支援する者の説明を受けながら鑑賞するわけですが、支援する側の資質、感性が非常に重要な位置にあることを感じました。どういう意図を持って感じてもらうのか、大変な課題です。責任重大だというのを感じました。うっかりすると自分の押しつけになってしまうのではないかと。
作品を鑑賞することとは
見えない人:ロダンの彫刻という先入観を持つことで、僕らは何かを感じ取らなければならないと感じてしまいます。私自身は絵や彫刻に対する知識もありませんから、最初からロダンは凄い彫刻家なんだという思いで触る。そうすると、首をかしげていることは何かを意味しているのか、ということばかり考えてしまいます。何でこれを世の中の人が評価するのか、私にはまずわからない。私自身はこれのどこがいいのかなって思う。見えている人は逆にそれがわかるのかな、という思いがあります。街中にある彫刻は通り過ぎてしまうのに、美術館に来た時だけ一生懸命触るというのは何なのでしょう。美術鑑賞するってどういうことなのかな、と思いました。
見えない人:この前モネ展に行ってきました。私も、モネの睡蓮は学校で習うので知っています。でもよくわからなかった。モネの描いた睡蓮だから、みんなお金を出してでも見に行くということがもしかするとあるのかな。
てつカフェ:見えているからちゃんと鑑賞できているのでしょうか。ただ単にモネとかロダンという名前の権威に照らされて、有り難く見ているだけかもしれないし、逆にそういうところから切り離された人の方が言い当ててくれるのかもしれない、という気がします。
美術館への要望
見えない人:作品保存のためなどいろいろな問題で、どうして美術館って暗いのだろうという素朴な疑問があります。段差もあるし、美術館は怖いです。保存などの理由があるのはわかります。わかりますが、でも明るいところで見たいです。それが私の希望です。
見える人:それは私たちも同じです。歳のせいもありますが、暗いですね。
午後の部の様子は、「てつがくカフェ@ふくしま」さんがブログにまとめて下さいました。是非チェックして下さい。
http://blog.goo.ne.jp/fukushimacafe
みなさんと作品鑑賞し、お話しをする中で、見える人、見えない人それぞれに発見があったと思います。そして最後の対話の部分では、鑑賞の本質的な部分にも話しが及びました。また美術館への要望も出ました。どれもすぐに解決できることではありません。答えはありません。これからもまた一緒に考えていきたいと思っています。
皆さま、本当に有り難うございました。
5千人&ギャラリートーク
初日からの入場者が5000人となり、ちょうど5000人目の入場者のお客様に、館長から記念品が手渡されました。
この日はギャラリートーク。
こちらも盛況で、話し手が緊張して「亀戸梅屋鋪」を「梅井戸カメやしき」と言い間違えたのを笑わずに最後まで清聴いただいたのには、とても感謝です。
展覧会も前期はあと10日あまり。
とはいえ、後期もみどころ満載なので、ぜひご期待ください。
展示替 前期:〜11/20(日) 後期:11/22(火)〜12/11(日)
まだ紅葉はのこっています。
明日は晴れるといいなあ。
HY
美術鑑賞講座「イタリア・ルネサ ンス美術散策」の開催日変更のお知らせ
第2回「ローマ編」の開催日は、諸事情により、 以下のとおり変更されました。
期 日 【変更前】 平成28年12月11日(日)
※場所、時間に変更はありません。
すでに予定を立てられていた皆様には大変ご迷惑をおかけしますが、
何卒ご理解とご協力をお願いいたします。
コレクション展Ⅲご案内 その2
企画展に関連した展示も行っています。
まず展示室Bでは、浮世絵とフランス美術と題して、フランスでジャポニズムが大流行していた時代の作品を展示しています。
印象派とドーミエの版画。
また、展示室Dでは版画の展示。昭和初期の新東京百景と、斎藤清です。
幕末の広重の名所江戸百景は安政の大地震後に、この新東京百景は関東大震災後に恩地孝四郎らによって制作されました。
どちらも大きな変化のあったときに生み出されたということに考えさせられます。
最後は斎藤清。
会津の風景をさまざまな構図から描いています。広重の構図と比べてみるのもおもしろいです。
なお、以上ご紹介した版画の展示は11月17日までです。
18日からの後期は、ドーミエと斎藤清は異なる作品に、
新東京百景は前期でおしまいで、後期は丸山浩司さんと長谷川雄一さんの作品を展示します。
美術館のまわりは紅葉まっさかり。紅葉狩りがてらぜひ美術館におこしください。
県立図書館の広重コーナー
吾妻山もいつの間にか白化粧しています。
美術館の隣には県立図書館があり、美術館の展覧会にあわせて、参考になる本をピックアップしてくれています。
展覧会にあわせて、ちょっと足をのばしてみると、また新たな発見がありますよ!
芸術の秋と読書の秋を満喫できちゃうのです。(HY)
広重展講演会
那珂川町馬頭広重美術館長の市川信也さんをお迎えして、
「名所江戸百景の今と昔」についてご講演をいただきました。
今から160年ほど前の江戸を描いたこのシリーズは、現在地を求めてもとてもわからないほど様変わりしている東京という都市の姿をまざまざと浮かび上がらせるものでもありました。
昔はどこからでも富士山が望めた江戸、水運が物流の中心であった東洋のベニス。
幕府の定火消同心だった広重は、高さ16mの定火消櫓に登って江戸の街を見渡したことがあったそうです。それで、鳥の視点から描いたような浮世絵も生まれたんですね!
さらに、この名所江戸百景は直前に安政大地震が起こって、かなり地震や火災で街は被害を受けていたことなど、単なる名所絵というだけではない、さまざまなことを講演会で知ることができました。
ちなみに、名所江戸百景は、
①地震前のかつてあった風景
②地震後このようになってほしい風景
のいずれかが描かれているのだと、広重研究者の間では言われているそうです。
震災後の福島で、風景と人間の営みを考えさせられる、ほんとうによい機会にもなりました。
(HY)
紅葉まっさかり!
出遅れていた紅葉も、ちょうど見頃となっています。
美術館の庭にはカエデやけやきなどの落葉樹も多く、散策する人の目を楽しませています。
ドウダンツツジも色鮮やか。
紅葉が散ってくると、いよいよ冬支度ですね。(HY)
広重ビビッド開幕!
東京、大阪などでも話題となった、浮世絵風景版画珠玉のコレクション、東北初上陸です。
「初摺り(しょずり)」とよばれる美しい状態の版画が約250点(前後期あわせて)。
なかでも注目は、初公開となる<六十余州名所図会><江戸名所百景>の歌川広重最晩年のシリーズです。
前期(10/29〜11/20)、後期(11/22〜12/11)で、ほぼ総入れ替えの展示替えありますが、それでも展示室には約140点が展示されています。
これを見逃すと10年は見ることができないであろう美麗な名品の数々…。北斎、国芳の名作とあわせ、ぜひ実物にふれてみませんか?
くわしくは、こちらまで↓
展示替リストは、こちら。
ギャラリートーク 14:00〜15:00 ①11/11(金)、②12/3(土)
講演会 14:00〜15:30 「名所江戸百景の今と昔」市川信也氏(那珂川町馬頭広重美術館長)
などのイベントもあります。(HY)
〜実技講座〜 粘土で表現する「首像制作」2日目
常設展第Ⅲ期(10月15日㈯〜12月25日日)の展示にあわせ、エントランスホール2階に髙野さんの作品
『ずっとここで生きてゆく』2013(平成25)年の展示が始まりました。
今回の講座では、受講者の方々に髙野さん自ら作品について語って頂きました。
震災当時のこと、この作品をつくるきっかけ、そして作品についての思いなど。貴重なお時間を頂きました。
さて、制作です。
講座は全3日間。真ん中の2日目は各々のペースで制作が続きます。
改めてエスキースを描いたり......
かたちを探ったり....
「首から下、鎖骨の所までつくるということは、そこで終わりではなくその先の身体を意識して粘土の際まで力を入れてつくるということ。作品は、そうした空間をつくっていくこと。」と髙野さんから。
視点を変えてみましょう!モデルさんに台から降りてもらって、上からのぞき込みます。
なるほど。顔から肩にかけての凹凸がよくわかります。
こうして、2日目も黙々と充実した時間が流れました。
みなさんの首像もだいぶ形が見えてきました。次回はいよいよ最終回です!完成が楽しみですね。
常設展Ⅲオープンしました
今日はそのうち展示室Aの様子をご紹介します。
まずは酒井三良と小川芋銭の日本画。
代表作《雪に埋もれつつ正月はゆく》をはじめとして、三島町出身の日本画家・酒井三良(1897-1969)の作品がずらりとならびます。
注目は、新収蔵の《冬暖》! 猿の親子が可愛らしいです(写真右から2番目の作品)。
三良が師と仰いだのが小川芋銭(1868-1938)。
福島での旅をもとにした《細道絵日記》と、おならの大会の様子を描いた《於那羅合戦》を展示しています。
写真は《於那羅合戦》から。あまりの臭さに狐も鼻をつまんで逃げてゆきます。
三良と芋銭。ほのぼのとした、ふたりの競演をお楽しみください。
展示室を奥へ進んで行くと今度は洋画。
関根正二を中心に、岸田劉生や村山槐多など大正期の洋画を展示しています。
関根正二(1899-1919)については、1月からの企画展「Gallery f コレクション再発見」展でもご紹介予定ですので、こちらもお楽しみに。
最後に、今年没後10年となる村上善男の特集。
東北を拠点として活躍した美術家・村上義男(1933-2006)の《釘打ち》シリーズ作品を展示しています。
ほかの展示室の様子については次回以降、順次ご紹介していきたいと思います。
美術館のまわりでは木々が色づき始めました。
お散歩がてら、ぜひ美術館へもお立ち寄りください。