福島県立美術館ブログ

千甕展ギャラリートーク開催

本日、千甕展のギャラリートークを行いました。
仏画、洋画、漫画、日本画、南画と、さまざまなことに手を染めた、まさしく縦横無尽な画家・小川千甕。
その幅広い画業を、今回の展覧会を企画した担当学芸員がわかりやすく説明します。



千甕の絵の雰囲気そのままに、ほのぼのと、時にはお客様と対話しながら進みました。

ギャラリートークは来月にももう一度、11/15(土)14時から行います。

また、そのほかにもイベントとしては、今月10/26(日)14時から講演会があります。
前川公秀氏(DIC川村記念美術館顧問)、山田敦雄氏(目黒区美術館学芸員)、
野地耕一郎氏(泉屋博古館分館長)らが千甕についてさまざまな視点からお話しくださいます。

観れば観るほどその魅力に引き込まれる千甕の絵。
とてもよかった、と監視員に声をかけてお帰りになられるお客様がとても多いです。
ぜひ足をお運びください。

K.T.

小川千甕展はじまりました!

画家・小川千甕のほぼはじめての回顧展です。

 

こんな実力者が紹介されずにいたのが不思議です。
作品がたくさん残っているのはありがたいことでした。

浅井忠の弟子だっただけあり、こんなに上手いのです。


そしてこんなふうに面白いのです。


ヨーロッパ遊学中、安井曾太郎とルノワールに会いに行ったりしました。

旅を愛し、ほのぼのとした田園風景を描きました。


描かれる人や自然はいつも優しくて、こちらを歓迎してくれます。


なぜ当館でご紹介するかというと、福島を何度も何度も訪れたゆかりの画家だからです。
福島、坂下、喜多方、白河、須賀川、棚倉、国見。
とくに大正期の美術愛好団体「喜多方美術倶楽部」の人たちが千甕を支援しました。

おすすめはユーモアたっぷりの絵巻《二人旅の巻》。
喜多方の岩田圭一郎と桧原、猪苗代へのスケッチ旅行を描いたものです。
千甕は漫画家でもありました。(福島限定展示)


晩年になればなるほど縦横無尽。


千甕は「せんよう」と読むのが正式ですが、
若い頃に挿絵を描いた本に「ちかめ」とルビを振られ、
そのほうが人気があったので、まあいいか、
と自分でも「ちかめ」とサインしたりしています。

初日には、千甕のご遺族がかけつけてくださいました。



10月26日(日)には、前川公秀氏、山田敦雄氏、野地耕一郎氏という
豪華ゲストをお招きし、「小川千甕の魅力を語る」トークイベントを開催します。

この展覧会は、東京六本木の泉屋博古館分館(2015年3月7日~5月10日)、
京都市の京都文化博物館(2015年12月8日~2016年1月31日)に巡回します。

M.K

コレクション展III始まっています!

すっかり秋めいてきた今日この頃、美術館のまわりでも紅葉が始まりました。
芸術の秋、散策がてら、ぜひ美術館にいらしてみませんか。

美術館では現在、企画展『小川千甕展~縦横無尽に生きる 彼は仏画師・洋画家・漫画家・日本画家だった。』(近々こちらブログで紹介予定)が、また、2階常設展示室ではコレクション展IIIが始まっています。
今日はコレクション展IIIの内容についてご紹介します。

まず、第1室は、コレクション・クッキング(C.C.)展企画の高校生キュレーターによる展示です。



なんだかいつもとは雰囲気の異なる、おもしろそうな空間になっています。
こちらについてはC.C.展フェイスブックで詳しくご紹介していますので、
ぜひこちらをご覧ください。
https://www.facebook.com/collectioncooking

第2室も盛りだくさんです。
まずは、大正期を中心とした洋画・日本画。



河野保雄氏によるコレクションをご寄贈いただき、厚みのある作品群となりました。
岸田劉生の作品が、洋画のほか、日本画、版画(第1室)も展示されていることに注目です。

奥の壁は、小川千甕展関連展示「喜多方美術倶楽部小特集」。

 

大正7年、福島県喜多方に美術愛好団体「喜多方美術倶楽部」が結成されました。
小川千甕ほか、小川芋銭などがたびたび福島にやってきて制作活動を行いましたが、それらの作品の一部を展示しています。

第2室には、ほかにも、創作人形、抽象絵画・彫刻などを展示しています。




第3室は、海外の作品。
アメリカ美術はワイエスを中心に、ジョン・スローンや国吉康雄などの作品も展示しています。



フランス美術は、印象派のほか、今回はドーミエの風刺版画が出ています。

 

最後の第4室は版画。
斎藤清は、今回は古都シリーズを中心に展示しています。



反対側の壁は清宮質文。版画を11点、またガラス絵も2点展示しています。




版画は11月半ばに展示替えを行います。
後期は、斎藤清は外国シリーズ、
また、清宮に代わって、日和崎尊夫や柄澤齊の木口木版が展示される予定です。

こちらもどうぞお楽しみに。

K.T.

版画の展示替えをしました!

現在常設展にて好評開催中の『コレクション展II 開館30周年記念 コレクション名作選』。
昨日閉館後に版画の展示替えを行いました。

常設展は年に4回の展示を行っていますが、
版画は作品保護のため、半期で展示替え、つまり年8回の展示を行っています。

今回は、前期の創作版画にかわり銅版画が展示されています。
 

長谷川潔、駒井哲郎、浜口陽三らの、モノクロームによる静謐な夢見る世界が展開されます。

また、斎藤清は前期に引き続き代表作を展示しています。
 

夏の暑いなか《会津の冬》シリーズをみるのもいいものです。

美術館内は、作品保護のため一定の温湿度に保たれています。
残暑厳しい頃、ぜひ美術館に涼みにいらしてみませんか。

K.T.

コレクション・クッキング、髙野正晃さんWS開催

8月7日、「コレクション・クッキング」の出品作家、髙野正晃さんが福島文化笹谷幼稚園でワークショップ「ぼくらのねんどじま」を開催して下さいました。楽しかったですよ。

その時の様子をFacebookにアップしましたのでご覧下さい。

http://www.facebook.com/collectioncooking

A.Y.

コレクション・クッキング展

暑中お見舞い申し上げます。
毎日暑い日が続いておりますが、みなさんお元気でしょうか。

さて、30周年記念の「コレクション・クッキング 近くを視ること/遠くに想いを馳せること-対話と創造」展がオープンし、2週間が経ちました。

展覧会の様子は、オープン前からFacebookで随時情報をアップしています。
是非チェックして下さい。
http://www.facebook.com/collectioncooking

ところで、「コレクション・クッキング」って料理の展覧会ですか?と聞かれることがあります。いえいえ、違います。
どのようにしたらコレクション(美術作品)を美味しく味わうことができるのか、いろいろな方とその料理の方法を考えてみようという企画です。展覧会の他にもワークショップなど複数の企画を含んだ通年プロジェクト。
本展は、そのメインとなる企画です。
3,300点を超える当館のコレクション作品と4組の福島県作家のコラボレーション展。
作り手・作家の視点からコレクションを料理していただきます。

料理人は、古川弓子(1975年会津若松市生)、three(1986年福島市生3人のユニット)、三瓶光夫(1974年須賀川市生)、髙野正晃(1965年いわき市生)。それぞれ異なった視点から、作品を選び、展示空間を作りました。


古川弓子


three


三瓶光夫


髙野正晃

それぞれの作家とコレクション作品との間で交わされた対話に耳をかたむけてみませんか?
涼しい美術館でゆっくりとした時間を過ごし、リフレッシュして下さい。
皆様のお越しをお待ちしております。

A.Y.

開館30周年記念 コレクション名作選 始まりました!

福島県立美術館は今年で30周年を迎えます。
それにあわせ、今回の常設展では、コレクション名作選として
当館の代表作を一挙展示しています!

まず第一室。



日本画は小茂田青樹、池田遙邨、速水御舟、安田靫彦などが並びます。
本県出身の勝田蕉琴、酒井三良、大山忠作もお見逃しなく。

奥には伊砂利彦の染色。波の表現が涼やかです。


また、佐藤朝山(玄々)も3点ほど。《冬眠》は蝦蟇の量塊表現が見事です。



第2室は、彫刻と洋画。


建畠覚造の《WAVING FIGURE7(大)》は久しぶり。
また、福島の彫刻家たちの作品の並ぶ様子には圧倒されます。

洋画は、関根正二、村山槐多、岸田劉生など。


そのほか、長谷川利行、松本竣介、麻生三郎、吉井忠、斎藤義重、山口長男なども展示されていますよ。

第三室は海外の作品。


ベン・シャーン、アンドリュー・ワイエスを中心としたアメリカ美術、
また、ピサロ、モネ、コローなどのフランス美術を展示しています。



最後の第四室は版画。


500点を超える斎藤清の所蔵作品のなかから、《凝視》や《会津の冬》シリーズなど、その代表作を展示しています。

反対側の壁は創作版画です。
恩地孝四郎の《母と子》、藤森静雄の《路傍の小猫》など。


また、平川清蔵、川上澄生などの風景版画を展示しています。


版画は前期・後期で展示替えを行います。
後期は、斎藤清は《競艶》など、また創作版画に代わって銅版画を展示する予定でいます。
ぜひどちらもご覧ください!

信夫山を背後とした美術館の景観も美しい季節を迎えました。
ぜひ皆様お誘いあわせのうえお出かけください。



(K.T)

ワークショップ「福島を撮る」レポート

特集展示「瀬戸正人 バンコク・ハノイ・福島」展の開催にともなって、ワークショップ「福島を撮る」が、6月14日‐15日に開催されました。



これは、写真家・瀬戸正人さんと一緒に美術館周辺を歩きながら写真撮影をし、その後撮った作品を瀬戸さんに選んでもらって印刷し、美術館のエントランス・ホールに展示するというもの。

当日は天候にも恵まれ、絶好の散策日和となりました。
瀬戸さんが出したお題は、散策で出会った人を撮るというもの。
いざ散策を始めると、なかなか人に遭遇せずという予想だにしない展開にもかかわらず、
みなさん楽しく、思い思いの写真を撮影することができました。

2日目は、前日に撮った写真を、各自10枚ほど瀬戸さんに選んでもらい、インクジェット・プリンターで2L版に印刷しました。そこからさらに瀬戸さんが厳選した写真を、各自A4版に印刷して、みなさんで展示しました。

 

同じ場所を散策したのに、出来上がった写真はみなそれぞれ違っていて、ひとりひとりの個性がよく表れていました。また見慣れた福島の町には、まだまだ美しいものがそこら中に転がっていると気付かせてくれるワークショップでした。

参加してくださったみなさん、ワールドカップの誘惑にも負けず参加してくださりありがとうございました。

参加者のみなさんが撮影し、一緒に展示した写真は、美術館のエントランス・ホールに6月29日まで展示されています。



なお、本ワークショップは、キヤノンマーケティングジャパン株式会社様より、
デジタル一眼レフカメラとインクジェット・プリンターをお借りして行いました。

S.A.

コレクション・クッキング

前回「瀬戸正人展」の予告をしましたが、さらに次の企画のご紹介をしましょう。



タイトルは「コレクション・クッキング」。
料理の展覧会ですか?と聞かれるのですが、料理の展覧会ではありません。
美術作品を料理する、つまり味わい方、楽しみ方をみんなで考え、骨の髄まで美味しくいただきましょう、というわけです。
福島県立美術館は今年30周年を迎えます。これまでに縁あって美術館に収蔵された作品は3,300点を超えました。これらの作品をいろいろな方々と共に、いろいろな方法で楽しみたいと思います。実は展覧会だけではありません。常設展や館長講座、ワークショップ、そして近隣の施設との連携企画など、1年を通していろいろなことにチャレンジし、コレクションを味わい尽くそうというプロジェクトなのです。

そのメインの企画が展覧会「近くを視ること/遠くに想いを馳せること-対話と創造」です。
福島県出身の4人の作家たち、古川弓子(1975年、会津若松市生まれ)、three(1986年、福島市生まれ)、三瓶光夫(1974年、須賀川市生まれ)、高野正晃(1965年、いわき市生まれ)が、それぞれコレクションの中から作品を選び、自身の作品とコラボレーションします。今、作家さんたちの制作も追い込みに入っているようです。
コレクションがどのように料理され、どんな空間が生まれるでしょうか。展覧会を通して、コレクションの新たな魅力を作家、来館者の皆様と共有したいと考えています。

どうぞご期待下さい!

今回は展覧会だけでなく、いろいろな企画があります。そしていろいろな方々と一緒に活動をしていきます。若い方々も含め、広く発信をしていきたいと考え、コレクション・クッキングのFacebookを立ち上げました。情報はこちらで発信をしてきます。
Facebook:Collection Cooking(コレクション・クッキング 福島県立美術館)

是非チェックして下さい!
そして「いいね!」をクリックするのをお忘れなく。

A.Y.

「瀬戸正人展」のお知らせ

ご好評いただいている「世界をめぐる絵本の旅」展が終了すると、6月10日(火)から「瀬戸正人 バンコク・ハノイ・福島」展が始まります。



瀬戸正人さんは、当館でも何度か作品をご紹介してきた日本を代表する写真家です。
1953年、日本人の父とベトナム人の母のもと、タイのウドーンタニに生まれました。1961年に父の故郷、福島県梁川町に移り住み、高校を卒業するまで福島で育ちます。父は写真館を営んでいました。

卒業後、東京写真学校で写真を学び、森山大道や深瀬昌久らに師事。写真の腕を磨きます。
1989年、写真集『バンコク、ハノイ 1982-1987』で日本写真協会新人賞を受賞。96年には都会に生きる人々を特異な視点で捉えた写真集『Silent Mode』『Living Room, Tokyo 1989-1994』で第21回木村伊兵衛写真賞を受賞しました。

また99年、自伝エッセー『トオイと正人』で第12回新潮学芸賞を受賞し、文筆活動も行っています。
http://www.setos.jp/index.html

本展では、当館の収蔵作品の《バンコク、ハノイ 1982-1987》を含め、これまで撮りためてきた福島の風景、震災後の福島、そして昨年発表した『Cesium-137Cs』から合わせて約50点を展示し、瀬戸さんの身体に寄り添ってきた原風景、「福島」の姿を辿ります。

会期中、ワークショップも開催します。

「福島を撮る」
瀬戸さんと一緒に、美術館周辺を歩きながら写真撮影。そして講評会。エントランスホールに作品を展示します。

日時:6月14日(土)13:00~16:00、15日(日)10:30~16:00
対象:一般15名程度 2日間参加できる方(要申込・多数の場合は抽選)
経費など:無料(カメラはご持参いただくか、貸与も可。プリント代も含みます。)
締切:6月8日(日)
協力:キヤノンマーケティングジャパン株式会社

奮ってご応募下さい。
絶対に面白いです!間違いありません。

A.Y.

ミニツアー、やっています!

「ちひろ美術館コレクション 世界をめぐる絵本の旅」展も、あと二週間ちょっと。
6月1日まで好評開催中です。

毎週金曜日 11:00からは、展覧会のおはなしをしながら世界旅行、という「ミニツアー」を開催しています。

きょうで3回目のミニツアーも、お客さんでいっぱい!
40名をこえるギャラリーに、担当学芸員が身ぶり、手ぶりに、実体験をまじえたお話で息をつかせず、あっというまの35分でした!

 

 


23日、30日も 11:00から、約30分。
企画展チケットがあれば、どなたでも参加できます。

HY

「ちひろ美術館コレクション 世界をめぐる絵本の旅」開幕!

いよいよ大型連休ものこりわずか。
4月26日に開幕した企画展「ちひろ美術館コレクション 世界をめぐる絵本の旅」展は、さまざまなイベントで好評をいただいております。6月1日まで。連休中は、5/6まで開館(5/7休館)、あとは月曜日が休館日です(5/12・19・26)。



 
4月25日開会式、内覧会。

 
4月26日には、いわさきちひろさんの長男で、ちひろ美術館生みの親、松本猛さんによる講演会(現在はちひろ美術館常任顧問、絵本学会会長をされています)。



 
5月3日、福島県立図書館スタッフによるおはなし会。


5月5日には、ちひろカレンダーをチケット購入先着100名様にプレゼント。

これからも、さまざまなイベントがありますので、ぜひご参加ください。
■無料のイベント
おはなし会 5/17・5/24 14:00~14:30
映画会「いわさきちひろ~27歳の旅立ち~」(2012年/海南友子監督/96分) 5/25 14:00~15:40 
■企画展チケットがあれば…
5/10 14:00~15:00 ゲストトーク 上島史子さん(ちひろ美術館学芸部長)
5/9・16・23・30 (金) 11:00~11:30 ミニツアー(学芸員によるギャラリーツアー)
■図書館でも… 5/11 親子ふれあい読書フェスティバルが予定されています。
http://www.library.fks.ed.jp/ehon-tomodachi1.pdf

新緑の美術館にぜひお越し下さい。

HY

2014年の常設展オープンしました

年度末にメンテナンスのため休館させていただきましたが、4月12日の土曜日に開館。常設展がオープンしました。ご紹介しましょう。

まずは春を感じさせる日本画の部屋から。



小杉放庵の《水荘訪客》や酒井三良の《江南春色》、そして平福百穂の《ふき》、福田豊四郎の《ふるさとへ帰る》が並びます。



反対側には、斎藤清の墨画《野仏田代》。芽吹き始めた春の草花に囲まれて、ひっそりとたたずむお地蔵さんたちを思わせます。その奥には2012年度に新収蔵になった黒沢吉蔵の《桜谷》そして《白い連峰(飯豊)》。福島の春山の風景です。
4月5日から三春町歴史民俗資料館でも黒沢吉蔵の《滝桜》が展示されています。連携企画です。是非そちらと合わせてご鑑賞下さい。
http://www.town.miharu.fukushima.jp/site/rekishi




洋画の部屋に入ると、久しぶりに高橋由一の《鐸木西美像》《栗子山昔時景》が並び、明治から大正期の洋画をご紹介しています。関根正二も《自画像》や《神の祈り》など7点展示しています。



その隣は福島の彫刻家、佐藤朝山(玄々)特集。ごろんとした不思議な木彫《冬眠》や新収蔵の《釈迦如来像》など10点をご紹介します。



そして中谷泰の《常滑》と《炭坑》。実は中谷泰は、26日から始まる「ちひろ美術館コレクション 世界をめぐる絵本の旅」でご紹介する絵本画家いわさきちひろの絵の先生でもありました。最初の夫が亡くなって大連から戻ってきたちひろは、1942年、23歳の時に、すでに文展にも入選し活躍し始めていた洋画家、中谷泰に師事し、油絵を描き始めました。ちひろにとって、再出発のきっかけとなったのです。

 

海外の部屋では、シャガールの版画《死せる魂》、カミーユ・コロー、ポール・ゴーギャン、オーギュスト・ルノワール、カミーユ・ピサロなどフランス美術の名品や、ベン・シャーン、アンドリュー・ワイエスの作品をご紹介しています。

最後の部屋は、いつもとは少し違ったおもむきの空間になっています。



版画の山中現と彫刻の保田春彦のコラボレーション。
山中の作品からは初期のモノクローム、《第一夜》から《第十一夜》。保田春彦は白い木彫《季節の残像》シリーズ。二人の間に特に繋がりはありませんが、展示をしてみるとお互いが引き立て合う不思議な関係が生まれました。この空間から何を感じとるかはご覧になる方しだい。しばし自由に空想を羽ばたかせてみてください。

26日からは先に書いたとおり、「ちひろ美術館コレクション 世界をめぐる絵本の旅」展が始まります。高校生以下無料です。是非お子様とご一緒にお越し下さい。

A.Y.

除染レポート

4月に入り、だいぶ暖かくなりました。
昨年、12月21日から始まった美術館・図書館の除染第二弾が3月31日に無事終了しました。2月の大雪で除雪作業が加わり、現場の方々は寒い中の作業が続きました。本当にご苦労さまでございました。

年間1ミリシーベルト以下を目指して、駐車場や植え込み、日本庭園などを除染してきました。線量は以前の半分以下になり、大幅に低減しています。詳しくはHPに掲載されている放射線測定結果をご覧下さい。(4月中旬に除染後の最新データをアップします)



美術館の前庭には大きな穴が掘られていました。そこに、はぎ取られた土が入ったフレコンバッグが運び込まれ、新しい土が被せられ、芝生が植えられました。今はまだつぎはぎの芝生も、いずれ新しい芽を出し青々と美しくなるでしょう。



下の土をはぎ取られた梅も花を咲かせています。



水仙のつぼみも膨らんできました。



現在はメンテナンスで休館をしておりますが、4月12日(土)に常設展が、26日(土)には「ちひろ美術館コレクション 世界をめぐる絵本の旅」展がオープンします。
是非また美術館に遊びに来て下さい。お待ちしております。

A.Y.

視覚障がい者のための鑑賞ワークショップを開催

昨年度の「ベン・シャーン展」に引き続き、今年度も3月21日(金・祝)に視覚障がい者の方々と収蔵作品のベン・シャーンを鑑賞するワークショップを開催しました。
午前と午後の2回。午前は10:30から。午後は14:00のスタート。


講師は真下弥生さん(ルーテル学院大学非常勤講師)と半田こづえさん(筑波大学大学院)。

前日は雪が降る寒い日で、足元が悪いのではないかと心配しましたが、当日はみなさん予定通りというよりも、楽しみにされていたようで早々とお集まりいただき、いい雰囲気でスタートしました。

まずは自己紹介。
そして介添えの方々も一緒に、ウォーミングアップ。

 
簡単な図形の触図を触ってみました。見てはいけません。私もやってみたのですが、意外と難しいものです。丸と八角形がなかなかわかりません。触図を把握するのには思ったより時間がかかるのですね。そういうことを頭に置いて、まわりの私たちもゆっくりと鑑賞をサポートしていきたいと思いました。

さて本番です。作品はベン・シャーンの版画作品《詩篇133篇》(1963年 リトグラフ・紙)。
鳩が2羽向き合っています。その鳩を囲む唐草模様。そこに旧約聖書の詩篇133篇が書き込まれています。絵の構図は複雑なので、鳩と唐草と二つ別々の触図が用意されていました。


まずは鳩の触図。
線描のみで描かれた鳩と、色が塗られた鳩。最初は何が描かれているかよくわからず、先生から「鳥」というヒントをもらいました。そうすると嘴、眼、足、しっぽなどが見えてくるようです。気づいたことを自由に発言しあい、お互いの言葉に耳を傾けながら鑑賞を進めていきます。

 
次は唐草模様。ぽっかりとあいた二つの空間のところに鳩が入ることがわかってきました。そして唐草模様を辿りながら、ベン・シャーン独特の線描を感じていきました。

今回の触図に文字は入っていませんでしたので、先生が内容を日本語訳にして朗読して下さいました。
  見よ、兄弟が共に座っている。
  なんという恵み、なんとういう喜び。
  ・・・・

そして、ベン・シャーン(1898-1969)という画家について、この絵の描かれた時代背景が説明されました。
旧ロシア帝国内だった現・リトアニアのユダヤ人家庭に生まれたシャーンは、20世紀初頭、ロシアの迫害を逃れて家族でアメリカに移住。貧しい中、リトグラフの工房で働きながら絵を学び、常に社会に厳しい視線を投げかけ、人々の慎ましい暮らしを暖かく見守った作家でした。1960年代初頭は、国外では冷戦が緊迫し、国内では公民権運動が盛り上がった時代でした。そういうことを知ってあらためて作品を鑑賞すると、もっといろいろなものが作品から感じ取れるようになります。

触図による鑑賞を一旦終え、版画のプレス機がある部屋に移動。今度は作品を技法の点から見てみます。

 
リトグラフの原版(アルミ板)とシャーンも使ったアルシュ紙、そしてリトグラフのプレス機を触ってみました。
みなさん、プレス機の大きさにびっくりされていました。


そして実際の作品の前で鑑賞するために常設展示室に移動です。
天井の高いエントランスホール、常設展の第一室、第二室と歩き、やっとシャーンの作品がある第三室に到着。



今まで得た情報と、今度は作品を目の前に、先生や介添えの方の言葉を手がかりにしてより深く鑑賞を進めていきました。みんなで会話しながら、感想を述べながら想像を膨らませていく作業は、私たちにとってもとても楽しいものでした。

《詩篇133篇》だけでなく《ラッキードラゴン》も鑑賞。

再び講義室に戻って、みなさんにひとことずつ感想を言っていただきました。
触図を使っての鑑賞が初めての方が多かったので、それが意外と難しいこと。でも言葉を媒介にしたサポートがあるとだんだんとわかってくること。こういう美術鑑賞の機会をまた作って欲しいという要望も出ました。「目が見えなくても美術鑑賞はできる。」見えないからこそ想像し、鑑賞が膨らむこともある、という感想には私もハッとしました。

午前、午後、みなさん堪能され、また美術館に来てみたいと感じていただけたのは本当に嬉しい限りです。有り難うございました。

そして真下弥生さん、半田こづえさんをはじめ、ご協力いただきました福島県点字図書館、福島県立盲学校、そして福島県立美術館協力会に心からお礼申し上げます。

A.Y.

追悼コンサート

三寒四温、ぽかぽかだったり、肌寒い雨だったり、春のお天気は気まぐれです。
3月2日、河野保雄コレクションの全貌展関連のコンサートが、肌寒いなか開催されました。
音楽評論家だった河野保雄さんが、生前楽しみにしていた、作曲家・湯浅讓二さんとの音楽とふるさとをめぐる対談。
これが未完におわったため、湯浅讓二さんが追悼コンサート「おやすみなさい」をやりましょう!と仰って実現しました。



会場はエントランスホール。残響音が長くて、ふつうの話し声は聞きづらいと言われるのですが、歌声にはぴったり!
「合唱には最高の会場だよ」とほめていただいたのには、こちらもびっくり。



リハーサルにも熱が入ります。

湯浅讓二さんのごあいさつで、コンサートが始まりました。



「朝早い新幹線に乗らなくちゃ!と勢い込んでガラス扉にぶつかっちゃって…」
赤いお鼻の湯浅先生。

 

 

合唱は、女声合唱団「暁」と混声合唱団「空(くう)」のみなさん、指揮は西川竜太さん、東京から駆けつけて下さいました!

2時間ちかい熱唱!河野さんも満足だったことでしょう。



最後に、この日発行された河野保雄追悼『夢の花』が、来場者の皆さんに配られました。
河野さんのご遺族と湯浅さんの心からの贈り物でした!




HY

除染レポート

先週は除染よりもまず除雪。
5㎝の表土を剥ぐために50㎝の雪かきだ、と作業の方はおっしゃっていました。
大雪のため、除染作業も遅れています。

さて、昨日の作業をレポートしましょう。

美術館の前の庭に大きな穴を掘ったことは前回お伝えしました。
今、ここにフレコンバッグ(除染袋)を納める作業が進んでいます。

 
庭に設置された大きなクレーンで次々と黒い袋がつり上げられ、穴に納められていきます。



800個以上になったというフレコンバッグもなんとか納まりそうだということでした。
それにしてもすごい光景です。
レジェの彫刻《歩く花》は、この光景を脇で静かに眺め続けています。

同時並行で、図書館駐輪場の屋根の除染も行われていました。
高圧洗浄で流された水が集まる升の沈殿物も取り除かれます。





相変わらず、庭園植栽の除染も進められていました。



一方、美術館側の駐車場では、雪で折れた木の枝を処分する作業も行われていました。
本当にこの大雪は大変でした。
それでも少しずつ暖かくなってきています。
春が待ち遠しいですね。

A.Y.

臨時休館のお知らせ



今日は大雪になってしまいました。
重たい雪がしんしん降っています。

福島交通飯坂線も市内バスもすべてストップ。
こんな大雪、久しぶりです。

そういうわけで、明日、2月16日[日]は臨時休館させていただくことになりました。
皆様には大変ご迷惑をおかけしますが、ご理解下さいますようお願い申し上げます。

2月18日[火]は通常開館いたします。

よろしくお願い申し上げます。

A.Y.

除染レポート

先週末、久々の大雪でした。
美術館の庭も一面まだ雪に覆われています。

そんな中、除染も進んできました。
昨日の除染の様子をレポートしましょう。



現在、美術館西側の日本庭園を除染しています。

 

茎や根を傷めないように、そして春には新しい芽が出るように、きちんと選んで枝や根を切りながら、土を丁寧に掻き出していくのだそうです。
そして石についた苔も少しずつはぎ取っていきます。
寒い風の吹く中、根気のいる作業です。



林の中の作業も大変です。平らではないのですから。
土を掻き出し、それを左端に見える緑の車に載せ、林の外へと運び出します。



大きな木の根元には放射能が多くたまっているため、念入りに除染されます。



竹藪は、除染のための準備。根元の雪払い作業が行われていました。

 

そして、これらの土は黒い除染袋に入れられ、庭の一角に掘られた穴に一時保管されます。
フェルナン・レジェの彫刻《歩く花》の前に忽然とあらわれた大きな穴。
昨日は、穴に防水シートを貼る作業が行われていました。
来週から搬入が始まるそうです。

今週末、また雪が降りそうですね。
除雪をしながらの作業になるのでしょうか。
大雪にならないことを祈りつつ・・・。

A.Y.

河野保雄コレクションの全貌展スタート!

各地で大雪になった先週末。
いよいよ「近代洋画にみる夢 河野保雄コレクションの全貌」展がオープンしました!



駅前の看板も雪化粧。

 

 

展覧会開会の前日、開会式も開かれました。
昨年おしくも急逝された、福島市のコレクター、河野保雄(1936-2013)さんのコレクションの全貌を、400点あまりの作品で振り返ろうというもの。
市内に百点美術館(名品を100点集めたい、という希望で命名された名前)を開き、市民の憩いの場でした。
現在そのコレクションは、府中市美術館に200点、宮城県美術館に7点、福島県立美術館に300点ほどが収蔵、寄託されています。
青木繁、関根正二、岸田劉生といった近代洋画の巨匠、個性派から、長谷川利行、麻生三郎、鶴岡政男、桂ゆきなど、さらに竹久夢二、初山滋、はてはこけしまで、バラエティと奥行きを兼ね備えた一大コレクションといえるでしょう。

作品は、ほぼ「集めた順」に並んでいるのも、ユニークな展示といえるでしょう。
 

毎週土曜のギャラリートークもあり、目も耳も離せません!







3/23日まで。
2/16の日曜美術館アートシーンでもちょっこし紹介されるので、見てね!

(HY)